今日の産経ニュース(2022年12/18分)(注:横溝『獄門島』のネタばらしがあります)

【気になる!】新書『年収443万円』小林美希著 - 産経ニュース
 平均年収が「443万円」とは明らかに安すぎです(著者・小林氏、版元・講談社の問題意識も同じでしょうが)。
 平均なので当然「もっと高い年収(1000万円など)」もある反面、もっと安い年収(200万円*1、300万円*2など)もあるわけです。
 政治、社会(労組運動を含むがそれだけではない)の力で年収をもっと上げていく必要があります。
 それにしても

◆(ボーガス注:価格の安い)サイゼリヤは神
◆昼食は必ず500円以内
→「自作の弁当」ならともかく、「ほか弁やコンビニ、スーパーの弁当」「ファストフードやレストランチェーン」でもある程度立派なモノ(幕の内弁当、ビッグマックのセット(ポテト、ドリンク付き)、すき焼き定食など)だと確実に500円は超えます。
 「自作の弁当」でない限り「ハンバーガーのみ(ポテト、ドリンクなし)」「おにぎりやサンドイッチのみ」「のり弁」等という貧相な食事は避けられません。
スターバックスを我慢
◆ラーメンは贅沢
→勿論、いわゆる「高級店、専門店のラーメン(今や1000円、2000円台も珍しくない)」ではなく、比較的安価な「町中華」や「チェーン店(餃子の王将幸楽苑、日高家、山岡家など)」のラーメンでしょう。
◆病気が見つかるといけないので健康診断は受けない*3
【いずれも小林著書の帯やアマゾン紹介の文句】

とはげんなりさせられます。
 なお、著者の小林氏は、今回の『年収443万円:安すぎる国の絶望的な生活』(2022年、講談社現代新書)以外にも

◆『ルポ正社員になりたい:娘・息子の悲惨な職場』(2007年、影書房
◆『看護崩壊:病院から看護師が消えてゆく』(2011年、アスキー新書)
◆『ルポ職場流産:雇用崩壊後の妊娠・出産・育児』(2011年、岩波書店
◆『ルポ産ませない社会』(2013年、河出書房新社
◆『ルポ保育崩壊』(2015年、岩波新書)
◆『ルポ母子家庭』(2015年、ちくま新書)
◆『夫に死んでほしい妻たち』(2016年、朝日新書)
 アマゾンの著書紹介を見るに、斎藤茂男*4『妻たちの思秋期』(1982年、共同通信社→1994年、講談社+α文庫)の2016年版のようです。
◆『ルポ看護の質:患者の命は守られるのか』(2016年、岩波新書)
◆『ルポ保育格差』(2018年、岩波新書)
◆『ルポ中年フリーター:「働けない働き盛り」の貧困』(2018年、NHK出版新書)

と言った著書があります。


【SAITAMA珍奇ツアー】学校裏の河原に大量の手榴弾!? 軍需工場跡地に眠る戦争のリアル 川越市 - 産経ニュース

 川越市の川越東高の裏にあるその河原に降り立つと、貝塚のような一画が広がっていた。目をこらすと、丸い容器を思わせる陶器の破片の集まりだった。
 この陶片は、実は戦時中に作られた「陶製手榴弾」の容器の残骸。関係者によると、陶製手榴弾は、それぞれ現在のふじみ野市川越市にあった「陸軍造兵廠川越製造所」の下請け工場だった「浅野カーリット埼玉工場」で製造されていた。
 物資不足の戦時下で、金属の代用品として陶器が採用されたのだとか。廃棄された容器がそのままになっているらしい。
 ふじみ野市の「市立上福岡歴史民俗資料館」には造兵廠に関する展示があり、原形をとどめた陶製手榴弾も見られる。

 他にもググると以下の記事がヒットします。

浅野カーリット埼玉工場跡と四式陶製手榴弾
 浅野カーリット埼玉工場の跡地は、川越東高校第2グラウンドなどに姿を変えている。
 第二次世界大戦末期、金属資源が欠乏していた日本では、金属の代用品として、なんと陶器で「手榴弾」の製造がおこなわれていたのだ。
 全国各地の陶器・瀬戸物の名産地では、手榴弾として使用されるベースの陶器が作成され、この地にあった「浅野カーリット埼玉工場」に集められた。
 そして、「浅野カーリット」で爆薬(カーリット)が詰められて「陶製手榴弾」が製造された。
 戦後、手榴弾に使われる予定だった大量の「手榴弾型の陶器」が、工場敷地の隣の河川敷に廃棄され、そのまま現在の姿となっている。
◆浅野カーリット
 創業者は浅野総一郎(1848-1930)。一代で浅野財閥を作り上げた実業家。日本のセメント産業を軌道に乗せ浅野セメント*5を育成した「日本のセメント王」と称される。
 1916年に浅野総一郎スウェーデンのカーリット社から日本における「カーリット爆薬」の製造販売権を取得。
 1934年(昭和9年)に浅野カーリット株式会社が創立。埼玉工場は1939年ごろから操業という。
 浅野カーリットは戦後に「日本カーリット株式会社」に。
 陶器型手榴弾は、本来の鉄器で作られる手榴弾と比べ、威力は弱かったという。

