常岡浩介&黒井文太郎に突っ込む(2022年4月25日分)

常岡浩介がリツイート
◆黒井文太郎
 2016〜2018年くらいにプーチンの危険性についての書籍の企画を何本か売り込んだのですけど、いずれも当時は通らなかったんですよね。当時はそういう雰囲気でした

 「一般向けではなく専門書である」「著書名は反プーチンをアピールしていない」とはいえ、今テレビでよく見る小泉悠*1が「2016~2018年」の間に『軍事大国ロシア』(2016年、作品社)、『プーチンの国家戦略』(2016年、東京堂出版)という著書(いずれも俺は未読ですが、恐らく当時から小泉はプーチンには批判的)を出してるのでそれは単に「黒井が評価されてない」だけの話でしょう。「自分への低評価」を「時代のせいにする」とは全く滑稽です。
 また、俺は読んでないので何とも評価できませんが「2016~2018年」には小泉以外にも

【刊行年順(刊行年が同じ場合は著者名順)】
木村汎*2プーチン 〔内政的考察〕』(2016年、藤原書店
◆佐藤親賢*3プーチンとG8の終焉』(2016年、岩波新書)
◆下斗米伸夫*4『宗教・地政学から読むロシア:「第三のローマ」をめざすプーチン』(2016年、日本経済新聞出版)
◆遠藤良介『プーチンロシア革命』(2018年、河出書房新社
木村汎プーチン 〔外交的考察〕』(2018年、藤原書店
◆西山美久『ロシアの愛国主義』(2018年、法政大学出版局
◆真野森作*5『ルポ・プーチンの戦争:「皇帝」はなぜウクライナ*6を狙ったのか』(2018年、筑摩選書)

などという本も出ています。これら全てが「親プーチン」ともさすがに思えないのでそういう意味でも黒井の主張は詭弁でしかない。
 最近、黒井が『プーチンの正体』(2022年、宝島社新書) を出したとは言え、これは

【「鎌倉殿の13人」便乗本:著者名順】
◆岩田慎平*7北条義時』(2021年、中公新書)
岡田清一*8『鎌倉殿と執権北条130年史』(2021年、角川ソフィア文庫)
◆川合康*9源頼朝』(2021年、ミネルヴァ日本評伝選)
◆呉座勇一*10『頼朝と義時』(2021年、講談社現代新書)
◆坂井孝一*11『鎌倉殿と執権北条氏』(2021年、NHK出版新書)
◆細川重男*12『頼朝の武士団』(2021年、朝日新書)
本郷和人*13『北条氏の時代』(2021年、文春新書)、『鎌倉殿と13人の合議制』(2022年、河出新書)
◆山本みなみ*14『史伝・北条義時』(2021年、小学館

など、「大河ドラマ放送時に関連図書が発行されるブーム」と変わらない「ウクライナ侵攻によるある種のロシアブーム」にすぎないでしょう。
 大河ドラマ便乗本に「勿論まともな本もある」一方で「学問的に怪しい内容の本がある」のと同様に黒井本も果たしてどれほど評価できるか。

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◆駒木明義*15
 竹内行夫*16回想録。
安倍総理はそんなプーチン大統領との個人的信頼関係を築いて領土問題を解決させようとしました。それが上手くいかないことは誰にでも分かっていました」「個人的信頼関係を日本の総理ほど誇った挙句に裏切られた世界の首脳を私は知りません」

 安倍をかばう気はないのですが「竹内元次官も無責任すぎねえか?」とは思います。「そんな安倍政権の外交を、外務省が支えたこと」への反省の弁は果たして書いてあるのか?。「プーチンウクライナ侵攻」で誰の目にも安倍ロシア外交の失敗が「明らかになっても黙り」でも困りますが、「明らかになってからやっと言い出す」てのも「何だかなあ(呆)」ですね。

*1:著書『現代ロシアの軍事戦略』(2021年、ちくま新書)、『ロシア点描:まちかどから見るプーチン帝国の素顔』(2022年、PHP研究所)など

*2:1936~2019年。北海道大学名誉教授。著書『プーチンとロシア人』(2020年、産経NF文庫)など

*3:著書『プーチンの思考』(2012年、岩波書店

*4:法政大学名誉教授。著書『ソビエト連邦史』(2017年、講談社学術文庫)、『新危機の20年:プーチン政治史』(2020年、朝日選書)、『日本冷戦史:1945-1956』(2021年、講談社学術文庫)など

*5:著書『ポスト・プーチン論序説:「チェチェン化」するロシア』(2021年、東洋書店新社)

*6:この場合のウクライナとは2018年当時なのでクリミアやドネツク共和国、ルガンスク共和国のこと。

*7:神奈川県愛川町郷土資料館主任学芸員

*8:東北福祉大学名誉教授。著書『北条得宗家の興亡』(2001年、新人物往来社)、『鎌倉幕府と東国』(2006年、続群書類従完成会)、『北条義時』(2019年、ミネルヴァ日本評伝選)など

*9:大阪大学教授。著書『鎌倉幕府成立史の研究』(2004年、校倉書房)、『源平の内乱と公武政権』(2009年、吉川弘文館)、『源平合戦の虚像を剥ぐ』(2010年、講談社学術文庫)、『院政期武士社会と鎌倉幕府』(2019年、吉川弘文館

*10:国際日本文化研究センター機関研究員、信州大学特任助教。著書『戦争の日本中世史』(2014年、新潮選書)、『一揆の原理』(2015年、ちくま学芸文庫)、『応仁の乱』(2016年、中公新書)、『陰謀の日本中世史』(2018年、角川新書)、『日本中世への招待』(2020年、朝日新書)、『戦国武将、虚像と実像』(2022年、角川新書)など

*11:創価大学教授。著書『曽我物語の史実と虚構』(2000年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『源実朝』(2014年、講談社選書メチエ)、『承久の乱』(2018年、中公新書)、『源氏将軍断絶:なぜ頼朝の血は三代で途絶えたか』(2020年、PHP新書)など

*12:著書『鎌倉政権得宗専制論』(2000年、吉川弘文館)、『鎌倉幕府の滅亡』(2011年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、 『執権:北条氏と鎌倉幕府』(2019年、講談社学術文庫)など

*13:東大教授。著書『謎とき平清盛』(2011年、文春新書)、『武士とはなにか:中世の王権を読み解く』(2013年、角川ソフィア文庫)、『戦いの日本史:武士の時代を読み直す』(2014年、角川選書)、『軍事の日本史:鎌倉・南北朝・室町・戦国時代のリアル』(2018年、朝日新書)、『上皇の日本史』(2018年、中公新書ラクレ)、『承久の乱』(2019年、文春新書)、『暴力と武力の日本中世史』(2020年、朝日文庫)、『「合戦」の日本史』(2022年、中公新書ラクレ)など

*14:鎌倉歴史文化交流館学芸員青山学院大学非常勤講師

*15:著書『安倍vs.プーチン:日ロ交渉はなぜ行き詰まったのか?』(2020年、筑摩選書)

*16:外務省条約局長、北米局長、総合外交政策局長、インドネシア大使、外務事務次官最高裁判事を歴任