高世仁に突っ込む(2024年10/16日分)(副題:赤旗の自民党裏金疑惑報道、ほか)

日本の政治を震撼させた『しんぶん赤旗日曜版』2 - 高世仁のジャーナルな日々

 今年度のJCJの大賞は(ボーガス注:自民党裏金報道の)赤旗日曜版だったが、それ以外のJCJ賞は以下の4点だった。
◆上丸洋一*1南京事件と新聞報道:記者たちは何を書き、何を書かなかったか*2朝日新聞出版
◆後藤秀典『東京電力の変節:最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃*3旬報社
NHKスペシャル 「〝冤罪〟の深層~警視庁公安部で何が~」「続・〝冤罪〟の深層~警視庁公安部・深まる闇~」NHK総合テレビ
◆SBCスペシャル 「78年目の和解~サンダカン死の行進・遺族の軌跡」信越放送

 NHKスペシャルについては以前、拙記事で以下の通り取り上げました。

新刊紹介:「前衛」2024年1月号(追記あり) - bogus-simotukareのブログ
◆テレビ『評価に値する報道』(沢木啓三)
(内容紹介)
 評価に値する最近の報道として以下を紹介
【1】
いわゆる「大川原化工機冤罪事件」を報じたNHK番組が紹介されてます。
 沢木氏は「中国の脅威」を理由に「経済安保法制」が云々される中「重要な放送」と評価すると共に、この事件での起訴は単に「警察、検察が手柄を焦った(多くの冤罪事件の発生理由)」のではなく「経済安保法制」を正当化するための「政治への忖度がなかったか」との疑念を呈しています(但し、NHK報道では『事件は冤罪である』と言う指摘に留まり、そうした「政治的忖度の疑い(場合によっては「安倍のモリカケ桜疑惑」のような「起訴しろ」という政治家の直接的介入すらあったのではないか)」を指摘しなかったことが残念と沢木氏は評価している)。
【参考:大川原化工機冤罪事件】

“冤(えん)罪”の深層〜警視庁公安部で何が〜 - NHKスペシャル - NHK2023年9月24日
 なぜ「冤罪」は起きたのか。3年前、軍事転用が可能な精密機器を不正に輸出したとして横浜市の中小企業の社長ら3人が逮捕された事件。長期勾留ののち異例の起訴取り消しとなった。会社側が国と東京都に賠償を求めている裁判で今年6月、証人として出廷した現役捜査員は「まあ、ねつ造ですね」と語り、捜査の問題点を赤裸々に語った。公安部の中でいったい何が起きていたのか。法廷の証言と独自資料をもとに徹底取材で検証する。

 サンダカン死の行進については以下を紹介しておきます。
 なお、この事件については、田中利幸*4『知られざる戦争犯罪:日本軍はオーストラリア人に何をしたか』(1993年、大月書店)と言う著書があります。

サンダカン死の行進 - Wikipedia参照
 オーストラリア軍が行った戦後のBC級戦犯裁判により、日本軍の収容所側将兵には下記のような極刑が科せられた。また、捕虜殺害を実行した台湾人監視員達には、懲役刑が科せられた。
【死刑】
・阿部一雄、渡辺源三(以上、中尉)、高桑卓男、星島進、山本正一(以上、大尉)
終身刑
・室住久雄曹長
 捕虜移動命令を出した第37軍司令部に対しては、馬場正郎*5中将(終戦時の軍司令官)が死刑になったものの、第一回の捕虜移動を計画した山脇正隆*6中将(馬場の前任司令官)はこの件に関しては一切罪に問われる事はなかった。
 ボルネオ捕虜収容所長だった菅辰次大佐は1945年9月16日に自殺していた為、訴追される事はなかった。

「死の行進」加害・被害の立場超えて 日豪の遺族ら初の合同慰霊祭:朝日新聞デジタル2023.8.31
 アジア・太平洋戦争中、過酷な長距離移動を強いられ、多くの犠牲者が出た「サンダカン死の行進」と呼ばれる事件を生き延びた豪州兵の遺族と、当時の現地司令官だった日本軍人の遺族ら*7が集まり、この夏、初めて合同の「ボルネオ慰霊祭」を開いた。

 このうち後藤秀典さんは、以前「ジン・ネット」で一緒に仕事をした仲間である。彼は、電力会社・最高裁・国・巨大法律事務所の人脈図を描くことによって、「原子力ムラ」に司法エリートが含まれることを暴いた。最高裁の判事が東電とツーツーの巨大法律事務所の出身だったりするのは珍しくない。これでは原発事故被害者たちが最高裁で負け続けるのは当たりまえだ。

 後藤氏は以前、拙記事で以下の通り取り上げました。以下の「草野耕一、渡邉惠理子判事(弁護士出身)」が高世の言う最高裁の判事が東電とツーツーの巨大法律事務所の出身ですね。草野判事、渡辺判事は今も最高裁判事です(但し、今回の最高裁判事国民審査の対象判事ではない)。

