今日のロシアニュース(2022年5月8日分)

ブラジル・ルラ元大統領のウクライナ問題発言|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ

 ブラジルのルラ元大統領は『タイム』誌とのインタビュー(5月4日にウェブ・サイト掲載)で、質問に答えてウクライナ問題に関する見解を披露しました(そのほかのテーマもありますが、ここでは省略します)。私にとって特に印象深かったのは、ゼレンスキーに対する実に鋭い、本質を突いた評価を行っていることでした。私も、日本を含めた西側諸国での手放しのゼレンスキー評価にうんざりして、このコラムでゼレンスキーが政治家の資質ゼロで、しょせんはコメディアン上がりであることを指摘*1したことがありますが、2003年-2010年にブラジル大統領を務め、優れた実績を残したルラのゼレンスキー評価の辛辣さに我が意を得たという思いです。
【ボーガス注:一部のみ引用します】
◆ルラ
 いま、ウクライナ大統領がテレビで話し、喝采を浴び、すべての(欧州)議会でスタンディング・オベーションを受けているのを時々見ることがある。しかし、彼はこの戦争にプーチンと同じだけ責任がある。戦争においては、一方だけが悪いということはないのだから。彼の振る舞いは前代未聞だ。まるで大がかりのショーみたいだ。彼は、朝、昼、晩とテレビに出ている。彼はまるで政治キャンペーンをしているかのように、イギリス議会、ドイツ議会、フランス議会、イタリア議会に出ている。しかし、彼は交渉のテーブルにいるべきだろう。
◆インタビュアー
 そんなことをゼレンスキーに言えるか。彼は戦争を望んでいなかった。戦争を仕掛けられたのだ。
◆ルラ
 彼は(ボーガス注:支持率が向上するので)戦争を必要としていたのだ。戦争を望んでいなかったのであれば、彼はもっと交渉するべきだった。プーチンに対するヘイトをあおるものばかりだ。それでは問題は解決しない。必要なのは合意を達成することだ。ところが、戦争をあおるものばかりだ。ゼレンスキーをあおるから、彼は「ケーキの上のチェリー」だと有頂天になっている。だが、我々は真剣な会話をするべきだ。
 「確かにあなたは素敵なコメディアンだ。しかし、あなたがテレビで演技するための戦争はしないことにしよう」とね。

 「ルラ」の「ゼレンスキーに対する否定的評価」を紹介し「同感だ」と語る浅井先生です(id:kojitaken氏の「ルラ評価」を聞きたいところではあります。おそらく師岡カリーマと河瀨直美は「どっちもどっち」 - kojitakenの日記同様に「ボルソナロもルラもどっちもどっち」というのでしょうが)。
 「ルラ発言」を紹介した「浅井先生の思惑」とは関係なく、これは重要な指摘だと思います。
 ブラジルは国連ロシア非難決議では棄権しました。というと「ルラが元大統領」ということで「ルラの影響による棄権」と誤解する方もいるでしょうが、現在の「ボルソナロ大統領」は「ルラの系列」ではなく「ルラとは対立する立場」です。
 つまりブラジルは「与野党(与党幹部のボルソナロ大統領、野党幹部のルラ元大統領)ともに米国のような厳しい対ロシア対応」とは距離を置いており、それは当然「国民の支持を得ている」ということです。
 なおルラは大統領返り咲きを狙って大統領選挙出馬を表明し、現在、「僅差」とはいえ、支持率トップ(ルラが41%、再選を狙う現職ボルソナロが35%)とのことです(但し、実際の選挙は2022年10月なのでしばらく先ですし、それまでに何が起こるか、その結果、支持率がどうなるかもまだ読めませんが)。
 「国民の支持を得ているからボルソナロやルラの『ウクライナ戦争での態度』には問題はない」とは言いませんが、浅井先生も批判するように「非難決議での棄権=反民主主義国」というほど単純な話ではないことは事実です。さすがに「複数政党国家」ブラジルを「反民主主義」とは呼べないでしょう。
 ルラの発言については
「ゼレンスキー氏、戦争望んだ」 ブラジル大統領選の有力候補が持論 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル2022.5.6
https://www.tokyo-np.co.jp/article/175763?rct=world2022.5.6
も紹介しておきます。

