11年前の日弁連要望書【調査会NEWS3842】(R6.7.8)|荒木和博ARAKI, Kazuhiro
平成25年(2013)に日弁連の調査報告書がまとまり、当時の安倍晋三総理兼拉致問題対策本部長、古屋圭司*1国家公安委員長兼拉致問題担当大臣、米田壮*2警察庁長官への(ボーガス注:特定失踪者を拉致認定せよという特定失踪者問題調査会(荒木が代表)の)要請が行われました。
しかし安倍も古屋もそんな要請には応じませんでした。特定失踪者は
◆国内で何人も発見され、その発見者は全て北朝鮮とは無関係、ほとんどが自発的失踪
→例えば19年ぶりに発見された失踪者、蒸発理由は「愛人との駆け落ち」(全文) | デイリー新潮(2016.7.23)
北朝鮮による拉致が疑われ、19年間に亘って消息を絶っていた男性が「発見」された。無事を祈り続けた家族の喜びもひとしおのはずだが、そのウラで、「奇跡の生還(?)」を果たした宮内和也さん(51)は、ある複雑な事情を抱えていた。蒸発の理由が、拉致どころか、愛人との駆け落ちだったのだ。
宮内さんが妻と3人の子供を残して失踪した背景には、知られざる人間ドラマが隠されていた。
県警関係者が語るには、
「蒸発した理由は愛人との駆け落ちで、これまでその女性と県外で暮らしていたことが分かったのです。最近になって2人は宮内さんの女性問題を巡って喧嘩をしたようで、激怒した女性が警察に彼の居場所を伝えた。結果、今回の発見に至ったのです」
親族が手放しで喜べないのも頷けるハナシである。
ある親族男性が、
「もちろん、生きて見つかったことは嬉しいけどやな。和也の奥さんは別の男性と生活しとるし、今さら一喜一憂することもないわ」と言えば
実母は、
「ほんまに何も分からんのですわ……」と繰り返すばかり。
深い夢から醒めたような「発見」は、元特定失踪者の故郷に安堵よりも困惑をもたらしていた。◆一部、「足立区女性教諭殺害事件」(殺害は1978年、2003年に特定失踪者認定、2004年に遺体発見)といった犯罪事件もあるが犯人は北朝鮮とは無関係
なんて話では、安倍ですら「政府拉致認定」なんてする気にならないのは当然でしょう。安倍ですら認めないんだから、菅(前首相)や岸田(現首相)ならなおさら認めるわけがない。
足立区事件については以下の報道を紹介しておきます。
◆朝日新聞「26年前の殺人で男が自首 特定失踪者名簿の女性」2004.8.22
26年前、東京都足立区の区立中川小学校の教諭だった石川千佳子さん(当時29)を殺害したとして、同校で警備員をしていた千葉県内に住む男(68)が警視庁綾瀬署に自首した。同庁が22日、男の供述に基づいて同区内にある男の元自宅の床下を捜索したところ、石川さんとみられる遺体が見つかった。
同庁は、遺体を司法解剖して身元を確認したうえで、男を殺人と死体遺棄容疑で書類送検する方針。しかし事件は時効(15年)が成立しており、不起訴になる見通し*3だ。
石川さんは北朝鮮によって拉致された疑いが否定できないとして、拉致被害者家族の支援団体「救う会」が設けた*4特定失踪者問題調査会が氏名を公表していた。
捜査1課の調べや男の供述によると、男は学校が夏休み中だった1978年8月14日午後4時半ごろ、中川小の廊下で石川さんと口論となり、口をふさぐなどして殺害。遺体を車で当時住んでいた足立区の自宅に運び、床下に埋めたという。
男は最近までこの家に住んでいたが、「家が区画整理のため取り壊されることになり、更地になったら見つかると思った」と、21日に自首*5した。
当時、北海道の石川さんの父親が警察に家出人捜索願を出していた。
北海道小樽市に住む石川さんの弟憲さん(53)の話などによると、石川さんは失踪直前の7月末から8月12日まで東京都教職員生協主催の東西ヨーロッパ研修旅行に行っており、行方不明になったのは帰国して間もない時期だった。8月15日になって、実家に同校校長から、「当直なのに出勤していない」と電話があり、行方不明になったことがわかった。
