今日の産経ニュース&しんぶん赤旗ニュースほか(2022年6/29、30日分)

◆6/30TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」の「現場にアタック」は「視力、聴力障害者と選挙」
 視覚障害の有権者に「白杖預かる」 投票所で不適切対応:朝日新聞デジタルなどを受けての放送です。予想通りですが「日本は、欧米先進国に比べて視力、聴覚障害者対応が遅れてる」と言う話です。
 「選挙公報点字が義務化されてない」「テレビの選挙演説も手話が義務化されてない」(点字公報や手話ニュースは行政がやってるわけでは必ずしもなく、多くの場合、有志の手弁当)「視覚障害者は投票所まで行くのが大変だが、選管職員が送り迎えに来てくれるわけでもないし、(投票所に行かなくても良い)郵便投票も原則認められてない」などの指摘がありました。
 「視力、聴力障害者は投票しづらい→彼らの声が政治に反映しない→いつまで経っても投票しづらい状況が改善しない」という「負のループ」が続くわけです。
参考
赤旗視覚障害者に届けよ/井上氏 選挙公報、体制・予算を2022.4.5


【産経抄】6月30日 - 産経ニュース

 第167回芥川賞直木賞の受賞作は、来月20日に決まる。すでに発表されている候補作の作者を見ると、芥川賞はすべて女性、直木賞でも男性は(ボーガス注:呉勝浩)一人だけだ。(ボーガス注:芥川賞候補作が全て女性であることについて「全て女性」と書いても、「全て女流」と書く記事は少なく、)文学では「女流」という言葉が死語になって久しい。一方、囲碁や将棋の世界では今も健在である。囲碁女流棋士になる道は、一般採用枠のほかに「女流枠」がある。
▼将棋界ではプロ棋士女流棋士は明確に区別される。女流のタイトルを総なめにしてきた里見香奈女流四冠(30)でさえ、奨励会ではあと一歩のところで涙をのみ、年齢制限で退会している。ところがその後の好成績によって、このたび編入試験の受験資格を得た。
▼8月に始まる若手棋士5人との試験対局で3勝すれば、史上初の女性の「棋士」が誕生する。

 死語なんですかね、どうなんでしょう。なお、産経が書くように多くの場合「女流」とはそういう制度があるわけではありませんが、将棋や囲碁の場合「女流」は「男性棋士とは別扱いの制度」です。
 別枠の「女流棋士」は今まである物の、「同枠の女性棋士」は今までないわけです。
【今年の芥川、直木賞候補】

芥川賞候補(経歴などはウィキペディア参照)】
◆小砂川(こさがわ)チト
 候補作は『家庭用安心坑夫』。なお、本作品で既に群像新人文学賞講談社)を受賞
鈴木涼美(すずき・すずみ)
 候補作は『ギフテッド』。2004~2008年までAV嬢(芸名・佐藤るり)、2009~2014年まで日経記者(都庁記者クラブ総務省記者クラブなど)という異色の経歴。AV出演が明らかになって日経を退社したと『週刊文春』に報じられるが、彼女自身は、それが退社の理由ではないと否定している
→小説の才能は勿論ある方でしょうが、『週刊文春』での過去の報道、と言う部分が「話題作りとしての候補者」というのは否定できないのではないか。
◆高瀬隼子(たかせ・じゅんこ)
 候補作は『おいしいごはんが食べられますように』。2019年(令和元年)、『犬のかたちをしているもの』ですばる文学賞集英社)を受賞。2021年(令和3年)、『水たまりで息をする』で芥川賞候補
◆年森瑛(としもり・あきら)
 候補作は『N/A』。なお、本作品で既に文學界新人賞文藝春秋)を受賞
◆山下紘加(やました・ひろか)
 候補作は『あくてえ』。2015年、「ドール」で文藝賞河出書房新社)受賞。

