読まないと理解できない感想が多いですがご容赦ください。読んだ本 - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明の感想の形で書きます。
まあ、皮付きも、皮がない(真っ黒に焦げるまで皮を焼いて剥いてから食べる)のもどっちも美味しいと思いますけどね。
ただ「皮を真っ黒に焼いて剥く」のは面倒くさいので家ではそんな物は作らないし、「立派な和食割烹」はともかく、普通の食堂でも「作るのが楽な」皮付きが多い気はします。
魚嫌い。回転寿司は確かに魚食えなくても大丈夫な場所だとは思うが、銀座の寿司屋は、うーん。>江戸前の旬@九十九森×さとう輝。
常連客が「生魚嫌いの孫」が「魚以外の寿司(エビフライ等)もある回転寿司でないと付き合ってくれない(その回転寿司ですら、あまり好んでいない)」ので「この店の寿司を食べさせたい」として銀座の老舗寿司店がその要望に応え「キムパプ*2(韓国風巻き寿司)」「揚げ浸し*3ナスの寿司」「焼きシイタケの寿司」等「生魚を使わない寿司」を出す話ですが、まあ、マンガだから成立する話ですね。まあ、回転寿司ならともかく一般的な寿司で「生魚」以外となると「玉子」「カッパ巻き」「かんぴょう巻き」「納豆巻き」等、ネタが限定されますからね。
闇市めし@魚乃目三太
今回はハンバーグが「ミンチボール(メンチボール:ミンチ肉をボール(球体?)にした物という意味?)」と言う名前で登場しますが、戦前や終戦直後(マンガの舞台)はそうした呼び方の方が一般的だったのか?(後で紹介するネット記事はハンバーグとミンチボールは別であるかのように書いていますが)
参考
ハンバーグの歴史その1 戦前はハンバーグより普及していたイギリス料理「メンチボール」(東洋経済オンライン記事補足)|近代食文化研究会
戦前の洋食におけるメジャーな挽肉料理といえば、ハンバーグではなく、ハンバーグによく似た球状の「メンチボール」でした。
夏目漱石の『吾輩は猫である』に登場する「メンチボー」です。
池波正太郎*4も、東京の下町洋食の代表例として、ハンバーグではなくメンチボールをあげています。
19世紀のイギリス都市部の中流家庭料理においては、挽肉をボール状にして食べることが習慣化していました。
「ハンバーグ」にソースをかける人が知らない真実 フランスとアメリカ、2つの国の由来の違い | 食品 | 東洋経済オンライン
「戦前、街の洋食屋でひき肉料理といえば、メンチボールに決まっていたもんです。
(中略)
メンチボールといっても、お若い方にはおわかりにならないと思いますが、丸い形のハンバーグと考えてくださればいいんです。』
(茂出木心護『洋食やたいめいけん・よもやま噺*5』)
1911(明治44)年生まれの、老舗洋食店「日本橋たいめいけん」創業者・茂出木心護*6の証言です。戦前はハンバーグではなく、ハンバーグによく似た丸い「メンチボール」という料理が人気でした。
下は、1918(大正7)年生まれの紙芝居作家・加太こうじ*7の証言です。
『ハンバーグステーキは、日本では太平洋戦争後、盛んに食べられるようになった。
(中略)
太平洋戦争中までは挽き肉の西洋料理といえばメンチ(ミンチ)ボールだった(加太こうじ『江戸のあじ東京の味*8』)』
明治時代の日本において、いちばん最初に普及した西洋料理は、イギリス料理でした。
ただしmince ball(メンチボール)は和製英語。イギリス本国ではforcemeat ballといいました。forcemeatとは「つくね」のこと。
メンチボールが日本で定着した一方、一部の店では戦前からハンバーグを提供しており、戦後に入りこのハンバーグが一気に広まっていきます。
『太平洋戦争後、占領軍としてきたアメリカの兵隊たちが、ハンバーグを好んで食べたのを日本人がまねて、メンチボールにとって代るハンバーグの全盛になった。』
(加太こうじ『江戸のあじ東京の味』)
戦後日本の洋食における挽肉料理の主役が、メンチボールからハンバーグに交代した理由は、アメリカの影響によるものでした。
やってはいけない@湖西晶。
今回は「ローストビーフ作りで食中毒の危険」です。
というよりは「肉の低温調理(加熱不足、殺菌不足)で食中毒の危険」というべきか?。勿論、「肉の加熱不足(殺菌不足)で食中毒」は、「既に加熱済みの既製肉製品(ソーセージ、ハム、ベーコン、ローストビーフ等)の利用」ではなく「生肉を加工する場合」なら、「ローストビーフ以外の牛肉料理」でも、豚肉や鶏肉の料理でも、「低温調理法以外の調理方法」でも同じ話です(例えば、ニュース 「おうちごはん 食中毒に気をつけて!」 - きょうの健康 - NHKが紹介する「低温調理によるサラダチキン」)。
ググってヒットした以下の記事を紹介しておきます。
そのローストビーフ、大丈夫? 低温調理で食中毒に注意:朝日新聞デジタル2020.8.12
