常岡浩介に悪口する(2022年8月22日分)

常岡浩介がリツイート
◆露探【円谷猪四郎】
 露当局は宇特務が、露国内の協力者の助力を得てドゥーギン娘を爆殺したという路線で行く模様。ただもしそうしたスパイ網が実際に存在するとして、今更ドゥーギン親子なんて殺してどうするのか。

 プーチン側要人とされる「ドゥーギン親子」を殺すことは「ウクライナの士気高揚」と言う意味で十分意義があるでしょうからこのツイートは理屈がおかしい。
 「殺すのならドゥーギン親子ではなく、政権幹部であるプーチン大統領安全保障会議議長兼務)、メドべージェフ安全保障会議副議長(元大統領、元首相)、ショイグ国防相、パトルシェフ安全保障会議書記、ラブロフ外相など」と言いたいのかもしれませんがそうした面子は当然護衛が厳しいのだから「まずは護衛の弱い面子を殺す」というのは十分合理性がある。こんなことは「ロシア犯行説、ウクライナ犯行否定説」の根拠にはなりません(まあ常岡らだとメドベージェフなど政権幹部が暗殺されても今回同様根拠レスで「プーチンの粛清(実はメドベージェフは最近プーチンと対立していた、邪魔者扱いされていた)」で片付けそうですが)。なお、分かると思いますが俺は「常岡と類友の主張はおかしい」としているだけで積極的に「ロシア犯行説を否定している」わけではない。現時点の俺の立場は「態度保留」です。
 一方で「ウクライナ全土支配主張など過激すぎるドゥーギン父娘はプーチン政権(既に全土支配は諦めたとみられる)にとってむしろ邪魔になっていた(爆殺対象になってもおかしくなかった)」という「ロシア犯行説」は現時点では「明確な証拠がない」ので善意に見ても「一つの仮説」でしかない。
 というか「路線で行く模様」云々と「ロシアのテロ」という結論ありきなのには呆れます。せめて「主張をする模様」と中立的に書いたらどうか。今のところ「ロシアの犯行」を認定できる根拠は何もないでしょうに。

常岡浩介がリツイート
◆篠田英朗
 突如日本のメディアに現れたドゥーギンが、プーチンの「頭脳」「盟友」とドラマ仕立てで紹介されているのを見て閉口。
 ウクライナの存在を認めない主張をする著作を持ち、動画でウクライナ人の抹殺を呼び掛けるドゥーギンは、端的にはジェノサイド条約上の「公の教唆」を犯している戦争犯罪人だろう。

 「はあ?」ですね。「頭脳(ブレーン、知恵袋)」「政治的盟友*1」とは客観的表現にすぎず、非難や罵倒の言葉ではない一方で、褒め言葉でもない(なお、ドラマ仕立てでもないでしょう)のですが何故かマジギレする奇妙な篠田です。何も「ドゥーギンの娘が暗殺された」「ドゥーギンが、プーチンの「頭脳」「盟友」といわれる存在であるために、ロシア政府当局は、ウクライナのテロと主張*2」と言うだけのニュースでわざわざ篠田のように悪口雑言する必要もないでしょうに。

常岡浩介がリツイート
◆宮地ゆう*3朝日新聞GLOBE副編集長)
 プーチンは民意を気にする独裁者だと思います。

 吹き出しました。
 「不正選挙の疑い」が指摘され、野党も事実上、衛星政党化してるという批判もあるとは言え、一応ロシアは「複数政党制(野党が存在)」で「大統領選挙、議会選挙も行われてる」以上プーチンもあまり無茶苦茶できないという面はありますがそれ以上にこの宮地ツイートが馬鹿馬鹿しいのは「独裁者なら民意無視で何でもできる」と勘違いしてるところでしょう。
 独裁者だって鞭で統治するより、「できる限りあめ玉で統治した方」がローコスト、ローリスクです。民意を全く気にしない独裁者など基本的にどこにもいないでしょう。
 例は何でもいいですが、例えば朴正熙時代に

