高世仁に悪口する(2024年7/23日分)(副題:スポーツウオッシュ)

トランプ支持の深層にあるもの - 高世仁のジャーナルな日々

 アラバマ州の超保守エリアの敬虔なキリスト教徒の男性ドン。
「私たちが育った頃は、授業が始まる前に学校で毎朝お祈りがあったのです。毎朝です。そうやって私たちは育った。ところがマダリン・マーレイ・オヘアという女性(リベラル派の活動家)が裁判を起こして、お祈りを学校から追放してしまいました。それ以降です。アメリカ社会が変わり始め、ついには『メリー・クリスマス』も言わなくなった。『私はキリスト教徒ではないから聞きたくない』という人が出てきて、すると店は誰をも喜ばせる必要があるので、『ハッピー・ホリデー』と言うようになった」。妻がため息をついて言う。
「私たちの長年の習慣を変えてしまった。習慣を変えることはキツイ。誰でもそうでしょう?
(金成隆一『ルポ・トランプ王国2*1』P224-225)

 「生きる支え」が奪われそうになって不安に駆られた人々が、USA!を連呼しながら、「古き良きアメリカ」を取り戻すと約束するトランプ氏に惹かれていくのはある意味、自然な成り行きだろう。

 トランプを支持するような「白人保守派」にとっては「移民の増大」などによる社会変化は「古き良きアメリカ」や「生きる支え」の「崩壊」なのかもしれない。
 でも、きついことを言えば、それは単に「白人保守派の価値観」にすぎないわけです。
 「リベラル派(民主党支持層)」「非白人(黒人等)」にとってはトランプなど「恐怖」「嫌悪」等ネガティブな評価でしかないでしょう。
 大体、高世が紹介する白人保守層の発言「習慣を変えることはキツイ。誰でもそうでしょう?」はLGBTから批判される

「社会が変わってしまう」の印象は「明らかに否定的」 言葉のプロが分析 同性婚めぐる首相発言:東京新聞 TOKYO Web2023.2.15
 岸田文雄首相が同性婚制度に関して「社会が変わってしまう」とした国会答弁を撤回せず「ネガティブな発言をしたつもりはない」と述べたことに、釈然としない思いを抱いている人も多い。
 「明らかに否定的ニュアンスを表している」。
 祖父・金田一京助*2、父・春彦氏*3に続く日本語研究の第一人者である金田一秀穂杏林大名誉教授はそう言い切る。「外国人に日本語を教える時、『てしまう』というのは『残念だ』とか『よくないことで使う』と教えている」と解説する。
 首相は1日の衆院予算委員会で、同性婚制度導入について問われ「全ての国民にとっても家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と述べた。
 金田一氏は「試合に負けてしまった、入院してしまったと言う場合にはいいが、『結婚してしまった』と言うと、(ボーガス注:政略結婚など不本意な結婚という意味に取られて)とても残念な気持ちを伝えてしまうことになるので、使ってはいけないと教えている」と述べる。

という岸田の「社会が変わってしまう」発言と何が違うのか?。高世も岸田発言を批判していなかったか?

 いま世界はこれまでの宗教的コスモロジーが崩壊する人類史の画期を迎えている。これまでの確固とした世界観・人生観が崩れゆく不安が、イランやアフガンをはじめイスラム社会を席巻する「ムハンマドに還れ」の波、そして「美しい日本」を取り戻すとする我が国の保守主義など、「復古」の形で現れているのではないか。

 あまりにも話を単純化していますね。
 例えばイランについて言えば「ヒジャブ強制」等をする「保守派への反発」から、最近、改革派の大統領が誕生しました。
 また、イスラム社会(中東など)が高世が言うほど「イスラム原理主義ムハンマドに還れ)」に席巻されてるかと言えばそんなこともないでしょう。
 日本について言えば、いわゆる保守派(俺に言わせればただの極右ですが)が反発する「LGBT法の成立」が最近あった。
 高世が言うほど「日本の保守主義」が国民的支持があるなら「LGBT法」は成立しなかったでしょう。
 大体、日本の政治に話を限れば、保守主義(極右)のかなりの部分は「靖国神社」など戦前にルーツがあってずっと続いてきたわけです。最近始まったわけではない。
 日本において戦前美化の流れが今も残ったことは

