TBSラジオ・森本毅郎スタンバイ『進む「脱日本」』(2023年2月17日記載)

進む「脱日本」賃金安く弱体化 | トピックス | TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~

(取材:田中ひとみ)
 介護や医療の現場では人手不足に悩み、海外からの人材を頼りにするケースも多いようですが、その逆に、最近、日本人が、海外に働きに出てしまうパターンが増えているようです。
 ますます国内は人手不足になりそうですが、でも、なぜ海外へ行くのか?取材しました。
◆オーストラリアの看護師「日本の給料の倍」
 まずは、オーストラリア在住の「看護師」平山 忠男さんに伺いました。

看護師・平山 忠男さん(オーストラリア・メルボルン在住)
 先週に大体4~5日働いて、日本円に換算して、(ひと月に)80万円位。
 全然違う、私も働いてみてびっくり。
 東京で看護師やってたときの給料の倍ぐらい。
 やってる事は一緒です。入院している患者さんのお世話、薬をあげたり、食事の介助をしたり。言葉が違うだけっていうぐらい。
 まだ夜勤とかもしてないので、夜勤も始めたら多分もうちょっともらえますね。
 いや大きいですね、だから私は日本はもう一時帰国で帰るだけの国かなと思ってますね、当分は。

(取材:田中ひとみ)
 1日8時間勤務で、ひと月の給料が、80万円!
 これは額面なので、税金などを引くと手取りは減りますが、それでも、東京の大学病院に勤めていたときと比べると、好待遇だそうです。
 でも、その分、物価も高いようで、例えばファストフード店で、ハンバーガー・ポテト・ドリンクのセットを、日本で頼むと700円ぐらいですが、現地では、1000円を超えてしまいます。
 また、都市部のワンルームの家賃は、日本では7~8万円ていどですが、15万円以上かかったりと、やはり物価が高く、費用はかさむようです。
 ただ、それを差し引いても、「収入の高さが上回る」ということ。
 さらに、ご自身が性的マイノリティということもあって、住みにくい日本より、ますます海外に目が向き、同性婚が認められているオーストラリアを選んだそうです。
 こうした海外で働く方は、看護師だけではありません。日本からオーストラリアに移住した「介護士」、奥村友理さんです。

介護士・奥村 友理さん(オーストラリア・ジンダビン在住)
 週5日、38時間、週に働くという契約です。
 今月は49万円、額面上なりますね、大きいですね。残業とかもしないですよ。
 (ボーガス注:日本で)看護師のときは、「仕事前残業」当たり前、仕事後の残業も当たり前。だけど、残業代は出てなかったと思います。

(取材:田中ひとみ)
 奥村さんの場合、平日は時給2900円、土曜は4000円、日曜は4700円。さらにリーダー職を任されているので、プラスの上乗せもあり、ひと月の稼ぎは「49万円」ということです。
 実は、奥村さんは現在妊娠中なんですが、オーストラリアでは、夫も育休を取るのが当たり前。
 日本でも最近、「男性も積極的に育休を取っていきましょう!」と聞くようになりましたが、日本の男性の育休取得率は、厚生労働省が2021年度に発表した男性の育休取得率は、およそ「14%」。
 一方、オーストラリアでは、「85%」の男性が育休を取得していて、休むのが当たり前の社会が実現しています。
 海外へ働きに出る日本人が出てきた一方で、日本国内では、これまで支えてくれていた外国人の働き手に、異変が起きているようです。
 千葉県君津市の「特別養護老人ホーム 夢の郷」でヘルパーとして働くベトナム人女性 「ロアンさん」と、施設の代表・津金澤寛さんに、何が起きているのか伺いました。

特別養護老人ホーム・夢の郷」ヘルパー ロアンさん
 お母さんの生活のために、お金を送っています。今年、まだです。(ボーガス注:円安なのでベトナムに送金すると)減ってる、(ボーガス注:円高になるまで)まだ送りたくないです…。
つばさグループ(株式会社オールプロジェクト)代表・津金澤寛さん
 いま円安だから今送らないで、ちょっとお金貯めといて、レートが変わったら送ろうか、みたいなことはよく言ってる。
 2割~3割マイナスになるっていうのが、今の円安の、「ベトナムドン」と「日本円」との関係。大体3ヶ月で10万~15万位、仕送り用のプールのお金ができる。で、15万円が、12万円になっちゃうとか。
 ベトナム自体がどんどん経済が発展してきてるので、無理して外行かなくても、自国で働けるっていう状況に変わってきてはいます。
 日本の介護業界に対してベトナム技能実習生の子たちが、あまり魅力を感じなくなっている。
 その結果、日本の介護業界におけるベトナム人の比率が低下してるんじゃないか。

(取材:田中ひとみ)
 ベトナムから技能実習生が集まりにくくなっているということですが、背景には、円安や、ベトナム本国の賃金上昇、(ボーガス注:オーストラリアなど)なにより日本より好条件な国が増えていることがあるようです。
 様々な声が出ましたが、結局、そもそも日本はすべての分野で給料が上がっておらず、その中でも、看護や介護の給与は、さらに低い水準です。
 例えば介護は、全ての産業の平均給与と比べて、17%も低く、年収では75万円くらい少ないという統計もでています。
 そして、そこに円安まで襲ってきて「目減りしている」ということでしたが、給料も低いのに加えて、性的マイノリティに不寛容、男性の育児参加も進まない。このままだと、日本が世界から取り残されてしまいます。

 何ともため息が出ますね。こうした報道をしたTBS「森本毅郎スタンバイ」については一定の高評価をしますが。文化放送ニッポン放送はそう言う点(社会や政治への批判精神)では「TBSラジオと比べてダメだ」と思いますね。