今日の中国ニュース(2022年9月29日分)

日台スポーツ・文化推進協会 松本彧彦理事長 「日中国交正常化は日本の裏切り」 - 産経ニュース
 松本『日本と台湾・真実の戦後史』(2021年、ビジネス社)なる著書がある「台湾ロビーのウヨ」とはいえ「日中国交正常化は日本の裏切り」とは発言が時代錯誤すぎて絶句です。


世界秩序を権威主義で置き換える中国 マクマスター元米補佐官 | 毎日新聞
 何で「トランプ政権大統領補佐官」などという反中国ウヨに話なんか聞くのか?。勿論中国は「世界秩序を権威主義で置き換え」なんてことはやってない。というか「権威主義の一種であるトランプ政権」の高官だった人間が自分を棚上げして良くもこんなことが言えたもんです。


中国包囲の国際的枠組み「賛同しかねる」 共産・志位氏 - 産経ニュース
 はっきりと「人権面での中国批判はともかく、反中国の包囲網には賛同できない」と言ったことを高く評価したい。


【正論】大砲は無き道理を造る器械なり 拓殖大学顧問・渡辺利夫 - 産経ニュース

 福澤諭吉は、明治11年の『通俗国権論』において次の箴言(しんげん)を残していた。
「百巻の万国公法*1は数門の大砲に若(し)かず、幾冊の和親条約は一筺(いっきょう)の弾薬に若かず。大砲弾薬は以(もっ)て有る道理を主張するの備(そなえ)に非(あら)ずして無き道理を造るの器械なり*2

 中国を「大砲は無き道理を造る器械なり*3」の軍国主義の立場だと批判する渡辺が『福沢がどんな思惑でこの発言をしたのか』、書かない辺りが興味深い。
 【1】「武力>法律」という現状を肯定して、日本の軍事大国化(明治新政府と同じ立場)を主張したのか
 【2】「武力>法律」という現状を批判して、「法治主義の徹底(明治新政府に批判的な立場)」を主張したのかで福沢の主張の意味は180度違います。
 【1】ならば、福沢の立場は、渡辺が批判する「中国の軍国主義的立場(俺個人は中国がそんな乱暴な立場だとは思いませんが)」と何一つ変わらない。
 「中国を批判するのなら、渡辺や産経は福沢や明治新政府も批判しろ」ということになる。
 しかし、勿論「明治新政府の軍事大国路線」を評価する産経や渡辺はそんな批判はしません。
 なお悪名高い『脱亜論』を考えれば【1】の可能性も十分あると思いますが、俺は福沢については無知で『通俗国権論』も未読なので【1】と断定はしません。
 ちなみに、この点、福沢について【1】の立場と評価するのが

◆安川寿之輔(名古屋大学名誉教授)
福沢諭吉のアジア認識』(2000年、高文研)
福沢諭吉戦争論天皇制論:新たな福沢美化論を批判する』(2006年、高文研)
福沢諭吉の教育論と女性論:「誤読」による〈福沢神話〉の虚妄を砕く』(2013年、高文研)
福沢諭吉丸山眞男:「丸山諭吉」神話を解体する(増補改訂版)』(2016年、高文研)
→著書『「文明論之概略」を読む』(岩波新書)などで福沢に好意的評価をした丸山*4を批判
『さようなら! 福沢諭吉:日本の「近代」と「戦後民主主義」の問い直し』(雁屋哲杉田聡との共著、2016年、花伝社)
『さようなら!福沢諭吉Part2:なぜ、いま福沢が問題なのか?』(雁屋哲杉田聡との共著、2017年、花伝社)
『日本人はなぜ「お上」に弱いのか:福澤諭吉丸山眞男が紡いだ近代日本』(2019年、高文研)
杉田聡帯広畜産大学名誉教授)*5
福沢諭吉朝鮮・中国・台湾論集:「国権拡張」「脱亜」の果て』(2010年、明石書店
『天は人の下に人を造る:「福沢諭吉神話」を超えて』(2014年、インパクト出版会
福沢諭吉帝国主義イデオロギー』(2016年、花伝社)

です。
 一方、【2】の場合、福沢主張は「明治日本の軍事大国化」への「批判」になる(【2】という福沢評価をしているのが丸山真男であり、安川寿之輔、雁屋哲杉田聡氏が【1】という福沢評価から丸山を批判)。「明治日本の軍事大国化」を肯定する産経や渡辺にとって受け入れがたい主張です。とはいえ、産経や渡辺にとって福沢を「反日自虐主義」呼ばわりするわけに行かない。
 結局、福沢主張が【1】であれ、【2】であれ「産経や渡辺にとって都合が悪い」から「福沢主張の意味」を詳しく説明しないのでしょう。全く呆れたバカです。 


若い世代ほど中国へ親近感 急激な経済成長、「怖い国」から変化:朝日新聞デジタル
 高齢世代は「戦前日本が侵略した中国への贖罪意識」「日中国交正常化時(1972年、今から50年前)のパンダブーム」などで若い世代より「親近感が高いのかな?」と個人的には思っていたので、記事が事実なら俺にとって少々意外です。なお、失礼ながら「東大の園田茂人*6教授」のコメント「若い世代は中国の人権問題(チベットなど少数民族問題など)に関心が薄く、むしろ中国企業の製品(ハイアールの白物家電、ファーウェイのスマホなど)などで中国に親しみを感じてる」は「そう見なす具体的根拠(中国に親しみを感じる理由のアンケート回答など)が記事内で示されてない」のでこの記事を読む限りでは「個人の感想です(テレビ通販番組でよくあるテロップ)」としか言い様がないですね。学術的コメントとは言いがたいように思います。


