新刊紹介:「経済」2022年2月号

「経済」2月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
◆随想『財界のジョブ型雇用推進に思うこと』(金田豊
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。なおポイントは「財界の」という枕詞でしょう。
 「ジョブ型雇用」という概念の是非はともかく、少なくとも「財界」においてはそれは「さらなる労働力の低賃金化」を志向するとんでもない代物でしかありません。
赤旗
「限定正社員」って何だ?!/解雇しやすく低賃金/政府・規制改革会議の答申
経団連 相次ぐ構造改革提言


世界と日本
◆ドイツ新政権の発足(宮前忠夫*1
(内容紹介)
 新刊紹介:「経済」2021年12月号(追記あり) - bogus-simotukareのブログで紹介した『ドイツの総選挙』(宮前忠夫)の続きです。
 キリスト教民主同盟が下野し、社民党緑の党自民党の三党連立内閣が成立しました。
 内閣の主要メンバーは以下の通りです。

オーラフ・ショルツ内閣 - Wikipedia
◆首相
 オーラフ・ショルツ*2社民党党首
◆副首相(経済・気候保護担当相兼務)
 ロベルト・ハーベック「緑の党」共同代表
◆外相
 アンナレーナ・ベアボック「緑の党」共同代表
財務相
 クリスティアン・リントナー「自民党」党首

参考

独ショルツ新政権発足/3党連立 閣僚の半数が女性
 FDPのリントナー党首は財務相に就任。23年からの財政均衡を目指しており、SPD、緑の党が選挙中に掲げた社会的公正の実現に向けた分配政策や積極的な気候対策投資に「待った」をかける存在となり得るとの指摘もあります。連立協定では、SPDと緑の党が主張してきた富裕層への増税が盛り込まれておらず、FDPの主張が通った形です。


◆インド:歴史的な農民運動の勝利(西浦敏夫)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

モディ印首相、異例の謝罪 農民反発で改正法撤廃:時事ドットコム2021年11月27日
 インドのモディ首相が、「肝煎り」だった農作物の売買自由化につながる改正農業関連法について、撤廃する意向を表明し、異例の謝罪に追い込まれた。改正法に反対する農民のデモが長期化し、混乱を招いていた。2022年には農業が盛んな主要州の議会選が予定されており、影響を懸念し方針を転換したとみられている。
 モディ氏は今月19日、国民向けのテレビ演説で、昨年9月に施行された改正法の撤廃を表明。「私たちの努力に、農民を納得させられないような何らかの不備があったに違いない。国民に謝罪する」と述べた。
 モディ氏は2014年の首相就任後、高い支持率を背景に新自由主義的な経済政策を進めてきた。
 2019年の総選挙では与党インド人民党(BJP)を圧勝に導くなど国民の評価を得てきた。
 しかし、改正農業関連法をめぐっては、昨年11月ごろから、取引自由化に伴う大企業の買いたたきを懸念し、北部パンジャブ州の農民を中心とするデモが断続的に続いている。今年1月には首都ニューデリーで警官隊との大規模な衝突に発展。
 農業が盛んなパンジャブ州、人口2億人超の最大州ウッタルプラデシュ州では2022年に州議会選が実施予定。ともにBJPの苦戦が伝えられている。
 モディ政権は、1日当たり最大40万人超の新規感染者を出した今年3~5月の新型コロナウイルス感染「第2波」の対応をめぐり支持率が急落。ロイター通信は5月中旬、調査会社CVOTERの調査結果として、モディ氏の就任後初めて、政権に「不満」とする回答が「満足」を上回ったと報じた。改正法撤廃は、混乱でこれ以上支持を失いたくない政権の苦渋の決断と言えそうだ。


◆中国、「共同富裕」を提唱(平井潤一)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

共同富裕とは 中国、成長の裏で格差拡大: 日本経済新聞2021年9月3日
◆共同富裕
 貧富の格差を縮小して社会全体が豊かになるという中国共産党政権が掲げるスローガン。1953年に建国の父、毛沢東氏が提唱した。
 1978年から改革開放に着手した鄧小平氏が唱えた「先に豊かになれる者から豊かになりなさい」という先富論と対比されがちだが、鄧氏も共同富裕を最終目標に据えていた。

