今日のロシアニュース(2022年3/6日分)

【詳しく】プーチン大統領の思惑は? 石川解説委員が分析 | ウクライナ情勢 | NHKニュース

 私は1月27日の時論公論でそして「ロシアとつながりの深い東部でもロシア軍は激しい抵抗を受け、欧米も厳しい経済制裁を取るでしょう。侵攻はロシアの国際的な孤立を深め、アフガニスタンのような長期的な泥沼の戦争になる可能性もあるのです」とも指摘しました。
 ただ私はそれだからこそプーチン大統領は大きなリスクを冒してまで本格侵攻はしないと思い、また願っていました。
 侵攻したあとの状況は当時私が指摘したようなものとなっているのですが、逆にプーチン大統領はどのような情勢分析に基づいて軍事侵攻を決定したのか、核大国の指導者が客観的な情勢判断をできなくなっているのではないか、今は恐ろしくなっています。
プーチン大統領の思惑はどう分析?
 当初のプーチン大統領のねらいでは、早期決着を考えていたのだと思います。
 今頃は、すでに首都キエフをおさえて、ウクライナのゼレンスキー大統領など閣僚をモスクワのクレムリンに呼び寄せ、ロシアに有利な条件で交渉を合意させようと考えていた可能性があります。
 私は、1968年の「プラハの春」を、当時のソビエトが力でつぶしたことが頭に浮かびました。今回も同じようなことを考えていたのかも知れません。
武力介入で他国の民主化を潰す手法です。
 そういう意味では、プーチン大統領の当初のねらい、思惑は外れた可能性が高いとみられます。
 その要因の一つに、ウクライナ国民の予想外の抵抗というのが考えられます。プーチン大統領は、ウクライナを“兄弟国家”と呼び、去年7月に発表した論文の中でもロシアとウクライナ人は同じ民族ということを述べています。
 ウクライナ側もそれに近い感覚だと思っていたのかもしれません。特に、東部の地域では、2014年の時にクリミアを併合した時のように、歓迎されるのではないかとさえ思っていたのかも知れません。
 一方、ウクライナはそうした“兄弟意識”はなくなったとみられます。ソビエトが崩壊してこの30年間で、当初はあいまいだったウクライナ国民という意識がつくりあげられたということです。
 皮肉なことに、ロシアがウクライナへその影響力を及ぼそうとすればするほど、ウクライナの人たちのそうした意識をより強固にしているのかもしれません。
 またプーチン大統領はゼレンスキー大統領をコメディアン出身の政治経験のない大統領と見くびったのかもしれません。しかしゼレンスキー大統領はまさにコメディアン出身のコミュニケート能力*1を生かして国際社会と国民の支持を集めることに成功しました。彼の支持率は今や90%を超えています。
プーチン大統領が恐れることは?
 長期化ですね。
 アフガンスタンの侵攻では、旧ソビエトは激しい抵抗にあって戦況は泥沼化しました。
 戦死者が増え続ける中、国民は戦争の大義名分に疑問を抱き始め、かさむ戦費は国家財政を圧迫し、ソビエト崩壊の一つの原因となったと言われています。今回も、ウクライナの激しい抵抗や国際社会の徹底した制裁が長期化すれば、プーチン政権体制そのものが危うくなる可能性があります。ロシア国民の間で、プーチンを支持していた人々の中にも今回の戦争には「なぜ兄弟であるウクライナと戦争するの」という素朴な疑問が広がっています。もしかしたらプーチン体制の終わりの始まりとなるかもしれません。
 懸念されるのは状況がエスカレートすることです。たとえば第一次世界大戦でも、きっかけは1914年6月のサラエボ事件で、そこからエスカレートして世界大戦になってしまいました。
 当初は誰もこんな大戦争になるとは思っていなかったはずです。
 ウクライナ侵攻後、プーチン大統領が「核のカード」をちらつかせていますが、これも非常に危険なことです。
エスカレートさせないためには?
 プーチン大統領を思いとどまらせるためには彼との対話の窓口を閉ざしてはなりません。ブレーキ役、まとめ役、仲裁役が必要です。
 2008年にロシアがジョージアに軍事侵攻した際には、当時のフランスのサルコジ大統領が、2014年のクリミア侵攻の際には、当時のドイツのメルケル首相がそうした役割を担いました。
 今回は今のところ、そうしたEUのリーダーが見えてこないことも心配です。
 アメリカとロシアの間で何かしらの交渉のチャンネルがあるといいのですが。

 赤字部分には仰天ですね。1968年当時と今では政治情勢が全然違う。クリミアとウクライナ全土も事情は違う。プーチンがそんな「甘い考え」とはにわかには信じられない話です。なお、青字部分が重要ですね。国際社会やウクライナの目標は「ウクライナからのロシア軍の撤退」であって「プーチン体制の打倒」ではありません。「ロシア軍の撤退」などで「プーチン体制が仮に崩壊した」としても。
 青字部分のような指摘としては

日本もプーチン大統領顔負けの「力の信奉者」:ロシアのウクライナ侵攻をめぐる世論について(1): 白頭の革命精神な日記
 ロシアの侵攻動機を踏まえて対処しない限り、結局は殺るか殺られるかの二択しかなくなってしまいます。これでは解決するものも解決しなくなってしまいます。

を紹介しておきます。
 なお、日本もプーチン大統領顔負けの「力の信奉者」:ロシアのウクライナ侵攻をめぐる世論について(1): 白頭の革命精神な日記が批判する「単純な勧善懲悪」が横行してるのが「北朝鮮拉致」でしょう。
 バーター取引論は「単純な勧善懲悪」の観点から家族会、救う会によって簡単に否定されます。

*1:プーチンの無法さを考えるとそれ以前の話だとは思います。