賀屋興宣
 戦前、第一次近衛、東条内閣蔵相。戦後、終身刑判決を受けるが仮釈放。公職追放も解除され、政界に復帰。池田内閣法相、自民党政調会長(池田総裁時代)を歴任
岸信介
 戦前、東条内閣商工相。戦後、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相。安倍晋太郎*4の義父。安倍晋三*5の祖父。
重光葵
 戦前、東条、小磯内閣外相。戦後、戦犯として禁固7年。出所後、公職追放も解除され、政界に復帰。鳩山内閣外相

等、「戦前政治家」が「戦前の右翼的な考え」を保持し続けたまま、戦後も活動を続けたことが大きいでしょう。


なぜ?「左翼のダブルスタンダード」⑤ - 高世仁のジャーナルな日々

 7月末までに10万字の原稿を仕上げなくてはならず、このところ本ブログをだいぶサボってしまい失礼しました。

 「どこの出版社から何の本を出すのか?」はともかく、本でも出版するんですかね?

 テレビがパリ五輪での日本選手の活躍ぶりを一日中伝えるなか、五輪の報道を無視するというのは斎藤幸平*6東大准教授だ。29日、「ボイコットしてる。全然観てないですね」とTBSニュース23の生放送のスタジオで言ったのだ。理由は「スポーツウォッシュに加担したくない」から。
 「行き過ぎた商業主義が嫌いというのもあるんだけど、今回いちばん私が理由にしているのは、スポーツウォッシュに加担したくないから。やっぱりイスラエルの問題ですね。ロシアは戦争を理由に出ることができないわけですね。ところが、国際司法裁判所が、イスラエルがやってることはジェノサイドであり、占領政策自体も国際法違反だと勧告しているにもかかわらず、国際社会であるとかオリンピック協会というものがイスラエルの参加を認めているというダブルスタンダードがあると。
 これでみんなが盛りあがって『平和の祭典良かったね』とみんながなってしまったら、パレスチナの人たち、ガザの人たちが忘れられてしまって、このジェノサイドを覚えてる人たちがいないってことに私は少しでも抵抗したいなって思って観ないようにしている」
 小川彩佳キャスターから感想を聞かれた斎藤氏が「ボイコット」してると答えたわけだが、よく言った!

 「スポーツウオッシュ」とは「為政者に都合の悪い政治や社会の歪みをスポーツを利用して覆い隠す行為」だそうです。
 確かに

【#パリ五輪】日本選手団「TEAM JAPAN」がSNSでの選手への誹謗中傷に警告する緊急声明を発表。悪質なら「侮辱や脅迫に法的措置も検討」。オリンピック見るなら楽しく見ようよ。 - Everyone says I love you !
 オリンピックの放送ばかりで、日本や世界の大事な問題についての報道の優先順位が低すぎるとお嘆きのかたも多いでしょう。本当にテレビも他にやることないんかい!と思います。

等が批判するように五輪報道にかまけて「米軍基地問題」「広瀬めぐみ(自民参院議員)の秘書給与詐取」「兵庫県知事(維新系)のパワハラ」等、権力者(日本だと国政与党・自民や大阪与党・維新など)に都合の悪いことを報じない傾向が日本マスコミにはあると思います(斎藤氏の「スポーツウォッシュ」は専らイスラエルについてですが)。
 もともとは「ホワイトウオッシュ(「ウソをごまかす」「欠点を隠して良く見せる」)」と言う言葉があってそこから生まれた派生語だそうです。
 ググったところ、西村章*7『スポーツウォッシング:なぜ<勇気と感動>は利用されるのか』(2023年、集英社新書)なんて本がありますね。
 勿論、こうした「ウォッシュ行為(?)」はスポーツに限らないでしょう。例は何でもいいですが、維新が「大阪万博」を計画したのも「万博というイベント」の「感動」で「維新の問題点を隠そうとするイベントウォッシュ(?)」でしょう。皮肉なのは維新のもくろみに反し「大阪万博それ自体がガス爆発事故やパビリオン建設の遅れなど、維新の無能さ、無責任さを象徴する政治問題と化していまい、かえって維新の支持率が落ちたこと」ですが。
 あるいは「完全な思いつき」で書いていますが、「沖縄国際海洋博覧会(1975~1976年:当時は三木内閣)」もそうした「イベントウオッシュ(米軍基地問題を万博でごまかす)」の一種では無かったか。
 ちなみに「ウオッシュ」でググったら「グリーンウオッシュ(「大会事務局が選手宿舎にエアコンを設置しない*8など、環境に優しいとアピールしているパリ五輪は本当に環境に優しいのか?(そもそも五輪自体が環境に優しくないのではないか?)」等、「環境保護をアピールしている行為」が実は「環境に優しくないごまかし」では無いかという批判)」「ジェンダーウオッシュ(女性登用に取り組んでるように見せかけること、例:「共産の田村委員長」「社民の福島党首」など他党の女性政治家と違い、存在感皆無で、どう見ても「女性登用アピール」のためのお飾りでしかない立民党の西村代表代行(「西村シンパ」kojitakenや宮武嶺への嫌み))」なんて言葉もありますね。
【参考:様々な「ウォッシュ」】

