今日の中国ニュース(2022年11月12日分)

「独ショルツ首相訪中=対中融和」は短絡的 日本企業は内実直視を:日経ビジネス電子版細川昌彦*1
 タイトルが経済誌とは思えない反中国でしかも筆者が【第982回】習氏3期目で激化する技術争奪戦に要警戒 « 今週の直言 « 公益財団法人 国家基本問題研究所という記事の書き手「細川(国家基本問題研究所企画委員)」なのだから絶句します。日経ビジネスは正気なのか。


リベラル21 ショルツ訪中をどうみるか(阿部治平)
 反中国の「阿部とリベラル21」なので、ショルツに「中国にへいこらしてる」と悪口か、「ショルツは中国に少数民族問題等で苦言も呈しており、中国べったりではない。我々反中国分子にとってショルツ訪中は大した問題ではない」と強弁かどっちかだろうと思って読んでみます。結論から言えば予想通り(ちなみに後者です)ですが。
 しかしこんなことのどこが「私たちは護憲・軍縮・共生を掲げてネット上に市民メディア、リベラル21を創った」なんですかね?

 2021年のドイツの対中国貿易額は2454億ユーロで、前年比15.1%増となり、中国が6年連続で最大の貿易相手国となった。ドイツでは対中貿易の関連企業で働く人がおよそ100万という。ダイムラーなど自動車メーカーの第一の得意先は中国だ。フォルクスワーゲンは販売の4割を中国が占めるというし、有力化学メーカーや電機メーカーにとって中国市場は不可欠の存在だ。だから今回の訪中には大企業の幹部を伴っている。
 ショルツ首相は与党社会民主党のイベントで「(ボーガス注:政権交代したのにメルケル政権時代の*2中国経済への過度な依存を継続している」との批判について、「われわれは中国との経済交流を続けていく。しかし、10年後あるいは30年後になるかは分からないが、困難な状況に陥ったときに対処できるような体制を整えておくことも確かだ」と語ったという(NHK2022・11・05)。
 ショルツ首相の発言は、当面は中国市場を重視するとしても、将来は過度の中国依存からの脱却を意識していることを物語っている。
 日本の対中依存度はドイツよりもはるかに高い。日本の対中貿易は長年全体の20%を優に超え2020年には24%であった。携帯電話やパソコンなど1000を超える品目で輸入額に占める中国の割合が5割以上を占めている。
 異常ともいえる中国依存の経済から脱却する道が議論されたことはあまりない。与野党ふくめて日本の政治家にはショルツ首相ほどの問題意識、危機感があるだろうか。

 何も中国と経済上深い関係にあるのは日本やドイツだけではないですけどね。当然ながら産経などが放言する「脱中国」など無理な話です。赤字部分を見るに阿部やリベラル21も「脱中国」なのかもしれませんがそうした主張の方がよほど「脱却すべき」異常ともいえる中国敵視でしょう。
 なおショルツの発言(青字部分)は本心というよりは「ショルツが党首を務める社民党内にも存在する」反中国派への言い逃れでしょう。「10年後あるいは30年後」ではあまりに幅がありすぎるし、30年後は勿論10年後でもショルツ(1958年生まれ、現在64歳)は恐らく政界を引退してるでしょう。
 ショルツ発言を彼の本心だと思い込んでる(あるいは思い込もうとしてる)阿部の主張(青字部分)には心底呆れます。
 この程度でショルツを「中国に厳しい」と評価できるのなら日本共産党の中国批判はもっと評価できるでしょうが「日本共産党は中国に甘い」というのが阿部だから心底呆れます。日本共産党にどんな個人的恨みがあるか知りませんが、どれほど物の見方が歪んでるのか。
 いずれにせよショルツ発言を本心と見なしても「脱中国」は「ショルツの見込みでは最低でも10年*3、最長だと30年かかり、しかもそれは『脱中国の適切な対応を取った場合』のみ」と言う話でしょうから阿部が高評価するほどの話ではない。
 なお、以上は阿部記事に投稿しますが掲載拒否でしょう。自称リベラルが聞いて呆れます。


「中国が文化的ジェノサイド」南モンゴル会議代表 日本の関与訴え - 産経ニュース

 戦前の満州国建国*4を通じ、モンゴル人と自由と民主の国を作ろうとした歴史もある。

 いくら産経インタビューとは言え堂々と満州国建国を美化するのはやめてほしい。満州国のどこが「自由と民主の国」なのか?。
 そもそも「満州族の溥儀(元清朝皇帝)」が国家元首なのにどこが「モンゴル人と」なのか?


[FT]台湾有事なら世界で300兆円超損失 米国が警鐘: 日本経済新聞
 中国が「台湾が独立宣言せず、現状維持に留まる限り侵攻しない」と公約してるので「何だかなあ(呆)」という記事です。


首相、更迭劇でもこだわりの強行軍 東南アジア歴訪 - 産経ニュース

 今回は中国が影響力伸長を図る地域を歴訪し、自由や民主主義といった価値観を共有する「同志国」の将来的な拡大につなげる狙いがある

 どんだけ中国を敵視してるのか。
 そもそも岸田が訪問する東南アジア3か国(インドネシアカンボジア、タイ)のうち「インドネシア」はともかく

◆フンセン首相(1985年から、現在まで約37年間も首相で、息子への首相禅譲を狙ってるとされる)が、最大野党を強権で解散させたカンボジア
◆軍の影響力が今だに強いタイ(ミャンマーのようにクーデターを起こす恐れも皆無ではない)

のどこが自由や民主主義といった価値観を共有する「同志国」なのか。
 その他の東南アジアの国にしても「王国のブルネイ」「共産党一党独裁ベトナムラオス」「軍部独裁のミャンマー」「選挙で選ばれたとはいえ独裁的と非難されるマルコス子大統領のフィリピン」「国父リー・クアンユー初代首相(1959~1990年)の長男が首相(2004年から現在まで約18年)で『(世襲政治だが経済的に豊かなことから)明るい北朝鮮*5』の異名があるシンガポール」と民主主義の面で問題がある国が多数ある。
 かつ東南アジア諸国経済的利益を犠牲にして反中国に動くとも思えない。

*1:1955年生まれ。元経産官僚(経産省貿易経済協力局貿易管理部長、中部経済産業局長など歴任)。中京大学教授、中部大学教授などを経て、現在、明星大学教授。著書『暴走トランプと独裁の習近平に、どう立ち向かうか?』(2018年、光文社新書

*2:とはいえメルケル政権は大連立であり、ショルツはメルケル内閣財務相(2018~2021年のメルケル内閣終了まで、約3年)でしたが。

*3:アデナウアー(1949~1963年:約14年)、コール(1982~1998年:約16年)、メルケル(2005~2021年:約16年)のような長期政権もありますが勿論、ショルツがそのような長期政権になる保証はありません。しかし政治制度や国民性の問題もあるのでしょうが日本と比べて「超長期政権」であり脱帽しますね。

*4:満州国の領土の一部は現在の内モンゴルで、モンゴル族デムチュクドンロブ - Wikipediaユンデン・ワンチュク - Wikipedia (いずれも日本の傀儡国家「蒙古聯合自治政府」で主席)、 李守信 - Wikipedia(日本の傀儡国家「蒙古聯合自治政府」で副主席) などが日本に協力した。

*5:例えば(ザ・コラム)「明るい北朝鮮」で 独裁者は夜景に何を思う 山脇岳志:朝日新聞デジタル(2018.6.28)参照