元々はプロ向けに業務用が中心だった低温調理器ですが、家庭向けの様々な機種が販売されるようになり、挑戦のハードルが下がりました。ただ、食中毒を防いで安全に調理するには注意が要ります。東京都はいま、「低温調理の安全性を科学する」というウェブ講座を開催中。受講してみると、知っておきたいチェックポイントがいくつもありました。
肉を50~60度台で加熱するとたんぱく質の変成が抑えられて硬くならず、肉汁も流出しないため、軟らかくジューシーな食感が味わえるところが人気のようです。
しかし、食中毒を防ぐため、肉は十分に加熱する必要があります。低温調理が広がるにつれ、加熱条件を満たしていない調理事例が増えることを危ぶんだ東京都が、注意喚起をするべく、今回のウェブ講座を企画しました。
肉には腸管出血性大腸菌やカンピロバクターといった細菌やE型肝炎ウイルスなどのウイルス、寄生虫が付いている可能性があり、厚生労働省は肉の食中毒防止の条件として、肉の中心部を75度で少なくとも1分間という目安を示しています。それより低い温度で 調理する場合、加熱時間は長くしなくてはなりません。75度1分と同等とみなされるのは、70度では3分、65度では15分とされています。さらに低い温度だと、63度で30分、計算上は58度だと126分ということになります。
(以下は有料記事です)
知識不足は危険!「低温調理」での食中毒に国が注意喚起…温度管理が難しいNGな調理方法とは?|FNNプライムオンライン2021.12.21
調理温度が低いため殺菌という面で十分に気をつけなければいけない。菌を殺すためには肉の中心部の温度が高ければ短い時間での加熱で良いが、低い温度の場合には長い時間が必要。
豚肉の場合、63℃のお湯で3時間40分、中心まで加熱する必要がある。
鶏肉は厚労省の衛生基準では水温が63℃で最低でも1時間40分。牛肉は58℃で最低2時間8分もの料理時間が必要。
肉を低温で安全においしく調理するコツをお教えします! | 食品安全委員会 - 食の安全、を科学する2021.12.24
1.低温調理をする際は、中心温度計等を用いて温度と時間の管理をしましょう。皆さんが思っている以上に、低温調理は時間がかかります。
2.(ボーガス注:色など)肉の見た目では、食中毒を防ぐ安全な加熱をできたかどうか判断するのは不可能。自己流アレンジは禁物です。
3.塊肉の表面を焼いた後にアルミホイルで包んだり、肉をジッパー付き袋に入れ、沸騰させた後に火を止めた湯につけっぱなしにするなど、余熱を利用するレシピは、肉の内部温度が食中毒を防止できるほどには上がらないので、やめましょう。
ニュース 「おうちごはん 食中毒に気をつけて!」 - きょうの健康 - NHK2022.6.23
低温調理は肉などの食材を50~70℃の低温で調理する調理法です。肉が硬くならず、ジューシーに仕上がると人気を集めています。
弱火や余熱など、加熱条件を自分で工夫するレシピもありますが、「低温調理器」を使って電気の力で温度を管理することも。
正しく調理すれば、お肉をおいしく味わえる低温調理。しかし、レシピや調理機器の使い方を間違えると食中毒になる危険性があります。
今、SNSや料理サイトではこんなレシピが投稿されています。
(中略)
鶏肉をお湯に入れて、余熱で調理するというものです。しかし、国の食品安全委員会*9は、こうした余熱調理が「肉の温度が食中毒を防止できるほどには上がらない」と注意を呼びかけています。
低温調理は温度管理が非常に難しい調理法で、レシピ選びには細心の注意を払う必要があります。
【ポイント】
1.プロの料理人やレシピ書籍のものを参考にして、温度検証されたレシピを選ぶようにしましょう。
2.鍋の大きさ、お湯の量、肉の厚み、加熱時間などの条件が明確に書かれているとより安心できます。レシピを選ぶ時には、こういった条件の数字がきちんと書かれていて信頼できるものを選んだ方がいいでしょう。
◆55℃はNG!ローストビーフも安全な温度で
低温調理器を使う場合、大事なのが温度設定です。例えば、次のようなレシピです。
(中略)
一見大丈夫そうですが、「55℃」という温度設定が危険です。これでは食中毒菌をやっつけるどころか、増殖させてしまう可能性があるのです。
その食中毒菌とはウエルシュ菌です。
25℃~55℃で増殖する菌であるため、温度が低い低温調理では特に注意が求められます。菌の増殖を防ぐには57℃以上、そして確実に殺菌をするには65℃以上が必要となります。
また、調理をする際にはメーカーの公式レシピなど、必ず温度検証されたものを使うようにしてください。低温調理器の中には、「加熱時間基準表」という細かい基準を出しているメーカーもあります。肉の厚みと調理したい温度(65℃以上)を照らし合わせ、きっちり加熱基準を守るのがおすすめです。
