孤立主義のトランプ政権がスタートする。中国は好機と見て25年にも軍事力で台湾を併合する | 新・大森勝久評論集
久しぶりにトンデモ右翼「大森氏」に突っ込みます。まあ「トランプは法の支配を軽視してる」「トランプの親ロシアは許せない」とかまともな主張もある物の「まともでない主張」が多すぎる。
習近平にとっては、「台湾を併合して祖国統一を実現すること」は全党員と中国国民に対してなした約束であり、党総書記としての3期目(2022年11月~2027年11月)までに必ず実現しなくてはならない政権公約なのです。
「3期目まで」云々という事実は何処にもないでしょう。
中国の主張は「独立宣言がない限り、台湾は現状維持でOK」「但し、独立宣言すれば侵攻もあり得る」です。
しかし「3期目まで」云々と言ったら「独立宣言がない限り、現状維持でOK」と矛盾する。
統一について中国は何ら期限を設けてないでしょう。
期限を設けたら「それまでに無理をしてでも統一する(場合によっては軍事侵攻?)」か、「期限までの統一を諦めて、統一期限を先延ばしする(あるいはそもそも期限を設けない)か」どっちかしかないからです。しかし台湾住民は今のところ「現状維持」が一番多く統一機運は高くない。
中国に敵対的な態度の与党「民進党」はどう見ても「統一否定」だし、民進党よりは「親中国」の最大野党「国民党」も「将来的には統一」で即時統一を掲げてるわけではない。
「無理をして軍事侵攻で統一するリスク(そもそも、米国の武器支援を受ける台湾相手に軍事的に勝てるか分からないし、勝ったところで欧米の経済制裁は必至)」に比べたら、先延ばしの方が「面子が潰れるだけ」で済みますが、面子を潰す恐れを犯してまで期限を設定するメリットがない。
様々な「軍事威嚇行為」も是非はともかく「本気で侵攻する気」というよりは「政治的牽制」にすぎないでしょう。
つまりは「独立宣言しても侵攻できないと、台湾政府(頼清徳*1総統)が思ってるのなら甘い。独立宣言するならいつでも侵攻の用意はある」という「独立宣言封じ」です。台湾の現政権が「中国への態度をより友好的な物」にすれば、そうした軍事的威嚇は当然無くなるでしょう。
中国の方針としては「台湾との経済交流」「軍事威嚇や断交ドミノ」の「飴と鞭」でひとまずは独立宣言を封じると言う話でしょう。
そもそも日本での「北方領土、竹島返還(ロシアや韓国が支配)」が事実上「将来目標にすぎない(ロシア、韓国が返還の意思を示してない*2し、自衛隊の軍事侵攻で取り戻すことも現実的でないので、当面、実現の可能性なし。そもそも日本政府が何処まで本気か疑問)」同様の扱いが「中国にとっての台湾」ではないのか。
果たして台湾を統一したところで「建国の父」毛沢東を超える存在になれるかどうか。
そして別に「欧米の経済制裁」などのリスクを犯してまで無理して台湾侵攻で「毛沢東を超える必要」もない。
既に「一帯一路(2013年に提唱)」「AIIB設立(2015年)」「香港国家安全維持法制定による反体制活動封じ込め(2020年)」「北京冬季五輪(2022年)」等で、十分、習氏は「功績を残した」でしょう。
習近平は、自分の手で台湾を統一して祖国統一を実現することを約束しました。ただ「そのためには2期10年(2013年3月~2023年3月)では足りない」と主張して任期を撤廃したのです。これらのことは峯村健司*3著『台湾有事と日本の危機―習近平の「新型統一戦争」シナリオ』(PHP新書、2024年2月29日第1刷、3月28日第2刷発行)の43、59、60、69、73頁に分り易く書かれています。
やれやれですね。公式には勿論「台湾統一」云々は3期目突入の理由として発表されていません。
「隠された理由」として、峯村が主張してるにすぎず「争いのない定説、通説」とはとても言えません。
そもそも軍事侵攻を行うつもりなら「いわゆる断交ドミノ」はしないでしょう。侵攻すれば片が付くからです。
「欧米の経済制裁を招く軍事侵攻は不可」と言う判断の元、断交ドミノがされてると見るべきでしょう。
実際には「台湾統一」云々はないでしょう。「統一の可能性は高くない」し、そんな公約をすれば「実現できないとき」に習主席打倒の政治運動が反習派によって展開されかねないからです。
現在の台湾の立法委員(国会議員)は、野党の国民党が2024年1月の選挙で15議席を増やして52議席、与党の民進党は10議席減らして51議席です(定数113議席)。少数与党です。
こうした事実(与野党の議席が拮抗)を「台湾侵攻を助長」とみなす大森氏ですがむしろ逆でしょう。
台湾侵攻などしたら、反中国感情から、民進党への支持をかえって集め、国民党(中国べったりではないにせよ、少なくとも民進党よりは中国に融和的であり、中国にとっては「よりマシ」な政党)を不利にしかねない。
まあお互い「重要な貿易相手国」であり、敵対関係になるわけにもいきませんのでね。
安倍は憲法9条の「芦田修正」も直ちに拒否して、日本に国防軍を持たせないようにしました。中国やロシアや北朝鮮が日本を侵略しやすいようにするためです。
芦田*5修正を採用しないのは安倍に限った話ではなく、岸*6や中曽根*7といった改憲右派も含めて「歴代自民党首相が全てそう」なのでそれが「間違い」だというなら「歴代自民党首相全てが間違い」になります。まあ、大森氏は躊躇なく「歴代自民党首相全てが間違い」というのでしょうが。
なお、政府解釈では「自衛隊は専守防衛なら可能」なので政府解釈を前提にする限り「国防軍」などなくても「外国が侵略しやすい」ということはないし、政府解釈を前提にするなら「国防軍」云々は「専守防衛でないこと」、つまり「専守防衛に該当しない国外での戦争行為(戦前日本の日中戦争や太平洋戦争、戦後の米国のベトナム戦争、イラク戦争、旧ソ連のアフガン侵攻、現ロシアのウクライナ戦争など)」を行おうとしてると疑わざるを得ません。
*2:しかも韓国と違い、ロシアについては「ウクライナ戦争での対露制裁(欧米諸国と同調)」でまともに交渉するパイプすらないでしょう。勿論これは「交渉のために制裁すべきでなかった」と言う話ではなく単なる事実の指摘ですが
*3:朝日新聞北京特派員、ワシントン特派員など歴任。2022年3月9日の「週刊ダイヤモンド」による安倍晋三へのインタビューに関し、インタビュアーである同誌副編集長に翌10日「安倍総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」「とりあえず、ゲラ(誌面)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」と迫っていたことが4月に判明。「報道倫理に反し極めて不適切」とされ、「1か月の停職処分」「編集委員解任」となった(後に朝日新聞を退社)。現在は青山学院大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。著書『宿命:習近平闘争秘史』(2018年、文春文庫)、『潜入中国』(2019年、朝日新書)等
*4:小泉内閣防衛庁長官、福田内閣防衛相、麻生内閣農水相、自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相等を経て首相
*5:幣原内閣厚生相、日本自由党政調会長(吉田総裁時代)、日本民主党総裁、片山内閣副総理・外相等を経て首相
*6:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工省を歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相等を経て首相
*7:岸内閣科技庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相、自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行管庁長官等を経て首相