今日の産経ニュース(2022年4/21~23日分)

【編集者のおすすめ】『至誠の日本インテリジェンス 世界が称賛した帝国陸軍の奇跡』成果をあげた真心の諜報 - 産経ニュース

 ヤルタ密約をキャッチした小野寺信*1(まこと)少将

 仮にそれが事実だとしても「ソ連参戦後の降伏」にしかならなかった以上、大して評価できる話でもない。

 2万人のユダヤ人を救い、ソ連の侵攻から北海道を守った樋口季一郎*2中将。

 「以前も別記事で書きましたが」2万人云々は「樋口の自慢話」だけが根拠であり、実際にはそんなに多くないというのが通説です。

 小野寺少将が送ったソ連参戦情報が樋口中将に伝わり、ソ連の北海道侵攻を阻止した可能性に言及しています

 そもそもスターリンには最初から北海道侵攻の意思などなかったでしょう。「可能性」というのも恐らく産経らしい「こじつけと曲解」でしょう。


11月3日を「明治の日」に改称へ 超党派議連が始動 - 産経ニュース
明石元二郎の顕彰碑が生誕の地・福岡で除幕 - 産経ニュース
 こうした右翼的な動きにはげんなりします。


仏大統領選あす投票 マクロン氏リード広げる - 産経ニュース
 ルペンの勝利はさすがにないようでひとまずほっとしました。


敵基地攻撃能力を改称「反撃能力」に 5年以内に防衛費2% 自民党が提言案了承 - 産経ニュース
 専守防衛も「反撃」なので詐欺的な名称変更です。これでは護憲派に批判される「先制攻撃」という意味合いが全く分かりません。全く「戦争でなく特殊軍事作戦」というプーチン並みの恥さらしです。


【産経抄】4月23日 - 産経ニュース

 共産党志位和夫委員長はツイッターで、半世紀以上前の1970年の中曽根康弘*3防衛庁長官の答弁「非攻撃性の装備でなければならない。憲法の命ずるところである」を引っ張り出し強調した。
「(ボーガス注:歴代内閣も踏襲する)『大勲位』の答弁を根底から覆すもの」
▼現在の叙勲制度を認めず、辞退すると表明している共産党が、大勲位の権威を持ち出すとはご都合主義の極みであろう。

 「大勲位(中曽根)の佐藤内閣防衛庁長官時代の答弁(勿論、歴代政権もそれを踏襲)にも反しても構わない」あるいは「中曽根答弁に反しない」といえない辺りが産経らしいくだらなさです。
 なお、志位氏が中曽根を「大勲位」と呼んでるのは、「田中角栄*4=今太閤」のようにあだ名として普及している*5からに過ぎず、「中曽根の勲章」を評価してるわけではないので産経の物言いはくだらない言いがかりです。


【主張】自民の安保提言 「反撃能力」は当たり前だ - 産経ニュース
 専守防衛(例:ウクライナのロシアへの抵抗)なら「反撃能力」に誰も反対しません。
 実際は「過剰防衛」、あるいは「そもそも防衛の名に値しない違法な攻撃」の疑いがあるから「敵基地攻撃能力(自民の言う反撃能力)」に反対している。
 それにしても「反撃能力」などという名前でごまかそうとは卑劣にもほどがあります。


<独自>デジタル庁事務方トップの石倉氏退任へ - 産経ニュース

 石倉氏*6は経営戦略やグローバル人材が専門の一橋大名誉教授。

ということで「デジタルの専門家とは言いがたい」という批判はありましたが、それにしても早い退任です。


【正論】夫婦別姓=親子別姓のジレンマ 歴史家・法学博士 秦郁彦 - 産経ニュース
 内容も酷い代物ですがそれ以前に

秦郁彦 - Wikipedia
◆『盧溝橋事件の研究』(1996年、東京大学出版会
◆『慰安婦と戦場の性』(1999年、新潮選書)
◆『南京事件(増補版)』(2007年、中公新書)
◆『慰安婦問題の決算』(2016年、PHP研究所

という秦は日本近代史研究者であって民法学者ではない。「別姓問題について意見を求める」べき人間ではない。
 「南京事件研究」笠原十九司*7や「慰安婦研究」吉見義明氏*8に意見を求めるようなもんです(なお、二人とも『正論大賞受賞のウヨ』秦の慰安婦南京事件の『研究』については批判的)。


【阿比留瑠比の極言御免】安倍氏論考、世界が注目の訳 - 産経ニュース
 有料記事なので全く読めませんが「元首相にして自民党派閥ボス」なので「注目はされる」でしょう。例えば「ロシア大統領プーチン」の言動も注目されてる。
 しかし注目は「高評価」とはイコールではない。阿比留ですら「評価」と書けない辺り「評価されてはいないのだろう」と予想できます。


【正論モーニング】「日本有事」の現実味は? ウクライナ危機、 中国による台湾侵攻にどう向き合う - 産経ニュース
 勿論「現実味」は全くない。「国連総会ロシア非難決議やロシアへの経済制裁」を見てどこの国が侵攻なんかやりたがるんだという話です。
 せいぜい「蔡英文政権が独立宣言した場合の中国の侵攻」ぐらいでしょう。勿論「独立宣言したら侵攻もあり得る(ただし現状維持なら侵攻しない)」で「独立宣言封じに徹している」中国政府に常識があれば、台湾が独立宣言もしてないのに侵攻することはあり得ません。そしてその程度の常識はさすがにあるでしょう。
 日本侵攻の可能性は勿論「台湾侵攻」以上にない。せいぜい「尖閣での偶発的武力衝突」でしょうがそれすらあるかどうか。

*1:ラトビア公使館附武官、スウェーデン公使館附武官など歴任

*2:第3師団参謀長、ハルピン特務機関長、参謀本部第二部長、第9師団長、北部軍管区司令官など歴任

*3:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*4:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)などを経て首相

*5:あだ名となったのは生前に大勲位を受賞した数少ない政治家だから

*6:著書『戦略シフト』(2009年、東洋経済新報社)、『グローバルキャリア』(2011年、東洋経済新報社)、『世界で活躍する人の小さな習慣』(2019年、日経ビジネス人文庫)など

*7:都留文科大学名誉教授。著書『アジアの中の日本軍』(1994年、大月書店)、『日中全面戦争と海軍:パナイ号事件の真相』(1997年、青木書店)、『南京事件』(1997年、岩波新書)、『南京事件三光作戦』(1999年、大月書店)、『南京事件と日本人』(2002年、柏書房)、『南京難民区の百日:虐殺を見た外国人』(2005年、岩波現代文庫)、『南京事件論争史』(2007年、平凡社新書→増補版、2018年、平凡社ライブラリー)、『「百人斬り競争」と南京事件』(2008年、大月書店)、『日本軍の治安戦』(2010年、岩波書店)、『第一次世界大戦期の中国民族運動』(2014年、汲古書院)、『海軍の日中戦争』(2015年、平凡社)、『日中戦争全史(上)(下)』(2017年、高文研)、『憲法九条と幣原喜重郎日本国憲法の原点の解明』(2020年、大月書店)など

*8:中央大学名誉教授。著書『草の根のファシズム』(1987年、東京大学出版会)、『従軍慰安婦』(1995年、岩波新書)、『毒ガス戦と日本軍』(2004年、岩波書店)、『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(2010年、岩波ブックレット)、『焼跡からのデモクラシー:草の根の占領期体験(上)(下)』(2014年、岩波現代全書)、『買春する帝国:日本軍「慰安婦」問題の基底』(2019年、岩波書店