直木賞候補(経歴などはウィキペディア参照)】
◆河﨑秋子
 候補作は『絞め殺しの樹』。2019年、『肉弾』で大藪春彦賞徳間書店)を、2020年、『土に贖う』で新田次郎文学賞を受賞
窪美澄(くぼ・みすみ)
 候補作は『夜に星を放つ』。2011年、『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞(新潮社)を、2012年、『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞角川書店)を受賞。2018年、『じっと手を見る』で、2019年、『トリニティ』で直木賞候補
◆呉勝浩(ご・かつひろ)
 候補作は『爆弾』。2015年(平成27年)に『道徳の時間』で江戸川乱歩賞講談社)を受賞し作家デビュー。2018年(平成30年)、『白い衝動』で大藪春彦賞徳間書店)を、2020年(令和2年)に、『スワン』で吉川英治文学新人賞講談社)を受賞
◆永井紗耶子
 候補作は『女人入限』。2010年、時代ミステリー『絡繰り心中:部屋住み遠山金四郎』で小学館文庫小説賞*1を受賞、同作を『恋の手本となりにけり』と改題して刊行し、小説家デビュー。2021年、『商う狼』で新田次郎文学賞を受賞
◆深緑野分(ふかみどり・のわき)
 候補作は『スタッフロール』。2010年、『オーブランの少女』で東京創元社主催のミステリーズ!新人賞で佳作に入選し、作家デビュー。2016年、『戦場のコックたち』で、2019年、『ベルリンは晴れているか』で直木賞候補
→以前から指摘されてるところですが、今回の「河崎氏(大藪春彦賞新田次郎賞)」「窪氏(山本周五郎賞山田風太郎賞)」「呉氏(江戸川乱歩賞大藪春彦賞吉川英治文学新人賞)」と「既に他社の賞を複数回、取得してる人間」を候補にしたり、また過去においても実際に受賞させたりしてる芥川や直木はもはや「新人発掘賞」とは言いがたいですね(勿論新人と言っていい人間が受賞することもありますが)。


【参考:里見女流四冠】

将棋 里見香奈女流四冠 女性初の“プロ棋士”に向け挑戦へ | NHK | 将棋
 里見香奈女流四冠*2も2011年から「奨励会」に所属して、女性初の三段になりましたが、四段昇段は果たせず、年齢制限のために退会しました。
 今回、里見女流四冠が受けることになったプロ棋士への編入試験は、16年前の2006年に設けられた制度です。
 女流棋士やアマチュアが公式戦でプロ棋士と対局し、直近の対局で「10勝以上」かつ「6割5分以上の勝率」の条件などを満たせば、受験資格を得られます。
 この制度が誕生するきっかけとなったのが、当時は会社員でアマチュアの強豪だった瀬川晶司六段(52)の訴えでした。
 このときは、プロ棋士を相手に高い勝率をあげていた瀬川さんが、日本将棋連盟にプロ入りを認めてほしいと嘆願書を出して特例で試験が行われ、合格を果たしました。
 その後、正式に「編入試験」の制度ができましたが、合格してプロ棋士になったのは、今泉健司さん(48)と、折田翔吾さん(32)の2人だけで、女流棋士が挑戦するのは、里見女流四冠が初めてです。


【西論プラス】犯罪抑止へ 量刑学ぶ教育を 大阪編集長・豊川雄之 - 産経ニュース
 まともな人間なら「量刑について詳しい知識がなくても」犯罪を犯せば「刑罰」や「社会的制裁(通学校の退学や、勤務先企業の懲戒解雇、被害者からの民事賠償請求など)」を受けることは分かっていますし、犯罪を犯す人間は「刑罰を軽く考えてる」というより【1】犯罪がばれないと何故か軽く考えてる、【2】ばれても構わないと自暴自棄になってるのどちらかであり「量刑を知ること」は、犯罪抑止という意味では、あまり意味がないように思います。


【日本の道統】東條英機、忠義尽くした超真面目人間 - 産経ニュース
 本文も酷いですが、タイトルだけで唖然です(有料記事なので途中までしか読めませんが)。戦犯の何が「道統(道徳的伝統、伝統的道徳)」なのか。産経にとって「天皇への忠義」はそれだけで「道統」なのか。
 「東條らA級戦犯靖国合祀」とセットで「産経らウヨはあの戦争に無反省だ」と疑われても文句は言えない。
 大体、このタイトル「ゲッベルス、(ヒトラーに)忠義尽くした超真面目人間」なんて書くのとどこが違うのか。