誰のためのグリーンウォッシュ予防?本当の課題は 村上芽の「深く知るSDGs」【12】:朝日新聞SDGs ACTION!
 うわべだけの行動や、悪いところを隠してよいところばかり宣伝するような行動は、「○○ウォッシュ(wash)」と呼ばれます。代表格はグリーンウォッシュ、加えてSDGsウォッシュと言うこともあります。

パリ五輪カナダ公式ウェアに「グリーンウォッシュ」疑い - オルタナ
 パリ五輪で、カナダのオリンピック選手団が着用する公式ウェアのブランドが非難されている。このウェアを提供しているのはカナダ発アパレルブランド・ルルレモンだ。環境保護団体は、温室効果ガス(GHG)排出量が増加している同社が、地球環境に貢献しているかのような販促活動を打ち出しているとして、カナダ国内に続きフランスでも、「グリーンウォッシュ」だとして提訴した。(オルタナ副編集長・北村佳代子)

【1分解説】ジェンダーウォッシュとは? | 白石 香織 | 第一生命経済研究所
 ジェンダーウォッシュ(英語ではGender Washing)とは、ジェンダー平等に配慮しているようにアピールする一方で、実際にはそうした取り組みが不十分である企業の行動を指します。環境に配慮していないにもかかわらず、しているように見せかけるグリーンウォッシュと同様のコンセプトです。
 例えば、海外のある製薬会社は、女性誌の「働きたい会社ベスト100」に頻繁に登場し、ワーキングマザーへの支援をアピールする一方、女性従業員に対する賃金、昇進、妊娠差別に関する裁判に敗訴しています。このようにジェンダー平等の取り組みと実態が伴っていない点や、都合の良い情報を切り取り発信している点がジェンダーウォッシュだと批判を受けました。

ガザに掲げられた虹色の旗 イスラエルの「ピンクウォッシュ」とは?:朝日新聞デジタル
 パレスチナ自治区ガザ地区の侵攻を続けるイスラエルが、LGBTQフレンドリーをPRすることで侵攻を正当化しようとする「ピンクウォッシュ」をしているという指摘があります。同志社大学都市共生研究センターの研究員で、イスラエルパレスチナ地域におけるジェンダーセクシュアリティーを研究する保井啓志さんにイスラエルの思惑や国内外のピンクウォッシュの現状を聞きました。
◆記者
 2023年11月13日、装甲車両の前で虹色の旗を手にする兵士の画像が、イスラエル国の公式SNSアカウントで投稿されました。「史上初のプライドフラッグがガザに掲げられた。ハマスの蛮行の下で生きている人に希望のメッセージを送る」としています。どうしてこのような投稿をしたのでしょうか。
◆保志
 対外的な宣伝です。イスラエルはLGBTQフレンドリーで民主的な国、パレスチナは野蛮でLGBTQを抑圧しているという二項対立のイメージを利用していると指摘されています。結果的にパレスチナへの抑圧、占領を覆い隠すピンクウォッシュだと批判されています。ピンクウォッシュは同性愛者の象徴のピンクと、壁を白く塗りたくる、不都合な真実を上塗りする意味があるホワイトウォッシュの掛け合わせた言葉です。

日本で最も「SDGsウォッシュ」なのは? - オルタナ
 「SDGsウォッシュ」とは30年ほど前から海外で流行した「グリーンウォッシュ」から連想された言葉で、あえて訳すと「SDGsに真剣に取り組んでいないのに、取り組んでいるフリをすること」「うわべだけのSDGs」という意味になるでしょう。
 元々、「グリーンウォッシュ」は「ホワイトウォッシュ」と「グリーン」を掛け合わせた言葉で、ホワイトウォッシュとは「うわべだけの」「白塗りでごまかした」という意味があります。

