リベラル21 中国はロシアのウクライナ侵攻を予期できなかった(阿部治平)
確かに「ロシアとウクライナは話し合いで解決を(侵攻前の中国)」という言動を考えれば予想はしてなかったでしょう。
とはいえおそらくほとんどの国が侵攻を予想してなかったわけです。わかりやすい例は侵攻直前にマクロンが、プーチンと首脳会談したフランスです。さすがに会談直後に侵攻してマクロンの面子を潰すとは思ってなかったらしく、フランスはロシアを激しく批判しています。
バイデンにしても「ロシアの侵攻が間近」云々は「牽制発言」であり確たる根拠はおそらくなかったでしょう。
従って「中国が予想できなかったこと」は阿部のように「大騒ぎすること」でもない。
しかし、阿部が「中国がウクライナ侵攻を予想してなかったこと」を「中国の台湾侵攻の可能性は低い」とは「理解しないらしいこと」には呆れます。
「中国とロシア」「台湾とウクライナ」は勿論違います。
ソ連崩壊後、工業力ががた落ちし、未だに回復できず「石油産業」「武器販売」しか事実上売りがないロシアと違い、中国には「ファーウェイ(スマホ)」「ハイアール(家電)」「レノボ(PC)」などがあり、その経済力はロシアより上です。
また「国連加盟国ウクライナ」と違い「台湾は国連加盟してない」。
つまり「あえて言えば」侵攻するにおいて中国の方がロシアより有利な条件ではある。
とはいえ、「国際的非難や経済制裁という不利益を考えれば、ロシアはウクライナ侵攻をしないだろう」と考える中国が「国際的非難や経済制裁という不利益を無視して台湾侵攻をしない」でしょう。
中国は「軍事的牽制はしても台湾が独立を明言しない限り侵攻しない」という立場だからこそ「ウクライナがNATO加盟を明言すればともかく、そこまで行かない段階では軍事的牽制はあってもロシアは侵攻はしない」と考えたのであると俺は見ます。
なぜか阿部はそうは考えないようで呆れますが。
読み誤った習氏、ロシア侵攻でまさかの不意打ち - WSJ
ロシア暴走、中国の誤算 「全面侵攻ない」と油断: 日本経済新聞
基本的に「ウクライナ全面侵攻」を予想していた国はほとんどないでしょう。いずれにせよロシアが1)中国にウクライナ侵攻を秘密にしていたこと、2)そのこともあって中国が厳しいロシア批判は避けてはいるものの、さすがに擁護はせず、ロシアから距離を置いていることで中露の関係は「極めてドライな関係」で一部のアンチ中露が言うような「同盟、陣営」ではないことがうかがえます。
米、中国にロシアの説得頼んでいた 侵攻3カ月前から、中国は反論 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル
中国、ロシアと同じ穴のむじなか 侵略を説得するよう米国から渡された情報をロシアに横流しと米報道:中日スポーツ・東京中日スポーツ
中国に善意に理解すれば「米国は我が国(中国)にこうした情報を渡した。貴国(ロシア)と我が国の長年の友好関係を考えれば、『この程度の情報なら仮にロシアに情報が渡っても構わない』と米国は考えていると思う。つまり米国は準備万端、貴国との全面対決も辞さないだろう。ウクライナ侵攻をやめた方がいい」とプーチンに言う一方で、ロシアとの友好も考慮し「説得工作には応じられない」といったのかもしれない(そして米国もその程度のことしか本心では期待していなかったかもしれない)。まあ少なくとも中国が「激しい非難」はしないものの、ロシアを全面擁護もしてないことは指摘しておきます。
ロシアの軍事侵攻 日本政府 中国の覇権主義的行動の助長に懸念 | 中国 | NHKニュース
ウクライナ侵攻、中国に誤ったメッセージの恐れ…日本は「台湾」「尖閣」に懸念 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン
「中国の軍事行動の危険ガー」と本気で言ってるのなら正気の沙汰ではない。「台湾とウクライナは違う」とはいえロシアへの国際的非難から中国はむしろ「蔡英文の独立宣言強行など大義名分がないと侵攻などできない」と思ったことでしょう。
ウクライナ危機でも「中国の台湾侵攻はない」、台湾世論の6割超す [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル
「ウクライナと台湾」「ロシアと中国」「プーチンと習近平」は違いますからね。
何も「侵攻」しなくても「断交ドミノ」「経済交流の取りやめ」など「政治的牽制」としてやれることは中国にはいくらでもあります。
大体「侵攻」したら「台湾住民のうち、もともと中国に敵対的な層」だけでなく「中国との融和を訴える層」まで敵に回り何の利益もない。
外交部、台湾当局のウクライナ問題を借りた宣伝は「賢明でない行為」--人民網日本語版--人民日報
中国側が反発するように「ウクライナ問題」がどう決着しようと、「台湾が独立宣言しない限り」中国の台湾侵攻はないでしょう。
というか「プーチンのウクライナ侵攻」こそが「常識を逸脱している」のであり、中国に限らずあの行為を「まねしよう」と思う国はまずないでしょう。