新刊紹介:「経済」2024年5月号 - bogus-simotukareのブログ
◆裁判所と巨大法律事務所との関係深化を暴く:「国に責任はない」最高裁判決以降6連敗の避難者訴訟(後藤秀典*8
(内容紹介)
 新刊紹介:「経済」2023年5月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した◆「国に責任はない」原発国賠訴訟・最高裁判決は誰がつくったか:裁判所、国、東京電力、巨大法律事務所の系譜(後藤秀典)の続編。小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考

後藤秀典
 現在発売中の月刊誌『経済』5月号に、最高裁各小法廷の判事の構成とともに「原告たちが恐れているのは、ある日突然、最高裁から一通の通知が届き、『上告不受理』を伝えられることだ。」と記した。この通りになってしまった。こういうのは当たってもうれしくない。

後藤秀典
 いわき市民訴訟を上告棄却した最高裁判事。宇賀判事のみが反対意見。2年前のスカスカな6月17日最高裁判決に続き、最高裁は恥の上塗りをした。
・宇賀克也*9  元東京大学教授、行政学専門
・長嶺安政*10  オランダ大使、韓国大使、英国大使を歴任
渡邉惠理子*11 元長島・大野・常松法律事務所*12弁護士
・林道晴*13   最高裁首席調査官、東京高裁長官を歴任
・今崎幸彦*14  最高裁事務総長、東京高裁長官を歴任

新刊紹介:「経済」2023年5月号 - bogus-simotukareのブログ
◆「国に責任はない」原発国賠訴訟・最高裁判決は誰がつくったか:裁判所、国、東京電力、巨大法律事務所の系譜(後藤秀典)
(内容紹介)
 「国に責任はない」と言う多数意見を書いた判事たちについて

菅野博之最高裁第二小法廷裁判長(判事出身)
 最高裁判事退官後、長島・大野・常松法律事務所(いわゆる四大法律事務所*15の一つである大手)の顧問に就任。「長島・大野・常松」は株主代表訴訟での東電側代理人
草野耕一判事(弁護士出身)
 西村あさひ法律事務所所属。「西村あさひ」は「ふるさとを返せ・津島原発訴訟」での東電側代理人

と指摘。

・李下に冠を正し、瓜田に足を入れてるのではないか?
・東電とつながりがある「長島・大野・常松」や「西村あさひ」との関係(情実)で原告敗訴意見を書いたと疑われても文句は言えないのではないか?

と批判している。


日本の政治を激震させた『しんぶん赤旗日曜版』 - 高世仁のジャーナルな日々
 高世がこの記事で触れてる「赤旗の成果」は「裏金疑惑追及による岸田*16内閣崩壊」ですが、他に「事務所費疑惑追及による第一次安倍*17内閣崩壊(他にもいわゆる「消えた年金」問題もありますが、疑惑を追及された佐田行革相、赤木農水相の辞任や松岡農水相の自殺で支持率が低下)」をあげてもいいし、「第四次安倍内閣終了」の直接の原因は「コロナ対応のまずさ」ですが「モリカケ桜疑惑追及」が全く関係なかったとはいえないでしょう。
 残念なのは、だからといって「共産支持が爆上げ」「共産議席大幅増」に必ずしもならないことですが。
 過去にはマスコミも「月刊文春の田中*18金脈報道(田中首相が辞任:他にもいわゆる狂乱物価問題もありますが)」「朝日新聞リクルート疑惑追及(竹下*19首相が辞任*20。またポスト竹下有力候補だった「安倍派領袖」安倍*21幹事長、「宮沢派領袖」宮沢*22蔵相にも疑惑があったため、政治的謹慎を余儀なくされ、自民傍流の宇野氏*23(中曽根*24*25)、海部氏*26(河本*27*28)が首相に就任*29)」「サンデー毎日の宇野首相女性醜聞(宇野首相が辞任)」等、今回の赤旗並みのスクープもあったところですが、最近は「そうしたマスコミの政治的スクープも少なくなった」気がします。

*1:著書『『諸君!』『正論』の研究』(2011年、岩波書店)、『原発とメディア』(2012年、朝日新聞出版)、『新聞と憲法9条』(2016年、朝日新聞出版)

*2:2023年刊行

*3:2023年刊行

*4:敬和学園大学教授、広島市立大学広島平和研究所教授など歴任。著書『戦争犯罪の構造:日本軍はなぜ民間人を殺したのか』(編著、2007年、大月書店)、『空の戦争史』(2008年、講談社現代新書)、『再論・東京裁判』(編著、2013年、大月書店)、『検証「戦後民主主義」:わたしたちはなぜ戦争責任問題を解決できないのか』(2019年、三一書房)等(田中利幸 (歴史学者) - Wikipedia参照)

*5:1892~1947年。1912年(明治45年)、陸軍士官学校(24期、兵科「騎兵」)を卒業。騎兵第5連隊中隊長、陸軍騎兵学校教官、騎兵第4旅団参謀、騎兵第24連隊長、騎兵第3旅団長など騎兵畑を中心に勤務。1944年(昭和19年)12月からボルネオ守備軍を前身とする第37軍の司令官