【主張】日中国交50年 関係を根本から見直せ 経済・学術界も安保の視点を - 産経ニュース

 中国は日本の首相*7靖国神社参拝を批判する内政干渉*8を続け、日本国内にはそれに呼応する勢力が存在した。

 靖国参拝は中国だけでなく韓国や米国も批判しましたし、そもそも政教分離に反する違憲行為です。また「靖国歴史認識日中戦争、太平洋戦争美化)」はまともな人間なら到底容認できる物ではない。「靖国参拝批判=中国への呼応」ではない。
 また「富田メモ」でわかるようにあの昭和天皇ですら「戦犯合祀」を礼賛していたわけではない。
 そもそも「産経らウヨ」が靖国を「戦没者追悼施設」というのは全くの大嘘です。 
 戦没者でも「彰義隊、白虎隊」「箱館戦争で死亡した土方歳三」など「賊軍」は祀られていない一方で

安政の大獄で死罪になった橋本左内吉田松陰
寺田屋事件で粛清された有馬新七
吉田東洋暗殺の咎で切腹を命じられた土佐勤王党首領・武市半平太
京都見廻組に暗殺された坂本龍馬
◆不平士族に暗殺された兵部大輔・大村益次郎*9
堺事件 - Wikipedia切腹を命じられた土佐藩
◆「太平洋戦争開戦時の首相」である東条英機*10関東軍高級参謀として満州事変に関与した板垣征四郎*11(以上、死刑)、イタリア大使として日独伊三国軍事同盟を推進した白鳥敏夫終身刑で服役中病死)、「太平洋戦争開戦時の外相」である東郷茂徳*12(禁固20年で服役中病死)、「太平洋戦争開戦時の軍令部総長」である永野修身*13(判決が出る前に病死)などA級戦犯

など戦没者でない人間(政敵による暗殺、刑事処罰による死刑など)が祀られているからです。

 日本の最大の痛恨事は、1989年の天安門事件を巡る対応だ。民主化を求める学生を戦車で蹂躙する弾圧を行った中国は国際社会の制裁を受けた。ところが日本政府は真っ先に経済支援を再開し、孤立からの脱却を助けた。

 前も別記事で指摘しましたが「名誉白人国家・日本がアパルトヘイト南アと付き合い続けても」欧米は南アへの経済制裁を解除しませんでした。
 つまり日本が中国への経済支援をしようとも、欧米が「中国への制裁を継続すべき」と考えれば南ア同様に制裁は継続されたでしょう。
 産経のような評価は「日本の中国支援」の「過大評価」です。

 日本学術会議が、軍民融合を掲げる「中国側との協力促進を図ること」を目的とした覚書を締結しているのはどうしたことか。

 「軍事研究推進を目的とした協定」と誤読を狙ってるとしか思えない産経の文ですが、実際には「軍民融合」云々は産経が勝手につけた形容詞に過ぎません。
 つまり、この「学術研究推進の協定」には「軍事研究は含まれてない」のだから学術会議の立場上、何の問題もないでしょう。
 そもそも「非軍事研究も含め、いかなる形でも中国の共同研究は不可」としたら困るのはむしろ日本ではないか。今や中国の科学力は「日本より格下」扱いできる時代ではないでしょう。

*1:国際法のこと

*2:産経、渡辺や福沢の思惑とは関係なく、この福沢発言こそが「憲法九条の意義」を示しています。「大砲は無き道理を造る器械なり(戦前日本の中国侵略)」を防ぐために「憲法九条」で「専守防衛の拘束」があるわけです。志位委員長が「憲法九条がロシアにあればウクライナ侵攻はできなかった(ロシア版九条をいったん廃止する必要があった)」と言ったとおりです。

*3:平たく言えば「無理が通れば道理が引っ込む」「理屈と膏薬はどこにでもつく」ですね。むしろこれに当たるのは中国よりも「戦前日本の中国侵略」「プーチンロシアのウクライナ侵攻」でしょう。あるいは「戦争」に話を限定しなければ「モリカケ桜疑惑での安倍の居直り」もその一例です。安倍の場合は「福沢をもじれば」、「首相ポストは無き道理を造る器械なり」となるでしょう。

*4:東大名誉教授

*5:著書『クルマが優しくなるために』(1996年、ちくま新書)、『クルマを捨てて歩く!』(2001年、講談社+α新書)、『道路行政失敗の本質』(2003年、平凡社新書)、 『「日本は先進国」のウソ』(2008年、平凡社新書)、『「買い物難民」をなくせ!:消える商店街、孤立する高齢者』(2013年、中公新書ラクレ)など

*6:著書『中国人の心理と行動』(2001年、NHKブックス)、『不平等国家中国』(2008年、中公新書)、『アジアの国民感情』(2020年、中公新書)など

*7:具体的には中曽根、小泉、安倍

*8:中国にとって「中国侵略の首謀者(東条元首相ら戦犯)」を英雄として祀る靖国に首相が参拝することは容認できなくて当たり前です。内政干渉でも何でもない。

*9:一方で不平士族に暗殺された大久保利通内務卿は靖国に合祀されていません。

*10:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、陸軍航空総監、第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣、首相を歴任

*11:関東軍参謀長、第一次近衛、平沼内閣陸軍大臣朝鮮軍司令官、第7方面軍(シンガポール)司令官など歴任

*12:東条、鈴木内閣で外相

*13:海軍兵学校長、横須賀鎮守府司令長官、連合艦隊司令長官、広田内閣海軍大臣軍令部総長など歴任