「共同富裕」を急ぐ習近平政権|日本総研
 「豊かになれるものを先に富ませる」という鄧小平氏先富論の後段には「豊かになったものが遅れたものを助ける」という文言が含まれる。共同富裕は、所得格差などの急速な経済発展によって生じた歪みを是正することで、社会の安定性と経済発展の持続性、ひいては、共産党に対する信認を高める試みといえよう。

中間層の拡大へ、分配強化打ち出す 習氏の「共同富裕」演説を公表:朝日新聞デジタル2021年10月17日
 中国共産党の理論誌「求是」は16日付の最新号で、共に豊かになる社会を目指す「共同富裕」に関する習近平(シーチンピン)国家主席の演説を掲載した。「共同富裕は社会主義の本質的要求であり、中国式現代化の特徴だ」としたうえで、中間所得層の拡大や税制改革に取り組むとしている。
 習氏は「共同富裕」の実現を目標に掲げるが、具体策が明らかになるのは初めて。「高すぎる所得を合理的に調整する」とし、所得税制度の改善を掲げた。累進課税強化が念頭にあるとみられる。中国では導入されていない固定資産税について「立法化に向けた改革を積極的に進める」とし、試験導入する考えを打ち出した。消費税の適用範囲拡大も触れたほか、「第3次配分」と位置づける寄付制度の充実へ公益慈善事業の税優遇も図るとした。

News Up 「共同富裕」って何なの?習近平政権のねらいは? | 中国 | NHKニュース2021.11.9

 「共同富裕」って何なの?

 ひと言で言うと、格差是正のことです。

 どうして今、「共同富裕」なの?

 背景には、中国の経済成長にともなう貧富の格差拡大があります。
 中国は「豊かになれるものから先に豊かになる」という「先富論(せんぷろん)」を掲げながら市場経済化を進め、世界2位の経済大国になりました。
 しかし、国が豊かになるとともに所得の格差も拡大し、スイスの金融大手「クレディ・スイス」は、去年(20年)の時点で中国の上位1%の富裕層が中国全体の資産の30.6%を保有しているとして、富裕層に富が集中していると指摘しています。
 李克強首相も去年5月「毎月の収入が1000人民元程度(日本円で1万7000円程度)の人がまだ6億人いる」と述べるなど、中国政府も収入が低い人が依然として多い実態を認めています。
 ちなみに先月(10月)、習近平指導部は日本の固定資産税にあたる「不動産税」を一部の都市で試験的に導入することを決定。
 ただ、反発も予想されるなど、全国的な導入にはまだ課題もありそうです。


◆急騰する原油価格(萩村武)
(内容紹介)
 Q&A形式(架空問答)で書いてみます。

 なぜ、価格が高騰しているのですか?

 「コロナによる需要減少」→「価格低迷」→「産油国の減産」→「コロナの終息傾向による需要増加」→「価格高騰」と言う流れです。
 「増産すればいい」と思われるでしょうが産油国は「今の価格高止まり」を歓迎するとともに「下手に増産」して「また価格低迷」になることを懸念して増産には動いていません。
 米国のシェールオイル開発については「環境破壊を招く」「脱炭素に逆行する」という民主党内環境重視派の批判もあって、バイデン政権は消極的です。
 なお、サブの理由としては「産油大国イランに対する米国の制裁」があります。


特集「2022年の日本経済をどう見るか」
◆座談会「待ったなしの政治・経済転換」(岡田知弘*3大沢真理*4、岡崎祐司*5
(内容紹介)
 それぞれ、「岡田氏(地域経済)」「大沢氏(ジェンダー平等:コロナ禍での女性非正規の雇い止め増加など)」「岡崎氏(福祉問題:コロナ禍で重要性が改めて再認識されている生活保護など)」と自らの専門分野を中心に論じていますが、詳細な紹介は省略します。
参考
岡田氏
コロナ禍2年目 地方自治をめぐる情勢と対抗軸(上) | 論文 | 自治体問題研究所(自治体研究社)(月刊『住民と自治』 2021年11月号 )
コロナ禍2年目 地方自治をめぐる情勢と対抗軸(下) | 論文 | 自治体問題研究所(自治体研究社)(月刊『住民と自治』 2021年12月号 )


◆回復が遅れる日本経済(工藤昌宏*6
2020年代、日本資本主義の動向と課題(友寄英隆*7
(内容紹介)
 工藤論文、友寄論文ともにコロナの影響が日本経済に深刻なダメージを与えていることを指摘。コロナの早急な終息を目指すとともに、コロナによって被害を受けた産業への国の支援が必要としている。
 その一方で「国民負担増(消費税増税など)」「賃金の伸び悩み」によって「コロナ以前から日本経済が成長していなかったこと」を指摘。
 コロナ対応とは別途「国民負担の軽減」「賃金の上昇」の方向に国の施策や企業の経営方針が動くべきだとしている。