*6:1866~1974年。陸軍省整備局長、陸軍次官、第三師団長、駐蒙軍司令官、陸軍大学校校長、第37軍司令官を歴任

*7:ボルネオ島で起きた悲劇「サンダカン死の行進」 終戦から78年の今年“加害者”日本の遺族が“被害者”遺族らとともに初めて現地に集う「和解の旅」【news23】 | TBS NEWS DIG (1ページ)によれば司令官は『馬場正郎(第37軍司令官。戦後、死刑判決)』、現地を訪れた遺族は馬場の息子である馬場芳郎氏、馬場の孫(芳郎氏の子)である馬場淳郎、孝郎兄弟

*8:著書『東京電力の変節:最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』(2023年、旬報社

*9:【2024年10月追記】今回の最高裁判事国民審査の対象外

*10:【2024年10月追記】2024年4月に退官。後任の石兼公博判事(外務省出身:外務省アジア大洋州局長、カナダ大使、国連大使など歴任)が今回の最高裁判事国民審査の対象判事の一人

*11:【2024年10月追記】今回の最高裁判事国民審査の対象外

*12:「長島・大野・常松」は株主代表訴訟での東電側代理人

*13:【2024年10月追記】今回の最高裁判事国民審査の対象外

*14:【2024年10月追記】今回の最高裁判事国民審査の対象判事の一人

*15:四大法律事務所 - Wikipediaによれば、「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」、「長島・大野・常松法律事務所」、「西村あさひ法律事務所」、「森・濱田松本法律事務所」。近年は「西村あさひ法律事務所」所属弁護士が退所して結成した「TMI総合法律事務所」が急成長したため、これを含めて五大法律事務所ともいう。

*16:第一次安倍、福田内閣沖縄・北方等担当相、第二次、第三次安倍内閣外相、自民党政調会長(第二次安倍総裁時代)等を経て首相

*17:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官等を経て首相

*18:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)等を経て首相

*19:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)等を経て首相

*20:他にも辞任理由としては消費税導入や米国産牛肉・オレンジ輸入(農協の反発)で支持率を落としていたこともありますが(竹下登 - Wikipedia参照)

*21:三木内閣農林相、福田内閣官房長官自民党政調会長(大平総裁時代)、鈴木内閣通産相、中曽根内閣外相、自民党幹事長(竹下総裁時代)等を歴任

*22:池田内閣経企庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、福田内閣経企庁長官、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相等を経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*23:田中内閣防衛庁長官自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田内閣科技庁長官、大平内閣行管庁長官、中曽根内閣通産相、竹下内閣外相等を経て首相

*24:岸内閣科技庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行管庁長官等を経て首相。宇野宗佑 - Wikipediaによれば、1)リクルート疑惑で名前が挙がってないこと、2)中曽根派幹部であること(竹下派はいわゆる七奉行が互いに竹下会長辞任後の次期会長を巡って、政治的に争っており、また竹下氏自身も派閥幹部を首相に出すことで、その首相が政治力をつけ、自らの政治力が衰退することを恐れて幹部を出すことに消極的だったことで候補を出せる状態になく、ほとぼりが冷めた頃に首相就任を狙っていた安倍、宮沢氏は派閥幹部を首相に出すことを辞退、実際、宮沢氏は後に首相に就任)、3)有力閣僚(通産相、外相)を歴任していることで首相に選任

*25:中曽根派には当時政調会長(竹下総裁時代)を務めていた渡辺氏(後に渡辺派領袖)が在籍していたが、彼も疑惑が浮上し、政治的謹慎を余儀なくされた。

*26:自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田、中曽根内閣文相等を経て首相。首相辞任後に一時、新進党党首。海部俊樹 - Wikipediaによれば、1)リクルート疑惑で名前が挙がってないこと、2)河本派幹部であること(竹下派はいわゆる七奉行が互いに竹下会長辞任後の次期会長を巡って、政治的に争っており、また竹下氏自身も派閥幹部を首相に出すことで、その首相が政治力をつけ、自らの政治力が衰退することを恐れて幹部を出すことに消極的だったことで候補を出せる状態になく、ほとぼりが冷めた頃に首相就任を狙っていた安倍、宮沢氏は派閥幹部を首相に出すことを辞退、実際、宮沢氏は後に首相に就任。また、宇野氏でケチをつけた中曽根派からは選出しづらい)、3)最大派閥・竹下派の領袖竹下氏と「早稲田大学雄弁会(竹下、海部ともに雄弁会出身)つながり」で親しいことで首相に選任

*27:佐藤内閣郵政相、三木、福田内閣通産相自民党政調会長(福田、大平総裁時代)、鈴木、中曽根内閣経企庁長官等を歴任

*28:海部氏の親分である河本氏自身は彼がオーナーを務める三光汽船の経営危機で当時、政治的評価を落としていた。

*29:海部内閣では森山真弓が「日本初の女性官房長官(現時点では唯一の女性官房長官でもある)」になりますが、リクルート疑惑がなければ恐らく彼女は官房長官になれなかったでしょう。