【参考:浅井氏のゼレンスキーへの低い評価(一部引用)】

ロシア・ウクライナ戦争と台湾海峡危機|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ
 私は、ゼレンスキーが真に国民・住民の生命と安全を最優先に考えて政治の進路を決める、政治家に求められる最低限の資質を備える政治家であったならば、今回の「戦争」が起こることを回避することは完全に可能だったと確信します。なぜならば、ロシア・プーチンウクライナに求めたのはロシアに敵対する存在にならないこと、具体的にはNATOに加盟しないことであり、それに尽きていたからです。
 ところがゼレンスキーはNATO加盟(=西側の一員になる)という自らの政治的主張固執し、ロシアに対して対決政策を推進するアメリカ・バイデン政権にすり寄ることで、「戦争」という事態を自ら招いてしまったのです。
 日本を含む西側「世論」は「ゼレンスキーは国民世論を代表して行動している」という前提に立って、ゼレンスキーの政策を無条件で支持していますが、その前提を証明する確固とした材料は何もありません。しかも、「戦争」が継続すればするほど、ウクライナの破壊は膨らむ一方であり、「戦争」終結後の再建事業の負担はますます重くウクライナ国民にのしかかることになるでしょう。私がゼレンスキーの政治家としての資質を疑う根本的な理由はここ(国民無視と戦争以外は眼中にないこと)にあります。
 ロシアと欧州との間に位置するウクライナ地政学的重要性については、戦略的思考に秀でたジョージ・ケナンキッシンジャーなどがつとに指摘しているところです。すなわち、ウクライナは、東西いずれの側にも立たず、中立を保つことによってのみ、国家・国民の安全ひいては繁栄を図ることができるということです。
 ところが、コメディアン出身で政治に素人であるゼレンスキーにはそうした戦略的思考・判断力が欠落しているとしか思えません。政治責任は優れて結果責任である」と喝破したのは丸山真男(日本政治思想史)です。膨大な人的・物的被害を引き起こしたロシアの軍事侵攻だけが糾弾されていますが、私は、「戦争」を招いてしまい、今日のウクライナの惨状を呼び込んでしまったゼレンスキーの政治的無能・政治責任こそが問われなければならない、と声を大にして指摘します。

 浅井氏については「ロシアにあまりにも甘すぎないか?」と思う反面、一方で「ロシアに大いに非があること」を認めた上*2ですが、果たしてゼレンスキーを手放しで称えていていいのか?、とは思います。そういう意味では「ある程度は浅井氏に共感します」。


ウクライナ高官、「ロシア艦炎上」確認されず 過去にも誤認、破壊は揚陸艇:時事ドットコム
 もちろん「戦果をあえて隠し、楽観ムードを戒める」ということもありえますが、一方で[B! メディア] ウクライナ高官、「ロシア艦炎上」確認されず 過去にも誤認、破壊は揚陸艇:時事ドットコムで「ウクライナ版・台湾沖航空戦?(戦前日本が誤った認識から過大な戦果を発表した上、「誤りだと分かった」後でも「政府・軍幹部の面子や保身」から「公式な撤回や修正がされなかった」ことで有名、例えば台湾沖航空戦 - WikipediaNHKスペシャル 幻の大戦果~台湾沖航空戦の真相~ | NHK放送史(動画・記事)参照)」というブクマがあるように「実際に誤報」の可能性もあります。
 さすがに「ブチャの虐殺はウクライナのでっち上げ(ロシア側主張)」ということはないでしょうが、戦争においては「ロシアだけではなく」ウクライナにおいても「戦意高揚のための故意の嘘発表(ウクライナ版・大本営発表)」「願望による誤った認識(政府高官の発表に寄れば今回はこちら)」などによる「事実に反する発表」の可能性に注意する必要があるでしょう。
 その意味では師岡カリーマと河瀨直美は「どっちもどっち」 - kojitakenの日記どころか、彼女らの指摘は正論であり、非難するid:kojitaken氏の方が間違っていると「改めて思います」。
 以上のコメントは師岡カリーマと河瀨直美は「どっちもどっち」 - kojitakenの日記に投稿しましたが、掲載拒否でしょう。いつもながらkojitaken氏のクズさには心底呆れます。

*1:これについてはロシア・ウクライナ戦争と台湾海峡危機|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ参照

*2:小生は拙ブログでも何度か書いていますが、基本的には「党外の日本共産党支持者」として「日本共産党プーチン批判」を支持しています。