「雪風」に乗った少年、逝く - 高世仁の「諸悪莫作」日記
高世の記事(1927年生まれ、つまり終戦時18歳の西崎信夫氏が今年94歳で死去)を読んで感じたことは、当たり前のことではありますが「日中戦争、太平洋戦争の体験者は今後どんどん死去していく」ということですね。
今後は「日中戦争、太平洋戦争」は「体験者が語った録音や録画」「体験者が書き残した文章」で論じるしかなく「体験者の話を聞く」ということはありえないわけです。
【参考:1927年生まれの著名人】
1927年 - Wikipedia参照
◆3月9日生まれ
上田耕一郎(2008年死去、享年81歳):日本共産党政策委員長、副委員長などを歴任。日本共産党書記局長、委員長、議長を歴任した不破哲三氏(1930年生まれ)の実兄。
◆3月30日生まれ
堤清二(2013年死去、享年86歳):セゾングループ元オーナー
◆4月20日生まれ
塚本三郎(2020年死去、享年93歳):民社党書記長、委員長を歴任
◆8月1日生まれ
三塚博(2004年死去、享年76歳):自民党三塚派ボス。中曽根内閣運輸相、竹下内閣通産相、宇野内閣外相、橋本内閣蔵相、自民党政調会長(海部、宮沢総裁時代)、幹事長(河野総裁時代)など歴任
◆9月16日生まれ
緒方貞子(2019年死去、享年92歳):上智大学名誉教授。国連難民高等弁務官、JICA理事長など歴任。 著書『満州事変』(2011年、岩波現代文庫)、『聞き書・緒方貞子回顧録』(2020年、岩波現代文庫)など
◆11月7日生まれ
森山眞弓(2021年死去、享年93歳):海部内閣環境庁長官、官房長官、宮沢内閣文相、小泉内閣法相など歴任
◆12月20日生まれ
金泳三(2015年死去、享年87歳):韓国大統領
【参考終わり】
なお、高世が紹介する「西崎氏のエピソード」ですがこれはおそらく「緊急避難」に該当するので「刑法上の殺人」には該当しないと思います。
それにしてもこのエピソードって完全に「カルネアデスの板(カルネアデスの舟板)」だな、と思いました。
なお、「話が完全に脱線しますが」有名作品ではないですが松本清張にカルネアデスの舟板 (松本清張) - Wikipediaなんて作品があります。
小説の内容については
第7478回「新潮文庫松本清張傑作短編集 その52、カルネアデスの舟板 ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記
(前略)
玖村は、自分の愛人を使って大鶴にスキャンダルを仕掛けましたが・・・・。愛人の反撃によって、玖村は彼女を殺す破目になりました。
を紹介しておきます。
「スキャンダル」「反撃」が何を意味するかは予想がつくでしょうが、この小説を読んだ小生が完全に「ネタばらし」しておくと
◆スキャンダル
「自分の愛人」を大鶴のもとへ、お手伝いとして送り込んだ上で、大鶴と肉体関係を持たせ、その後「レイプされた」と虚偽告発させる
◆反撃
「レイプ疑惑で大鶴が大学を首になった」ら「妻と別れて結婚する」と玖村が嘘をついていたことで、大鶴が実際に首になった際に、愛人に「結婚してくれないならすべてを世間にばらす」と脅される*1
つう話です。
「最初から犯人がわかってる」上に「巧妙なトリック(例:「点と線」のアリバイトリック)」などもないので、ミステリとしては何と言うこともない平凡な作品ですが
有沢翔治の読書日記 : 松本清張『カルネアデスの舟板』(角川書店)
書いてて非常に耳が痛いのですが。というのも僕(たぶん僕だけではなく多かれ少なかれ誰でも)いい人を演じていると思っています。その証拠に人に親切にしてあげてその理由はさまざまで、玖村みたいに自尊心を満たしたいための人もいれば、僕みたいにそうすることでしか自分の価値を認めることができない人もいるかもしれません。
こうした心理の奥底に潜むものは……僕もそうなんですが……傲慢だと思うんですよね。玖村の場合それがありありと窺えます。
が指摘するように「世間的に善人と見なされてる人間」の「嫌らしい本性(俗物性、虚栄心)」の描き方は「やはり清張らしいうまさ」というべきでしょうか。
ただしそれで終わっちゃうとミステリにならないので「最後に犯罪が起こる」んですが、それが
第7478回「新潮文庫松本清張傑作短編集 その52、カルネアデスの舟板 ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記
(蛇足) ラストの愛人殺しを除けば、日本人の精神性に迫るテーマだけに竜頭蛇尾に終わったことが残念です。
も書くように「蛇足」の感がありますね。
しかし、これを最初、読んだときには「まるで登場人物たちは右翼転向した清水幾太郎や藤岡信勝のようだ」というのが俺の正直な感想ですね(ただし清張小説の発表の方が清水らの右翼転向より先)。