新刊紹介:「前衛」2024年9月号(その1)(追記あり)

 「前衛」9月号について「興味のある内容」のうち「俺なりに何とか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れています。「俺の無能」のため「赤旗記事等の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
◆「自由な時間」と未来社会論:マルクスの探究の足跡をたどる(志位和夫*1
(内容紹介)
 志位講演の紹介記事です。
参考

“自由な時間”と未来社会論の魅力/志位議長、縦横に語る2024.6.26
 「自由な時間」を搾取と結びつけて論ずる中で、マルクスが「資本家は労働者によってつくりだされた、社会のための自由な時間、すなわち文明を横領する」という鋭い告発を行っていることを紹介。「ここには搾取によって労働者の知的・精神的発達の可能性が横領され、はく奪されていることへの厳しい告発があります」と強調しました。
 志位氏は、1865年前後の『賃金・価格・利潤』での記述や『資本論』第三部でまとまって示された剰余労働論、未来社会論を解説したうえで、『資本論』第一部・完成稿(1866~67年執筆)において、資本主義的生産が廃止されれば(中略)労働時間の抜本的短縮が可能になり、人間の全面的発達のための時間が万人のものになるという展望を示したと述べました。
 志位氏は、「自由に処分できる時間」こそ人間にとっての「真の富」だというマルクスの提起について、「これは未来社会で初めて問題になることではありません。現代日本のたたかいにも指針として生かすことが大切ではないでしょうか」と語りかけました。
 労働時間規制で日本が異常な国際的立ち遅れにあるなかで、「過労死をなくせ」「サービス残業をなくせ」「ブラック企業の規制を」などを掲げたこれまでのたたかいの成果を踏まえ、「労働者の自由な生活時間の全体を豊かにする」ための運動へとさらに豊かに発展させていくことの重要性を強調。
 「マルクスの言う『自由に処分できる時間』を拡大することそのものを目的にすえた、労働時間運動の質的発展がいま必要ではないでしょうか」と語りました。

“自由な時間”と未来社会論の魅力 志位議長講義に感想/「ワクワクした」「夢とロマン」2024.6.27
 講義を聴きながら、映画「花束みたいな恋をした」の1シーンを思い出したと関東の青年党員は言います。
 思い浮かべた映画のシーンは、麦くん(菅田将暉)という青年が会社に勤めるようになってからそれまで自分が好きだったものから離れてしまい、「(映画も小説も漫画も)息抜きにならない。パズドラスマホのパズルゲーム)しかやる気が出ない」というセリフを言う場面です。

志位議長講義収録『前衛』9月号好評/「『自由な時間』と未来社会論」2024.8.12
 『前衛』収録の志位議長の講義は、「社会主義共産主義は自由がない」という、まだ少なくない国民のなかにあるこのマイナスイメージを、マルクスエンゲルスのそもそもの立場に立ち返って、「人間の自由」こそ、彼らが生涯をかけて追い求めたものだった、というメッセージとして明らかにしています。


◆国会座談会「岸田政権の金権腐敗、軍拡・国民無視の悪政を徹底追及」(塩川鉄也*2、宮本徹*3、岩渕友*4、山添拓*5
(内容紹介)
【金権腐敗】
 「企業・団体献金の廃止」「政党助成金の廃止」等を主張。
主張/規正法・自民党案/金権腐敗の根源に手を触れず2024.5.26
主張/規正法・自公維合意/金権腐敗の温床はそのままだ2024.6.2
国民にカンパ強制 業界団体に献金要請/金権腐敗起こす根源/山添氏 自民のゆがんだ収入告発/参院決算委2024.6.11
政治改革の願いに背く/改悪規正法成立 山下氏が反対討論2024.6.20
主張/裏金の真相解明/背向ける自民に怒りの審判を2024.7.6
主張/堀井氏の香典疑惑/裏金との関係含め徹底解明を2024.7.21
主張/政治とカネ/政権たらい回しで解決できぬ2024.8.4
【軍拡】
防衛省の23年度武器調達/三菱重4.6倍 米3.7倍/前年度比2024.7.11
年金積立金/軍事企業に巨額の投資/三菱重工など/岸田大軍拡で株価急騰2024.7.17
主張/24年版「防衛白書」/安保政策の大変質があらわだ2024.8.5
【国民無視】
 反対意見の存在を無視して強行された
1)「紙の保険証廃止」方針(マイナンバーカード一本化方針)
2)共同親権(DV被害者から危惧の声)など
DV被害者にとっての恐怖とリスクだらけの共同親権導入の民法改定の参議院本会議での日本共産党・山添拓参院議員による反対討論 (2024年5月17日) - 村野瀬玲奈の秘書課広報室2024.5.20
強制ではなく任意のはずのマイナ保険証がなくても資格確認証があれば受診できる。自分で更新する必要のあるマイナ保険証よりも、自動的に更新されて送られてくる資格確認証の方が良いと思う。 - 村野瀬玲奈の秘書課広報室2024.6.30
 なお、共同親権など「共産が反対したにもかかわらず立民が賛成した法案があること」についても簡単に触れられており、「野党共闘の信義に反する(とはいえ共産から野党共闘を打ち切ることはしないが)」「そもそも本当に立民執行部は問題が無いと思っているのか?」と苦言が呈されている。


◆くり返されたあってはならない(ボーガス注:米兵の性犯罪)事件、置き去りにされた被害者、そして(ボーガス注:沖縄)県民にひろがる怒り(赤嶺政賢*6
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
主張/また女性暴行事件/沖縄から米軍基地を撤去せよ2024.6.29
沖縄 米兵女性暴行に抗議/県議会全会一致で決議・意見書2024.7.11
米軍性犯罪に沖縄県議会抗議/迅速な通報・再発防止策/日米両政府に要請2024.7.20
米軍性犯罪 通報徹底を/沖縄軍転協 日米政府に抗議2024.8.1


◆ 進む「核攻撃機」日本配備と自衛隊の米核戦略組み込み(山内聡)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

空自と米核搭載可能機の訓練/安保3文書以降19回も 穀田氏に答弁/衆院外務委2024.6.13
 鬼木誠*7防衛副大臣は12日の衆院外務委員会で、核兵器を搭載できる米空軍のB52戦略爆撃機航空自衛隊の共同訓練について、安保3文書が閣議決定された2022年12月以降、19回実施したことを明らかにしました。日本共産党穀田恵二*8議員への答弁。穀田氏は「唯一の戦争被爆国としてあるまじきことだ」と批判しました。

核爆撃機との訓練急増/米新戦略下 空自が詳細資料/穀田氏に提出2024.6.16
 2022年12月の安保3文書決定後、核兵器の搭載が可能な米空軍B52戦略爆撃機航空自衛隊との共同訓練が急増していることが日本共産党穀田恵二議員の質問(12日、衆院外務委員会)で明らかになりました。
 非核三原則を掘り崩し、日本への核持ち込みを公然化する狙いです。