SDGsウォッシュとは・意味 | Circular Economy Hub - サーキュラーエコノミー(循環経済)メディア
 SDGsウォッシュ(SDGsウォッシング)とは、国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないビジネスのことを揶揄する言葉。実際はそうでないにも関わらず、広告などで環境に良いように思いこませる「グリーンウォッシュ」が元になっている。
 たとえば、事業の内容に直接関係のない「グリーンなイメージ(自然の写真や、緑色の包装など)」を使う石油企業や、衣服の製造過程で通常よりも多くのCO2を出すにも関わらず、「天然」または「リサイクル素材」でつくられている、と良い面だけをアピールするファッションブランド、そして、海洋生物を守っているとアピールしながら、自社の東南アジア支社にいる従業員には低賃金で強制労働をさせるグローバル企業などが当てはまる。これらはすべて、上辺だけのSDGsだ。

SDGsウォッシュとは 事例や企業に与える影響、対策法を解説:朝日新聞SDGs ACTION!
 ごまかすというと、日本語ではカモフラージュがなじみのある単語かもしれませんが、カモフラージュはフランス語であり、英語圏ではあまり用いられません。英語圏では似たような状態を指し示す際に、ウォッシングという単語が用いられます。
 そのため、ウォッシングはさまざまな状況で用いられます。1980年代になり、環境ビジネスが注目されるようになってからは、自社の環境活動を根拠なく過大にPRした企業は「グリーンウォッシング」をしているとして批判の対象となりました。
 ほかにも、LGBTQなどの性的マイノリティに属する人々に恩恵をもたらす政策や商品であるように見せかけることはピンクウォッシング*9として非難されるなど、レッドウォッシング、パープルウォッシング、ウォークウォッシング*10、クライメートウォッシング*11といったさまざまな類語が存在しています。
 そして、いまではSDGsの広がりとともに「SDGsウォッシュ」という言葉が使われるようになりました。なお、「SDGsウォッシュ」は和製英語であり、国際会議などでは「SDGsウォッシング」という単語を用いることが通常です。

編集長コラム:SDGsウォッシュの由来は - オルタナ
 「ホワイトウォッシュ」は、「ウソをごまかす」「欠点を隠して良く見せる」という意味です。白いペンキで建物や部屋の壁を塗りたくり、キズや落書きを消す感じです。
 そしておそらく90年代に、「グリーンウォッシュ」という言葉が英語圏で使われるようになりました。1992年のリオ地球サミットで環境問題が世界に共有され、企業が環境対策に力を入れ始めたころです。
 これは「環境対策に取り組んでいるかのように見せて、実は取り組んでいない」、「環境負荷が高い製品/サービスなのに、それが低いようにごまかしている」などの揶揄を含んだ表現です。
 そして2015年に国連サミットでSDGsが採択されてしばらくすると、英語でも日本語でも「SDGsウォッシュ」という言葉が使われるようになりました。その意味は、グリーンウォッシュの「環境対策」を、「社会課題の解決」と読み替えれば良いと思います。

*1:2019年、岩波新書。金成『ルポ・トランプ王国』(2017年、岩波新書)の続編

*2:1882~1971年。國學院大學名誉教授。文化勲章受章者

*3:1913~2004年。東京外国語大学教授、京都産業大学教授、上智大学教授等を歴任。文化功労者

*4:三木内閣農林相、福田内閣官房長官自民党政調会長(大平総裁時代)、鈴木内閣通産相、中曽根内閣外相、自民党幹事長(竹下総裁時代)を歴任

*5:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*6:著書『人新世の「資本論」』(2020年、集英社新書)、『大洪水の前に:マルクスと惑星の物質代謝』(2022年、角川ソフィア文庫)、『ゼロからの「資本論」』(2023年、NHK出版新書)等

*7:スポーツライター。著書『MotoGP:最速ライダーの肖像』(2021年、集英社新書)等

*8:但し希望すれば各国が独自に自費でエアコンを設置できる

*9:日本でも、2022年の東京レインボープライドで、『プラチナスポンサー』として協賛していたアクサグループ傘下のアクサ損害保険が、提供する保険において同性パートナーを配偶者として認めておらず、LGBTフレンドリーの取り組みが不十分であるとして、ゲイ男性が「ピンクウオッシング」であるとして抗議行動を行った(ピンクウォッシング (LGBT) - Wikipediaアクサ自動車保険、同性パートナーを「配偶者」として補償開始。LGBTQイベントで抗議を受け「安心を届けたい」 | ハフポスト NEWS参照)

*10:企業が社会的課題に取り組んでいないのに、取り組んでいるように見せかけること

*11:企業が温暖化問題(CO2削減)に取り組んでいないのに、取り組んでいるように見せかけること