◆コロナ禍の下での企業業績の動向と特徴(小栗崇資*8
(内容紹介)
 コロナ禍において「国内市場がもっぱらである中小企業」に比べ、「海外輸出を主とする大企業」が受けた打撃が小さかったことを指摘。
 その結果「大企業の方針に影響される自民党の施策」が中小企業に対して冷たい物になっているとの批判がされている。


◆気候危機打開と再生可能エネルギー普及促進(和田武*9
(内容紹介)
 日本政府が脱炭素に後ろ向きなことを批判。
 一方で、共産党が提案した気候危機を打開する日本共産党の2030戦略│2021総選挙政策│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会について「今後の議論のたたき台」として評価している。

参考
赤旗
気候危機打開 日本共産党が「2030戦略」/志位委員長が発表2021.9.2
主張/COP26岸田演説/脱炭素に逆行する姿勢は重大2021.11.5


◆コロナ財政から税財政民主主義再建への道程(梅原英治*10
(内容紹介)
 新刊紹介:「経済」2021年9月号(特集:中国と日本)(副題:浅井基文ブログ記事(中国関係)をこの機会に「多数」紹介する)(追記あり) - bogus-simotukareのブログで紹介した『財政民主主義の危機と再生の課題:コロナ財政の名のもとに財政規律を破壊』(梅原英治)の続編。前回は「巨額の予備費(菅政権)」が財政民主主義の観点から批判されたが今回は岸田内閣の予算が

命・暮らし守れ 焦眉の課題で提案/志位委員長の代表質問2021.12.10
 補正予算案には過去最大の軍事費7738億円が計上され、当初予算と合わせると軍事費は初めて6兆円を超え、今回は新規に導入する多額の正面装備も含まれていると指摘。そもそも補正予算案は財政法上、大規模災害への対応など「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要になった経費の支出」について作成するものだとして、「今回のような軍事費の計上は緊急を要するものではなく、財政法と財政民主主義に反する」と批判しました。
 岸田首相は、周辺国の安全保障の厳しさを理由に「特に必要な事業に要する経費を計上している」とし、財政法の趣旨に反してはいない、と強弁しました。

として同様の観点から批判されている。
 また、「会計検査院が十分機能してないという認識」から近年、

国のばらまき監視する独立機関 設置へ超党派議連が発足:朝日新聞デジタル2021年8月13日
 政府や政党から距離を置く中立的な立場から国の財政運営について提言する「独立財政機関(IFI)」をつくろうと、超党派の国会議員連盟が発足した。バラマキに走りがちな政府・与党にタガをはめる知恵の一つとして、多くの先進国が設けているが、日本にはまだないからだ。先進国で最悪と言われる国の財政状況を改善する一手になるのだろうか。
 議連の名前は「独立財政推計機関を考える超党派議員の会」。自民党林芳正*11・元文部科学相公明党の西田実仁・参院会長、立憲民主党逢坂誠二*12代表特命補佐らが共同代表発起人となり、6月に発足した。

として主張されている「独立財政機関(IFI)」について賛意を表明。「与党(自公)、最大野党(立民)」が参加する議連も発足した以上、早急に現実化すべきとしている。


新自由主義的税・財政の克服の模索(合田寛*13
(内容紹介)
 「新自由主義的税」として「消費税増税」「所得税法人税累進課税の緩和」を批判。むしろ「消費税減税」「累進課税の強化」が求められるとしている。


◆日米同盟の現段階と九条外交(小泉親司*14
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
「台湾有事」憲法9条生かした外交戦略こそ/小池書記局長、BSフジ番組に出演2021.8.7
敵基地攻撃能力「検討」表明/緊急事態で「共同計画」/日米2プラス2 南西諸島の共同基地化も2022.1.8
主張/日米2プラス2/軍事一辺倒は解決に逆行する2022.1.8


◆移民・難民問題から見た国際政治の課題(羽場久美子*15
 Q&A形式(架空問答)で書いてみます。

 ソ連、東欧の共産党体制崩壊によって多くの移民、難民が「旧ソ連、東欧」から西欧に移動したと思いますが?