◆「失われた30年」 自民党政治による大企業支援の帰結:日本共産党の国会論戦にみる(薄木正治
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
主張/与党税制大綱/ゆがみ広げる大企業優遇拡充2023.12.17
主張/特定大企業補助金/歯止めなき公費投入をやめよ2024.3.23
「しんぶん赤旗」威力と魅力(4)/財界・大企業優遇にメス/半導体巨額支援を告発2024.3.26
産業競争力強化法改定案/一握りの大企業支援/衆院経産委可決 笠井氏反対討論2024.4.28


特集「教員の長時間労働をどう解決するのか」
◆「教員の働き方」中教審提言と今後のたたかい(藤森毅*9
◆座談会「長時間労働の学校現場で若手・中堅教員が願っていること」(大泉隆弘、林貴教、堀田景子、松下絢)
◆採用試験の志願者減少と教員養成の現場の声
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

主張/中教審部会まとめ/教員の長時間労働 変わらない2024.5.18
 「このままでは学校がもたない」と言われるほどの教員の長時間労働をどうするのか。中教審の特別部会が13日「審議まとめ」を公表しました。しかしその内容は、現場から「0点」と酷評されています。
 教員らが求めているのは(1)少なすぎる教員定数を増やすこと(2)何時間残業しても1円も残業代が出ない制度をやめること、です。部会はいずれも否定しましたが、論拠に合理性がなく、委員からも「つっこみどころ満載」と言われました。
 53年前、自民党政府は公立学校教員を残業制度から外してしまいます(公立教員給与特別措置法=給特法)。当時、野党は「残業代制度を外せば労働時間が青天井になる」とこぞって批判しました。
 その後の展開は野党の言った通りです。しかも、国立や私立の学校は(ボーガス注:給特法の適用対象外なので)残業代を支給しているのです。
 なぜ、このような「審議まとめ」になったのか。教育予算の抜本増を認めない自民党政治の枠内で議論をまとめたからにほかなりません。しかし、そんなことを続けたから、事態を変えられず、教員不足も止まらなくなったのです。定数増と残業代制度適用を勝ちとるまで、国民的な運動を広げましょう。


小特集「AI技術の産業化・軍事化の新展開」
アメリカが描く未来の戦争 第3のオフセット戦略とサイボーグ兵士計画(小金澤鋼一*10
(内容紹介)
 日米の軍事関係者が狙う「AIの軍事利用」の危険性が指摘されると共に「AIの軍事利用に対する法的規制」が主張される。
参考
国連 中満事務次長 AIの軍事利用 “国際的な規制の策定急ぐ” | NHK | 生成AI・人工知能2024.5.8


◆論点「市民生活に入り込む自衛隊:「子ども食堂」での自衛官募集は何を示すのか」(島沢ゆう子)
(内容紹介)
 赤旗等の記事紹介で代替。
赤旗小学生の基地見学も/子ども食堂自衛隊勧誘 紙議員が追及/参院農水委2024.6.5
赤旗北海道 子ども食堂利用の小学生/戦車博物館見学させる/旧日本軍の展示物も 防衛省認める2024.6.12

学童保育で「自衛隊体験」の危うさ…鎌倉市で「保護者の了承ない」事例 子ども食堂では中学生募集広報も:東京新聞 TOKYO Web2024.6.18
 自衛隊のPRが問題視された事例は、他にもある。
 「子ども食堂で、自衛隊が勧誘とも受け取られる活動を行っている」。
 6月4日の参院農林水産委員会。紙智子氏*11 (共産)が、自衛隊札幌地方協力本部が昨年9月、札幌市内の複数の子ども食堂に対してメールを送信し、広報や募集に関するパンフレットを届けたことを問題視した。中学生に対する自衛隊の募集広報は保護者か学校の進路指導担当者を通じて行う、とする2003年の防衛次官通達に違反すると指摘した。
 「子ども食堂学童保育施設という、貧困や教育福祉の現場と言える公的な場所が、自衛隊リクルートのような活動に使われるのはどうか。特定の企業が採用のチラシを置くなどの行為をすれば、問題になるはずだ」と自衛隊の人権に詳しい佐藤博文弁護士*12は指摘する。
 背景にあるのは人員不足だ。昨年3月末現在の自衛官全体の定員約24万7000人に対し実員数は約22万8000人。近年、定員割れの状態が続いている。

自衛隊が子ども食堂で募集活動 札幌 防衛次官通達に抵触との指摘 | 毎日新聞2024.7.4
 自衛隊札幌地方協力本部(地本)が昨年9月以降、札幌市内の複数の子ども食堂で隊員の募集広報活動をしていたことが判明した。中学生への募集活動は、保護者か学校を通して行うとする防衛事務次官通達(2003年)があり、専門家は「直接、子どもを勧誘していたのであれば、通達に抵触する」と指摘する。

赤旗自衛隊「見学」「体験」「講演」 小中生対象 23年度倍加 1345件→2626件/紙議員に防衛省が資料提出/「将来の入隊につなげる」 狙いあけすけ2024.8.12
 昨年9月、札幌地本は全国初の子ども食堂を通じた勧誘に踏み切りました。紙氏が6月に国会で追及するなど、日本共産党は小中学生を狙った勧誘問題に取り組んでいます。
 札幌地本から勧誘メールを受け取った「みんなの食堂きらり」の酒井衛子代表は、紙議員と、はたやま和也*13衆院議員との懇談で「『えーっ』と思いました。断ったし、他の子ども食堂と情報共有した」と振り返りました。
 自衛隊員の人権問題に取り組む自由法曹団佐藤博文弁護士は、「中途退職の増加、高卒応募者の減少などが勧誘強化の背景。子どもをターゲットにさせない運動の強化を」と提起します。
 はたやま氏と衆院小選挙区予定候補、道議団、札幌市議団は、7月に政府要請で「子ども食堂での勧誘広報を今後行わない」よう求めました。防衛省は適切な広報は続けるとの態度に終始しました。


◆暮らしの焦点「報酬減に苦しむ訪問介護事業所の窮状と打開策:東京・北区で直接訪問にとりくんで」(田原聖子*14
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
赤字訪問介護事業所 約4割/厚労省調査で判明/報酬減で閉鎖・倒産も2024.3.5
主張/介護報酬の改定/訪問介護崩壊の危機を止めよ2024.4.2

日曜版23日号/訪問介護廃止5年で8648カ所/なぜ高学費? 無償化の展望語る田村委員長2024.6.21
 在宅介護を支える訪問介護事業所が、5年間で8648カ所廃止されたことが編集部の調査で初めてわかりました。事業所ゼロの町村が97も。4月から訪問介護の基本報酬を引き下げた岸田政権のもとで、苦境に追い込まれる訪問介護の実態をリポートします。