尹奉吉 - Wikipedia
 1962年に建国勲章大韓民国章(1等級)を贈り、独立運動の義士として顕彰し、独立記念館に祀っている。

というのも「民族英雄の顕彰」による「民意の獲得」と言う目的が明らかにあったでしょう。
 あるいは東条英機の逸話として

東條英機 - Wikipedia
◆飯米応急米の申請に対応した係官が居丈高な対応をしたのを目撃した際に、「民衆に接する警察官は特に親切を旨とすべしと言っていたが、何故それが未だ皆にわからぬのか、御上(昭和天皇)の思し召しはそんなものではない、親切にしなければならぬ」と諭したというエピソードや、米配給所で応急米をもらって老婆が礼を言っているのに対し、事務員が何も言おうとしていなかったことを目撃し、「君も婆さんに礼を言いなさい」といった逸話がある(井上寿一*4日中戦争下の日本*5』)
◆旅先で毎朝民家のゴミ箱を見て回って配給されているはずの魚の骨や野菜の芯が捨てられているか自ら確かめようとした。東條はのちに「私がそうすることによって配給担当者も注意し、さらに努力してくれると思ったからである。それに御上(昭和天皇)におかせられても、末端の国民の生活について大変心配しておられたからであった」と秘書官らに語ったという(赤松貞雄*6『東條秘書官機密日誌』(文藝春秋))。

などがあるのも同じでしょう。有能な独裁者は「できる限り飴を使おう」とする(勿論一方で『いわゆる懲罰召集(東条が批判派に報復として召集令状を送ったとされる出来事)』『金大中拉致事件朴正熙KCIAを使って実行)』といった鞭もありますが)。
 民主主義国だからといったって、戦争、あるいは帝国主義、民族問題と無縁ではない(当たり前) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)が批判する駒木明義(元朝日ロシア支局長)といい最近の朝日記者って「レベルが落ちてるのかな」と思います。

*1:盟友(対等な関係)と頭脳(上下関係)では微妙に違う気がしますが

*2:一方、ウクライナ側は「プーチンのテロ(反ウクライナを扇動するためなら仲間のはずのドゥーギン父娘ですら容赦なく暗殺しようとする、そもそもドゥーギン父娘とプーチン政権と必ずしも一枚岩ではなく意見の違いもある)」を主張しているようで現時点では評価は困難です。勿論ウクライナテロでも、プーチンテロでもない「第三の可能性(ウクライナではない反ドゥーギン派のテロ)」も一応あるでしょう。なお、日本の「ウクライナシンパの一部」が根拠もなくウクライナ主張に乗っかり「プーチンのテロ」を放言するのはいつもの醜悪な風景です。ウクライナ支持とはそういうことではないでしょうに。

*3:著書『シリコンバレーで起きている本当のこと』(2016年、朝日新聞出版)

*4:学習院大学教授。著書『アジア主義を問いなおす』(2006年、ちくま新書→増補版、2016年、ちくま学芸文庫)、『昭和史の逆説』(2008年、新潮新書)、『吉田茂と昭和史』(2009年、講談社現代新書)、『山県有朋と明治国家』(2010年、NHKブックス)、『戦前昭和の社会 1926-1945』(2011年、講談社現代新書)、『戦前日本の「グローバリズム」:一九三〇年代の教訓』(2011年、新潮選書)、『戦前昭和の国家構想』(2012年、講談社選書メチエ)、『政友会と民政党』(2012年、中公新書)、『理想だらけの戦時下日本』(2013年、ちくま新書)、『第一次世界大戦と日本』(2014年、講談社現代新書)、『終戦後史1945-1955』(2015年、講談社選書メチエ)、『昭和の戦争:日記で読む戦前日本』(2016年、講談社現代新書)、『教養としての「昭和史」集中講義』(2016年、SB新書)、『戦争調査会』(2017年、講談社現代新書)、『機密費外交:なぜ日中戦争は避けられなかったのか』(2018年、講談社現代新書)、『論点別昭和史:戦争への道』(2019年、講談社現代新書)、『はじめての昭和史』(2020年、ちくまプリマー新書)、『広田弘毅』(2021年、ミネルヴァ日本評伝選)など

*5:2007年、講談社選書メチエ

*6:東条の陸軍大臣、首相時代に秘書官を務めた。