問題は「低温調理それ自体は問題では無い」「正しい低温調理なら、軟らかくジューシーな食感と安全は両立する」ということです。結局「低温調理器の使用説明書に従う形で、調理時間を長くする」ということのようですが。
まあ、「かかる手間(そして失敗した場合の食中毒リスク)」を考えれば「手作りなら、食感が犠牲になるが、短時間で済む高温調理(勿論、この場合も安全のために、自己流ではなく、きちんとした料理レシピ本等に従って作る)」や「そもそも手作りせず既製品を購入」と言う手もありますが。
なお、以下は「ローストビーフでなくハンバーグ」「低温調理でなく生焼け」と言う違いがありますが「肉の加熱不足(殺菌不足)で食中毒」の一例ではあります。
O157食中毒発生「飲めるハンバーグ」店舗の“生焼け”提供システムに変化、騒動前の“追い焼き”を公式が見直し(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース
「飲めるハンバーグ」で人気を博している、千葉県船橋市のレストラン「将泰庵DINER」シャポー船橋店で、腸管出血性大腸菌「O157」が原因の食中毒が明らかになった。
歯が要らないほど柔らかいことから、『飲める』と形容しているという。提供スタイルには特徴があった。
「鉄板に乗せられて提供されますが、ハンバーグの中には『生焼け』の赤い部分も残っていました。店からは『赤い部分が残っている場合は、3分ほど待ってください』と伝えられ、客が『追い焼き』するのが特徴的。この加熱が不十分なハンバーグを食べたことで、食中毒が発生したと思われます」(社会部記者)
その後「追い焼きスタイル」は中止されたようです(最初から充分に加熱され、生焼け箇所などない状態で提供)。
なお、「肉の食中毒」については以下も紹介しておきます。
洗ってはいけない食材とは かえって高まる食中毒リスク:朝日新聞デジタル2020.9.14
食品安全委員会はフェイスブックで「食肉は洗わない」という投稿をしました。食中毒予防のためには、洗わない方が良いというのです。
生肉の表面には、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌、サルモネラなど、食中毒を起こす細菌が付いている可能性があります。肉を生のままで食べないよう呼びかけられるのはこのためです。厚生労働省によると、市販の鶏肉を調べた複数の調査結果では、カンピロバクターが20~100%という高い割合で見つかりました。
肉を洗うと、肉に付いている食中毒菌が水しぶきと共に飛び散り、周りに置いてある調理器具や他の食品に付いてしまう恐れがあるのです。こうして細菌をばらまいてしまうと、食中毒を引き起こすリスクも高くなります。
肉の表面に水分や血が浮いていたり、ドリップが出ていたりして、気になることもあります。「そんな時は、キッチンペーパーでふき取り、そのペーパーはすぐにゴミ箱へ捨ててください」と委員会の香西みどり*10委員は話します。
「肉に付いた食中毒菌は十分に加熱すれば殺菌できますから、生の肉を洗う必要はありません。」
一方、一匹丸ごとの魚や殻付きの貝を調理する時は、最初に流水でしっかり洗う。魚介類に付く代表的な食中毒菌は、腸炎ビブリオ。この細菌は海水に生息し、真水には弱い性質があり、水道水で洗い流すのが有効です。
*1:「酒」というタイトルだが、今回の焼きナスのように酒より「酒のつまみ」をネタにした話の方が多い。
*2:具材は沢庵、薄焼き卵、人参、牛蒡、ハム、ほうれん草、胡瓜が一般的である。その他、キムチ、エゴマの葉、牛肉、ツナ、カニかまぼこ、チーズ、チャンジャ(タラの塩辛)なども使われる(キムパプ - Wikipedia参照)。今回のマンガでの具材は牛肉、ニンジン、ほうれん草、薄焼き玉子、沢庵です。
*3:油で揚げた食材を三杯酢やだし汁に浸した料理
*4:食関係の随筆に『食卓のつぶやき』(朝日文庫)、『江戸前通の歳時記』(集英社文庫)、『散歩のとき何か食べたくなって』、『食卓の情景』、『むかしの味』(以上、新潮文庫)等
*6:1911~1978年。1931年、「泰明軒」を創業(1948年に「たいめいけん」に改称)。著書『洋食や』(2002年、中公文庫) 。なお、1978年の心護の死後は息子・茂出木雅章(1939年生まれ)が二代目オーナーとして店を継いでいる。(茂出木心護 - Wikipedia参照)
*7:1918~1998年。著書『紙芝居昭和史』(2004年、岩波現代文庫)等
*9:2001年のBSE問題等をきっかけに、2003年5月に食品安全基本法が制定された。そして食品安全を担当する機関として、食品安全基本法の施行日である2003年7月1日に食品安全委員会が内閣府に設立された(食品安全委員会 - Wikipedia参照)
*10:お茶の水女子大学名誉教授(調理科学)。著書『調理がわかる物理・化学の基礎知識』(2010年、光生館)、『加熱調理のシュミレーション』(2013年、光生館)等