今日のしんぶん赤旗(2022年1/1日分)(追記あり)

新春対談/東京大学教授 本田由紀さん/日本共産党委員長 志位和夫さん
 新春対談での本田氏の発言は新刊紹介:「前衛」2022年1月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した
◆インタビュー『この国のあり方を変えるためにも野党共闘をさらに強く:『「日本」ってどんな国?』と総選挙への私の思い』(本田由紀*1)と内容的にかぶるところがあるので新刊紹介:「前衛」2022年1月号 - bogus-simotukareのブログに「追記」する形で紹介しましたが、忘れないように、1/1記事としてメモしておきます。

【追記】
 新刊紹介:「前衛」2022年1月号 - bogus-simotukareのブログから本田氏関係部分をこちらに転載しておきます。

◆インタビュー『この国のあり方を変えるためにも野党共闘をさらに強く:『「日本」ってどんな国?』と総選挙への私の思い』(本田由紀
(内容紹介)
 架空問答形式で書いてみます。
◆俺
衆院選直前に刊行された『「日本」ってどんな国?:国際比較データで社会が見えてくる』(2021年、ちくまプリマー新書)について、衆院選にも絡めてお話し頂ければと思います。」
◆本田氏
「別に私の本で選挙結果を大きく変えたいという話でもない(苦笑)のですが、選挙前に『なぜ私が野党共闘を支持するのか(今の自公政権に不満を感じるのか)』という思いを少しでも伝えたいと思い、『ジェンダーギャップ指数の低さ』など、『国際比較データ』から見た日本の問題点を指摘する本を刊行しました。元の案では『どんな国?』ではなく『変な国?』だったのですが、それだと反感を感じて読まない人もいると編集者に言われまして今のタイトルになりました(苦笑)。まあ内容的には『国際比較すると大分変だと思う』」という内容ではあるのですが」
「私は今の政治、社会の大きな問題点は『戦後日本型モデルの崩壊』と思っています。戦後モデルは『高度経済成長』や『終身雇用』を前提に企業が『国が負担すべき福祉的な部分』をかなり負担してきた(もちろん企業福祉はヨーロッパの福祉国家に比べればちゃっちいものでしたが)。それで国民も『それなりの利益』を得てきた。しかし、今『低成長でパイが小さくなる』中で企業が『終身雇用』『企業福祉』から大幅に撤退してきた。非正規が増えてるし、企業福祉も縮小しているわけです。それを埋めるには今こそ『公的福祉』を国が充実すべきなのにそれを自公政権はしない。自公政権はむしろ福祉を切り捨てる方向に動いています。躍進した維新も明らかに『福祉切り捨て』の方向です。福祉切り捨て路線の今のままでいいのかということを強く訴え、『公的福祉を充実させた新しい社会モデル』を提示する。今野党共闘に求められてることの一つはそれだと思います。」
【2022.1.1追記】
 前衛記事と全ての内容が一致しているわけではありません*2が本田氏の考えについて知る参考材料として新春対談/東京大学教授 本田由紀さん/日本共産党委員長 志位和夫さん(2022.1.1)を一部紹介しておきます。

