リベラル21と阿部治平に呆れる(2021年11月30日分)

リベラル21 日本人は立憲民主党ではなく、自民党を選んだ
(阿部治平*1
 やや揚げ足取りですが阿部のタイトルは正しくは「日本人は」ではなく「日本人の相対的多数派は」ですね。「日本人の俺」は自民には投票していませんので。当たり前ですが「相対的には自民が多い」のであって野党共闘も当然一定の票を獲得しています。

 立憲民主党敗北の原因は共産党と組んだからだとする見方が有力のようである。

 で阿部もその立場に立った上で連合の芳野会長などと同様に「野党共闘の中止」を主張する気のようです。
 「おいおい」ですね。
 そもそも野党共闘しなければ今の立民の党勢では「小選挙区の多く」では到底、自民に勝てません。
 「共産と共闘しなくても勝てる体力をつければいい」なんてのは遠い将来はともかく当面は「現実的ではない」。
 「比例票の減少」も「共産との共闘が原因」という主張には何の「具体的根拠もない」。
 現時点では「その可能性が否定できない」程度の話です。
 仮に「共産との共闘」で「立民支持層の右の部分」が「自民や維新、国民民主」に行って今回比例票が減ったのだとしても*2、「だから共産と縁切り」というのは

◆そもそもそういう右の部分はおそらくは共産だけでなく、社民やれいわ、あるいはリベラル21(阿部を含む)も敵視してるんですけど?(まさかとは思いますが共産だけを敵視してるとでも思ってる?)。そういう「右の票がほしい」つうのは「リベラル21の存在意義」の「自己否定」ではないのか?
◆共産との共闘を辞めたら*3逆に「野党共闘に期待する左の票*4」は確実に立民の比例票から逃げるでしょうし、一方で右の票が戻る保証もないんですが?

つう意味で「馬鹿馬鹿しい話」です。
 また「野党共闘していなかった時期」において民主党(立民の前身)が小選挙区はひとまず置くにしても「比例」において票を伸ばしていたわけでは勿論ないのだから、野党共闘を辞めれば立民がどんどん躍進するという話でもない(つうか野党共闘しない時期に、政治的に苦しんでいたからこそ、共闘を始めたのであり、先日の衆院選敗北までは「一定の成果が出ていたから」こそ野党共闘を続けてきたし、ずっと枝野が代表だったのですが)。
 大体、「選挙後」に「選挙での勝ち負け」だけで「方針について論じる」つうのも無茶苦茶です。勝てればいいのか。
 まずは「あるべき政治は何か」ではないのか?。勿論、阿部が「野党共闘中止」を言い出したのは選挙後です。
 「選挙結果だけで考えが変わるほど無定見」なのか、「以前から共産との野党共闘を芳野などと同様、辞めてほしかったが黙りだっただけ」なのかはともかく阿部は無茶苦茶すぎでしょう。
 しかも、一方ではリベラル21は

リベラル21 泉健太政調会長の〝野党候補一本化〟は「地域事情による=京都を除く」のダブルスタンダード(二枚舌)で成り立っている、泉氏はその理由を立憲支持者に説明しなければならない広原盛明*5
 泉氏は、代表選における「野党候補一本化」の公約と地元京都での「野党共闘反対」の矛盾について説明しなければならない。「地域事情が国政選挙公約に優先する」理由を明確に説明できなければ、政治家としては失格の「ダブルスタンダード=二枚舌」を弄する人物になる。泉氏がこのまま頬かぶりを続けるのか、それとも納得できる説明をするのか、京都3区の有権者はもとより全国の立憲支持者の目が注がれているからである。

リベラル21 改憲と9条破壊の阻止のために立ち上がろう岩垂弘*6
 2019年参院選では改憲勢力3分の2を打ち破って安倍改憲を挫折に追い込みました。来年の参院選に向けた新たな改憲の動きに待ったをかけるのも、この市民と野党の共闘の力以外にはありません。

という「野党共闘維持」を訴える文章を掲載してるのだから全く「意味不明」です。
 いい加減「多様な意見を紹介している」と強弁して、まるで立場の異なる意見を堂々と掲載し続けるのも辞めたらどうなのか。
 勿論、リベラル21は「関係者がてんでんばらばらに、好き勝手な意見を掲載するだけ」であり「野党共闘中止派らしい阿部」と「継続派らしい岩垂や広原」との間で「野党共闘の是非」などについて公開討論をするわけでもありません。
 それでよくもまあ

私たちは護憲・軍縮・共生を掲げてネット上に市民メディア、リベラル21を創った

なんて抜かせたもんです。まあ、「リベラル21メンバー」阿部や岩垂、広原らが何を言おうとも「リベラル21」など彼らが悪口する立民や共産ほどの社会的影響力も知名度もなく「立民や共産が今後どんな方針をとろうとも」、それは「リベラル21の言論」とは「おそらく全く関係ない」という意味で滑稽で無様な存在ですが(影響するとしたら連合や市民連合など「リベラル21より政治力や影響力のある団体の力」でしょう)。
 しかしご本人たちは「俺たちはたいそうな人間だ(だから立民や共産は俺たちの声を聞け?)」と思い込んでる「夜郎自大」のようだから呆れます。

 野党共闘東シナ海の緊張に際して有権者に安心感を与えるような、説得力のある安全保障政策を提起できなかった。

 アンチ中国の阿部らしいですがどこに「東シナ海の緊張」なんてもんがあるのか。
 そもそもそんなもんは今回の選挙において明らかに争点にはなってないでしょう。まさかとは思いますが、阿部の周辺には「野党共闘が伸びたら中国の脅威がー、だから自民に投票する」つう人間ばかりだったのか。およそ信じられませんが。

 立憲民主党は「日米同盟重視」政策のほか、米中対立から距離を置くような日本独自の外交政策など考えもしなかった。

 「距離を置く*7」のではなく、やるべきことは(勿論困難なことですが)、「(G7諸国など世界各国とも連携した上で)米中対立解消の方向で動く」ことですね。
 米国、中国ともに「日本にとって重要な国(貿易相手国など)」である以上「曖昧にごまかして距離を置く」ことなどできるわけもない。

*1:著書『もうひとつのチベット現代史:プンツォク=ワンギェルの夢と革命の生涯』(2006年、明石書店)、『チベット高原の片隅で』(2012年、連合出版

*2:ただし「繰り返しますが」現時点では「その可能性がある」程度の話です。

*3:それは共産だけでなく社民やれいわとの共闘否定も意味するでしょうが

*4:野党共闘支持者にはリベラル保守もいることを考えれば「左の票」と言っていいかは少々疑問ですが。

*5:京都府立大学名誉教授。個人ブログ広原盛明のつれづれ日記。著書『震災・神戸都市計画の検証』(1996年、自治体研究社)、『開発主義神戸の思想と経営』(2001年、日本経済評論社)、『日本型コミュニティ政策:東京・横浜・武蔵野の経験』(2011年、晃洋書房)、『観光立国政策と観光都市京都』(2020年、文理閣

*6:朝日新聞社会部次長、編集委員などを歴任。著書『生き残れるか、生協』(2001年、同時代社)、『核なき世界へ』(2010年、同時代社)、『ジャーナリストの現場』(2011年、同時代社)

*7:阿部が「米国とともに中国封じ込め」とは言わない点が興味深い。