日曜版11・18日特大合併号/訪問介護事業所 広がる空白地域/ちひろ没後50年 黒柳徹子さん語る2024.8.9
 訪問介護事業所ゼロの自治体が全国97町村にのぼることが日曜版編集部の調査でわかりました。残り1事業所だけの自治体が277市町村も。訪問介護報酬を減らしたことが事業の継続をさらに困難にしています。地方の介護危機の実態を共産党地方議員とともにリポートしました。


メディア時評
◆新聞「首相の隠蔽加担、問わぬ全国紙」(千谷四郎)
(内容紹介)
 米兵犯罪が隠蔽されていた事件について、現場の官僚(「外務省」「沖縄県警」「那覇地検」)をせいぜい批判する程度で、岸田首相への批判が弱い全国紙各紙を批判。


◆テレビ「警察の見方と一体の番組制作」(沢木啓三)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

テレビ東京「警察密着24時!!」が番組終了…逮捕者の不起訴触れず、社長「一回見直す」 : 読売新聞2024.5.30
 テレビ東京石川一郎*15社長は30日、定例記者会見で、「激録・警察密着24時!!」での不適切放送について「きちんと確認作業をしておらず全面的におわび申し上げる」と謝罪し、番組を終了させる方針を明らかにした。

テレビ東京 警察密着番組の不適切内容 当時の制作局長ら処分 | NHK2024.6.3
 会社は3日、問題の責任をとるとして当時の制作局長を減給に、この番組のプロデューサーを5日間の出勤停止とする処分を発表しました。
 そのうえで、石川一郎社長が役員報酬の30%を2か月間、制作担当の加藤正敏常務取締役が役員報酬の10%を2か月間それぞれ自主返上するということです。

(社説)警察密着番組 問題繰り返さぬために:朝日新聞デジタル2024.6.3
 テレビ東京が、昨春放送した番組で不適切な内容が複数あったとして謝罪した。
 番組は「激録・警察密着24時!!」。人気漫画・アニメ「鬼滅の刃」のキャラクターの衣服に似た柄の商品を販売したなどとして、会社役員らを不正競争防止法違反容疑で愛知県警が捜査した事案を取り上げた。
 まず、逮捕された4人中3人は放送前に不起訴になっていたにもかかわらず、番組が言及しなかったのは、テレ東も認める通り不適切だった。
 テロップやナレーションでは、例えば「被害者面で逆ギレ」「荒稼ぎする闇組織」といった、名誉を傷つけるような言葉が多用されていた。
 会見でテレ東幹部は「人権意識は高まっている。そういう点が制作する人間全員に徹底されたか、反省すべきところがある」と述べた。
 警察への密着番組は他局にも多い。視点が警察と一体化し、捜査される側を悪と決めつける描写になりかねないという問題をはらむ。
 今回の番組もそうした面があった。
 利害を異にする捜査対象者がいるのに、「事実」の枠組みを警察に依拠して組み立てるのは妥当なのだろうか。テレビ局には、権力を監視する役割もあるはずだ。

元BPO委員、「警察密着」はやらせ以前の問題 テレ東の強みの裏で:朝日新聞デジタル2024.6.13
 テレビ東京が、昨年3月に放送した「激録・警察密着24時!!」で、複数の不適切な箇所があったとして謝罪し、今後は同種の番組を制作しないと明言した。
 元BPO放送倫理検証委員の水島久光*16東海大教授は「作ってはいけない番組を作り、放送してしまった」と話す。どんな問題点があるか話を聞いた。
◆水島
 2007年に発覚した関西テレビの「発掘!あるある大事典Ⅱ」レベルの大問題です。「あるある」では、番組を成立させることを優先し、コメントの捏造や実験データの改ざんなどをしましたが、今回も同じように見えます。
 問題となったテレ東の放送では、警察の仮説に沿って、捜査の過程を追うというストーリーになっていました。誰かを犯人視しないと、物語は始まりません。今回のテレ東で言うなら、不起訴になった人も「犯人」ではないといけなかった。「あるある」の事例でも、「納豆ダイエット」の効果がないといけないと結論ありきでした。この「逆転」が起こったという意味で、同じレベルだということです。

 今回、沢木氏は「テレ東問題」のみ取り上げていますが、「警察批判が弱いマスコミの態度」と話を広げれば、最近の「鹿児島県警の疑惑(マスコミの批判が明らかに弱い)」など他にも「警察に甘いマスコミの態度」は多数存在しテレ東だけの話で無いことは明白です。そもそも「鹿児島県警での内部告発先」がテレビ局ではなく、「ニュースサイト」と言う辺り、テレビ局が告発先として信頼されてないことは明白でしょう。
参考

鹿児島県警「漏洩」で権力の暴走明るみに 踏みにじられた「取材の自由」(下) | 週刊金曜日オンライン
 情報「漏洩」の発端とされる強制性交事件について、県警のもみ消し疑惑を書き続けたのは、ハンターだけだった。代表の中願寺純則さん(64歳)は「事件の記事を書きたい」という記者の相談に乗ることもあった。だが、社に持ち帰った後の返事は「ダメでした」。記事化されることはなかった。
 中願寺さんは言う。
「日本のメディアは、当局の発表に依拠する体質が根づいている。政府が、県が、警察が、と権力者が主語で始まる記事ばかり。これでは権力維持の補助装置ではないか」。
 ガサ入れ後は、「きょう身柄をとられる(逮捕される)のでは」と毎朝緊張した。「第二の西山事件だ」と記者仲間には心配された。
 メディアでは今、権力の不祥事を掘り起こし、権力批判を行う記者は少なくなりつつある。権力になびく報道も蔓延している。
 鹿児島の警察官たちの姿に、20年前、北海道警の裏金問題を告発した元道警幹部、故・原田宏二さん*17の姿が重なった。
 道警は2019年、札幌での安倍晋三首相(当時)の参院選応援演説で、「安倍やめろ」「増税反対」とヤジを飛ばした市民2人を強制排除した。原田さんが、私たち記者に投げかけた言葉が胸を衝く。
 「あなたたち、なめられているんですよ。(ボーガス注:道警裏金疑惑をまともに報じなかったマスコミは)目の前で警察官が違法な排除行為をやっても、何も言わないだろうと」

鹿児島県警に取材データを奪われたメディア代表の憤り「組織防衛のため、内部告発への見せしめだ」:東京新聞 TOKYO Web2024.8.5
「どう考えても、不当な強制捜査だ」。
 鹿児島県警の元巡査長が逮捕、起訴された捜査資料漏えい事件の「関係先」として、福岡市の事務所を捜索されたニュースサイト「ハンター」代表の中願寺純則さん(64)は憤りを隠せない。
 県警は家宅捜索を契機として、5月に別の情報漏えいの疑いで、前県警生活安全部長の本田尚志被告も(ボーガス注:地方公務員法違反容疑(守秘義務違反)で)逮捕した。
 中願寺さんは「本田さんの逮捕にしても、内部告発者は絶対に許さないという見せしめだ。鹿児島県警が守っているのは、県民ではなく県警そのもの。そのためには何だってやる。本来であれば、地元メディア*18が権力の暴走を監視し、声を大にして『おかしいことはおかしい』と言わなければならない」と強調する。

