今日のしんぶん赤旗ニュース(2022年11/16、17分)

澤藤統一郎の憲法日記 » 国葬という愚行は一切不必要だ。けっして繰り返してはならない。

 安倍晋三元首相の「国葬」を検証する衆院各派代表者による協議会が、14日、会合を開き、参考人の意見を聴取した。
(中略)
 宮間*1教授は、今後の国葬実施の「基準づくり」ではなく、「国葬自体の是非が議論されてしかるべきだ」「一人の人間の死を国家が権威付けする理由や目的が不明瞭だ。現代の自由な思想、価値観、多様性を重んじる日本社会の中で、特に価値の是非が分かれる政治家の国葬が必要なのか根本的に疑問だ」と述べたという。
 さらに、「戦前の国葬大日本帝国憲法下で天皇から下賜され、民衆の思想・言論を抑圧する装置として機能し、「植民地支配や戦争へ国民を動員することに利用された儀式*2だ」と指摘し、「日本国憲法下ではそのまま使い回すことはできない」「戦前とどう違うのか国会で本格的に議論されることなく吉田茂*3元首相の国葬が強行され、「『安倍国葬儀』も国葬と何が違うのか不明確なまま実施され、混乱を招いている」とも主張。(以上、主として赤旗「国葬」必要性に疑問/検証協議会 塩川氏に参考人陳述(2022.11.17)による)まったくそのとおりだ。

 岸田なら「御用学者だけ呼ぶか」と思っていたので意外です(勿論「麗澤大*4教授」川上和久*5といった明らかな御用学者も呼ばれていますが)。支持率低下で「あまりにも無茶苦茶なことはできない」と思ったのでしょう。勿論、宮間氏のような批判意見をどれほど考慮するかは疑問ですが。


きょうの潮流 2022年11月17日(木)

 作家の平野啓一郎さん*6は著書の『死刑について*7』で、自分もかつて「死刑制度があることはやむをえない」と考えていたと明かしています。▼その平野さんが「廃止派」に変わった理由の一つは、殺人犯となった人の劣悪な成育環境に思いを巡らせ、殺人者を生み出す社会の側の責任について考えたことでした。罪を犯した人間の存在自体を消しても、社会や政治の問題が解決されていなければ同様の犯罪が繰り返されると平野さんはいいます

 平野氏の指摘は

行政その他の支援がなかったことが非常に悪い事態をもたらした大きな要因と思われる強盗殺人事件の実例 - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)2014.4.4
京都アニメーション放火事件の犯人が、もっと他人から優しく扱われる経験をしていれば、また事態は変わっていたのかもしれない - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)2019.11.18
家庭環境によって、知的障害者・発達障害者の犯罪者のその後が大きく左右されるのは、ある意味当然の話ではあるが本当によろしくないことだと思う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)2020.2.17
このような生い立ち、境遇の人間が死刑となる犯罪をしてしまったということは、ある程度は社会の問題でもあると思う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)2020.9.14
女性から男性へのDVというのも、いろいろ問題があるし、それがまた最悪の事態になることもある(宮崎家族3人殺害事件と岩手県の妻殺害事件)(追記あり) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)2022.1.17
家を出れば解決する程度のことで家族3人殺害にいたったのは、本人のみならず肉親ほかにとっても痛恨の極みだ(宮崎家族3人殺害事件) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)2022.9.15

と言った指摘と同様の指摘ですね。
 「全てを生育環境などのせいにできない」「クズとしか言いようのない殺人犯もいる」とはいえ、一方で「死刑囚全てがクズ」というわけではない。「生育環境が悪影響を与えた」と思われる「同情の余地」のある死刑囚(あるいは死刑相当犯罪の犯人)もいる。
 「俺の死刑反対理由は主として冤罪問題(再審無罪判決が出た死刑冤罪である免田事件、財田川事件、日弁連アムネスティが死刑冤罪と見なしている名張毒葡萄酒事件(残念ながら獄死)、袴田事件(再審請求中)など)」ですが、平野氏の指摘には俺も共感します。


