今日の産経ニュース(2022年10/31分)

自民、旧統一教会対応が泥沼化 救済法案も野党ペース - 産経ニュース
 問題は「どのような法案が望ましいか」でしょうに「野党ペース(といってもここでの「野党」とは立民と維新だけですが)」などと「政局話」にする産経には心底呆れます。


防衛費財源「国民全体で負担を」 有識者会議で増税論相次ぐ - 産経ニュース

 議事要旨に発言者名は記されていない。

 どこまで秘密主義で卑劣なのかと心底呆れます。「名前を出したら言えないようなこと」を話すなと言いたい。


ブラジル大統領選 左派元職のルラ氏勝利「再び笑顔戻る」 - 産経ニュース
 50.9%VS49.1%という僅差であること(当初の選挙予想ではもっと大差でボルソナロが敗北とみられていた)が残念ですが「ブラジルのトランプ」ボルソナロが敗戦したことを素直に喜びたい。とはいえ「ルラ再登板」には「左派陣営に生きのいい若手はいないのか」という複雑な気持ちも感じます。


【多面鏡 事件・司法から今を読む】凶悪犯弁護の戦術 真実よりも黙秘ありきの独善 大阪社会部長・牧野克也 - 産経ニュース
 産経らしいアホ記事です。
 黙秘してはいけない理由はどこにもない。

 殺人容疑で逮捕され、否認するAが面会に来た弁護士に「実はやった」と打ち明け、こう続けたとする。「黙秘する」「噓のアリバイを作ってほしい」
 弁護士は通常、Aの意思に沿って黙秘させる。ただし噓のアリバイ作りには協力しない。公判では検察立証の不備を指摘し、「疑わしきは罰せず」として無罪を目指す。結果として「Aは真犯人」という真実を隠しても倫理上許容されるという。なぜか。
 弁護士には依頼者の利益のために最善を尽くす誠実義務があり、検察や裁判所による真実発見に協力する積極的真実義務はない。依頼者の意思に反して真実を言う必要はないが、噓の主張・証拠で積極的に真実をゆがめてはならないという消極的真実義務は負う。これが通説的見解だ。

 産経の指摘の通りそれが通説であり別に問題はないでしょう。あくまでも弁護士は「被告人の権利を守る存在」としてある。
 むしろそれに因縁をつける産経の方こそ独善です。
 
 
【産経抄】10月31日 - 産経ニュース

 平成13年7月、兵庫県明石市内の歩道橋で、花火大会の見物客の11人が死亡する事故が発生した。現場は異常な密集状態となっていた。翌朝の各紙には、「将棋倒し」の見出しが躍った。日本将棋連盟は、この表現を使用しないよう、新聞やテレビに申し入れた。
 事故から半年後に公表された市の事故調査委員会の報告書では、将棋倒しに代わって「群衆雪崩」という言葉を採用していた。 

 「へえ、そうなんや」ですね。これについては後でネット上の記事をいくつか紹介します。
 とはいえ今回の韓国事故でも

ソウル・梨泰院の転倒事故は死者149人、重軽傷者70人超に 韓国 | 毎日新聞
 韓国・ソウル市竜山区梨泰院の路上で、多くの人が押し合いとなる事故が発生した。

韓国雑踏事故 前へ進む圧力で空間作れず 狭い路地で「群衆事故」発生か - 産経ニュース
 韓国ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)の路地で29日夜に起きた大規模な転倒事故

死者151人に 事故現場に韓国の尹錫悦大統領も ソウル繁華街転倒事故【現場中継】 | TBS NEWS DIG
 ハロウィーンを前に大勢の人で賑わう韓国ソウルの繁華街、梨泰院できのう夜、人が折り重なるように倒れる事故が起き

として「将棋倒し」と書かず「転倒事故」などと書くメディアもある一方で

将棋倒しで50人心肺停止か ハロウィーンで人出のソウル―韓国:時事ドットコム
 韓国・ソウルの繁華街、梨泰院で29日夜、将棋倒しとみられる事故があり

著名人が姿見せ群衆殺到か、転倒事故の死者154人に…20代最多103人・外国人26人 : 読売新聞オンライン
 韓国ソウルの繁華街・ 梨泰院(イテウォン)でハロウィーン前の29日夜に群衆が将棋倒しになった事故

など「将棋倒し」表記は散見されますが。
【参考:将棋倒し】

群集事故 - Wikipedia
 従来将棋倒しと呼ばれることがあったが、明石事故の際に日本将棋連盟からの抗議を受け、群衆雪崩、群衆事故などと呼び替えられている。

「将棋倒し」は使ってはいけない言葉? | ブログ | 澤木 幹栄 | 教員紹介 | 信州大学 人文学部2010.4.8
 今から9年前に明石歩道橋事故が起きた。これは花火大会を見るために大勢の人が歩道橋上に密集し将棋倒しになって多数の死者が出るというものだった。このときマスコミ各社は「将棋倒し」事故として連日報道したのだが、それに対して将棋連盟の二上*1会長(当時)が「将棋に対して悪いイメージを与える」と抗議したうえで、「『将棋倒し』を使わないように」と要請した。
 新聞社やNHKは将棋のタイトル戦を主催*2したりしていて将棋連盟と利害関係があり、将棋連盟の要請を無下に断ることはできない。そんなわけで、以後「将棋倒し」はマスコミから姿を消した
 この話は米原万里*3が「ことばは誰のものか」という題のエッセー(三省堂のPR誌に掲載)で(ボーガス注:将棋連盟を批判する論調で)取り上げたことがある。
 (ボーガス注:米原が批判するように)将棋連盟の言い分は無理無体というものである。まず、「将棋倒し」で死人が出たからといって将棋というゲームに悪いイメージが生まれるなどということは全くない。いわゆる差別語の問題とはその点で異なる。

