珍右翼・高世仁に突っ込む(2022年9/19日分)

DNAのパスポート - 高世仁のジャーナルな日々

 たいした読書家でもないのに、欲しい本を(主に古書で)どんどん買ってしまうものだから、いきおい積読(つんどく)が増える。

 俺は最近は「軽い老眼で目が疲れる(40代になってから)」「読んでても内容がなかなか頭に入らない(元々頭が良くない上に、年のせいで)」「本の置き場所がない」などで最近は滅多に本は読みませんし、買いません。
 月刊誌「前衛(日本共産党機関誌)」「経済」「歴史評論」位しか読んでいない(しかもかなりいい加減な斜め読みです)。読んだら簡単にブログ記事にして雑誌自体は後で古紙回収に出す(置き場所がないし、わざわざ読み返すことも多分ないので)というのが日常化しています。

 香川紘子は(中略)寡聞にして知らなかったが、有名な詩人であるらしい。

 詩人業界では有名なのかもしれませんが、「香川紘子」でググってもウィキペディアコトバンクもヒットしないのだから一般的な意味では無名でしょう。

 この詩で思い出したのが、はやり重い障害をもつ海老原宏美さん*1だ。
 いまどうしているかなと思ってネット検索すると、昨年末に亡くなっていることを知って驚いた。
 追悼 海老原宏美さん 共生社会・インクルーシブな社会の実現を目指して - 記事 | NHK ハートネット*2
 数年前、彼女の生き方を描いた映画*3を観、講演を聴き、本を読んで大きな感銘を受けた。もう一度お話を聴きたいと思っていたのでとても残念だ。ご冥福を心からお祈りします。
 海老原宏美さんの『まぁ、空気でも吸って*4』という本に収められた「私の障害のこと」という文章を読んだとき、こんな考え方もあるのか!と衝撃を受けた。
 私は、脊髄性筋萎縮症Ⅱ型(SMA type2)という、ちょっと珍しい障害をもって生まれました。「type2」という響きがカッコイイと思っています。一説には、この病気の発症率は四万人に一人とも言われています。両親共に原因となる遺伝子をもっていて、それを一つずつもらい受け二つそろったときに、めでたく発症します。ということは、祖先たちが代々、この遺伝子を受け継ぎ保因者として生きてきたからこそ私もそれを引き継いだわけで、それは一体、何百年、何千年さかのぼる旅だったのだろう? と思うと、この障害が愛おしくてたまりません。
(中略)
 自分が生まれつき負った障害すらも、無数の「ご先祖」から受け継がれてきた生命の一部として愛おしんでいる。

 それは脊髄性筋萎縮症Ⅱ型が「将来はともかく今の医学では治療不可能」なんで「そうとでも思わないとつらくて耐えられない」つうだけの話でしょう。
 「治療可能でも、脊髄性筋萎縮症Ⅱ型を治療しないで『死亡の危険や生活の質の低下』を背負うか」といったらそんなわけがない。
 障害というのは差別理由(黒人差別など)になったり、個人的に好きでないと言うことはあっても、障害と違い生活に支障を生じない「髪や肌、目の色」「身長の高低(勿論、病気による身長の高低で、明らかに生活に支障を生じてる物を除く)」「貧乳か巨乳か(勿論、病気による巨乳で、明らかに生活に支障を生じてる物を除く)」等のような「個性」と扱える代物ではない。

 9月は自殺対策強化月間で、さまざまなキャンペーンが行われている。
 「いのちの電話」など、自殺の直前に思いとどまらせる窓口を増やしたりといった施策も大事だが、これはいわば応急処置。
 本来はそもそも「死にたい」と思わない、「生きているってすばらしい」と思うように生きるにはどうするかが問題だ。

 なお、話の本筋ではありませんが9月は自殺対策強化月間というのは「厳密には正確ではないこと」がググって判明しました。
 正しくは

【1】自殺対策基本法に基づく国の「自殺対策強化月間」は3月で「自殺予防週間」は「9/10~9/16」。なお、9/10がWHOが定めた「世界自殺予防デー」
→これについては例えば令和4年度自殺予防週間の取り組みを公表します|厚生労働省参照
【2】但し、一部の都県(岩手県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、政令市(横浜市川崎市千葉市さいたま市相模原市岡山市)は9月も「自殺対策強化月間(呼び方は自殺予防月間など別の場合もある)」にしている
→これについては例えば岩手県 - 9月は「こころに寄り添い いのちを守る いわて」月間(自殺防止月間)です自殺予防週間・自殺対策強化月間について - 埼玉県9月は自殺予防月間です | 岡山市参照。従って高世の住む東京では「9月は自殺対策強化月間」は正しいが他の自治体では必ずしも正しくない。

