黒井文太郎に突っ込む(2021年11月20日分)

◆黒井文太郎ツイート

黒井文太郎
プーチンは一度も1島たりとも返す気はなかった」、「もともと2島返還する気だった」はどちらも仮説。しかも有力な仮説です。
ところがメディアも学術界も前者を検討した形跡が全くない。

 やたら「前者を主張したのは俺ぐらいだ」と「どや顔する黒井」です。
 「メディア=二島返還を目指すという安倍に忖度する大手マスコミ*1」なら黒井の主張も「間違いではないかもしれない」(とはいえ『赤旗など政党機関誌』やミニコミなど、すべてのメディアをカウントすればメディアが「前者を主張しなかった」という事実は存在しませんが。赤旗などはむしろ前者の立場でしょう)。
 しかし「学術界」云々というのは誰のことを言ってるのか。「産経文化人&アンチプーチン」である「袴田茂樹*2青山学院大学名誉教授)」「木村汎*3北海道大学名誉教授)」などは明らかに「前者の立場」でしょうに。
 なお、「経済支援をすれば島が帰ってきた」とは「黒井が言うように」いえませんが、一方で「経済支援とのバーター」以外に「島を取り戻す現実的策がないこと」も事実でしょう。
 また「米軍基地を置かないと約束すれば島が帰ってきた」とは「黒井が言うように」いえませんが、一方で「米軍基地を置く可能性がある」ならば「ロシアが島を返すわけがないこと(つまり島の返還のためには米軍基地を置かないと約束すべきである)」も事実でしょう。
 しかし黒井が「米軍基地を置かないと約束しても島が帰るとは限らない」として「だからそんな約束はしなくていい」と強弁するのには呆れますね。
 繰り返しますが「米軍基地を置く可能性がある」ならばロシアが島を返すわけがない。島の返還を目指すなら「米軍基地は置かない」と約束すべきです。
 それでも「米軍基地を置かない」と確約できないと黒井が言う理由は何なのか?
1)北方領土に米軍基地を置く選択肢を捨てたくないから、2)別に米軍基地など置く必要があるとは思わないが、米国に「ロシアびいき」と疑われ、敵視されたくないから、3)別に米軍基地など置く必要があるとは思わないが、ロシアに軽く見られたくないからなのか、一体何なのか?
 その点を説明することから逃げ「米軍基地を置かないと約束しても島が帰るとは限らない」で片付ける黒井には心底呆れます。

黒井文太郎
 今は特に中露+イランを核とする悪の勢力と民主主義陣営の対立構造が顕著に。

 前も書いたことですが「米国ポチ」で「アンチ中露&イラン」の黒井らしいでたらめさですね。
 例えば「米軍基地を国内に置く、NATOに加盟(トルコの場合)するなどして、米国と同盟関係にあるが、民主主義の観点から批判されているフィリピン(ドゥテルテ政権)、トルコ(エルドアン政権)、サウジ」は黒井にとっては一体「中露+イランを核とする悪の勢力」なのか「(米国を中心とする?)民主主義陣営」なのか?。
 あるいは

◆中国、ロシアが構成メンバーのBRICs首脳会議に参加しているブラジル、インド、南アフリカ
◆中国、ロシア、イランが構成メンバーの上海協力機構に正式参加しているインド、パキスタン、オブザーバー(正式参加の前段階)として参加しているモンゴル、対話パートナー(オブザーバーの前段階)として参加しているスリランカ、参加申請しているバングラデシュイスラエル上海協力機構 - Wikipedia参照)
◆中国の進める一帯一路について、中国と参加協定を締結した「NATO加盟国&G7メンバー」イタリア

は黒井にとっては一体「中露+イランを核とする悪の勢力」なのか「(米国を中心とする?)民主主義陣営」なのか?。おそらく黒井はまともに返答できないでしょう。
 勿論「悪の勢力vs民主主義」という黒井の図式が明らかに間違っているわけです。
 「中露、イランvs米国(&NATO諸国?)」という図式(シリア問題がそうか?)があって、その図式が「中露、イランの側に非がある」としてもそれは「正義vs悪(そして中露が常に悪)」という話とは違う。
 勿論黒井もそんなことはわかった上での「米国美化」「中露、イラン非難」のためのデマの垂れ流しでしょうが。
 そもそも「中国、ロシア、イラン」は「国益判断から共闘すること」はあっても、それは「冷戦時代のワルシャワ条約機構」などと違い、「黒井の言うような同盟関係」ではないし、ましてや「冷戦下での共産国のリーダー・ソ連」のような形でこの三国が「悪の勢力」とやらを牛耳ってるわけでもない。
 まあ、中国やロシアは「安保理常任理事国」で「その経済力は大きい」ですがイランに至っては中露と違いせいぜい「中東地域の大国」でしかない。「南アジアの大国インド」「東南アジアの大国インドネシア」「南米の大国ブラジル」などと同程度の力(つまり地域大国ではあるが世界への影響力は乏しい)しかないでしょう。

黒井文太郎
 牽制というより脅迫。
「日本は一線越えてはならない」 中国外相、台湾問題でけん制 | 毎日新聞

 「台湾独立を支持するな」「それは日中国交正常化での『一つの中国』に反する」つうだけの「ある意味当然の話」を脅迫というのだから黒井のバカさには心底呆れます。

*1:正直「マスコミは二島返還を信じていた」というよりは「二島返還を主張しだした安倍政権ともめるのを恐れて信じたふりをしていた」と見るべきでしょう。

*2:著書『沈みゆく大国:ロシアと日本の世紀末から』(1996年、新潮選書)、『現代ロシアを読み解く』(2002年、ちくま新書)など

*3:1936~2019年。著書『ボリス・エリツィン』(1997年、丸善ライブラリー)、『プーチン主義とは何か』(2000年、角川oneテーマ21)、『新版・日露国境交渉史』(2005年、角川選書)、『現代ロシア国家論:プーチン型外交とは何か』(2009年、中公叢書)、『プーチンとロシア人』(2020年、産経NF文庫)など(木村汎 - Wikipedia参照)