 ご指摘の通りで当初、西欧は1)資本主義体制の共産体制への優位を示す物、2)東欧の安い労働力という観点からこれを歓迎しました。
 しかし、その結果「移民が失業を招いている」という右派の攻撃を助長することになります。
 「フランスのマリーヌ・ルペンやゼムール」「ハンガリーのオルバン右派政権」などはそのわかりやすい例でしょう。
 ゼムールですが

ルペン氏、決選進出に暗雲 新たな極右候補浮上―仏大統領選:時事ドットコム2021年10月03日
 来年のフランス大統領選でマクロン大統領(43)と共に決選投票に進むとみられている、極右政党「国民連合(RN)」を率いるマリーヌ・ルペン氏(53)の支持率が下落している。代わりに支持を集めているのは、ルペン氏よりもさらに極右的と評される無所属の政治評論家エリック・ゼムール氏(63)。ルペン氏より強力なマクロン氏の対抗馬になる可能性がある。
 ルペン氏は実父ジャンマリ氏(93)が土台を築いたRNの人種差別的なイメージ払拭(ふっしょく)に努め、ソフト路線に転向する「脱悪魔化」を進めてきた。今年4月の世論調査で、一時は若者の間でマクロン氏を上回る支持率を得たものの、6月に実施された広域地方自治体「地域圏」議会選でRNは惨敗した。専門家からは「軟化戦略は逆効果だった」と指摘する声が上がった。
 反イスラムで知られるゼムール氏は保守系フィガロ政治記者などを経て、テレビのコメンテーターや作家として知名度が高い。寛容な移民受け入れ政策に反対し、9月28日にはツイッターで「40年間移民を拒否してきた日本がモデルだ」と主張した。過去には人種差別的発言で物議を醸したこともある。
 経済誌シャランジュ(電子版)が9月28日に報じた世論調査によると、大統領選初回投票でマクロン氏に投票すると答えたのは約23%。ルペン氏は16%で、6月初旬の28%から大きく後退した。一方、6月上旬に出馬の意向を示唆したばかりのゼムール氏は今回急浮上し13%を獲得した。
 仏メディアは、ソフト路線への転向に失望したルペン氏支持者がゼムール氏支持に流れたと指摘している。ゼムール氏を「保守派の論客」として評価する右派の有力野党、共和党の一部支持者も取り込んでいると分析される。

という人物です。
 「ルペンのソフト路線」というのは「マヌーバー」にすぎませんが、その結果「ルペンより極右のゼムール」が注目を集めるというのは「日本での維新躍進」を連想させる「悩ましい事態」です。
 「一応、民主国のフランス」でこのような事態が生じていることには困惑を禁じ得ません。

 無知なもので「ルペン」は知っていましたが「ゼムール」については知らなかったので勉強になりました。
 しかし40年間移民を拒否してきた日本がモデルだですか。
 以前もアンネシュ・ベーリング・ブレイビク - Wikipediaが「移民政策を理由に麻生太郎をたたえていた」なんて報道がありましたし「欧州の排外主義極右にとって日本は理想郷」なんでしょうか。日本人として恥ずかしさを禁じ得ません。
 そうした意味では「ウイシュマさん死亡事件の徹底追及(当然、入管職員に対する刑事処罰もされるべきでしょう)」を改めて訴えたいところですね。あんな無法行為を放置していては「欧州の排外主義極右にとって日本は理想郷」という認識がさらに強化されてしまいます。
 なお、現在ホットな「難民問題」といえばやはり「シリア難民」だと思いますが。