ですね。
 それはともかく、俺は高世のような価値観ではありません。
 少なくとも「行政や民間団体がやる自殺予防」つうのはそういう話じゃない。
 「生きているってすばらしい」なんて、行政や民間団体がどうこうできる話じゃない。
 「生きる意義」は人それぞれです。第三者の目から見れば、「生きる意義」が「どんなにくだらない理由(カネと権力を得て世間からちやほやされたい、女にもてたいなど)」でも「当人が幸せで、周囲に迷惑をかけてない(カネと権力を得るために不正に手を染めない、手に入れたカネと権力を悪用しないなど)」ならそれでいいわけです。
 「行政や民間団体がやる自殺予防」は

◆貧困、差別、失業をなくす
◆過労をなくす
過労自殺予防
老老介護をなくす
→「介護疲れによる自殺」予防。「行政がきちんとした介護システムを作る」など
◆犯罪被害をなくす
統一協会霊感商法で身ぐるみ剥がれて将来を悲観して自殺など。高世がこの記事に貼ってるテレ朝・ワイドショー番組の画像でも詐欺というのは、現在から過去へ逆算していけば、だれも引っかからない(が、その場での判断を余儀なくされるのが厳しい) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)で紹介されてる「22歳女性の自殺」が取り上げられています。というか、『高世記事のワイドショー=詐欺というのは、現在から過去へ逆算していけば、だれも引っかからない(が、その場での判断を余儀なくされるのが厳しい) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)で紹介されてるワイドショー』です。

など「自殺原因になりうるもので行政や民間団体で対応できる物をなくす」ぐらいしかないでしょう。つまり高世の言う「対処療法」しかない。
 まあ大抵の人間は

◆貧困や差別。失恋や大学入試の失敗
◆失業や経営する会社の倒産
→幸いにしてジンネット倒産は高世にとって自殺理由にならなかったわけですが
◆末期ガンの激痛
→最近は緩和ケアが大分改善されたとも言われてますが
認知症
→完全に認知能力が失われる前に死にたい、認知能力がない状況で生きたくない
◆アルコール、ギャンブルなどの依存症やひきこもり
→自分も精神的につらいし、周囲に迷惑をかけてるので『依存(あるいはひきこもり)から脱したい』が『脱せない』という今の苦しい状況が続くくらいなら死にたい
◆愛する家族との理不尽な形での離別
東京大空襲沖縄戦等の戦災、伊勢湾台風東日本大震災等の天災、犯罪被害などで自分以外の家族が皆死亡。その結果、『あの世で家族に会いたい』
◆詐欺被害で全財産失う
◆家族がいかがわしい宗教にはまって大迷惑している
→安倍を暗殺した山上の母親など
◆自分も高齢なのに、親の介護でくたくた(いわゆる老老介護
◆中年の息子がひきこもり(あるいは重度の障害)で老人の私が死んだとき、ちゃんとやっていけるか心配だ→息子を道連れで自殺

など「生きててつらい、こんなことなら死にたいと思う出来事」がない限り自殺しません。「生きる意義」とかそんな高尚な話でもない。
 「経済的に豊かで、酷い差別や人間関係の不和もない。体も健康だ。仕事も順調だ。何ら今の生活でトラブルや悩みがない」なんて人間が「自殺したい」とは普通思わない。「自殺したい」と思う悩みも大抵の場合「解決は難しい場合」でも「大学受験の失敗」「人間関係の不和」とか「原因ははっきりしている」わけです。
 「うまく説明できないが生きててつらい、とにかく死にたい」なんてのは「鬱病」などの「自殺願望が発生する精神病」でもない限り、つまり「まともな精神状態」ならあり得ない。

*1:著書『わたしが障害者じゃなくなる日:難病で動けなくてもふつうに生きられる世の中のつくりかた』(2019年、旬報社

*2:彼女の死については海老原宏美さん死去 障害者の自立生活やインクルーシブ教育を進めるNPO法人理事長 :東京新聞 TOKYO Web(2021.12.29)、 障害当事者運動の故海老原さん追悼 「共に学ぶ」遺志継ぐ | カナロコ by 神奈川新聞(2022.4.23)を紹介しておきます。

*3:風は生きよという』のこと

*4:増補新装版が2022年、現代書館