新春対談/東京大学教授 本田由紀さん/日本共産党委員長 志位和夫さん(2022.1.1)から「本田氏の『衆院選評価』についての発言」を中心に一部引用
本田
 自民・公明が過半数を得た結果には、ちょっと複雑な思いが残りました。今年は参院選があり、たたかいは続きます。この国の現状は、「おかしいよね、こんなの」ってあきらめたくなるようなことばかりですけれども、あきらめることはいつでもできるので、私はあきらめません。もう少し頑張ろうというのが、今年の抱負です。
 私は市民連合のメンバーではありませんが、外から折々に関与させていただくという立場で、野党共闘も応援してきました。
 昨年11月3日の国会前行動のスピーチでも、今強い野党勢力が必要だ、野党の共闘は絶対条件だと訴えさせてもらいましたが、その気持ちが変わることはありません。
 共産党が総選挙で訴えた平和、暮らし、ジェンダー、気候はどれもすごく大事だと思っています。私は賛成します。
 でも、その訴えが響かない人々、違うところに関心があったり、そういった訴えがきれいごとに思えるような層というのが、どっかり存在していることは確かです。
 たとえば、30代、40代ぐらいの働き盛りの男性にとっては、賃金も上がらない、家族もいるなか、“とにかく食っていかなきゃいけない”“とにかくもうちょっと金を稼ぎたい”“とにかくもうちょっとゆとりがほしい”みたいな切実な思いがあります。
 改めて総選挙の各党の政策を読み比べてみた時に、自民党は経済政策にたくさんの項目が挙げられていて、しかもなんか(ボーガス注:デジタルとか)カタカナ用語みたいのをいっぱい使いながら、キラキラな素晴らしい将来がすぐそこにあるかのような、マニフェストを掲げていました。「もう一度、力強い日本を」とか、「強い経済と素晴らしいテクノロジーを」とか、こうしたキラキラした雰囲気を渇望している有権者が、先ほど話した30代、40代の男性を中心にいると思います。そのギャップがもう少し埋められないかなと考えていますが、どうでしょうか。
志位
 そのご指摘は大事だと思います。本田さんの『前衛』1月号のインタビューを拝見して、いろいろと感じるところがありました。いまおっしゃったこと、特に30代、40代の男性の働き手にも響くような訴えをどうやればできるかということは、本当に考えなければいけないなと思いました。新自由主義から転換してどんな社会をつくるか。この社会を一言で言った場合、本田さんの言葉をそのまま使わせていただきますと、“やさしく強い経済”をつくろうというように訴えてみたらどうかと考えたのですが。
 これはワーディング(言葉遣い)の問題だけではありません。新自由主義が、だいたい1980年代から始まり、1990年代からうんとひどくなりました。この間に、三つの悪政がやられたと考えています。
 一つは、労働法制の規制緩和で、「使い捨て」労働を蔓延させてしまったこと。
 二つは、社会保障の連続切り捨てで、医療も介護も年金も貧しくしてしまったこと。
 三つは、消費税を増税し、富裕層と大企業に減税して、税の公平を壊してしまったこと。
 この三つをやって、その結果できた社会はどんな社会でしょうか。
 一つは、“冷たい社会”です。つまり、人々に「自己責任」と「自助」を押し付ける、“冷たい社会”に変えられてしまいました。同時に、この“冷たい社会”は“もろい社会”でもあるのです。つまり決して本当の意味での“強い社会”じゃない。この“もろさ”ということを考える場合に、本田さんの著書『「日本」ってどんな国? 国際比較データで社会が見えてくる』を読んで、いくつか大事なポイントがあるなとあらためて思いました。
 第1は、「成長ができない国」になってしまった。OECD(経済協力開発機構)のデータで、この7年間(2013年~2020年)で見て、実質GDP国内総生産)の伸びはアメリカが25%。ユーロ圏が14%。日本が6%です。日本は、世界で最も成長できない国になり、深刻な停滞状態に陥っている。脆弱な経済になってしまいました。
 それから第2は、「危機に弱い国」になった。
 そのことは新型コロナ危機であらわれました。長年、社会保障と公衆衛生を切り捨ててきた結果、お医者さんの数はOECD平均に比べて14万人も少ない。保健所は半分にしてしまった。それが医療崩壊を招いてしまいました。このことでたくさんの方が亡くなりました。
 それから第3は、本田さんも著書で強調されているのですが、本当の意味での競争力を失ったということです。このデータでは、1990年代初めに日本は世界で1位だったのに、現在は34位とありますね。競争力をうんと失った。
本田
 私の本を取り上げていただいてありがとうございます。そこでも紹介しましたが、日本経済がもうディクライン(衰退)していることは明らかですね。IMDというスイスのシンクタンクが長年にわたって発表している各国の競争力ランキングは、「経済的業績」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「社会基盤」の四つの分類に基づく客観的データとアンケート調査結果による指標を用いて計算したものですが、これによると、1990年代以降の日本の低下は著しく、その後も持ち直していないことを示しています。
志位
 半導体を見てみると、一時は、世界で50%以上のシェアがあったのが、いまは10%です。半導体一つ自前で調達できなくなり、ばくだいな補助金で台湾企業を誘致しようというありさまです。だから、先ほど言った三つの点で、根本からの大改革をする必要があります。一つは、労働法制の規制緩和の路線を転換して、人間らしく働けるルールをきちんとつくっていくこと、二つは、社会保障を切り捨てから拡充に大きく切り替えること、三つは、消費税を減税し、富裕層や大企業に応分の負担を求める税制改革を行うこと。そういう一連の大改革をやることが、“やさしく強い経済”にする道だということを、訴えていきたいと考えています。
