安倍晋三と『オール・ザ・キングスメン』(追記あり)

 安部晋三の死に「ある種の喜び」と「ある種の屈辱」を感じた&拉致被害者家族会を批判する、ほか - bogus-simotukareのブログとは別途思いついたことがあるので、書いておきます。
 以前、拙記事「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」を笑おう・パート91(追記・訂正あり) - bogus-simotukareのブログヒューイ・ロング - Wikipediaルイジアナ州知事。大統領選出馬を画策しており暗殺されなければ彼が大統領になって米国がファシズム化した危険性も否定できないとされる*1)なる無茶苦茶な政治家を簡単に取り上げましたが「極右」「政治の私物化」「反対派による銃での暗殺(米国は銃の所有が条件付きで合法、日本は原則違法で山上の銃も手製という違いがありますが)」「暗殺によって皮肉にも政治が正常化したこと」では「安倍を連想させる御仁」といっていいでしょう(「極右」「政治の私物化」に限定すれば大阪維新も連想させる)。
 違いがあるとすれば【1】「ロングはたたき上げでそれなりに有能」なのに対し、安倍は「祖父・岸元首相」「父・安倍晋太郎元外相」の七光り、【2】ロングは「富の再分配」をアピールしたが、そうしたところは安倍にはない(なお、維新にもないと思います)という所でしょう。
 なお、ロングについては

ヒューイ・ロング - Wikipedia参照
◆土田宏*2『幻の大統領ヒューイ・ロングの生涯』(1984年、彩流社
◆三宅昭良*3アメリカン・ファシズム:ロングとローズヴェルト』(1997年、講談社選書メチエ

と言う研究書があります。
 また、ロング暗殺は

オール・ザ・キングスメン - Wikipedia(1949年)
→ロバート・ペン・ウォーレンの小説『オール・ザ・キングスメン』の映画化。第22回アカデミー賞(1950年)で、作品賞、主演男優賞(ロングがモデルのルイジアナ州知事ウィリー・スタークを演じたブロデリック・クロフォード*4)、助演女優賞(スタークの愛人セイディ・バークを演じたマーセデス・マッケンブリッジ)の3部門を獲得
オール・ザ・キングスメン (2006年の映画) - Wikipedia
 1949年映画のリメイク

として映画化されています。
 ただし映画は「ロングがモデルの政治家」であってロングそのものとして描かれてないという意味で

金環蝕 (石川達三の小説) - Wikipedia
 石川達三の小説(現在は岩波現代文庫)を1975年(昭和50年)に山本薩夫監督が映画化。
 池田*5首相と鹿島建設九頭竜川ダム汚職事件 - Wikipediaをモデルにしている。
 ただし「池田首相→寺田首相(久米明)」「鹿島建設→竹田建設(九頭竜川ダム建設を特殊会社である電源開発*6(当時は大蔵省が株の過半数以上を保有)から落札。池田の有力支持者だったため汚職が疑われた)」「福井県九頭竜川ダム→福岡県の福流川ダム」など全て仮名になっている。

と似ていますが。
【追記】
 コメント欄の「アデナウアー」云々ですが「首相就任時期(終戦直後)」といい、「その政治的性格(戦後体制に大きな影響を与えた)」といい、日本でアデナウアーにあたるのは勿論「吉田茂」でしょう。
 「(九条改憲で?)歴史に名を残したい→歴史に名を残した『ドイツ統一のコール』になぞらえた(まあそれだって異常ですが)」ならともかく「安倍が自分をアデナウアーになぞらえた」というのは「はあ?」です(「西ドイツ再軍備=日本の九条改憲」の理解だとは思いますが、今の日本と当時の西ドイツでは政治状況があまりに違いますからね)。

*1:なお、州知事出身の大統領としてはモンロー(バージニア州知事、マディソン政権国務長官などを経て大統領)、ビューレン(ニューヨーク州知事、ジャクソン政権副大統領を経て大統領)、タイラー(バージニア州知事。ハリソン政権副大統領。肺炎でハリソンが大統領在任中に死去したことで大統領に昇格)、ポーク(テネシー州知事)、ヘイズ(オハイオ州知事)、クリーブランドニューヨーク州知事)、マッキンリー(オハイオ州知事)、セオドア・ルーズベルトニューヨーク州知事)、ウィルソン(ニュージャージー州知事)、クーリッジ(マサチューセッツ州知事。ハーディング政権副大統領。脳梗塞でハーディングが大統領在任中に死去したことで大統領に昇格)、フランクリン・ルーズベルトニューヨーク州知事)、カーター(ジョージア州知事)、レーガンカリフォルニア州知事)、クリントンアーカンソー州知事)、ブッシュ子(テキサス州知事)がいる(歴代アメリカ合衆国大統領の一覧 - Wikipedia参照)。

*2:城西国際大学名誉教授。米国政治史、特にケネディ研究が専門。著書『ケネディ兄弟の光と影』(1992年、彩流社)、『秘密工作ケネディ暗殺』(2003年、彩流社)、『ケネディ:「神話」と実像』(2007年、中公新書)、『ケネディと日本』(2007年、NHK出版)など

*3:東京都立大学教授

*4:1911~1986年。角川映画人間の証明』(1977年公開)でニューヨーク市警察27分署長オブライエンを演じた事でも知られる(ブロデリック・クロフォード - Wikipedia参照)。

*5:大蔵次官から政界入り。吉田内閣蔵相、通産相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相などを経て首相

*6:小説では電力建設、映画では電力開発