今日の中国ニュース(2021年10月16日分)(副題:阿部治平&リベラル21について改めて批判する)

 リベラル21 「台湾有事」批判論への批判(阿部治平)については今日の中国ニュース(2021年10月10日分)(副題:楊海英と、リベラル21と阿部治平の馬鹿さに心底呆れる) - bogus-simotukareのブログで批判しましたが、浅井基文氏の「台湾独立」問題を考えるに触れる形で、阿部&リベラル21批判を改めてしておきます。
 これは浅井先生に限らず「まともな中国ウオッチャー(阿部やリベラル21をまともな中国ウオッチャーだとは俺は思っていません)」は皆がそうでしょうが、

1)「台湾が独立宣言しない限り(あるいは国連加盟を目指すなど、独立宣言に事実上、当たる行為をしない限り)」中国は台湾侵攻しない
 なぜなら中国がそのように国際公約しているからです。国際公約を破った場合の「経済制裁」の恐れを考えればそんなことはしないでしょう。今までずっと「現状維持なら侵攻しない」を続けてきたのに、それを撤回するメリットがどこにあるのか。
2)ただし「独立宣言すれば」侵攻する可能性はある
 なぜなら「独立宣言すれば侵攻もあり得る」と言っているのに「侵攻しない」のでは中国の面子が潰れるからです。
3)ただし「独立宣言したから」といって中国が速攻で軍事侵攻に動くかは疑問。当初は「期限(タイムリミット)を設定した上で」経済制裁で締め上げ、宣言撤回を促すかもしれない
 なぜならいくら「侵攻がありうる」と普段公言しているとは言え、中国とて「戦争」という最終手段はできれば避けたいからです。とはいえ、何をしようとも台湾が「宣言を撤回しない」のであれば、面子の問題から「侵攻」に行くことは必定でしょう。

と認識しています。詳細な紹介はしませんが基本的には浅井論文もそうしたトーンです。
 そこで阿部やリベラル21のように「独立宣言がなくても台湾侵攻がありうる」というのは正気の沙汰ではない。
 「ロシアの北海道侵攻があり得る」「北朝鮮の韓国侵攻がありうる」「米国がタリバン相手に核兵器を使うことがあり得る」「オウム残党(アレフひかりの輪)がまた地下鉄サリンのような凶悪犯罪を犯すかもしれない」並の与太です。
 「中国はサイコパスではなく一定の常識がある」と前提するならそんなことはあり得ない話です。
 なお、阿部やリベラル21が「もし台湾が独立宣言したら、世界各国や日本政府はどうすべきと思うのか?」について曖昧にごまかしてることには怒りを禁じ得ません。
 「アンチ中国の立場から実は独立論支持だが、それを公然と言うことで、中台対立を助長している、日中友好を阻害しているなどと批判を受けることを恐れてごまかしてるのではないか」と疑わざるを得ません。
 さて、

・2008年にセルビアからの独立宣言をし、米国、日本など『国交』を樹立した国もあるが、国連加盟を認められてないコソボ

など「事実上の独立国」はともかく、国連加盟が認められた(国際社会に認められた)「独立国家の建国」と言うケースは「近年」ではほとんど例がありませんが、浅井先生もお書きになるように

【最近の独立の例】
◆1999年(今から約22年前)
 東チモールインドネシアから)
◆2011年(今から約10年前)
 南スーダンスーダンから)

というケースが「レアながらある」。従って蔡英文が「独立を目指す可能性」は形式的にはあるし、中国も「米中対立」の中、その状況を「かなり危惧している」わけです(もちろん東チモール南スーダンと、台湾では政治環境はいろいろと違いますので、安直に同一視はできませんが)。
 なお、「香港の件」は浅井先生も指摘するように「台湾侵攻の可能性あり」という主張に利用できる話では全くありません。
 まず第一に「実効支配している香港」と「そうでない台湾」では置かれている政治環境がまるで違う。
 第二に「実効支配する」香港ですら中国は「すぐに国家安全維持法を制定したわけではない」。
 「暴力デモ→警察で鎮圧に動く→うまくいかない→もはや新法制定しかない」という形(やむを得ず制定したという形)で「法制定」に動いた。そうした「やむを得なかった」という主張の是非はここではおきます。問題は「そうした大義名分を作ってから中国が動いた」ということです。
 つまりは台湾が現状維持にとどまる限り、中国としては「侵攻に動く大義名分がない」。