本田
 私が申し上げたことを率直に受け止めてくださって本当にうれしいです。志位さんのおっしゃった「強い経済」という方向が、問題含みの資本主義を延命することを暫定的に主張してしまうことになるのかもしれないと思いながら、いまの資本主義が滅ぶとか、資本主義を変えていかなきゃいけないと思っていない人たちに、共感・賛同してもらうためには、こうした打ち出しが必要だとも感じます。
 「やさしくて強い経済」というスローガンを打ち出すとおっしゃったのは、日本共産党の資本主義に対する批判という点からみれば、相当主張を曲げていただいたのではないでしょうか。
志位
 いやいや、そうじゃないんですよ(笑い)。マルクスの『資本論』のなかに、とても印象的な叙述があるんです。
 19世紀のイギリスで、人類初めての工場法ができました。とくに1848年から50年の時期に、「1日10時間」に労働時間を規制する工場法がつくられた。マルクスは『資本論』のなかで、いろいろな角度から工場法の歴史的意義に光を当てているのですが、工場法がつくられる前のイギリスというのは、長時間労働がまったく野放しですから、労働者階級は肉体的にも精神的にも健康を失ってしまう。児童労働も野放しですから、子どもの成長にも障害がつくられる。そのことによって、イギリスの資本主義の全体が行き詰まっていくのです。
 工場法をつくってどうなったか。マルクスは、『資本論』で、イギリス資本主義の「驚くべき発展」が起こったといっています。つまり、工場法によって、労働者が肉体的にも精神的にも健康を取り戻して、そのことが社会全体に活力をもたらしたと。マルクスは、そのことをすごく肯定的にとらえているわけです。
 そういう意味での「強い経済」をつくっていくということは、私たちの主張を曲げるわけでもないし、反対に、私たちがめざすものなのです。資本主義が健全な発展をとげれば、それだけ先の社会に進む豊かな条件もつくられますから。
(中略)
 日本共産党は、この問題で昨年、「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」というのを提案しました。この中で、2030年度までにCO2を最大60%削減しよう、それを思い切った省エネと再エネで実現しようと、かなり大胆な計画を提案しています。
 この提案そのものが、日本経済に活力と強さをもたらすことにもなります。「2030戦略」では、この道を進めば2030年までに、254万人の雇用が増え、累積205兆円のGDPが増えるという試算も紹介しました。
(中略)
 ジェンダー平等の社会をつくることが、本当の意味での日本の社会や経済の活力を取り戻すことにもなる。全部がつながっていると思うのです。
本田
 国際比較データを見てみても、先ほど紹介していただいた以外の項目を見ても、世界経済フォーラムが毎年公表している「ジェンダーギャップ指数ランキング」では、日本は継続的に低いランクにあります。特に「経済活動への参加と機会」という指標は国際的にかなりランクが低い。気候危機打開の提案にも私は賛成です。
 ただ一方で、世の中には、ジェンダー平等という打ち出しに対して、「自分たちさえ食っていけなくなっているのに、さらに女性が地位を脅かしに来た」と受け止める男性や、家事・育児分担がこんなにも不平等なもとでも不満を抱かない女性もたくさんいます。石炭火力発電をなくしていくという気候危機打開の方向に対し、相変わらずまだ石炭火力に固執する勢力もあります。私は、なぜこんなに転換できないのだろうと思うわけですが、それでも短期的な利益にしがみついているところがたくさんあります。
 志位さんがおっしゃった共産党が掲げている理知的な主張はすべて妥当で、私は賛成します。賛成するのですが、こうした人々と共産党の主張のギャップ、距離感は仕方がないのでしょうか。これを埋めるためにはどうすればいいんでしょうか。
志位
 たしかに「ギャップ」「距離感」もあるだろうと思います。ただ、仕方がないというわけにはいきません。それを埋める力は、やはり社会運動を広げることではないでしょうか。
 政治学者の中野晃一さん*3上智大学教授)が、「『ジェンダー平等なんて言っても左派過ぎて人がついてこない』なんて言われる社会は、社会自体を変えていかなくてはいけないと思うんですね。ほかにもこういうテーマはまだ響かないというようなことであれば、それが響く社会に変えていく必要がある」とおっしゃっています。私も、その通りだと思うんです。
 じゃあどうやって変えるのかといったら、やっぱり社会運動だと思うのです。たとえば、作家の北原みのりさんたちが中心になってずっと取り組まれているフラワーデモの活動があります。私も何度も参加させていただきました。私自身、あまりにも知らないことがたくさんありました。こんなにも性暴力でたくさんの人が苦しんでいること、特に幼い頃に受けた傷で長いこと苦しんでいること、初めて知ることが多かったのです。
 やはりいろいろな運動の力で状況を変えていくことが大切だと思います。フラワーデモだって、長い取り組みの中で状況が変わり、刑法改正も現実の課題になってきました。あきらめないでたたかっていくってことが状況を変えてきたのだと思います。
 気候危機、ジェンダーって、世界ではメインストリーム(主流)の問題ではないですか。にもかかわらず、日本でまだそうなっていないとすれば、社会を変えなければならない。変えようと思ったら運動をやるしかないということではないでしょうか。

