今日の中国ニュース(2022年10月22日分)

澤藤統一郎の憲法日記 » 経済大国中国の、度しがたい人権後進国性。

 かつて、毛沢東の権力集中と個人崇拝に鄧小平が異を唱えたとき、私は事情がよく分からぬまま「社会主義の正統に修正主義派の横槍」と解した。今となっては、不明を恥じるばかり。

 「ああ、やっぱり澤藤さんはそうなのね(以前からそうではないかと疑っていたが)」感があります。
 俺は「団塊ジュニア(1970年代生まれ)」で物心ついたときは「文革が既に終了し四人組が裁かれていた(裁判は1980年)上に、ポルポト派虐殺(1975年のプノンペン陥落から1978年のベトナムの侵攻まで)、アフガン侵攻(1979年)、ラングーン事件(1983年:全斗煥大統領暗殺未遂)、大韓機爆破(1987年)、天安門事件(1989年)、ソ連クーデター未遂&その後のソ連崩壊(1991年)等、『既存共産国の不祥事』で『共産主義思想ならまだしも』既存の共産主義国家に夢を見ることなど、もはやできない世代」でしたが澤藤のように「リアルタイムで文革を見て」いれば、「アンチ自民の心情左派」だし澤藤のように文革に好意的評価をしたのかなあ、という不安な気持ちは多少あります。

 だが、その開明派・鄧小平も、天安門事件では民衆に銃口を向けることをためらわず、人権と民主主義の芽を摘んだ。

 鄧小平が批判したのはあくまでも「毛沢東の経済失政(大躍進など)」と「度外れた個人崇拝」でしかありませんのでね。
 「中国共産党支配体制」を批判して「複数政党制国家」を目指していたわけではない。
 むしろ「経済重視の鄧小平」なら「中国はまだ貧しい(実際、天安門事件時の中国はそうでしょう)、遠い将来はともかく今は経済発展のために民主化など後回しだ」「日本の大久保利通士族反乱を鎮圧し、その恨みから暗殺される)、韓国の朴正熙などと同じ事をするだけだ」と思っても不思議ではない。

 以来中国は、社会主義の理想も民主主義の理念もない、専制と拝金主義社会に堕したまま今日に至っている。

 というのはあまりにも一面的すぎないか。勿論欧米と比べれば「まだまだ」でしょうが「遅々とした歩み」であれ中国は基本的には「民主化の方向」ではないか(俺の願望込みですが)。

「民主主義だろうと専制だろうと、人民を喰わせることができればどちらでもよい」(中略)などと言ってはならない。

 とはいえ「食えない状況」で民主主義と言っても大多数の人間は支持しません。「食えるようになる(豊かになる)と民主主義に進む傾向がある(当然に民主主義化するわけではないが)」というのはその意味で「真理」です。


3期目に入る習近平指導部、党規約に「台湾独立に断固反対」明記 高まる緊張:東京新聞 TOKYO Web
 「極右派」読売、産経等と違い、リベラル扱いされる東京新聞でもこの反中国記事です。心底呆れます。党規約に書き込んでも前提は「独立宣言しない限り、侵攻しない」であり基本的に「過去との違いはない」と見るべきでしょう。
 蔡英文政権がバイデン政権の煽りを受ける形で「反中国」を強めていることへの牽制でしかない。
 「ロシア軍が米国の軍事支援を受けるウクライナ軍に苦戦していること(台湾も米国製武器を購入する等、米国の軍事支援を受けている)」「ロシアに対する国連総会非難決議、G7諸国の経済制裁」を見ている中国が「同様の措置が予想される独立宣言なしでの侵攻」をするわけがない。
 むしろ習氏が恐れてるのは「台湾が独立宣言に暴走すること」でしょう。常日頃「独立宣言すれば侵攻もあり得る」と言っている以上、威信をかけて「国連総会非難決議、G7諸国の制裁」を覚悟した上で「事前に警告していたのに無視した台湾が悪い」として「侵攻すること」は当然あり得ますが、当然ながら「非難決議や制裁が実施された場合」中国のダメージが大きいからです。


習氏「1強」、個人崇拝さらに進む恐れ - 産経ニュース
 個人崇拝と言っても、それは産経などアンチ中国ですら「多くの場合」

◆安倍シンパの「アベノミクスは成功してる」「国葬に海外要人が多数来たのは安倍が国際的に評価されてることの表れ」等の安倍美化

レベルの評価に過ぎず「文革での毛沢東神格化」のような代物ではないことは指摘しておきます。


胡錦濤氏、突然の会議中座 体調不良か強制退場か… - 産経ニュース
 さすがに前国家主席をテレビカメラが回ってる場所で、強制退場はさせないでしょうから一見「強制退去に見えた」としても「体調不良による退出」でしょう。
 従って

澤藤統一郎の憲法日記 » 経済大国中国の、度しがたい人権後進国性。
 胡錦濤強制退去の一幕も含めて、面白くもおかしくもないシラケたセレモニー。

島田洋一
 胡錦濤氏が中国共産党大会から連れ出される、BBCの比較的長い映像。

というのはデマも甚だしい。
 勿論うがった見方をすれば「習主席への不満表明として退出したが表向きは体調不良」の可能性も「一応ある」でしょうが根拠レスで想像をめぐらせても馬鹿馬鹿しいだけです。


中国・習近平氏の人間像 “ほら穴”から頂点へ | NHK

中国共産党の組織や習近平氏を研究する愛知県立大学鈴木隆*1准教授の話です)
 河北省正定県という農村地域に異動し、県党委員会書記(県のトップ)として、党官僚としての第一歩を踏み出します。
 正定県の勤務の後、習近平福建省アモイ市の経済担当の副市長職に就きました。
 1980年代後半、習近平は同じ福建省の寧徳という貧困農村地域に異動します。
 当時の寧徳では、公共財産である土地や建物を、役人たちが私的に利用するなどの不正行為がまん延していました。習近平はこれを厳しく取り締まり、不正を行っている幹部らを摘発しました。こうした活動は党の機関紙などで報道され、習近平の名前は、北京の中央政界でも徐々に知られるようになったのです。

 ということで副首相、全人代委員長などを歴任した父親・習仲勲の支援があったとは言え「それなりの苦労をした」習近平氏です。この点は二世政治家でも「バカボンの安倍」等とは違う。


「習氏忖度」加速か 王毅外相、外交トップへ - 産経ニュース
 産経には「はあ?」ですね。外交経験の乏しい人間を「習氏のお気に入り」と言うだけで登用すれば「忖度」でしょうが、「駐日大使(2004~2007年:胡錦濤政権時代)」「中国共産党中央台湾工作弁公室主任(国務院台湾事務弁公室主任兼務)」「国務委員(外交担当)兼外相」という「外交のベテラン」王毅氏が「党中央外事工作委員会弁公室主任」になることの何が「忖度」なのか?。むしろ「通常の人事」と見るべきでしょう。


新日豪共同宣言全文 安保・防衛協力強化へ15項目 - 産経ニュース
 岸田政権は勿論「反中国と軍拡」という愚劣な方向に動く豪州には心底呆れます。

*1:著書『中国共産党の支配と権力:党と新興の社会経済エリート』(2012年、慶應義塾大学出版会)