その後、1987年の大韓航空機爆破事件の実行犯とされる金賢姫・元死刑囚*6の教育係「李恩恵*7」が石川さんではと考え、拉致の可能性を疑うようになったという。特定失踪者問題調査会にも弟が届け出ていた。男は石川さんの名が公表されていたことを知らなかったという。
憲さんは「一つの区切りがついた。失踪の5年後に心配しながら亡くなった父と同じ墓に入れてあげられる」と話している。
◆報道の魂『姉の無念を思う』2007.1.21放送
足立区内の小学校で、教員石川千佳子さんが警備員に殺害され、26年間、埋められていた事件。昨秋、遺族が起こしていた、民事訴訟の判決が下された。
東京地裁は、(ボーガス注:1978年の殺害時から20年の時効をカウントし)殺害行為に対する賠償は認めず遺体の隠匿行為についてのみ、わずかに賠償責任を認めた。この判決に、石川憲さん、雅敏さん兄弟は、すぐに控訴をした。
国家が時効を根拠に、犯人に罰を科さない*8のならば遺族に残された手段は、民事に訴えることだけであり、それが姉の無念を晴らし、犯した罪の意味を、男に少しでも知らしめることだと、石川さんは考えてきた。
しかし、今回の判決を受け、変化が生まれつつある。控訴審では、「よき判例」を作り、この日本という法治国家の不条理を問いたいという強い思いが加わったのだ。
石川さんは言う。
「時効のような区切りはあってもいい。しかし、新しい事実が出てくれば、いつでも捜査は再開されるべきだ」と。
石川さんたちの願いが届き、少しでも心の平安がおとずれることとは何か。また、それは、私たちに何を訴えるのか。
番組では、殺人罪に時効がないため20年以上もの捜査の結果、犯人逮捕に至ったアメリカでのある殺人事件を対比させ、姉のためにと、この国の法の不条理に立ち向かう、石川さん兄弟の思いを伝える。
昨年、8月放送の続編である。
それにしても荒木の記事が事実なら、「日弁連はアホか」ですね。「足立区女性教諭殺害事件」(殺害は1978年、2003年に特定失踪者認定、2004年に遺体発見)があるのに何で特定失踪者の拉致認定を求める意見書を出すのか。
「足立区女性教諭殺害事件」だけでも特定失踪者認定がデタラメであることは明らかです。
それにしても足立区事件は
◆遺体発見時(2004年)には、殺人(1978年)の訴追時効(当時は15年)が成立し、犯人が処罰を受けないことに不満を持った遺族が「殺人の訴追時効」廃止運動を展開し、現在では殺人の訴追時効が廃止された
◆高裁(二審)が「殺人(1978年)」から「民事賠償の消滅時効*920年」をカウントして、訴訟提起時には「消滅時効」成立とした判断を、最高裁が「遺体発見時(2004年)まで訴訟提起は無理なので、殺害時(1978年)では無く、遺体発見時(2004年)から20年とカウントすべき(その場合、20年の消滅時効は成立しない)」として、二審での「消滅時効成立」判断をひっくり返した(先日の消滅時効成立を認めなかった強制不妊訴訟・最高裁判決の解説記事でもこの足立区事件・民事訴訟についての最高裁判決に触れられていた。なお、二審判断が最高裁でひっくり返ることは勿論あまりないことです)
→以上については足立区女性教諭殺害事件 - Wikipediaでもある程度のことが分かります。
ということで「かなり有名」であり、マスコミ記者の多くも知ってるでしょう(上で紹介した朝日新聞やTBSの記事はその一例)。
その場合に「石川さんの特定失踪者認定については知らなかった」なんてこともさすがにないでしょう。「足立区事件(明らかに特定失踪者の認定根拠が怪しい)」等が起こっても「特定失踪者認定のデタラメさ」を批判するマスコミがほとんど無いことには絶句ですね。
これまた
の一例でしょう。
それどころか最近でも
