映画「ひまわり」のひまわり畑はウクライナでの撮影

しんぶん赤旗きょうの潮流 2022年3月19日(土)2022.3.19
 どこまでも続くひまわり畑。哀愁ただよう(ボーガス注:ヘンリー・マンシーニの)メロディー。戦争によって引き裂かれた愛の悲哀を描いた半世紀前の映画がふたたび注目されています
ソフィア・ローレン*1マルチェロ・マストロヤンニ*2が競演した「ひまわり」。第2次大戦下で結ばれたイタリアの男女。しかし夫はすぐに過酷なソ連の東部戦線へ。終戦後も戻らぬ夫を追う妻。冒頭シーンは、ふたりの運命の象徴のように
ウクライナの日本大使館によると、このひまわり畑は同国南部のヘルソン州で撮られたものだと。現在ロシア軍に掌握されたといわれる州です。
ウクライナの国花でもあるひまわりはいま、平和と抵抗のシンボルにも。侵攻後、BBCが流したある映像が拡散されました。ヘルソン州でロシア兵に「何しに来たの」とつめよるウクライナの女性。
「ひまわりの種を持ちなさい。あなたがここで死んだとき、ひまわりが育つように」
▼じつは映画にもこんな場面があります。夫を捜し、ひまわり畑の中を歩く妻に地元の人が語りかけます。
「この下にはたくさんの兵士が埋まっている。そして無数のロシアの農民、老人や女性、子ども」

在ウクライナ日本国大使館:エピソード集(日本語)
◆「ひまわり」
 第2次世界大戦時に引き裂かれた悲運の愛を描いたこの映画をご覧になった方は多いのではないでしょうか? 実はこの広大なひまわり畑は,ウクライナで撮影されたものなのです。ソフィア・ローレン扮するジョバンナが,行方不明となった夫マルチェロ・マストロヤンニ扮するアントニオを一面に咲き誇るひまわり畑の中で必死に探している姿は,みなさんの記憶にも鮮明に残っていることでしょう。
 撮影現場はキエフから南へ500kmほど行ったヘルソン州と言われています。今でも7月下旬頃にキエフから南下して郊外へ行くと,一面に咲きわたるひまわりを見ることができます。
 但し,面白いことに,日本で販売されている「ひまわり」のビデオの説明書にわざわざこう書いてあるのです。
 「(映画に出てくるひまわり畑は)ウクライナと信じておられる方には申し訳ないが,ひまわり畑はモスクワのシェレメチェボ国際空港の近くだった。」
 この映画が撮影された1960~70年代及びビデオが販売された時代には,ウクライナ旧ソ連の一共和国であり,外国人はクレムリンから80km以上離れてはいけないと言う規則があったため,多くの観光客がウクライナに押しかけるのを当局が恐れたせいかもしれません。
 この映画がウクライナで撮影された証拠に,ひまわり畑の中でソフィア・ローレンが老婆に夫の消息を尋ねるシーンがあるのですが,その老婆はウクライナ語で答えています。

News Up 「戦争とは何か」 ウクライナ侵攻で再注目の映画「ひまわり」 | ウクライナ情勢 | NHKニュース2022.3.16
 地平線のかなたまで続く一面のひまわり畑に、流れ出す哀愁のメロディ。
 52年前公開のイタリア映画「ひまわり」の冒頭のシーンです。戦争で引き裂かれた男女の悲しみを描いた名作として映画史に刻まれています。
 「ひまわり畑の下にはたくさんの兵士や農民が埋まっている」
 ロシアによるウクライナ侵攻の中で「戦争とは何か」を伝える映画として再び注目され、今静かに共感が広がっています。
 映画の公開は1970年。
 当時日本でも大ヒットとなり、何度も劇場公開され映画ファンの心をつかんできました。
◆「過去の物語」が「今の物語」に
 映画の公開から52年がたちましたが、ウクライナ情勢を受けて今月から全国の劇場などで相次いで再上映が決まっています。
 きっかけは映画配給会社の池田祐里枝さん(34)でした。
 映画「ひまわり」のあるシーンを思い出して「今こそ上映すべきではないか」と思い立ったといいます。
 思い出したのは、夫を探しにひとり当時のソ連に向かったジョバンナが広大なひまわり畑の中を歩くシーンです。
 池田さんによりますと、実はこのひまわり畑の撮影は現在のウクライナの首都キエフから南へ500kmほど離れたヘルソン州で行われたということです。
 ヘルソン州は現在、ロシア軍の侵攻を受けていて、市民の犠牲も伝えられている地域です。

「ひまわり」上映広がる ウクライナで撮影の名作「反戦訴える力」 | 毎日新聞2022.3.19
 ロシアによる侵攻が続くウクライナでかつて撮影された映画「ひまわり」(1970年)の「50周年HDレストア版」を上映する動きが全国各地に広まっている。戦争によって離れ離れになった夫婦の悲しく切ない愛を描いた、映画史に残る名作だ。19日から上映しているシアターセブン(大阪市淀川区)の番組編成担当、小坂誠さん(34)は「ひまわり畑の印象的なビジュアルだけでなく、反戦を訴える力のある作品。何としても上映したいと思った」と話す。
 第二次世界大戦中、イタリア・ナポリの娘ジョバンナ(ソフィア・ローレン)は陽気な兵士アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)と恋に落ち結婚する。幸せな新婚生活はあっという間に終わり、アントニオは「地獄」と呼ばれるソ連戦線へ送られる。戦争が終わっても戻らない夫を捜すため、ジョバンナはソ連を目指す。イタリア軍が戦っていたウクライナに向かったジョバンナ。見渡す限りのひまわり畑の果てに彼女が見たのは、地元の女性と結婚し子供にも恵まれたアントニオの幸せそうな姿だった。
 「50周年HDレストア版」は2020年に最新のデジタル技術で映像や音を修復されたもの。ロシアのウクライナ侵攻が始まった後、全国のミニシアターなどで上映会が次々と企画され、収益の一部をウクライナ人道支援のために寄付するなどの動きもある。
 作中に登場する広大なひまわり畑はウクライナの首都キエフの南、約500キロのへルソン州で撮影された。小坂さんは「あのひまわり畑がウクライナだったとは知らず驚いた。ウクライナで起きていることを今すぐ止めることはできなくても、作品を見た一人一人が『戦争は嫌だ』と感じ、平和を考えるきっかけになれば」と話した。

 ちなみに映画の公開された1970年には以下のような出来事がありました。

1970年 - Wikipedia1970年の日本 - Wikipedia
◆3月31日
 よど号ハイジャック事件
◆4月10日
 ビートルズ解散
◆11月6日
 イタリア、中国と国交樹立
◆11月25日
 三島事件

*1:1934年生まれ。1960年の『ふたりの女』でアカデミー主演女優賞を受賞など数々の映画賞を受賞(ソフィア・ローレン - Wikipedia参照)

*2:1924~1996年。『ジェラシー』(1970年)、『黒い瞳』(1988年)でカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞など数々の映画賞を受賞(マルチェロ・マストロヤンニ - Wikipedia参照)