今日のロシアニュース(2023年6月8日分)(副題:ダム崩壊事件ほか)

ロシアへの反転攻勢始まった?F16は?ウクライナ国防相に聞く | NHK

※以下、レズニコフ*1防相の話。インタビューは6月4日に行いました。
 F16戦闘機の投入時期は秋か冬の時期になるだろうと考えています。
 パイロットの訓練には時間がかかりますし、それだけでなく、パートナー国から技術者や専門家を派遣してもらうことも必要です。
 非常に高度なシステムを使うときは、メンテナンスや修理が必要で、それにはさらに時間がかかるのです。残念ながら、この夏はF16戦闘機なしで反転攻勢の作戦を進めなければなりません

 やたら楽観的な論者に比べれば「当面はF16は投入できない」と見ている点は冷静と言えるのではないか。これについては「NATO加盟国がF-16戦闘機をウクライナへに移転する場合、アメリカはそれを妨げない」の見方:人間を中心に主体的に考えるとは一体どういうことを指すのか: 白頭の革命精神な日記を紹介しておきます。

 私の考えでは、真の反転攻勢は2022年2月24日、ロシアが軍事侵攻を開始したときから始まっているのです。

 「反転攻勢は始まってるのか、まだならいつ始まるのか」というNHK記者への回答ですが「ウクライナ戦争当初から反転攻勢は開始されてる」とは完全に話のすり替えですね。
 あげく

 光栄なことに、われわれウクライナは今から100年前に(日露戦争で)日本の艦隊が成し遂げたのと同じことを再び実現しました。日本が100年前に対馬周辺で(ボーガス注:日本海海戦でロシア艦隊打倒を)成し遂げたのと同じように、われわれはロシアの黒海艦隊の旗艦「モスクワ」を沈没させました。これは歴史上2度目の出来事になります。
 今、黒海の底に沈んでいるロシアの軍艦は、私たちが勝利すれば、有名なダイビングスポットになるでしょう。そのときには、私がダイバーとして案内するのでお越しください。

 「日本人(NHK記者)相手に日本へのおべっかを言えばごまかせる」とでも思ったのか反転攻勢と何一つ関係ないことを言い出します(苦笑)。
 ここで「反転攻勢と関係ないことを言ってごまかすな」「反転攻勢がいつか言えないのか?」等とNHKは突っ込めなかったのでしょう。完全に舐められてると言っていい。
 それにしても国防相も「軍事機密なのでノーコメント」と言った方がまだましではないか。


【主張】原発取水ダム爆破 露は「戦争犯罪」重ねるな - 産経ニュース
 説明になっていない「プーチンご乱心」説が開戦以来、罷り通っている:カホフカ水力発電所ダム決壊事案を巡って: 白頭の革命精神な日記も指摘していますが、
1)ダムを破壊してもプーチンロシアにとって軍事的な意味であまり利益があるとは思えない
2)むしろ国際的批判を呼ぶ
3)今のところプーチンロシアの犯行と断定できる確実な証拠はない
ので現時点では「ロシアの犯行」の「可能性」を指摘する人間はいても、「ロシアの犯行」と断定する人間は「まともな人間では皆無(衛星画像から分かったウクライナ・ダム破壊の被害 専門家「ロシア側が何らかの状況判断で爆破した」可能性【news23】 | TBS NEWS DIG (1ページ)によれば、TBS相手にロシア犯行説を断定的に語ったらしい高橋杉雄*2防衛省防衛研究所室長はまともとはとても言えないでしょう)」なのに記事本文だけでなくタイトルでも「ロシアの犯行」を断定するとは産経らしい「飛ばし」ぶりです。
 説明になっていない「プーチンご乱心」説が開戦以来、罷り通っている:カホフカ水力発電所ダム決壊事案を巡って: 白頭の革命精神な日記によれば、あのロシア批判派・小泉悠*3ですら、日テレ「ニュースゼロ」において

小泉悠さん
「今、言われている3つ目*4の可能性としては、『事故』があります。このダムはこれまでに2回攻撃を受けていて、かなりダメージが蓄積していたと言われています。また、今回の破壊の直前に大雨が降っており、貯水量がものすごく増えていたということです。さらに、数日前から一部が壊れ始める兆候が見られていました。もしかすると、ものすごく悪いタイミングで事故が起こってしまったということも指摘されていて、この可能性も排除できないと思います」

として「事故」の可能性を指摘しています。またコピペ拒否設定なのでコピペできませんが巨大ダム破壊で大洪水 ウクライナに被害・ロシアも損…専門家「メリット考えにくい」でも山添博史*5防衛省防衛研究所米欧ロシア研究室長が「事故」の可能性を指摘しています。
 一方で衛星画像から分かったウクライナ・ダム破壊の被害 専門家「ロシア側が何らかの状況判断で爆破した」可能性【news23】 | TBS NEWS DIG (1ページ)が「ロシア犯行説」だけを報じてるのは明らかに「偏向報道」で「不適切」でしょう。
 そもそも

衛星画像から分かったウクライナ・ダム破壊の被害 専門家「ロシア側が何らかの状況判断で爆破した」可能性【news23】 | TBS NEWS DIG (1ページ)
「この1週間以内にそのウクライナ軍がドニプロ川を渡る作戦を考えていたとしたら、それはできないという意味で、短期的にはロシア側の有利になります」
「ただ夏にかけて水が引いていけば、結局克服可能な問題になってくるので。長い目で見るとそんなに大きな影響があるわけではないと思いますね」

と言うから高橋には呆れます。であるなら「あまりメリットがない→事故の可能性(小泉や山添)」という判断を高橋は何故述べないのか。何故「ロシアにはあまりメリットがない」と評価しながら「ロシア犯行説」を放言してしまうのか。「将来はともかく」現時点ではそんな断言ができる証拠は何処にもないでしょうに。そしてTBSは何故高橋の放言を受け入れてしまうのか。それとも高橋も小泉や山添のように「事故説」を述べたのにTBSが「偏向報道」したのか?
 説明になっていない「プーチンご乱心」説が開戦以来、罷り通っている:カホフカ水力発電所ダム決壊事案を巡って: 白頭の革命精神な日記が批判するように「プーチンは非合理主義だから何でもあり(あるいは、ロシア軍の統制が取れておらず、現場が好き勝手に暴走してる)」という偏見が高橋やTBSにあるのではないか。

*1:キーウ市副市長、副首相等を経て国防相

*2:著書『現代戦略論』(2022年、並木書房)、『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』(編著、2023年、文春新書)等

*3:東京大学専任講師。著書『現代ロシアの軍事戦略』(2021年、ちくま新書)、『ウクライナ戦争』(2022年、ちくま新書)、『ウクライナ戦争の200日』(2022年、文春新書)など

*4:1つ目はロシア犯行説、2つ目はウクライナ犯行説

*5:著書『国際兵器市場とロシア』(2014年、東洋書店ユーラシアブックレット)等