 ソ連式の統制経済に傾斜して共産主義者を内包*3する革新官僚も台頭

 おいおいです。統制経済が「ソ連式」で共産主義なら「満州統制経済を実施していた革新官僚岸信介(戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相など歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相)」も「統制経済に否定的ではなかった東條英機*4」も共産主義者になってしまう。そもそも産経の言う「共産主義革新官僚」とは一体誰なのか?
 いわゆる革新官僚の中には戦後、社会党幹部になった勝間田清一社会党政策審議会長、委員長など歴任)、和田博雄(吉田内閣農林相、片山内閣経済安定本部総務長官、物価庁長官、日本社会党政策審議会長、副委員長など歴任)のような人間もいる物の、革新官僚の大半は「岸のような右派」ですし、左派とは言え、勝間田らは「共産主義者」とはいえないでしょう。
 というか「ソ連式の統制経済」というより「ナチス式の統制経済」でしょうに。
 なお「話が脱線します」が「革新」について「豆知識」を書いておきます(以前も書いたことですが)。
 「全国革新懇」「革新自治体」と言う言葉で分かるように「革新」とは戦後において「左派」を意味しました。
 しかし戦前においては「新しい」と言う意味でしかない。
 例えば、

【1】戦前、存在した政党「革新倶楽部犬養毅*5総裁)」はもちろん保守政党
【2】戸部良一*6『外務省革新派』(2010年、中公新書)が取り上げてる「外務省革新派」とは「親イタリア」の白鳥敏夫。この場合の「革新」とは戦前において長く外務省主流だった「親米英派(幣原喜重郎*7など)」に比べて新しいと言う意味

です。
 従って終戦直後に左派が自称した言葉は岸や白鳥の為に右翼イメージが強かった「革新」よりもむしろ「民主」でした(今も「民主青年同盟」などありますが)。

 反発勢力に革命を起こされかねない宮中

 「はあ?」ですね。226事件昭和天皇の命令で鎮圧されたことで分かるように天皇の権威、権力は絶大でした。革命だのクーデターだの起こせるわけがない。

 ブレーンの尾崎秀実が実はソ連のスパイで、共産主義者にミスリードされていたことが露見し、10月には最悪のタイミングで政権を投げ出す暴挙に出る。

 突っ込み所しかないデマ文章です。
 第一に尾崎は「昭和研究会(近衛の私的シンクタンク)メンバー」とはいえ「昭和研の中心メンバー」とは言えません。そんな人間が近衛をミスリードできるわけもない。そもそも産経の言う「共産主義にミスリード」とは何のことなのか。日米関係を悪化させた南部仏印進駐のことか?(いずれにせよ繰り返しますが、尾崎は近衛の側近とは言えず、仏印進駐に限らず、近衛の政治決定に影響を与えられる立場にありません)
 第二に近衛が政権を投げ出したのは政権運営に行き詰まったからであって、ゾルゲ事件が理由ではありません。


【正論】<君民の絆>の象徴・靖国神社 東京大学名誉教授・小堀桂一郎 - 産経ニュース
 戦後は「国家神道廃止(神社と「国家や天皇家」にはつながりはない)」、「天皇主権廃止(天皇は君主ではない)」なのに「君民の絆」もないもんです(呆:勿論、この場合の君とは天皇)。
 そしてこの発言は「靖国戦没者追悼施設」というウヨの主張が嘘であることを露呈しています。

*1:小学館が2002年から2019年にかけて主催した公募の新人文学賞小学館文庫小説賞 - Wikipedia参照)

*2:2012年に20歳2か月で、清水市代に次いで史上2人目・史上最年少の女流四冠(倉敷藤花女流王位、女流王座、女流名人)となる。それまでの女流四冠最年少記録は、1996年に清水が達成した27歳5か月であった。2022年現在は倉敷藤花女流王位、女流王座、女流王将の女流四冠(里見香奈 - Wikipedia参照)。

*3:さすがに産経も「内包(中にそういう人間もいる)とは書いても「全員がそうだ」とは書かないわけです。

*4:近衛が本気かどうかはともかく近衛上奏文は東條を「共産主義の疑い」で非難していますが。

*5:第一次大隈内閣文相、立憲国民党総理、革新倶楽部代表、第2次山本、加藤高明内閣逓信相、立憲政友会総裁などを経て首相

*6:国際日本文化研究センター名誉教授。著書『日本陸軍と中国』(2016年、ちくま学芸文庫)など

*7:戦前、加藤高明、第一次若槻、濱口、第二次若槻内閣で外相。戦後、首相、吉田内閣副総理、衆院議長を歴任