なぜネットメディアが鹿児島県警の標的となったのか?捜索の状況を詳細に解説、専門家は「憲法違反」「告発は公益通報」「大手メディアの姿勢が問われる」と指摘(SlowNews/スローニュース) - Yahoo!ニュース
 ジャーナリストの長野智子さん*19は、大手メディアを引き合いに「ネットのニュースサイトだから捜査しやすかったという感覚はあったか」と尋ねた。
(中願寺)
 あります。警察だけでなくメディアの問題でもあります。例えば、今はニュースサイト「ハンター」と言ってもらえますけど、玉石混交だからしょうがないとは思いますが、大手メディアは「ネットメディア」としてひとくくりにしてきたと思います。警察も同じ目で見ていると思います。ここだったらやってもいいだろう。ネットメディアならやっても平気だという思いは持っておられたと思います。
 調査報道グループ「フロントラインプレス」の高田昌幸さん*20は、4月中旬にある新聞記者から「ハンターがガサ入れされたそうだ。書きたいけど、うちの社では書けない」と相談があったと打ち明ける。
(高田)
 「書けない」ということはまずどういうことか。まさにハンターは小さいから狙われた。(ボーガス注:朝日、読売、毎日等のような全国紙や日本テレビ、TBS、フジ等のようなキー局といった)大きいところは狙わないんです。それは「強いから狙わない」のではなくて、「もう警察の仲間だから狙う必要がない」んですよ。記者クラブでいつも山のように捜査情報を漏えいしているわけです。大手は先に捜査情報をもらって、容疑者が連行される場所に朝早くからカメラを並べて行っているわけです。これがなぜ地方公務員法違反にならないのか。それは捜査側と取材側が二人三脚だからです。それを大手メディアがどう考えるのか、厳しく問われていると思います。


ジェンダー覚書:The personal is political「「生理」に関する施策の充実を」(長内史子*21
(内容紹介)
 「生理用品の消費税非課税(あるいは軽減税率適用)」「生理用品の無償配布」「生理についての性教育」「生理休暇を取得しやすくする制度改善(名称変更、生理休暇を有給休暇とすること、生理だけでなく更年期障害も対象とすること等)」等が主張されています。
参考

8、リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(2022参院選/各分野の政策)│2022参議院選挙政策│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会から一部引用
 生理用品の恒久的な無償配布、学校など公的施設のトイレへの設置を進めます。(ボーガス注:消費税)非課税の対象とするなど、より安価で入手しやすくします。
 職場や学校などでも生理に関する知識や理解を深め、女性が過ごしやすい環境を整えます。
 生理休暇を気兼ねなく取得できるように、制度の充実、周知徹底、企業への指導を強めます。

赤旗目でみる経済/減る生理休暇の請求率2023.3.30
 低い請求率の背景について厚労省の担当者は、「生理休暇は有給になるというルールがなく多くの企業は無給。普通の有給休暇が残っていればそれを使って休む人が一定数いるのでは」と、取得の難しさを指摘します。

生理休暇の現実から見えるジェンダーの問題 船橋市の取得率も1% | 船橋市議会議員 松崎さちのBLOG 日本共産党2023.11.23
 会計年度任用職員については、船橋市では生理休暇は無給です。全国では2割の自治体が有給にしており、休めば休むほど給与が減るような不平等な仕組みは改めるべきだと主張しました。こちらは総務部長は「国や近隣自治体も無給だ」と回答されましたが、恐れず先進市になっていただきたいものです。

【参考:生理休暇】

「企業の『生理休暇』を考える」 | TBSラジオTBSラジオ「人権TODAY」担当・TBSラジオキャスター 加藤奈央)2024.5.11
 今回は「企業の『生理休暇』」について考えます。
 去年8月に行った民間の調査によると、社会人の女性で生理休暇を取得したことのある人の割合は12.8%にとどまるとのことです。
 生理休暇を取るために男性の上司にそれを伝えるのは生理周期が知られるようで嫌な思いをしたり、上司によっては「あの人は平気なのに、あなたはダメなの?」と思われるのではないかという不安があります。生理休暇は、労働基準法で定められているにも関わらず、生理休暇があったとしても会社によっては勤務上は無給の扱いになっていたりもします。
(中略)
 アドフレックスでは、女性の生理痛を疑似体験できる「生理痛体験研修」を実施しようという話になったそうです。
 これはお腹の部分に特殊な装置を付けて痛みを疑似的に体感するものなんですが、研修を受けた男性社員の西村大輔さんに感想を聞きました。
◆西村さん
 私、これまで4社くらい経験しているんですけれども、どの会社でもそこまで生理休暇や生理痛にフォーカスしたような会社はなかったので、どんな感じなんだろうというのが率直な感想でした。実際に研修をしてみて、生理痛の疑似体験ということで、まぁかなりやっぱり痛くてですね。この痛みに耐えながら仕事するっていうのはとてもじゃないけれど無理だなと思いました。

 こうした研修も経て、アドフレックスの生理休暇がさらに充実したものになっていったそうです。時間単位で有給の生理休暇を取れるようにした*22ことで、しんどさを感じた時に例えばほんの一時間だけでも横になり休むこともできます。これは仕事のパフォーマンスの向上につながりますよね。アドフレックスは80人規模の会社ならではのスピード感と柔軟性で、こうして生理休暇の制度が整いました。
 加えて、代表の桑畑さんに教えてもらったのですが、生理休暇を充実させたアドフレックスでは、女性の離職率が減ったというのがデータとして明らかに出ているそうです。併せて、産休・育休から戻る社員も増えているとのことでした。
 きょうは、アドフレックスの実例をご紹介しましたが、例えば他にも衛生用品メーカーのユニ・チャームが企業向けに行う「生理研修」などもあり、講義方式で生理の基礎知識を学んだり、職種に合った生理ケアの知識などをこれまで数百の企業に広めてきたそうです。すべての企業において、女性が生理休暇を取っても違和感のない社会になる事を願います。