◆徳島:特定失踪者 伝え続ける:地域ニュース : 読売新聞(徳永翔太)2024.6.19
警察庁が、北朝鮮に拉致された可能性を指摘する行方不明者は全国に約900人おり、賀上文代さん(72)さんの長男・大助さん(失踪当時23歳)はその1人という。
大阪府内の会社に勤めていた大助さんがいなくなったのは2001年12月22日夜。
警察に捜索願を出したが、手がかりはゼロ。
賀上さんは次第に、北朝鮮に連れ去られた可能性を考えるようになった。
拉致問題は2002年10月に被害者5人が帰国して以降、大きな進展がない。20年以上たち、家族の高齢化が進み、親世代の多くが亡くなっている。問題を詳しく知らない若い世代が増え、世論の関心が薄らいでいく懸念*10はぬぐえない。
「拉致問題と一緒に、息子も忘れられてしまうのが怖い」。
涙を流しながら、そう話した賀上さん。この問題を継続して報じていく必要性をかみしめた。
だから呆れます。「小泉訪朝が2002年9月」なんだから「2001年12月22日(小泉訪朝の約9ヶ月前)の賀上大助さん失踪」が北朝鮮拉致の訳がない。こんな時期に北朝鮮も拉致しない(というか、世間で拉致疑惑が広く知られてるので拉致したくてもできない)でしょう。どこまで賀上大介さんを「間抜け扱い」してるのか。
ご家族もさすがにその程度の常識は持って欲しいし、ましてやマスコミ(読売新聞)がこれを無批判に「この問題を継続して報じていく必要性をかみしめた。」と報じるとはどう言う神経なのか。本気で「賀上大助さん失踪」について、読売(徳永翔太記者や彼の上司)は北朝鮮拉致の可能性があると思ってるのか。とてもそうとは思えません。呆れて二の句が継げません。
この読売記事も
の一例でしょう。
「足立区事件(明らかに特定失踪者の認定根拠が怪しい)」等が起こっても「特定失踪者家族会」に参加する家族(例:賀上文代さん)がいることにも絶句です。
賀上大介さんも
1)19年ぶりに発見された失踪者、蒸発理由は「愛人との駆け落ち」(全文) | デイリー新潮の「宮内和也さん」のような自発的失踪の可能性も
2)「足立区事件の石川千佳子さん」と同様に何者かに殺害されてどこかに埋められた可能性(勿論犯人は北朝鮮と無関係)も当然あります。
*1:第二次安倍内閣国家公安委員長、自民党選対委員長(第二次安倍総裁時代)等を歴任
*2:警視庁目黒警察署長、大阪府警刑事部捜査第二課長、警察庁交通局交通規制課長、和歌山県警本部長、警察庁刑事局暴力団対策部暴力団対策第一課長、長官官房会計課長、警視庁刑事部長、京都府警本部長、警察庁刑事局長、官房長、警察庁次長等を経て警察庁長官。現在は退官し、公益財団法人公共政策調査会理事長(米田壮 - Wikipedia参照)
*3:これに不満を持った遺族が殺人の時効廃止運動を展開、今は法改正で廃止されています。
*4:特定失踪者問題調査会は救う会とは別団体なので「設けた」というのは間違いです。
*5:勿論、「殺人の時効成立」も自首を後押ししたでしょう。
*6:「元」なのは死刑判決の後に恩赦があったため。
*7:現在では「政府認定拉致被害者・田口八重子さん(元拉致被害者家族会代表・飯塚繁雄の妹、現在の拉致被害者家族会事務局長・飯塚耕一郎の母)」と推定されている。飯塚繁雄についてはけっきょくのところ「巣食う会」にものを言えない人だった(拉致被害者家族会前代表飯塚繁雄氏の死によせて) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)(2021.12.19)を紹介しておきます。
*8:これに不満を持った遺族が殺人の時効廃止運動を展開、今は法改正で廃止されています。
*9:正確には「除斥期間」ですが「除斥期間と消滅時効」の違いは説明が面倒なので、より分かりやすい「消滅時効」と表現しています。
*10:懸念どころか「既に薄らいでいる」でしょう