FATF勧告対応法案可決/田村氏「共謀罪拡大だ」
 共産が反対している法案に維新と一緒に賛成では「立民は野党共闘を進めていく気があるのか?」と呆れざるを得ません。泉は「維新にすり寄ることが利益」と勘違いしてるようですが、むしろ左派、リベラル派が立民から離れる一方で、右派の立民支持も大して広がらず「党勢が衰退するだけ」でしょう。


きょうの潮流 2022年11月16日(水)

 フジ系の「エルピス*8」。舞台はテレビ局。長澤まさみ*9扮する落ち目のアナウンサーが主人公で、えん罪事件を追っていきます。
 ドラマは6年前から企画が始動。渡辺あやが脚本を手がけ、キャスティングも進んでいましたが、当時女性プロデューサー*10が所属していたTBSに受け入れられませんでした。プロデューサーが関西テレビに移籍して、今回の放送にこぎつけたといいます

 社会派ドラマのようですが何故にTBSが企画を受け入れなかったのかが気になるところです。
 なお、エルピス-希望、あるいは災い- - Wikipediaによれば、このドラマの参考文献として、無罪判決が出た

『冤罪 足利事件:『らせんの真実』を追った400日』(下野新聞社編集局編、2010年、下野新聞社
東電OL殺人事件』(佐野眞一、2003年、新潮文庫

が上げられてるのは当然ですが、無罪判決は出ておらず、世間一般にも冤罪扱いされてない

『偽りの記憶『本庄保険金殺人事件』の真相」(高野隆*11、松山馨、山本宜成、鍛冶伸明、2004年、現代人文社)

が上がってるのが興味深い(その是非については判断しません)。
 TBSが受け入れなかった理由は「参考文献」かもしれません。

*1:著書『国葬の成立:明治国家と「功臣」の死』(2015年、勉誠出版)、『戊辰内乱期の社会』(2016年、思文閣出版)、『天皇陵と近代:地域の中の大友皇子伝説』(2018年、平凡社)など

*2:「植民地支配や戦争へ国民を動員」の典型例としては1909年の伊藤博文・前韓国統監(安重根が暗殺)の国葬、1934年の東郷平八郎・元連合艦隊司令長官日本海海戦勝利の英雄)の国葬、1943年の山本五十六連合艦隊司令長官真珠湾攻撃勝利の英雄、いわゆる海軍甲事件 - Wikipediaで戦死)の国葬があるでしょう(国葬 - Wikipedia参照)。

*3:東久邇宮、幣原内閣外相を経て首相

*4:右翼宗教モラロジーが母体。川上以外にも、古森義久西岡力救う会会長)、八木秀次日本教育再生機構理事長)と言った右翼活動家が教員を務めている。

*5:著書『情報操作のトリック』(1994年、講談社現代新書)、『北朝鮮報道』(2004年、光文社新書)、『数字で読む日本』(2009年、扶桑社新書)、『「反日プロパガンダ」の読み解き方:歪められた歴史認識を正すために』(2013年、PHP研究所)など

*6:1975年生まれ。1999年に『日蝕』(1998年、新潮社→2002年、新潮文庫)で芥川賞を、2009年に『決壊』(2008年、新潮社→2011年、新潮文庫)で芸術選奨文部科学大臣新人賞を、『ドーン』(2009年、講談社→2012年、講談社文庫)でBunkamuraドゥマゴ文学賞を、2017年に『マチネの終わりに』(2016年、毎日新聞出版→2019年、文春文庫)で渡辺淳一文学賞を、2018年に『ある男』(2018年、文藝春秋→2021年、文春文庫)で読売文学賞受賞

*7:2022年、岩波書店

*8:タイトルのエルピスとは、古代ギリシャ神話で様々な災厄が飛び出したとされる「パンドラの箱」に残された「希望」のことである(エルピス-希望、あるいは災い- - Wikipedia参照)

*9:2004年、『世界の中心で、愛をさけぶ』にヒロインとして出演。この作品は興行収入85億円の大ヒット作となり、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など多数の映画賞を受賞(長澤まさみ - Wikipedia参照)。

*10:エルピス-希望、あるいは災い- - Wikipediaによれば佐野亜裕美。2018年にTBSドラマ『カルテット』でエランドール賞を、2022年に関西テレビドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』で大山勝美賞を受賞

*11:著書『人質司法』(2021年、角川新書)