ゴダール死去

 ゴダール*1ファンでも何でもない、というか映画はほとんど見ないのですがいろいろと書いてみます。
ゴダール監督は「自殺ほう助」で死去と仏紙 | 全国のニュース | 岩手日報 IWATE NIPPO
 当初は上記の記事くらいしか「自殺幇助報道」がヒットしなかった(多くは死因不明と報道)のですが

巨匠ゴダール監督死去 「ヌーベルバーグ」主導、91歳:時事ドットコム
 リベラシオン紙によると、ゴダール氏はスイスのジュネーブ近郊にある自宅で自殺ほう助を受けた。関係者は同紙に「(ボーガス注:末期ガンなどの死に至る)病ではなく、疲労困憊*2だったので終わりにしようと彼が決めた」と述べた。

ゴダール監督、スイスで認められた「自殺幇助」で亡くなる 仏紙報道:朝日新聞デジタル
 AFP通信は関係者の話として、ゴダールさんは日常生活に支障をきたす病気を患っていたことから、自殺幇助による死を選んだと伝えている。スイスでは、自殺幇助で亡くなる人が増加傾向にあり、2003年の187人から15年には965人に増えているという。

「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」のゴダール監督が安楽死を選択…91歳 : 読売新聞オンライン
 仏メディアの報道によると、体調に異常はなく、スイスで部分的に合法化されている安楽死を選んだ。

ゴダール監督、医師処方の薬物自ら使い死去 スイスは公認 | 毎日新聞
 フランス紙リベラシオンによると、スイスで認められている、死を選んだ人が医師処方の薬物を自ら使用する「自殺ほう助」により亡くなった。

ジャン=リュック・ゴダール監督が死去 「勝手にしやがれ」: 日本経済新聞
 フランス紙リベラシオンによると、スイスで認められている、死を選んだ人が医師処方の薬物を自ら使用する方法で亡くなった。関係者は「病気ではなく、疲れ切っていた」と説明した。

ジャンリュック・ゴダール監督死去 「勝手にしやがれ」など “ヌーベルバーグ”の代表的存在 | TBS NEWS DIG (1ページ)
 フランス紙リベラシオンは、ゴダール氏はスイスで自殺ほう助によって死亡したと報じています。
 家族関係者の話では、ゴダール監督は病を患っていませんでしたが、「疲れ果てていた」ということです。

がヒットしました(死因不明と報じていたメディアも「自殺幇助」に報道を修正)。自殺幇助(というか、読売が書くように「合法的な安楽死」)は間違いないようです。しかし「時事通信、朝日、毎日、TBS」が安楽死と書かずに「自殺幇助」と書く理由は何でしょうか?
 なお、安倍国葬からの連想*3ですが

国葬 - Wikipedia
 フランスでは国葬対象は、第4共和制からは首相*4、第5共和制からは大統領*5。ならびにフランス国民教育省の「式典令」に従い、国家に特段の功労があったものを対象とする。
(以下は国葬になった文化人。西暦年は死去(国葬)の年。経歴はウィキペディア参照)
ヴィクトル・ユーゴー(1885年)
 作家。邦訳著書『死刑囚最後の日』(岩波文庫光文社古典新訳文庫)、『ノートル=ダム・ド・パリ』(岩波文庫、角川文庫)、『レ・ミゼラブル』(岩波文庫、角川文庫)など
カミーユ・サン=サーンス1921年
 作曲家。広く知られた作品として『序奏とロンド・カプリチオーソ』(1863年)、ピアノ協奏曲第2番(1868年)、チェロ協奏曲第1番(1872年)、『死の舞踏』(1874年)、オペラ『サムソンとデリラ』(1877年)、ヴァイオリン協奏曲第3番(1880年)、交響曲第3番『オルガン付き』*61886年)、『動物の謝肉祭*7』(1886年)など
サラ・ベルナール(1923年)
 女優
ポール・ヴァレリー(1945年)
 詩人。日本では堀辰雄の小説『風立ちぬ』 (小学館文庫、新潮文庫)冒頭に、堀自身が訳したヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節「風立ちぬ、いざ生きめやも(Le vent se lève, il faut tenter de vivre.)」が引用されていることで知られる。邦訳著書『精神の危機』(岩波文庫:中公文庫では『精神の政治学』)、『ドガ ダンス デッサン』(岩波文庫)、『レオナルド・ダ・ヴィンチの方法』(岩波文庫ちくま学芸文庫では『レオナルド・ダ・ヴィンチ論』)など。
シドニー=ガブリエル・コレット(1954年)
 作家。邦訳著書『青い麦』、『シェリ』(光文社古典新訳文庫)、『わたしの修業時代』(ちくま文庫)など。著書『ジジ』が1951年にブロードウェイでミュージカル化されたときにオーディションに自ら立会い、当時は無名だったオードリー・ヘプバーン*8を主演に抜擢したことで知られる。
シャルル・アズナブール(2018年)
 歌手、俳優。なお、アニメ『機動戦士ガンダム』の登場人物シャア・アズナブルの名前はシャルル・アズナブールに由来するとされる。

