今日のロシアニュース(2022年9月5日分)

毀誉褒貶に彩られた政治家・ゴルバチョフ|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ
 浅井氏の指摘「毀誉褒貶」は全くその通りで、日本やNATO諸国では「プーチン非難」の思惑*1もあって「冷戦を終わらせた」と礼賛一色のゴルバチョフ
【1】ロシアでは「経済問題を克服できなかった(プーチン政権において石油価格高騰もあって経済が良くなるまでは酷い経済状態だった)」と低評価
【2】ウクライナでも「プーチンの侵攻をろくに批判しない」と低評価
【3】(【1】とも関連しますが)「クーデター未遂を契機に政治的に失脚。政治改革に挫折し、経済問題も克服できず、今のプーチン体制の一因はゴルビーにもある」という批判もある
ということで毀誉褒貶、功罪相半ばするゴルビーです。
 なお、浅井先生が

ソ連邦の崩壊を後悔しないとしたら、それは心がないということだ。しかし、ソ連邦の復活を望むとしたら、それは脳がないということだ」

というプーチンの言葉を紹介していますが、プーチンは「ソ連崩壊でロシアが大国の地位を失ったこと」を残念がっていても「当時、ソ連存続が可能だった」とも思ってなければ、恐らく「ソ連再建も考えてない」でしょう。彼はあくまでも「ロシアの大国化、政治的復権」を目指してるに過ぎません。


【産経抄】9月5日 - 産経ニュース

「私がみなさんに授業をするのは、これが最後です」。
 普仏戦争でフランスが敗れ、アルザス地方*2は、プロイセン(ドイツ)領となる。ドイツ語以外の言葉を学校で教えることが禁止された。
 フランス語の教師は最後の授業で、母国語の大切さを訴える。
▼昭和の時代に教育を受けた人なら、懐かしく思い出す*3だろう。国語の教科書に載っていた『最後の授業』である。

 これについては「アルザス地方は普仏戦争以前から、フランスになったり、ドイツになったりしており、ずっとフランス領だったわけではない。そのため、フランス語話者もドイツ語話者も普仏戦争当時のアルザスには存在した(つまりドイツ語教育が押しつけであるかのような描き方は一面的で相当に問題がある)」「またアルザスにはアルザス語というフランス語でもドイツ語でもない言語がある」として批判があることについては「最後の授業、批判」「ドーデ(『最後の授業』の作者)、批判」でググってヒットした中学のとき国語でやった『最後の授業』は、中年になって世界史を学んだら解釈が変わった: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいるを紹介しておきます。本多勝一氏も確かエッセイで同様の批判をしていました。
 ちなみにそうした問題があるせいか

中学のとき国語でやった『最後の授業』は、中年になって世界史を学んだら解釈が変わった: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
 『最後の授業』は、1985年を最後に、教科書から姿を消している。

そうです。
 これについては府川源一郎*4『消えた「最後の授業」:言葉・国家・教育』(1997年、大修館書店)と言う著書もあるようですね。
 産経が【1】そうした問題について無知なのか、【2】そうした問題を知りながら故意にネグってるのかは不明です。
 なお、何故「ロシアニュース」でこの記事を取り上げたかというと、「引用は省略します」が、この後、産経記事は「ウクライナのロシア占領地域でロシア語教育ガー」とロシア批判を始めるからです。
 「ロシア占領地域でロシア語教育ガー」については以下を紹介しておきます。

ウクライナ語は「選択科目」・地元教師には「再教育」…ロシア化教育、支配地域で : 読売新聞オンライン
 露教育省などによると、5州にある1400超の学校で、ロシア語による授業が行われ、ウクライナ語は選択科目となった。

 それにしても「母語(民族語)の大事さ」云々というなら、産経には「戦前日本の植民地(台湾、朝鮮)での同化教育」を批判し、また「朝鮮学校への差別待遇(無償化除外)」にも反対してもらいたい物です(勿論、産経の態度はその逆ですが)。
 なお、産経は躊躇なく「母国語」と書いていますが近年は「母語」といいます。
 なぜなら「アイヌ(日本)」「クルド人(イラン、イラク、トルコなど)」「チベット人ウイグル人(中国のチベット自治区ウイグル自治区)」など「民族国家が存在しない民族」もあるからです。


「ウクライナより国民」 首都でデモ―チェコ:時事ドットコム
 勿論「ウクライナ」がどうこうではなく「チェコ政府の失政」と言う話です。ウクライナ支援に限らず、物価高など「国内に問題がある」のに「外国支援」では反発も出るでしょう。

*1:正直、この思惑がなかったらゴルビーを今ほど礼賛してるかは疑問に思います。

*2:なお、第一次大戦でドイツが敗戦したときにフランス領となり、現在もフランス領。

*3:勿論「載ってない教科書」もあるので「何それ?」の人も多いでしょう。

*4:横浜国立大学名誉教授。日本体育大学教授。著書『「稲むらの火」の文化史』(1999年、久山社)、『「ごんぎつね」をめぐる謎:子ども・文学・教科書』(2000年、教育出版)、『私たちのことばをつくり出す国語教育』(2009年、東洋館出版社)、『明治初等国語教科書と子ども読み物に関する研究:リテラシー形成メディアの教育文化史』(2014年、ひつじ書房)、『「ウサギとカメ」の読書文化史:イソップ寓話の受容と「競争」』(2017年、勉誠出版)、『一人ひとりのことばをつくり出す国語教育』(2022年、ひつじ書房)など