F、M、エル…生理休暇を取りやすく、企業で広がる名称変更 女性労働者の請求わずか0.9%の現実|経済ニュース|神戸新聞NEXT
 労働基準法で定められているにもかかわらず取得率が低調な「生理休暇」を取りやすくするため、「F休暇」などに名称変更する動きが企業で広がっている。直接的な名称を変えることで心理的なハードルを下げるほか、人手不足の中で「働きやすい職場」をアピールする狙いもあるようだ。
 兵庫県内でも名称変更するだけでなく、体調不良の適用範囲を広げるなど制度の拡充に乗り出した企業がある。(石川翠)
 今年4月、生理休暇を「F休暇」と変更したのが、金属表面処理加工業のトーカロ(神戸市中央区)だ。女性を意味する英語「Female(フィメール)」の頭文字を取った。同時に、「生理期間中」としていた取得の条件も見直し、生理前に心身が不調になる月経前症候群(PMS)に伴う体調不良でも休めるようにした。
 名称変更の先進例は、IT大手のサイバーエージェント(東京)だ。2014年に「エフ休」と改称。さらに休暇取得の対象となる症状を生理に限らず、更年期での不調なども含めたところ、「取得日数が2倍になった」(広報担当者)という。
 この動きは近年、他企業にも広がり、大和証券グループやサッポロビール、製薬会社のMSDなどが実施。名称は「エル*23休暇」「M*24休暇」「エクイティ休暇」などさまざまだ。兵庫県内でも神戸製鋼が2023年に「エフ休暇」に変更した。

青森県警察本部「生理休暇」→「F休暇」、「不妊治療休暇」→「ライフサポート休暇」名称変えて運用 「名前が直接的すぎて申請しづらい」声を受け 女性が働きやすい職場を目指し『東北初の試み』 | TBS NEWS DIG (1ページ)2024.8.8
 女性が働きやすい職場を目指そうと、青森県警察本部は「生理休暇」を「F休暇」、「不妊治療休暇」を「ライフサポート休暇」と名前を変えて運用を始めました。東北初の試みです。
 英語で女性を意味する「Female(フィメール)」の頭文字をとった「F休暇」は、これまで「生理休暇」として運用されていましたが、「名前が直接的すぎて申請しづらい」などの理由から取得が進んでいませんでした。
 こうしたことを受け、青森県警察本部は、女性警察官や行政職員など約500人から意見を取り、東北地方の警察署では初めて名前の変更に踏み切りました。
 また「不妊治療休暇」も「ライフサポート休暇」に名前を変え、7月24日から運用を始めました。
青森県警察本部 警務課人事・採用係 原田恭一郎警部補
「名前自体も直接的ではなくなったので、話しやすい部分は出てきたのかなと思います」
青森県警察本部 警務課企画補佐 戸嶋美智子警部
 「女性にとって働きやすい職場は、当然男性にとっても働きやすい職場になると思いますので、困っている、変えてほしいという声を大事にしながら、組織運営に反映して働きやすい職場環境の構築に努めたい」

JCPジェンダー平等委員会
 2023年10/27付しんぶん赤旗くらし家庭欄に、『生理休暇の誕生*25』著者の田口亜紗さんのインタビュー。
 戦後初めて生理休暇要求を唱えたのは日本共産党だったそう。当時の女性の劣悪な労働条件と、その中での月経の苦痛を見過ごさなかったその意気に感動です。

生理休暇 - Wikipedia
 1931年12月、千葉食糧研究所女子従業員は、日本初の生理休暇(有給5日)を獲得した。
 戦後の労働基準法制定時にこれらの運動を踏まえて生理休暇を法定化しようとしたところ、GHQ連合国軍最高司令官総司令部)は男女平等原則の立場から、生理休暇は「女性の特別扱い」であるとして強く否定した。しかし女性活動家たちの熱心な運動により、GHQの反対を押し切り労働基準法に規定されることとなった。国際労働機関(通称:ILO)諸条約には生理休暇に類する規定はなく、日本が独自に定めた規定である。

田口亜紗『生理休暇の誕生』月経の医療化に抗して――日常的な身体感覚と近代知をつないだ実践の歴史 – web青い弓
 生理休暇という制度、実は成立当時はアメリカなどの欧米にもまったく例のない、日本オリジナルの制度だったことはご存知でしたか?。それどころか、大正期にはすでに月経時の休暇を要求する声が登場していたこと、昭和初期にはいくつかの企業で実際に生理休暇が獲得されていたこと、敗戦直後には労働運動に生理休暇要求が復活し、多くの企業が労働協約に生理休暇を盛り込むようになったことなどについては、おそらくほとんど知られていないのではないでしょうか。生理休暇制度は、単に敗戦直後のGHQ主導による民主化政策のなかで付与されたのでも、労働基準法の成立に伴い突然出てきたのでありません。女性労働者や雇用者、医学者、政治家たちとの間で敗戦期よりもずっと前から繰り広げられてきた議論や交渉をへて生まれた制度だったのです。

生理休暇制度と働く女性 『月経の人類学』より | 『月経の人類学』試し読み | せかいしそう(小塩若菜)2022.7.15
 生理休暇制度ができた背景には、『女工哀史』(1925年)にみられるような戦前の劣悪な労働環境下で働く女工や、女教員、バスの車掌などが「月経時の労働」を問題化し、「母性保護」とつなげて「月経時における休暇」を求めたことにある。そして、戦後の法整備によって、1947年に労働基準法が制定された際に「生理休暇」が組みこまれた(田口亜紗『生理休暇の誕生』青弓社、2003年)。
 その後、厚生労働省の調査によると、女性労働者のうち生理休暇を請求した割合は、1960年は19.7%であり、1965年には26%とピークを迎え、4人に1人が請求していた。しかし、1981年には13%、1997年には3.3%、2004年には1.6%、2015年の最新のデータでは、わずか0.9%にまで減少した。
 改良された生理用品の普及によって女性の社会進出が後押しされ、生理休暇を取らずに済むようになった。さらに、鎮痛剤の服用や低用量ピル*26の普及により、(ボーガス注:生理痛は昔ほどつらい物では無くなり)仕事を続けられるようになった。しかし、月経の煩わしさから完全に解放されたわけではなく、働く女性のうち約8割が月経痛を経験し、約半数は眠くなったり、イライラしたり、集中力が下がるなど、身体的・精神的な症状を感じている。では、なぜ生理休暇は活かされていないのだろうか。
 筆者(小塩)が日本の働く女性を対象に行ったアンケート調査(2016年)によれば、生理休暇としての申請が減少した理由は、生理休暇への認知度の低さや周囲に使用する人がいないこと、(ボーガス注:生理休暇は無給の企業が多いため、給与が支給される休暇である)有給休暇や傷病休暇として取得されていることである。「月経だと言いづらいから」「異性に知られるのが嫌だから」「月経だと知られるのが恥ずかしいから」「生理休暇が無給*27だから」と考える人もいる。
 そもそも休みを取ることが難しい職場環境であることも考えられる。その理由として、シフト制であることや人手不足、代行がいないことがあげられる。また、派遣社員やパート・アルバイトなど時給制だと無給とされてしまい、収入に不安を抱かざるを得ない。職場のシステムが、月経による体調不良で休むことに対する抵抗感に大きく影響を与えている。
 男性の上司や同僚に対して、月経と知られることでハレモノ扱いされたり、「これだから女は」と思われたりすることを避けたいという思いもあるだろう。月経を理由に休暇を取得したことで、評価を下げられたり、キャリアアップが難しくなったり、仕事内容に男女差が出ることに対する不安もあげられる。
 より女性が働きやすい職場をつくるためには、月経周期やPMSについての理解や制度整備が必要ではないか。体調が悪いときには在宅勤務やリラックスできる環境で仕事ができたり、半日休や時間休を取ったりできるような柔軟な働き方が選べるとよいだろう。
 男性でも体調不良に悩む人はいるだろうし、親の介護や不妊治療、通院などで休暇が必要な人もいる。「生理休暇」という名称ではなく、言いにくい理由をわざわざ言わなくても取得できる特別休暇制度をつくってもよい。女性だけに休みやすさを求めるのではなく、多様な人々が健康的に働くことができ、全ての人が安心して休めるような職場になることが目指すべきところだと筆者は考える。
 昨今では、生理用品の選択肢も広がり、鎮痛剤や低用量ピル、サプリメントなどで月経をコントロールする女性が増えることも考えられる(田中ひかる『生理用品の社会史―タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房、2013年→角川ソフィア文庫、2019年)。今までよりもっと月経中も楽に過ごすことができるようになるだろう。しかし、月経は個人差があるものであり、人によっては、必ずしもコントロールできるものではない。より女性が働きやすい職場にしていくために、性別や年齢、月経がくるかこないかにかかわらず、誰もが月経というテーマとも向き合うことが重要であろう。