三省堂-ぶっくれっと152号・米原万里「言葉は誰のものか?」
(1)
 「このたび日本ビリヤード協会理事会は、報道各社に対して、『玉突き』という語の多用を慎むよう申し入れた。車などの追突事故が連鎖的に起こる際に、『玉突き』という表現が、比喩として用いられるが、これは、ビリヤードという健全なスポーツの印象を著しく損ねるものであり、ビリヤード普及を使命とする協会関係者は、常々苦々しい思いをしていたというのだ」(読売新聞2001年4月6日朝刊)
(2)
 「石油関連企業の業界団体である日本石油連盟は、本日2時、連盟本部での定例記者会見において、『油を売る』という表現について、世間の見直しを促した。 連盟会長の岡部敬一郎氏(コスモ石油社長)の、『この表現は、無駄話を長々とやる、という意味で使われてきましたが、私どもが取り扱っておりますアブラは、今や、日本の産業の血液です』という発言には、石油関係者の忸怩たる思いとプライドが見え隠れした」(朝日新聞2001年10月13日夕刊)
(3)
 「兵庫県明石市で起きた歩道橋での圧死事故に関連して、日本将棋連盟は25日、『将棋倒し』の表現を報道で使用しないよう、報道関係の各社、各団体に要望書を送った。『将棋倒し』の表現は、事件が発生した21日夜から報道で頻繁に使われているが、『……将棋の文化的普及と振興を進めている当連盟としては大変遺憾に思っていた。こういった場面での使用は絶対にやめていただきたい』としている」(毎日新聞2001年7月26日朝刊)
(4)
 「茶の湯文化普及会、および京都府宇治市に本部を置く製茶業協同組合は、このたび京都府西陣に所在する日本茶道会館にて共同記者会見を行い、声明を発表した。声明文の趣旨は、『お茶を曳く』という表現に異議を申し立てるものである。花柳界や芸能界で客のない暇をもてあましている状態をさして、『お茶を曳く』という言い方が多用されているが、誇るべき日本の伝統文化の象徴でもある抹茶の印象を著しく損ねるものであり、好ましくないというのだ。とくに若い世代のお茶離れが進む昨今、抹茶に対するマイナスイメージを払拭したいという、関係各位の焦燥感を反映しているものと思われる」(京都新聞2001年2月27日朝刊) 
(5)
 「東京都はり・灸・あん摩マッサージ指圧師会が『お灸』という言葉を『懲罰』の意味で使わないようにと訴えた。伝統的な医療行為であって、刑罰的なイメージを押しつけられるのは困るということで、『お灸を据える』を『懲らしめる』とか『痛い目に遭わせて反省を促す』という意味で今後使わないよう、報道各社や辞書の出版元に対して要請している」(朝日新聞2000年12月19日朝刊)
 いずれも、初めて記事を目にしたときには、思わず吹き出してしまった。
「嘘だろ! 冗談だろ!」
 しかし、どうやら抗議した側は大まじめらしい。
 字句や言語表現は、それが指し示す事物を飯のタネにしている人たちからなる業界団体の所有物だと考えているらしい。だから、その語や表現の正しい使い方を判断したり、指導したりする権利も、そういう団体に属すものだという論理になる。しかも、疑う余地無く至極当然なことと思い込んでいるみたいなのだ。始末の悪いことに、それをごもっともと受け容れるメディアが殊の外多い。「将棋倒し」という語も、抗議された翌日から産経新聞(アッパレ)を除く紙誌面やテレビ・ラジオの音声から消えた。
 こういう考えが容認されると、比喩的表現の可否は、各業界団体の諸方面に圧力をかける能力に左右されることが多くなることだろう。
 ちなみに、右にあげた五点の記事のうち、三点は(ボーガス注:米原が作った)ガセネタである。どれが本当にあった記事なのか、どうか当ててみてください。

 (3)が事実であることは明白ですが、他の一つは何か?

*1:1932~2016年。1989年から2002年にかけて日本将棋連盟会長を務めた。著書『詰め物そぞろある記』(1994年、毎日コミュニケーションズ)、『棋士』(2004年、晶文社)、『棋を楽しみて老いるを知らず』(2006年、東京新聞出版局)(二上達也 - Wikipedia参照)

*2:マスコミ側の主催団体は朝日杯将棋オープン戦朝日新聞)、NHK杯NHK)、王位戦(北海道、中日、神戸、徳島、西日本新聞共催)、王座戦日経新聞)、王将戦スポーツニッポン毎日新聞共催)、棋王戦(共同通信)、棋聖戦産経新聞)、名人戦(朝日、毎日新聞共催)、竜王戦(読売新聞)となっている。

*3:1950~2006年。1995年に『不実な美女か貞淑な醜女か』(徳間書店新潮文庫)で読売文学賞を、1997年に『魔女の1ダース』(読売新聞→新潮文庫)で講談社エッセイ賞を、2002年に『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞を、2003年に、長編小説『オリガ・モリソヴナの反語法』(集英社文庫)でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。日本共産党常任幹部会委員、衆議院議員を務めた米原昶は父(米原万里 - Wikipedia参照)