重厚感ある備前焼 人間国宝が作った手りゅう弾|NIKKEI STYLE
 約10年前から研究を続けている立命館大学の木立雅朗教授によると、陶器製の手りゅう弾は金属資源が不足した終戦前の1年間に有田や信楽など全国の焼き物産地で作られた。大規模な地上戦が繰り広げられた沖縄では実際に使用された形跡があるという。
「火薬が詰まった状態で出土した際は不発弾と同じように処理を行っている」(陸上自衛隊那覇駐屯地)。
 木立教授は「伝統産業までもが戦争に関わっていた。そうした負の歴史もしっかりと見つめていかなければ」と訴える。

 こんな経済力で大国米国に戦争を挑んだのだから何とも無謀です。産経もこういうまともな記事だけ書いてれば批判しないのですが。
 金属資源の不足と言えば、横溝正史「獄門島」にも「戦時中、金属資源の回収として持ち去られた鐘楼が戦後戻ってくる→鐘楼を利用した殺人(遺体を鐘楼に隠す)」と言う形で出てきますね。
 話が脱線しますが「金田一」初期作品には、他にも「復員詐欺(獄門島)」「戦争のために顔が焼けただれ常時ゴムマスクの自称・犬神佐清犬神家の一族)」など戦争を感じさせる描写があります。

参考

獄門島 - アニヲタWiki(仮) - atwiki(アットウィキ)
 金田一は聞いた。もし千万太と一が共に戦死した場合、嘉右衛門はどうするつもりだったのか、と。
 了然はこう答えた。もし、二人が死んだ際には、その時は諦めてこの計画は実行に移さず、三姉妹が少しでもまともな婿を取ってくれることを願い、その婿養子に全てを託すつもりだったと。
 金田一は全てが明らかになった後、前夜に村長の真喜平が島から逃亡したこと、医者の幸庵が「ある知らせ」を聞いて、発狂したことを話す。
「和尚さん。これは言いたくないことです。しかし、隠してもいずれあなたの耳に入ります。」
「さっき神戸で復員詐欺の男がつかまりました。その男は、戦友の家に『死んだ』と告げた際にはお礼があまりもらえず、『生きている』と告げるとお礼を奮発してくれるということに目をつけ、戦死した戦友も生きているということにして知らせていたようです。」
「き、金田一さん、そ、それじゃ一さんは・・・?」
「そうです。一さんは戦死したのだそうです。」
 つまり、三人は殺人を犯す必要など無かったのである。
 不意に了然さんは立ち上がった。その目は大きく見開かれ、頬に血管が走った、かと思うと顔色がギタギタと紅潮してきた。
 「南無……嘉右衛門どの……」
 了然さんはそうつぶやくと、朽木を倒すようにひっくり返った。
 それが了然さんの最期であった。
 救いようのない展開だったためか、初映画化の1949年版(片岡千恵蔵主演)では「一は復員済みで、家出しただけ。(最後に事件を聞いて戻ってくる)」となっていた。

*1:これについては、ググると、例えば松原惇子『年収200万円のハッピー生活術』(2011年、河出文庫)、横山光昭『年収200万円からの貯金生活宣言』(2017年、ディスカヴァー携書)、おづまりこ『おひとりさまのゆたかな年収200万生活』(2018年、メディアファクトリー)、森永卓郎『年収200万円でもたのしく暮らせます:コロナ恐慌を生き抜く経済学』(2020年、PHPビジネス新書)と言った著書がヒットします。

*2:これについては、ググると、例えば森永卓郎『年収300万円時代を生き抜く経済学』(2003年、光文社→増補版、2019年、ゴマブックス)と言った著書がヒットします。

*3:それ以前に「診察料がかかるから健康診断は受けない」ではないか。

*4:1928~1999年。共同通信社会部、次長、編集委員を歴任。著書『破局:現代の離婚』(1987年、ちくま文庫)、『サラリーマンは幸福か:慶応Kゼミ24人の軌跡』(1988年、ちくま文庫)、『わが亡きあとに洪水はきたれ!:ルポルタージュ巨大企業と労働者』(1990年、ちくま文庫)など

*5:日本セメントを経て現在は太平洋セメント