ということでフランスでは「偉大な文化人の一部」は国葬にされてるようで

ジャン=リュック・ゴダール監督が死去 「勝手にしやがれ」: 日本経済新聞
 フランスのマクロン大統領は13日、「ゴダール氏は断固として新しく、強烈に自由な芸術を生み出した。私たちは天才のまなざしを失った」とツイッターに追悼の言葉を書き込んだ。

フランス映画界の巨匠・ゴダール監督(91)が死去 「勝手にしやがれ」など名作数々 マクロン大統領「天才の視点失った」 | TBS NEWS DIG (1ページ)
 マクロン大統領は、ツイッターで「我々は国宝である天才の視点を失いました」とコメントしています。

というゴダールがどうなるかが少々気になります(映画監督としての業績は文句ないでしょうし、マクロンが人気取りとしてやる可能性は十分あるのではないか)。
 「ゴダールが仮に国葬」になれば単なる偶然ですが、「エリザベス女王」「安倍」と国葬が三回行われた年になります。
 いずれにせよ「エリザベス女王ゴダール国葬」ならともかく「モリカケ桜疑惑」「統計捏造疑惑」「レイプもみ消し疑惑」「河井夫妻の公選法違反」「統一教会との癒着」「ニッキョーソ野次」など不祥事まみれの「安倍」の「国葬自民党支持層ですらある程度の常識があれば「手放しで賛同」ではないでしょう。とはいえ拉致被害者家族会は未だに「少なくとも建前」では「安倍国葬支持」なのでしょうが。そんなことだから拉致が解決しないと心底呆れます。
 但し、その家族会も「拉致風化による政治力の衰退」もあってさすがに「安倍国葬反対派を許さない」などとは大っぴらには言えないわけですが。

*1:1960年、初の長編映画勝手にしやがれ』でジャン・ヴィゴ賞、ベルリン国際映画祭銀熊賞を、1961年、『女は女である』でベルリン国際映画祭銀熊賞を、1965年、『アルファヴィル』でベルリン国際映画祭金熊賞を、1983年、『カルメンという名の女』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を、1987年、『右側に気をつけろ』でルイ・デリュック賞を、2002年、高松宮殿下記念世界文化賞を、2010年、アカデミー名誉賞を、2018年、カンヌ国際映画祭スペシャル・パルム・ドール」を受賞。邦訳著書『ゴダール映画史』(ちくま学芸文庫)(ジャン=リュック・ゴダール - Wikipedia参照)

*2:それって「精神病による希死念慮」ということではないのか。しかし「精神病治療」ではなくそんな理由で安楽死を認めていいのか。ちなみに、勿論、日本では安楽死は合法化されていません。また「安楽死による無罪」を主張した過去の裁判(1991年の東海大学安楽死事件 - Wikipedia)では合法的安楽死の要件として1)患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること、2)患者は死が避けられず、その死期が迫っていること、3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くしほかに代替手段がないこと、4)生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があることの4要件が示され、本件では患者が昏睡状態で意思表示ができなかったこと(安楽死を要望したのは家族)から1(意思表示できない以上痛みに苦しんでるか不明)や4を満たさないとし有罪判決を下した。ただし、患者の家族の強い要望があったことから、情状酌量により刑の減軽がなされ、執行猶予が付された。日本の過去判例を元にすれば、ゴダールの件は2)患者は死が避けられず、その死期が迫っていること、3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くしほかに代替手段がないことを満たさないとして違法になる気がします。まあ、日本の判例の是非はともかく本当にゴダール遺族が言うように「死期が迫ってない」のなら、「繰り返しますが」合法的安楽死を認めていいのか俺個人は疑問に思います。

*3:ということで「安倍とゴダールには直接は何の関係もない」ですが、この記事に「安倍晋三」カテゴリーをつけました。

*4:但し、全ての首相ではないようです。過去の例としてはレオン・ブルム(1936~1937年、1938年、1946~1947年と三度首相、1950年死去)、エドゥアール・エリオ(1924~1925年、1926年、1932年と三度首相、1957年死去)(国葬 - Wikipedia参照)

*5:但し、全ての大統領ではないようです。過去の例としてはアルベール・ルブラン(1932~1940年まで大統領、1950年死去)(国葬 - Wikipedia参照)

*6:第2楽章第2部でオルガンが登場する部分は、その威風堂々とした曲調から、映画『ベイブ』(1995年)、『ベイブ/都会へ行く』(1998年)、TVアニメ『ルパン三世』第2シリーズ(1977~1980年)の第87話『悪魔がルパンを招くとき』(1979年6月11日放送)、第124話『1999年ポップコーンの旅』(1980年2月25日放送)、第145話『死の翼アルバトロス』(1980年7月28日放送)など、映画やテレビ番組で使用されたことがある。(交響曲第3番 (サン=サーンス) - Wikipedia参照)

*7:京王電鉄高幡不動駅1番線ホームと多摩動物公園駅全ホームでは、第1曲「序奏と獅子王の行進曲」、第5曲「象」の2曲が2018年10月11日より電車接近メロディとして採用されている(動物の謝肉祭 - Wikipedia参照)。

*8:1953年には『ローマの休日』でアカデミー主演女優賞を獲得