 読んで分かるようにまず第一に本田氏は「さすがに志位氏の対談相手」なので「リベラル21の阿部治平や広原盛明」のような無茶苦茶な悪口はしない物の「この赤旗新春対談(なお、前衛記事でも同様の指摘は勿論あります)」で「後智恵になって恐縮だが自民の政策に比べ、共産は景気対策という面でインパクトに欠けたのではないか?」「ジェンダー平等や温暖化対策には大いに共感するが日本では受けが悪い点をどう対応すべきか?(俺の要約)」などという「苦言」は呈しています。手放しで共産党を万歳してるわけではない。
 第二に志位氏もそうした指摘に対して「それなりに応答している」わけです。正直、この対談を見る限りでは「俺の投稿を平然と掲載拒否して恥じないリベラル21よりもむしろ志位氏に『対話精神』を感じます」ね。
 第三にリベラル21が

【1935年生まれ:86歳】
 岩垂弘*4、田畑光永*5神奈川大学名誉教授)、横田喬*6
【1936年生まれ:85歳】
 坂井定雄*7龍谷大学名誉教授)、隅井孝雄*8 
【1938年生まれ:83歳】
 広原盛明*9京都府立大学名誉教授)
【1939年生まれ:82歳】
 阿部治平*10
【1947年生まれ:74歳】
 盛田常夫*11
【1948年生まれ:73歳】
 小川洋*12

などと「70歳以上の老人ばかりが寄稿者」なのに対して「志位氏の対談相手」本田氏は57歳(1964年生まれ)で50歳代です。これは志位氏が立派と言うより「70歳以上の老人しか出てこないリベラル21」がおかしいのですが。かつ本田氏は女性ですが、リベラル21の投稿者はほとんど男性です。俺的には「リベラル21より志位氏の方がずっと立派」という思いを改めて深くしました。

*1:東京大学教授。著書『教育の職業的意義:若者、学校、社会をつなぐ 』(2009年、ちくま新書)、『軋む社会:教育・仕事・若者の現在』(2011年、河出文庫)、『社会を結びなおす:教育・仕事・家族の連携へ』(2014年、岩波ブックレット)、『もじれる社会:戦後日本型循環モデルを超えて』(2014年、ちくま新書)、『教育は何を評価してきたのか』(2020年、岩波新書)、『「日本」ってどんな国?:国際比較データで社会が見えてくる』(2021年、ちくまプリマー新書)など

*2:勿論同一人物(本田氏)が「同じテーマ(衆院選評価やそれを踏まえた参院選での取り組みなど)」について話してるのだから重複するところも当然あります。

*3:著書『戦後日本の国家保守主義:内務・自治官僚の軌跡』(2013年、岩波書店)、『右傾化する日本政治』(2015年、岩波新書)、『私物化される国家:支配と服従の日本政治』(2018年、角川新書)

*4:著書『生き残れるか、生協』(2001年、同時代社)、『核なき世界へ』(2010年、同時代社)、『ジャーナリストの現場』(2011年、同時代社)、『戦争・核に抗った忘れえぬ人たち』(2018年、同時代社)など

*5:著書『中国を知る』(1990年、岩波ジュニア新書)、『鄧小平の遺産』(1995年、岩波新書)、『勝った中国・負けた日本:記事が映す断絶八年の転変』(2015年、御茶の水書房)など

*6:著書『反骨のDNA』(2020年、同時代社)、『夜郎自大の30年:蘇る言論圧殺の悪夢』(2021年、同時代社)

*7:著書『テロの時代』(1986年、教育社)など

*8:著書『隅井孝雄のメディアウォッチ』(2015年、リベルタ出版

*9:著書『震災・神戸都市計画の検証』(1996年、自治体研究社)、『開発主義神戸の思想と経営』(2001年、日本経済評論社)、『日本型コミュニティ政策:東京・横浜・武蔵野の経験』(2011年、晃洋書房)、『観光立国政策と観光都市京都』(2020年、文理閣)など

*10:著書『もうひとつのチベット現代史:プンツォク=ワンギェルの夢と革命の生涯』(2006年、明石書店)、『チベット高原の片隅で』(2012年、連合出版

*11:著書『ハンガリー改革史』(1990年、日本評論社)、『ポスト社会主義の政治経済学:体制転換20年のハンガリー』(2010年、日本評論社)、『体制転換の政治経済社会学:中・東欧30年の社会変動を解明する』(2020年、日本評論社

*12:著書『なぜ公立高校はダメになったのか:教育崩壊の真実』(2000年、 亜紀書房)、『消えゆく「限界大学」:私立大学定員割れの構造』(2016年、白水社)、『地方大学再生:生き残る大学の条件』(2019年、朝日新書