女性が生理とともに働くということ①-私たちはどう向き合うべきなのか-|内田 さやか | SAHANA院長/心療内科/産業医
 生理不調への治療の発展や普及、衛生用品の発展、年次有給の利用促進など、多様な解決策から「生理休暇」が適当な解決策にはならなくなっている可能性が大いにあると思いますが、「生理休暇を使わなくて済む」状態になったと言えるしょうか。
 全労連「女性労働者の健康・労働実態及び雇用における男女平等調査報告書」によると、生理休暇を取らない理由は、「人員不足・多忙で取りづらい」が44.4%で最多、次いで「苦痛ではないので必要ない」28.7%です。
 ここは、1位とともに2位にも注目しています。治療の有無は分かりませんが「苦痛ではない層」がいるということです。
 一方、女性労働協会の調査によると、月経困難症は生殖年齢の女性の25%以上に認められ、苦痛を感じている人がいるのも事実です。
 つまり、「生理休暇」を必要としている人とそうでない人がいるわけです。多様なわけですね。生理休暇を使わなくて済む、と楽観的に言える状況ではなさそうです。

【参考:生理(月経)】

いま、「生理(月経)」をどう語るべきか | ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター)田中ひかる(歴史社会学者、立教大学兼任講師)
 日本では数年前から、「第3次生理ムーブメント(生理ブーム)」と呼べる状況が続いている。これは、「生理についてもっとオープンに語ろう」という動きのことで、例えば、漫画家の小山健さんによる『ツキイチ!生理ちゃん』(ウェブメディア『オモコロ』で連載後、KADOKAWAから単行本として刊行。2019年に二階堂ふみさん主演で映画化)のヒット(中略)などがわかりやすい例である。
(中略)
 日本で月経タブー視が劇的に変わったのは、生理用ナプキンが登場した1960年代である。「元祖使い捨てナプキン」と言える「アンネナプキン」を発売したアンネ社*28は、「月経は当たり前の生理現象であり、恥ずべきこと、忌むべきことではない」という方針のもと、ラジオ、テレビ、新聞、雑誌などに、斬新的な広告を次々と打った。これによって、長い間月経に付せられてきた「穢れ」「汚い」「暗い」「陰鬱」などのイメージが一気に解消された。
 快適で便利なナプキンは女性たちから熱烈に歓迎され、アンネの製品を真似た後続会社は300にも及んだ。それらは徐々に淘汰され、残ったのが現在のユニ・チャームである。アンネ社は親会社(ボーガス注:ミツミ電機 - Wikipedia)の経営不振などにより、1993年に(ボーガス注:ライオンに)吸収合併されてしまったが、女性の活動範囲を広げたナプキンの発売や月経観の大変革など、功績は非常に大きい。

「生理ちゃん」と「五味ちゃん」が起こした生理ムーブメントの希望(田中 ひかる) | FRaU田中ひかる(歴史社会学者)
 「生理の平等化」において問題視されるのが、「タンポン税」である。
 実際にそういう名前の税があるわけではなく、生理用品にかかる税をそう呼んでいる。もっぱら、「女性の必需品である生理用品を非課税にすべきだ」あるいは「税率を軽減すべきだ」という主張のなかで使われる言葉である。
 これまで、世界各地で「タンポン税」を廃止すべきだという運動が行われ、実際に廃止されたり、軽減されたりしている。
 例えばオーストラリアでは、2000年に消費税にあたる商品サービス税(GST)10%が導入され、生理用品も課税の対象とされたが、今年1月、非課税となった。インドでも昨年、生理用品に課されていた12%の税が廃止された。
 ひるがえって日本では、生理用品に対する課税の廃止どころか、消費増税の際、軽減税率の対象にさえならなかったが、不満の声は一部でしか上らなかった。
 とはいえ、日本でも一昨年あたりから、生理に対するタブー視をあらため、生理について語ろう、考えようという動きが見られる。第3次生理ムーブメントである(第1次は、1000年以上続いた「血の穢れ」に基づく慣習が廃止された明治時代、第2次は使い捨てナプキンが発売された1960年代)。
 一気に生理をメジャー化したのは、その名も「生理ちゃん」である。2017年1月からウェブマガジン『オモコロ』で連載されている小山健さんの漫画『ツキイチ! 生理ちゃん』は、またたく間に人気を博し、2018年6月にはKADOKAWAから『生理ちゃん』第1巻が刊行され、今年4月、手塚治虫文化賞短編賞を受賞した。二階堂ふみさんの主演で実写映画化もされ、今月8日から公開される。
 また、「生理ちゃん」の登場と時を同じくして、ファッションデザイナーで実業家のハヤカワ五味さんが、生理用品セレクトショップ「illuminate(イルミネート)」の立ち上げを宣言し、ポップアップショップを展開したことや、ユニ・チャームとともに「#NoBagForMe(ノーバッグフォーミー)」プロジェクトを開始したことも、ムーブメントの大きな推進力となった。
 「#NoBagForMe」とは、直接的には、「生理用品を購入する際の紙袋や不透明袋(中身が見えない袋)は不要」ということを意味するが、実際にはもっと広く、生理や生理用品を隠したり、恥ずかしがったりする必要はない、という意識変革を促す言葉であろう。
 実は、「中身が見えない袋の要/不要」問題については、これまでもときどき「不要では?」という疑問が投げかけられていた。つまり、潜在的な「不要派」はすでに一定数いたのだ。
 「生理ちゃん」と「五味ちゃん」が先鞭をつけた第3次生理ムーブメントは、まだ始まったばかりである。今後、生理用品の「性能」に追いつけずにいた日本の「月経観(生理観)」は劇的に変わっていくだろう。

