今日のロシアニュース(2022年7月25日分)

ロシアによるウクライナ侵攻 どうやって終わらせるか? | NHK国際ニュースナビ

「和平派」の立場をとる東京大学の和田春樹*1名誉教授
「正義派」の立場をとる防衛研究所の山添博史*2主任研究官

 和田氏と山添氏という選択が妥当かどうかはともかく、さすがに和田氏も「ロシアにどんなに有利な和平だろうが、とにかく和平すればいい」とは言ってないでしょうし、山添氏も「ウクライナ国民にどんなに犠牲が出ようが、とにかく徹底抗戦すればいい」とは言ってないでしょう。
 話はもっと複雑で「和平の可能性があるか」「和平するとしてウクライナはどこを落とし所にするのか。2月末のウクライナ全面侵攻前か(つまりドネツクやルハンスク、クリミア奪還は当面諦めるのか)、それともドネツクなども含めてウクライナ全土の奪還も目指すのか」「徹底抗戦してロシア軍を撤兵できる可能性があるか」「NATOの軍事支援をどう評価するか」「対ロシア制裁はどの程度効いてるのか」などを総合判断して決める話で単純に「和平すべき」「徹底抗戦すべき」と答えが出せる話ではない。少なくとも建前では和田氏も山添氏も「総合的に判断して今の時点では和平派(あるいは徹底抗戦派)」であって「考えが変わる可能性」を否定はしてない。
 正直「開戦直後ならともかく」、「2月末の開戦から5月経ってもロシア撤兵の見通しが立たない」のでは「和平」も一理あると俺は思っています。
 それにしても山添氏をNHKが「正義派と表現する」のには呆れます。
 ならば和平派は「邪悪」なのか?。「和平派」と表現するならその対立概念は例えば「徹底抗戦派」でしょうに。
 なお、山添氏は「ロシアが敗北しないと台湾有事ガー(ウヨが良く言う寝言ですが)」などと言っていますが「はあ?」ですね。現時点で和平しても「ロシアの大勝利」とはとても言えませんし、台湾とウクライナ、中国とロシアではいろいろと違いがある。単純にスライドできる話ではない。
 問題はそんなことではなく「何がウクライナにとって望ましいのか」でしょう。
 なお、

黒井文太郎
 両論併記にしても他に降伏派*3の識者はいなかったのかと。

と黒井が和田氏に悪口してるのには吹き出しました。「他にいなかったのか」と中立ぶる黒井ですが、和田氏以外の誰を出そうと「他にいなかったのか」と因縁つけるゲスが黒井でしょう。「じゃあ誰が和田氏よりマシなのか言ってみろよ」と黒井に聞いても、勿論まともな回答などない。むしろ「台湾有事ガー」ととんちんかんなことを言う山添氏の方が「他に識者はいなかったのか」でしょう。


ウクライナの元テニス選手、沈黙守るロシア勢に「失望」:時事ドットコム
 「積極的なプーチン礼賛」ならまだしも「投獄を恐れて黙ってるだけ」でここまで悪口するのは酷すぎるのではないか。
 「俺が同じ立場なら批判してる」て、「同じ立場ではない」のだからいくらでも放言できるでしょう。「お前、ウクライナのゼレンスキーに何か問題が発覚したときに本当に批判できるんだろうな?」と言いたくなります。大体、ロシア選手が批判したところで、大した影響もないでしょう。


ロシア、黒海のオデッサ港攻撃 穀物輸出再開合意の直後: 日本経済新聞
ロシア 輸出拠点ミサイル攻撃 “合意に反していない”と正当化 | NHK | ウクライナ情勢
 是非以前に「ロシアが何を考えてるのかが分からない点」が頭が痛い。こんな攻撃には「軍事的、あるいは政治的な合理性がある」とも思えません。しかも、結局は「正当な軍事行動」と正当化したとは言え、当初は「事実無根」として軍事攻撃の事実を否定したそうですし。

ウクライナ穀物輸出、週内再開も ロシアは港攻撃で揺さぶり: 日本経済新聞
 カイロを訪問したラブロフ外相は24日、ロシア産穀物の輸出に対する欧米の制裁を緩和するよう求めた。

ということは「ロシアにお土産(制裁解除など)を出さないといつでもこんな合意は破壊してやる」というアピールか。しかし仮にそうだとしてもあまりにも無茶苦茶です。


ロシア、オデーサ港のミサイル攻撃認める…穀物輸送再開で合意直後 : 読売新聞オンライン

 露国防省は「ウクライナ軍の艦艇と米国が供与した対艦ミサイルシステム『ハープーン』の保管庫を破壊した」と主張し、軍事施設を標的にした攻撃だったと強調した。

 本当にそんな基地があるにしても「合意がある」以上、まずは「政治的抗議」でしょう。いきなり軍事攻撃などまるで筋が通らない。
 

刑務所で戦闘員を募集 ロシア軍が兵力補充に苦戦 ウクライナ侵攻開始から5カ月:東京新聞 TOKYO Web
 本文には詳しい事情が書いてあるとは言え、タイトルはややミスリーディングです。
 というのも

・(ボーガス注:総動員による正規軍の補充にプーチンが消極的なのは)中間層や富裕層まで徴兵することになり、政権の支持率低下は避けられないためだ。
プーチン氏に近い実業家が資金提供する民間軍事会社「ワグネル」が、各地の刑務所などで戦闘員を募集している。

からです。支持率低下を恐れなければ、「正規軍補充それ自体はやろうと思えば一応できる」わけです。

*1:ロシア関係の著書として『血の日曜日ロシア革命の発端』(共著、1970年、中公新書)、『農民革命の世界:エセーニンとマフノ』(1978年、東京大学出版会)、『私の見たペレストロイカ』(1987年、岩波新書)、『ペレストロイカ』(1990年、岩波新書)、『ロシアの革命1991』(1991年、岩波ブックレット)、『北方領土問題』(1999年、朝日選書)、『テロルと改革:アレクサンドル二世暗殺前後』(2009年、山川出版社)、『スターリン批判 1953~56年』(2016年、作品社)、『レーニン』(2017年、山川出版社世界史リブレット人)、『ロシア革命』(2018年、作品社)など

*2:著書『国際兵器市場とロシア』(2014年、東洋書店ユーラシアブックレット)

*3:「和平派」というNHKの表現をわざわざ「降伏派」と表現する辺り、黒井らしいゲスさです。「和平」は降伏ではない。