 シリア難民については「トルコのエルドアン*16大統領やベラルーシのルカシェンコ大統領」が「難民ウエルカム」と呼び込んだあげく「西欧に送り込む(『送り込まれたくなければ、我々の要望に従え』と要求)」という「無茶苦茶な行為」まで発生しています。そうした「恫喝行為の先輩」はエルドアンであり「俺も同じ事をやってみよう」とルカシェンコが後に続いたとされます。
 「シリアの隣国」トルコはともかく、ベラルーシはシリアの隣国ではなく、その無茶苦茶さには呆れざるを得ません。
 とはいえ、「西欧各国」が「難民受け入れ」に「建前はともかく本音では消極的な点」をエルドアンやルカシェンコに利用された点は否定できません。
 「エルドアンらの無法」を批判した上での話ですが、「西欧各国が難民支援にもっと積極的」だったら、「エルドアンらの策略」はそもそも成立し得なかった。
 難民からすれば「エルドアンらの思惑」に関係なく「西欧に行けるのなら行きたい」ということでエルドアンらの行為「難民送り込み作戦」に乗るのは自然です。
 「西欧各国が難民支援に消極的な点」を考えれば私は「エルドアンらの行為に乗る難民」は勿論『エルドアンら』についても批判ばかりする気にはあまりなりません。『エルドアンらは難民を送り込むな、難民を恫喝の材料にするな(西欧各国)』は正論だとして、では『送り込み』がなくなればそれでいいのか。
 『送り込み作戦に乗っかるまでに追い詰められた難民』を誰がどう支援するのか。それ抜きで「送り込むな」では『シリア難民の見殺し』ではないのか。あえて言えば「送り込むな」ではなく「エルドアンやルカシェンコがどんな思惑だろうが難民に罪はない。全部引き受ける。だから連中の恫喝には屈しない(EU)」つう方向性だってあり得るわけです(勿論、現実問題として難しいでしょうが)。
 まあ「西欧と比べて全く難民を受け入れてない日本」の国民として「あまり偉そうなこともいえない」のですが。

 id:noharraが放言してる「脱北者を10万人受け入れれば北朝鮮崩壊!」つうのは寝言だと言うことを改めて実感しました(野原への嫌み)。しかし「エルドアンらのような汚いまねをやれ」とはさすがに言いませんが「コロナ問題」などで「米国に言うべきことも言わない安倍、菅、岸田ら自民党政権」には心底呆れますね。
 「やり方は『非人道的(難民を物扱い)』で明らかに間違っています」が「欧米相手に対決姿勢」のエルドアンらを「自民党も少しは見習え」とすら言いたくなります。
 今日は本当にありがとうございました。

【参考:ハンガリーのオルバン政権】

反LGBT法「一線越えた」 EU各国首脳、ハンガリー猛批判:時事ドットコム2021.6.27
 教材などで性的少数者(LGBT)に関する描写を禁じるハンガリーの新法が、欧州連合(EU)で猛批判にさらされている。人間の尊厳や平等などEUの基本理念に反すると深刻視され、24日の首脳会議では「一線を越えた」と各国から非難や怒りの声が噴出した。
 「ハンガリーはもうEUにいる資格はない」。
 オランダのルッテ首相はEU追放にまで言及。EU首脳会議でもオルバン首相に新法撤回かEU離脱を選択するよう迫った。

オルバーン・ヴィクトル - Wikipedia参照
EU加盟国の中でも移民・難民に対して最も強硬な政府指導者で知られ、「民族が混ざりすぎると問題が起こる」「移民は毒」と発言したこともある。移民・難民を貨物コンテナに収容する法案も成立させている。
・2014年に「国を成功させるのはおそらく民主主義ではない。(欧米から権威主義と批判される)シンガポール、中国、ロシアなどは(経済的?)成功者だからだ」と語り、国家による統制を重視している。
・公共事業の多くがオルバンに近い企業に発注され、発注金額の一部が与党への裏金になっていると報道されている。EUの下部組織である欧州不正対策局(OLAF)が不正を指摘したケースもあるが、検事総長が政府に任命されるハンガリー検察は捜査をほとんど行っていない。
補助金配分をめぐってEUに対して「EUが資金を出せないなら、中国に頼る」と発言しており、中国政府の人権弾圧や南シナ海での立場に抗議したEUの書簡や声明をギリシャとともに拒否もしている。

【参考:シリア難民とトルコ】

トルコ「批判するなら難民360万人送る」 EUに警告:朝日新聞デジタル2019年10月11日
 少数民族クルド人武装組織「人民防衛隊」(YPG)のシリア北部の支配地域に対し、越境攻撃に踏み切ったトルコのエルドアン大統領は10日、首都アンカラで演説し、攻撃停止を求める欧州連合(EU)を名指しして「我々の作戦を侵略と呼ぶなら、ドアを開けて360万人のシリア難民をあなたのところに送る」と警告した。
 トルコが9日にYPG攻撃を始めたことを受けて、EUの外務大臣にあたるモゲリーニ*17外交安全保障上級代表は同日、「EUはトルコの一方的な軍事行動の停止を求める」とする声明を発表。エルドアン氏の発言はこれに猛反発したものだ。
 トルコは世界で最も多くのシリア難民を受け入れており、欧州をめざすシリア難民の事実上の「防波堤」になっている。エルドアン氏はシリア難民を取引材料にして、EU側がトルコ軍のYPG攻撃を批判しないよう牽制(けんせい)する狙いだ。