生理ブームがやってきた|浜松男女共同参画推進協会
 今、第3次「生理ブーム」がきている。
 第1次は月経(生理)を不浄視する慣習を公に廃止した明治時代、第2次は日本ではじめての使い捨て生理用品「アンネナプキン」が登場した1960年代。第3次の今は、漫画「生理ちゃん」の人気をきっかけに生理をよりオープンに語り、みんなで生理を知ろうという波がきている。
 テレビでは生理に関する番組が急増。動画サイトでは女性タレントが生理を語ったり、男性が生理を疑似体験したり。月経カップやナプキン不要の吸水ショーツなど新しい生理グッズの登場もこのブームを後押している。
 さらに経済的な理由で生理用品の入手に苦労する「生理の貧困」問題*29にも関心が寄せられ、多くの自治体が生理用品を無償配布した。

私たちの「虎」語り:弱音をちゃんとはける社会に 「虎に翼」の描く生理に研究者が感動 | 毎日新聞2024.8.9
 生理休暇を世界で初めて法制化したのは日本だと知っていますか? 今回は、月経研究者で文化人類学者の大阪大教授、杉田映理さん*30の「虎語り」です。
◆杉田
 今は「月経ブーム」と言われます。映画「生理ちゃん」(2019年。女性の生理をポップに擬人化した小山健さんの短編コミック「生理ちゃん*31」の実写映画化作品)も話題になりました。
 NHKでは「虎に翼」と同じ吉田恵里香さんの脚本で、テレビドラマ「生理のおじさんとその娘」も月経を真正面からとらえた、考えさせられる作品です。
 今回の「虎に翼」は生理そのものが主題ではありません。むしろ生活描写の一部として、当たり前のように月経が描かれています。そのことが素晴らしい、と思います。

 「知らなかったよ、そんなブームがあったとは(『空がこんなに青いとは』風に)」。
 「イヤー、無知なので、勉強になるなあ」(何の勉強?)

生理のおじさんとその娘 - Wikipedia
 NHK総合で2023年3月24日の22時 ~23時13分に放送されたテレビドラマ。主演は原田泰造。「生理に詳しすぎるおじさん」として有名人になった生理用品メーカーの広報担当「光橋幸男(演:原田泰造)」と、生理を語りたくない思春期の娘「光橋花(演:上坂樹里)」が、ある炎上事件をきっかけに喧嘩し、仲直りするまでの様子が描かれる。
◆企画・制作
 演出を手掛けたNHKの橋本万葉は、育児休暇中に日本のジェンダー・ギャップ指数が世界121位(当時)と低いことを知り「女性を応援するドラマを作ろう」と考えた。ドラマの題材を探していた橋本は、今までの自身のドラマでも「生理中の描写」をしたことがないことに気が付き今回の企画を立ち上げた。
 本作で描きたかったテーマは「生理のある人とない人とのコミュニケーション」で、ドラマの主人公を男性にしたのは、「知識はあるが生理の経験がない」男性を中心にすることで「現状を変えるためには知識だけでは不十分である」ことを伝えたいためである。
 制作にあたっては、ドラマのオーディションに参加した100名ほどの10代や20代の女性に取材を行ったり、キャストとスタッフに、埼玉医科大学助教高橋幸子*32(ドラマ監修者)が生理についての講習を行った。

 原田泰造もお笑い芸人と言うよりすっかり俳優ですね。


文化の話題
◆写真「略称「撮影罪」によって撮影一般の規制につなげてはいけない」(白鳥悳靖)
(内容紹介)
 「性的姿態等撮影罪」の略称は「撮影罪」というよりは「性的盗撮罪」とでもいうべきでしょうが、一部マスコミが「撮影罪」と表現していることに「撮影自体は犯罪では無い」「性的盗撮罪とでも呼ぶべきだ」と批判しています。
【一部マスコミの例】

航空連合が客室乗務員約1300人に調査 「盗撮・無断撮影にあったことがある」「あると思う」49% 撮影罪施行前より減少 顔や全身の無断撮影に苦しむ実態も | TBS NEWS DIG2024.7.22
 撮影罪の施行から1年が経ちましたが、航空各社でつくる労働組合団体が客室乗務員に盗撮などの被害について調査したところ、被害にあったことが「ある」「あると思う」と回答した人がいまだおよそ5割に上ることが分かりました。


◆映画「長岡大花火 打ち上げ、開始でございます」(伴毅)
(内容紹介)
 映画「長岡大花火 打ち上げ、開始でございます」(公式サイト映画『長岡大花火 打ち上げ、開始でございます』公式ホームページ)の紹介。


◆スポーツ最前線「パリ五輪は〝平和の架け橋〟となったのか」(和泉民郎)
(内容紹介)
 「イスラエルの五輪参加」について、IOCやパリ五輪大会事務局を批判。
参考

イスラエルへのパリ五輪除外要請、IOCと仏大統領が拒否:時事ドットコム2024.7.24
 パレスチナオリンピック委員会(POC)がパレスチナ自治区ガザ地区での紛争を理由にイスラエルの選手をパリ五輪から排除するよう求めている件で、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長とフランスのエマニュエル・マクロン大統領が23日、パレスチナ側の要請を拒否する発言をした。

主張/パリ五輪開幕/真価が問われる“平和の祭典”2024.7.26
 IOCの対応で最も大きな問題は、(ボーガス注:戦争を理由にロシアについては、選手の個人参加しか認めず、国家としての参加を否定しながら)同じ戦争をするイスラエルには一切、制約がないことです。二重基準との批判が上がるのは当然で、IOCの考える平和の基準が厳しく問われています。

東大准教授『news23』で“反五輪”を堂々明言「ボイコットしている」「私は少しでも抵抗したい」 - 産経ニュース2024.7.31
 メインキャスターの小川彩佳からパリ五輪を見ているかと問われると、斎藤氏*33は「いや、全然見ていないですね。スポーツウォッシュに加担したくない*34」と説明した。
 理由は「イスラエルの問題」とし、「ロシアは今戦争を理由に出ることができないわけですね。ところが国際司法裁判所のICJが、イスラエルのやっていることはジェノサイドであり、占領政策自体も国際法違反だと勧告しているにも関わらず、イスラエルの参加は認めているというダブルスタンダードがある」と指摘。
「これでみんなで盛り上がって『平和の祭典よかったね』という風に仮になってしまったら、もしかしたらパレスチナの人たち、ガザの人たちが忘れられてしまって、このジェノサイドを覚えてる人たちがいないっていうことに私は少しでも抵抗したいなと思って、ちょっと見ないようにしているということですね」と語った。

