◆中沢啓治著作集1『広島カープ誕生物語*2』(垣内出版)
「はだしのゲン」では(ボーガス注:原爆を投下した)アメリカに対する怒り、(ボーガス注:戦前は日本政府に、戦後は米国GHQに従う)日本人の付和雷同性への怒りが作品の根底をなしていましたが(その怒りが正当かどうかはともかく、被爆者である中沢にとっては真実でした)この作品では、警察も含め広島市民が団結していくさまが野球を通して描かれます。
吹き出しました。どの辺りが不当だというのか。はっきり書けない辺り、三浦も腰が引けています。
◆『のらくろ探検隊』
時代の資料としても貴重な作品。満州開拓*3、五族*4協和の世界観が読み取れる
「のらくろ探検隊」(田河水泡)は、戦前・戦中に書かれた最後の「のらくろ」作品ですが、軍隊を除隊したのらくろが満州開拓に乗り出すことがテーマになっています。正直、軍隊編に比べると漫画のテンポもギャグ(この言葉はなかったか)も切れ味が弱い*5のですが、セリフなどはなかなか資料として読めば興味深いものがあります。
のらくろ
「今や大陸では、新しい東亜が築き上げられつつあるのであります。今こそ、国民のすべての人々が大陸へ大陸へと進んで出ていくべき時であります。」
「すでにもう我々は島国にとどまっている時ではない。僕も行く、君も行け、みんなゆけ。おお大陸、大陸は我々を待っている。我々がいかなければ誰が大陸の開拓をするのだ。行けっ、大陸へ」
まあ「どんな政治プロパガンダ作品」でも「歴史的価値」はありますが、ウヨ三浦ですから「戦前日本美化」でしょう。
「北朝鮮など三浦が敵視する国のプロパガンダ」は悪口する野郎が良くもふざけた文章が書けたもんです。
そもそも田河にとってこんなもんはもはや「黒歴史」でしかないでしょう。
こののらくろ探検隊は、昭和16年、のらくろが鉱山開発に身を捧げることを決断するシーンで終わります。戦後ののらくろは、私は全く違う漫画として読むべきと思いますので、これがのらくろの「最終回」と考えます。
戦後ののらくろについては以下を紹介しておきます。戦前と違い徴兵制が廃止され、一般人にとって「軍隊が身近でなくなった」以上、戦後の路線変更は不可避だったのでしょう。
のらくろ - Wikipedia
戦後も潮書房の雑誌「丸」に探偵の物語として1981年まで執筆した。1989年に漫画執筆権を弟子の「のらくろトリオ」(山根青鬼、山根赤鬼、永田竹丸)に継承した。田河(1989年死去)と山根赤鬼(2003年死去)の死後も「山根青鬼、永田竹丸」によって新作が発表され続けているが、田河の作品よりギャグ漫画色がどちらかといえば強い。
のらくろとの出会い&田河水泡『のらくろ戦後作品傑作集』|KuroRock|note2022.1.26
最近衝撃的なことがあった。田河水泡『のらくろ戦後漫画傑作集』(教育評論社、2021年12月)である。
昭和20年代に出版された、のらくろの外伝ともいえる『珍品のらくろ草』『ちゃめけんとのらくろ』『のらくろ三人旅』『龍とのらくろ』の4冊が復刊されたのである。
(中略)
今後も田河水泡作品の復刊を期待したい。
のらくろ喫茶店 | 誠光社 通信販売
本書は昭和55年、実にのらくろ誕生から50年の時を経て雑誌『丸』にて連載されたカラー作品の単行本を当時の質感に忠実に復刊したもの。なんとのらくろは戦後、喫茶店で務め、結婚、独立し自身の喫茶店を開業します。コーヒーがまだまだ謎めいた舶来の嗜好品で、喫茶店が街の花形商売だった時代、のらくろマスターの奮闘ぶりをお楽しみください。
のらくろ喫茶店|恵文社一乗寺店 オンラインショップ
本作は、戦争が終わり、平和の世となった後のお話。軍隊が解散し、さまざまな職を渡り歩く放浪の期間を経て、喫茶店での就職が決まったのらくろ。マスターのもとで修業を重ね、おぎんちゃんとの結婚も決まったのらくろは、自身の喫茶店を持つことを決意、その顛末は…という内容です。
*1:【2022年8月13日追記】8/13時点で確認したところ「ラグタイムララバイ」ではなく本名のローマ字表記「miura kotaro」となっていました。【2022年9月19日追記】9/19時点で確認したところ、また「ラグタイムララバイ」に戻っていますね。いずれにせよこれで「ラグタイムララバイ=三浦小太郎」であることが明白ですが。
*2:1975年の初優勝までが描かれる。おおむね史実に沿って進むが、「縄ホームラン」「ポール引っこ抜き」「樽募金」といった逸話が、主人公である進の主導で引き起こされたことになっている「史実を基にしたフィクション」である(広島カープ誕生物語 - Wikipedia参照)。
*3:勿論「無人の土地」ではないので侵略でしかない。なお、開拓でググると昨今ヒットするのは函館の洋食・五島軒、パン自社製造再開で市場開拓: 日本経済新聞ということで「市場開拓」ですね。
*5:明らかに国策漫画なので【1】田河がギャグを入れることを躊躇した、【2】政府の検閲の影響、のいずれかが当然予想できます。