欧州、シリア難民の流入阻止へ トルコと首脳会談: 日本経済新聞2020年3月10日
 EUのミシェル*18大統領とフォンデアライエン*19欧州委員長は、トルコのエルドアン大統領との会談で、双方が2016年にまとめた合意に基づき、難民の渡欧を抑えるよう求めた。ブリュッセルでの会談後の記者会見でフォンデアライエン氏は、トルコが合意を守るなら「約束を前に進める」と述べた。
 合意の一部である同国への60億ユーロ(約7千億円)の資金援助のうち、未払い分を支払う考えを表明した。トルコとの今後の協議で、EUは外相にあたるボレル*20外交安全保障上級代表が担当する見通しだ。
 エルドアン氏はEU首脳との会談に先立ち、北大西洋条約機構NATO)のストルテンベルグ*21事務総長と会った。会談後の共同記者会見でエルドアン氏は、トルコがシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)と戦って犠牲者を出しながら多数のシリア難民を受け入れている唯一のNATO加盟国だと強調して「全加盟国の具体的な支援を期待する」と述べた。

【参考:シリア難民とベラルーシ

ベラルーシ、難民放出でEUに報復 陸路リトアニアへ - 産経ニュース2021.7.9
 リトアニア(人口約270万人)に向けて中東などからの移民・難民を意図的に放出しているとして、EUがベラルーシを非難している。ベラルーシのルカシェンコ政権は5月、反体制派ジャーナリストの拘束を目的にアイルランド旅客機を強制着陸させ、EUから制裁を発動された。難民らを事実上の武器にしてEUに報復している形だ。
 ベラルーシから陸路でリトアニアに入る不法移民・難民は6月以降に急増。
 リトアニアのナウセーダ大統領は「故意に政治的道具として移民らを送っている」とルカシェンコ政権を非難。EUのミシェル大統領も「ベラルーシリトアニアを含むEUを試し、圧力をかける目的で不法移民を利用しているのは明白だ」と述べ、リトアニアを支援する意向を示した。
 リトアニア当局によれば、イラクやシリア、トルコといった国々からの移民・難民が目立つ。ベラルーシの「旅行会社」が首都ミンスクへの航空便を斡旋するなど、各国から移民・難民を意図的に呼び込んでいるという。

 まあ、「素人の思いつき」で書いていますが、例のリトアニアの「台湾接近」の背景の一つはこれでは無いか。
 ベラルーシは「ロシア・プーチン政権と近い関係」にあり「プーチン政権は中国・習近平政権と近い関係にある」わけです。
 ベラルーシに対抗するためには「ロシアと対抗する必要がある」→「ロシアと対抗するには中国と」→「台湾への接近」ではないか。

対ベラルーシ、EUが難民・移民問題で「包囲網」 高まる緊張:朝日新聞デジタル2021年11月16日
 欧州連合EU)は15日、ベラルーシが中東などから移民・難民を送り込んでいるとされる問題について、外相理事会で協議を始めた。ルカシェンコ政権への追加制裁だけでなく、移民・難民の出身国や経由地の政府も巻き込んだ「包囲網」を作る考えだ。ベラルーシは「国の安全が脅かされている」と反発しており、軍事的緊張も高まっている。
 ベラルーシポーランドの国境では8日に激しい衝突があった後も、集まった移民や難民と、越境を阻止しようとするポーランド治安部隊とのにらみ合いが鉄条網やフェンス越しに続いている。