【追記】

<主張>パリ五輪閉幕 大歓声の祝祭復活を喜ぶ 日本勢の躍進に心が躍った 社説 - 産経ニュース2024.8.13
 侵略国やドーピングなどの不正に関わる国家*35は、その栄誉にあずかれない。これが明確に示された大会でもあった。

 赤旗や前衛、斎藤准教授と違い「侵略国イスラエルイスラエルが侵攻したガザはパレスチナという国の土地で、イスラエルの領土ではない)」「ICJお墨付きの戦争犯罪国家イスラエル」の五輪参加を問題視しない産経にはいつもながら呆れます。
 あの行為を「ハマスに対する自衛権の発動で侵略ではないし違法でもない。ICJの方が間違ってる」と強弁する気なのでしょうが。

*1:衆院議員。共産党議長(役職は以下、全て中央委員会の機構と人事(第29回党大会)|党紹介│日本共産党中央委員会を参照)

*2:衆院議員。共産党幹部会委員

*3:衆院議員。共産党中央委員

*4:参院議員。共産党幹部会委員

*5:参院議員。共産党政策委員長(党常任幹部会委員兼務)

*6:衆院議員。共産党幹部会委員(沖縄県委員長兼務)

*7:第一次安倍内閣環境大臣政務官等を経て岸田内閣防衛副大臣

*8:共産党国対委員長(選対委員長、常任幹部会委員兼務)

*9:共産党文教委員会責任者(党中央委員、子どもの権利委員会副責任者、学術・文化委員会委員兼務)。著書『教育の新しい探究』(2009年、新日本出版社)、『いじめ解決の政治学』(2013年、新日本出版社)、『教育委員会改革の展望』(2015年、新日本出版社)、『教師増員論』(2021年、新日本出版社

*10:東海大学名誉教授

*11:共産党参院議員団長、常任幹部会委員、農林・漁民局長

*12:航空自衛隊の現職女性隊員が性的被害を訴えた訴訟(通称「女性自衛官人権訴訟」。札幌地裁で2010年7月29日勝訴判決、国が控訴せず確定)」、「陸上自衛隊真駒内駐屯地自衛官訓練死訴訟(通称『命の雫』裁判。2013年3月29日札幌地裁にて勝訴判決、国が控訴せず確定)、『九州在住の元防衛大学校生が在学中に上級生らから繰り返し暴行やいじめを受けたとして起こした訴訟(通称「防衛大いじめ訴訟」。2021年12月9日福岡高裁にて勝訴判決、国が控訴せず確定)』の弁護を担当(佐藤博文 - Wikipedia参照)

*13:党中央委員。元衆院議員(2014~2017年)

*14:共産党衆院東京12区予定候補。共産党東京都北地区委員会副委員長

*15:日本経済新聞政治部長、常務、専務、テレビ東京専務等を経てテレビ東京社長(石川一郎 (ジャーナリスト) - Wikipedia参照)

*16:著書『閉じつつ開かれる世界:メディア研究の方法序説』(2004年、勁草書房)、『テレビジョン・クライシス:視聴率・デジタル化・公共圏』(2008年、せりか書房)、『戦争をいかに語り継ぐか』(2020年、NHK出版)等

*17:1937~2021年。札幌西警察署長、旭川中央警察署長等を歴任。著書『警察内部告発者』(2005年、講談社)、『警察VS警察官』(2006年、講談社)、『警察捜査の正体』(2016年、講談社)等

*18:勿論問題は地元メディアだけで無く「朝日、読売、毎日等の全国紙」「NHK日本テレビ、TBS等のキー局」にもあります。

*19:著書『踏みにじられた未来:御殿場事件、親と子の10年闘争』(2011年、幻冬舎

*20:北海道新聞記者、高知新聞記者を経てフロントラインプレス代表。著書『真実:新聞が警察に跪いた日』(2012年、柏書房→2014年、角川文庫)

*21:共産党衆院比例東海予定候補

*22:一般には「無給」「1日単位」が多い

*23:Lady(女性)の頭文字「L」か?。もはや「頭の体操」状態の気がします。

*24:メンス(月経)の頭文字「M」か?。もはや「頭の体操」状態の気がします。しかし今「メンス」て死語なんですかね?。俺はオッサンなので「メンス」と言う言葉を知っていますが

*25:2003年、青弓社

*26:もともとは避妊薬だが生理痛軽減に効果があることが分かり、現在ではそうした目的でも使用される。

*27:法律上は有給にする必要が無いため、無休の企業も多く「全ての生理休暇を有給にするための法改正」の主張があります(但し、現状でも個々の企業が就業規則で有給にすることはあり得る)。

*28:社名は『アンネの日記』で月経に関する記述があったことに由来する。近年ではあまり使われなくなったが、月経の隠語「アンネ」という言葉は、この会社名が語源である(アンネ (企業) - Wikipedia参照)

*29:一般に日本で「生理の貧困」と言うと確かに「経済的問題が論じられる事が多い」のですがさらに広く「生理に対する社会制度の貧困(生理休暇の問題等)」「生理に対する知識の貧困(性教育の問題等)」等も指すことがあります(生理の貧困 - Wikipedia参照)。

*30:著書『月経の人類学』(編著、2022年、世界思想社

*31:Webマガジン『オモコロ』にて2017年1月17日から連載されている『ツキイチ! 生理ちゃん』に加筆修正し書き下ろしを加え、2018年6月11日にKADOKAWAよりコミックスが刊行された 。また、月刊コミックビームにおいても2018年12月号から2020年11月号まで連載された。2019年に第23回手塚治虫文化賞短編賞を受賞(生理ちゃん - Wikipedia参照)。小生も月刊コミックブームは読まない(というか、コンビニで売ってるマンガくらいしか普段読まないし、コミックビームはコンビニに置いてない)し、手塚治虫文化賞も興味が無いのでこういうマンガは今回初めて知りました。

*32:著書『中高生のための新しい性教育ワークブック』(編著、2024年、学事出版)、『12歳までに知っておきたい男の子のためのおうちでできる性教育』(2024年、日本文芸社)等

*33:著書『人新世の「資本論」』(2020年、集英社新書)、『大洪水の前に:マルクスと惑星の物質代謝』(2022年、角川ソフィア文庫)、『ゼロからの「資本論」』(2023年、NHK出版新書)等

*34:斎藤発言については以前高世仁に悪口する(2024年7/23日分)(副題:スポーツウオッシュ) - bogus-simotukareのブログでも触れました。

*35:国家としての参加ができず、選手の個人参加となったロシアのこと