「EU・ベラルーシ国境 移民・難民 新たな危機」(時論公論) | 時論公論 | 解説アーカイブス | NHK 解説委員室2021年11月29日 (月)
 EUは、ルカシェンコ政権が「意図的に移民や難民を集め」、EUに圧力をかけるため、「人間を道具として使用した」のではないかと批判しています。
ベラルーシでは、去年8月に行われた大統領選挙の不正疑惑をめぐって大規模な抗議行動が起き、ルカシェンコ大統領はEUをはじめ国際社会から厳しい批判を受けました。
・さらにことし5月には、ルカシェンコ政権が反体制派のジャーナリストの乗った航空機を強制着陸させて身柄を拘束し、「国家によるハイジャック」と非難され、EUから追加制裁を受けることになりました。
・EUは、ルカシェンコ政権がこうしたEUの制裁に対抗するため、移民たちを利用したのではないかと疑念を強めています。
【対立深まるEUとベラルーシ
ポーランドのモラウィエツキ*22首相は、ルカシェンコ政権の行為について、EUを不安定化させるための「国家によるテロだ」と非難しました。
・またEUのフォンデアライエン委員長も、「EUに対するハイブリッド攻撃だ」と非難しました。
・ハイブリッド攻撃というのは、2014年のウクライナ危機で、ロシアがクリミアを併合した際にとった作戦として注目された言葉です。
・軍による武力行使以外の手段を組み合わせた攻撃のことで、EUは今回ベラルーシが移民たちを使って嫌がらせを行い、そうした手段をとっていると非難しているわけです。
・これに対してルカシェンコ大統領は、「意図的ではない」と否定して見せたものの、移民たちの移動や越境を容認していることは隠していません。
・そのうえでEU側に人道的な見地から受け入れを求めています。
・またベラルーシの後ろ盾となってきたロシアのプーチン大統領は、「問題の原因は(ボーガス注:難民を受け入れない)欧米側にある。ベラルーシへの制裁は逆効果だ」としてベラルーシの立場を擁護する姿勢を示しました。
・EUは、ルカシェンコ大統領を人道問題でこれまで再三にわたって非難してきました。
・しかし今回は、そのルカシェンコ大統領から、移民や難民を受け入れないことが非人道的だと非難される皮肉な状況となっています。
・双方が“人道”を主張して相手を非難するなか、厳しい環境に置かれた移民たちが体調を崩し、さらに命が奪われかねない事態となっています。
【終わりに】
ベラルーシに渡ってきた移民や難民の人たちは、本国の財産を処分したり、厳しい道のりを乗り越えたりしてヨーロッパにたどりつこうとしてきました。
・EUとベラルーシ双方がともに人道を主張するのであれば、これ以上犠牲者が出ないよう、まずは人命と安全を第一に、協力して人道的な対応をとり、緊張を緩和していくべきでしょう。

 話が脱線しますけど、拉致被害者家族会には「エルドアンやルカシェンコのやってること」をどう思うか聞きたくなりますね。
 「拉致被害者を帰さない北朝鮮は酷い」て、確かにそうですけど、「エルドアンやルカシェンコのやってること」考えたら「北朝鮮のやってることは取り立てて酷くない」。まあ、北朝鮮を免罪したいわけではなくて「世の中、ろくでもない奴ばかりだ」つう話ですけど。
 で「北朝鮮拉致被害者を返せ」で帰ってくるならいいけど、そううまく行かないわけですからね。バーター取引しかねえだろと。
 「エルドアンやルカシェンコ」も、ぶっちゃけ「難民を政治的道具扱いしてEUを恫喝する」とは「やってることはクズ」だと思いますけど、どう見ても「やめろ」といって辞めるタマじゃないですからねえ。これも「EUがバーター取引で適当に片付けるしかないんだろうなあ」感はあります。トルコ(ベラルーシ)のエルドアン(ルカシェンコ)の反対派で政権崩壊とか起これば話は別ですけど。
 しかし360万人のシリア難民をあなたのところに送るには、中ソ対立をネタにしたスターリンジョークで

https://twitter.com/JosephStalinbot/status/1459221510573670400
 中ソ開戦!ソ連軍は初日だけで一千万人を捕虜にした。二日目にはなんと五千万人。
 翌日、中国から最後通牒を受け取った。
「投降せよ。さもなくば次は三億人の捕虜をおくりつけてやる」

つうのがあったのを思い出しました。

*1:著書『週労働35時間への挑戦:戦後ドイツ労働時間短縮のたたかい』(1992年、学習の友社)、『人間らしく働くルール:ヨーロッパの挑戦』(2001年、学習の友社)、『あなたは何時間働きますか?。:ドイツの働き方改革と選択労働時間』(2018年、本の泉社)、『増補改訂版・企業別組合は日本の「トロイの木馬」』(2019年、本の泉社)

*2:メルケル内閣厚労相財務相を経て首相

*3:京都大学名誉教授。京都橘大学教授。自治体問題研究所理事長。著書『日本資本主義と農村開発』(1989年、法律文化社)、『一人ひとりが輝く地域再生』(2009年、新日本出版社)、『道州制で日本の未来はひらけるか(増補版)』(2010年、自治体研究社)、『震災からの地域再生』(2012年、新日本出版社)、『「自治体消滅」論を超えて』(2014年、自治体研究社)、『公共サービスの産業化と地方自治』(2019年、自治体研究社)、『地域づくりの経済学入門(増補改訂版)』(2020年、自治体研究社)など

*4:東京大学名誉教授。著書『イギリス社会政策史』(1986年、東京大学出版会)、『男女共同参画社会をつくる』(2002年、NHKブックス)、『現代日本の生活保障システム』(2007年、岩波書店)、『いまこそ考えたい生活保障のしくみ』(2010年、岩波ブックレット)、『生活保障のガバナンス』(2014年、有斐閣)、『企業中心社会を超えて』(2020年、岩波現代文庫)など

*5:仏教大学教授。著書『現代福祉社会論』(2005年、高菅出版)など

*6:東京工科大学名誉教授。著書『日本海運業の展開と企業集団』(1991年、文眞堂

*7:著書『「新自由主義」とは何か』(2006年、新日本出版社)、『変革の時代、その経済的基礎』(2010年、光陽出版社)、『「国際競争力」とは何か』(2011年、かもがわ出版)、『大震災後の日本経済、何をなすべきか』(2011年、学習の友社)、『「アベノミクス」の陥穽』(2013年、かもがわ出版)、『アベノミクスと日本資本主義』(2014年、新日本出版社)、『アベノミクスの終焉、ピケティの反乱、マルクスの逆襲』(2015年、かもがわ出版)、『「一億総活躍社会」とはなにか』(2016年、かもがわ出版)、『「人口減少社会」とは何か:人口問題を考える12章』(2017年、学習の友社)、『AIと資本主義:マルクス経済学ではこう考える』(2019年、本の泉社)、『コロナ・パンデミックと日本資本主義』(2020年、学習の友社)など

*8:駒澤大学名誉教授。著書『アメリ連結会計生成史論』(2002年、日本経済評論社)、『株式会社会計の基本構造』(2014年、中央経済社)など

*9:著書『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』(2008年、世界思想社)、『脱原発再生可能エネルギー中心の社会へ』(2011年、あけび書房)、『市民・地域主導の再生可能エネルギー普及戦略』(2013年、かもがわ出版)、『再生可能エネルギー100%時代の到来』(2016年、あけび書房)など

*10:大阪経済大学名誉教授。著書『関西、その活力の源をさぐる:産業集積と起業家精神』(編著、2000年、法律文化社

*11:役職は8月当時。現在は岸田内閣外相

*12:役職は8月当時。現在は立憲民主党代表代行

*13:著書『大増税時代:消費税率二ケタ化へのシナリオ』(2004年、大月書店)、『格差社会と大増税』(2011年、学習の友社)、『タックスヘイブンに迫る』(2014年、新日本出版社)、『これでわかるタックスヘイブン』(2016年、合同出版)、『パナマ文書とオフショア・タックスヘイブン』(2016年、日本機関紙出版センター)、『パンデミックと財政の大転換』(2021年、新日本出版社

*14:日本共産党基地対策委員会責任者。著書『防衛問題の「常識」を斬る』(1987年、新日本ブックレット)、『核軍事同盟と自衛隊』(1988年、新日本新書)、『日米軍事同盟史研究』(2002年、新日本出版社)、『今日の「日米同盟」を問う』(2019年、学習の友社)

*15:青山学院大学教授。著書『ハンガリー革命史研究』(1989年、勁草書房)、『統合ヨーロッパの民族問題』(1994年、講談社現代新書)、『拡大するヨーロッパ 中欧の模索』(1998年、岩波書店)、『グローバリゼーションと欧州拡大』(2002年、御茶ノ水書房)、『グローバル時代のアジア地域統合』(2012年、岩波ブックレット)、『拡大ヨーロッパの挑戦(増補版)』(2014年、中公新書)、『ヨーロッパの分断と統合』(2016年、中央公論新社)など

*16:イスタンブル市長、首相を経て大統領

*17:イタリア外相、EU外交安全保障上級代表を歴任

*18:ベルギー首相などを経て現在、EU大統領

*19:ドイツ厚労相、国防相などを経て、現在、欧州委員長

*20:スペイン環境相、外相を経て、現在、EU外交安全保障上級代表

*21:ノルウェー首相などを経て現在、NATO事務総長

*22:財務相などを経て首相