今日の中国ニュース(2024年5月22日分)

台湾に強いこだわり 『習近平研究』鈴木隆著 <書評>評・阿古智子(東京大教授) - 産経ニュース

 台湾有事について著者は、習近平が最高実力者の地位*1にとどまり続ける限り*2、いずれかの時点で「現状変更のための軍事行動」を起こす可能性が高いと思われると指摘。
 台湾本島の全面侵攻に至らない場合でも、周辺海域での小規模な武力衝突や台湾が実効統治する金門島馬祖島澎湖諸島などへの限定侵攻の発生の確率は高いとみる。「むろんそれが全面戦争に発展しないという保証はない*3」という。

 この文章だけでこの本が「読む価値のない駄本」であることは明白だし、著者の鈴木氏(大東文化大学教授)も、この本を高評価する阿古氏*4(東大教授)も「まともな学者でないこと」も明白でしょう。
 「合理主義的*5に考えれば」
【1】「独立宣言せず、現状維持に留まる限り侵攻しない」と中国政府が公言してるが故に「台湾が独立宣言やそれに準じる行為(例:国連への加盟申請)」をしない限り侵攻の大義名分がない
→そうした公言を撤回しない限り、中国は嘘つきになる。撤回すれば「嘘つきではなくなる」が、撤回したら「現状変更がなくても侵攻するのか?」との疑念を招くので今更おいそれと撤回できない。
【2】米国が台湾を軍事支援するが故に軍事的に勝てる確実な保証がない
【3】欧米の経済制裁は必至で、習氏が進める「共同富裕(経済発展が遅れる内陸部の開発を進め、都市部との格差を是正)」に支障が生じるからです。そもそも「香港デモ鎮圧」に警察は投入しても、軍隊を使用しなかった*6習政権が何で台湾侵攻などと言う「軍によるデモ鎮圧よりももっとハードルの高い行為」をすると思うのか。そもそも軍事侵攻で片をつける気なら「いわゆる断交ドミノ」などしないでしょう(断交ドミノしなくても軍事侵攻で片をつければ済む話)。「軍事侵攻できない」からこその「断交ドミノ」ではないのか。
 今は台湾の民進党政権(蔡英文→頼清徳)と対立的な習氏も「馬英九政権(国民党)」時代はそれなりの友好関係がありました。現在の対立関係は「民進党政権が敵対姿勢を強めるから」にすぎない。今後1)民進党政権が敵対的態度を、より融和的なものに改めるか(今のところ、その望みは薄い気がしますが)、2)民進党よりは中国寄りとされる国民党が政権奪還(仮にあるとしてもしばらく先の話ですが)すれば話は変わるでしょう。
 いずれにせよ、現状変更(独立宣言、国連加盟申請など)を台湾側が行わない限り、侵攻はあり得ないとみるべきでしょう。


香港科技大、米ハーバード大の留学生を無条件で受け入れ 優秀な人材獲得狙う - 産経ニュース
 こうした「受け入れ」の動きが「他の大学でも出ること」を留学生のために希望しますね。日本の大学もどこか「受け入れを表明するところ」が出ない物か。
 とはいえ「ハーバードから、外国の大学に優秀な学生が流出して、米国の国益が害される」と批判されてもトランプは方針を改めないのでしょうが。
【追記】
【速報】東大がハーバード大留学生の受け入れ検討|47NEWS(よんななニュース)
 朗報として紹介しておきます。


<主張>先島の避難計画 早期に大規模実動訓練を 社説 - 産経ニュース
 第一にそんな避難計画は「現実的ではない(想定人数が「約12万人」と多すぎてとても本土で実際に受け入れられると思えない。沖縄戦だって結局、大多数の県民は見捨てられた)」でしょうし、第二に「台湾有事の可能性は低い」でしょう。
 【1】中国が「台湾が独立宣言せず、現状維持に留まる限り侵攻しない」という日頃の主張を反故にして、侵攻した場合、欧米の中国への経済制裁は不可避。そんなリスクを中国が犯すか疑問。毛沢東時代ならともかく、中国も、共産党一党独裁とは言え「国の命令に、国民が無条件で『ハイ』で従う時代」でもないだろうし、欧米の経済制裁が確実視される台湾侵攻に中国国民の支持が得られるか疑問。
 【2】台湾も、住民の大多数は『即時独立論ではなく、現状維持』であり「独立宣言すれば侵攻もあり得る」とする「中国の侵攻リスク」を恐れず独立宣言する可能性は低い
からです。
 そもそも本当に台湾有事になり、「米軍基地(在日米軍が台湾有事に介入する可能性)」等を理由に中国が軍事攻撃を日本にする可能性を考えるならば、「沖縄から本土への避難」だけを云々すること自体がおかしくないか。
 「米軍基地が最も集中するのが沖縄」とはいえ「青森の三沢基地」「東京の横田基地」「山口の岩国基地」など「本土の基地」も存在し、それらが攻撃されない保証もないでしょう。
 とはいえ「沖縄が攻撃される場合の対応」だけでも大変なのに「横田基地などが攻撃される可能性への対応」などとても無理でしょう。
 その結果「沖縄への攻撃のみ云々する」という変な話になるわけです。

*1:ここでいう「最高実力者」とは何の意味なのか。「国家主席(国家トップ)、党総書記(党トップ)」を退任すれば「最高実力者ではない」のか、はたまた「鄧小平(要職には就いていた物の、国家主席、党総書記ではなかったが革命第一世代というカリスマで事実上の最高実力者)」のような「最高実力者」を想定してるのか。まあ、私見では、習氏の場合「鄧のようなカリスマ性」がないので役職を退任すればその時点で「最高実力者」とは言えないでしょうが。

*2:このように「習氏の個性」をやたら重視するのいかがな物か。習氏に侵攻意欲があろうとも、国民や軍が支持しなければ侵攻は出来ないだろうし、逆に「国民世論や軍が侵攻に乗り気」なら習氏が退任しようとも侵攻はあり得るでしょう(但し、『軍はともかく』中国の国民世論は今のところ侵攻に後ろ向きだと思いますが)。

*3:小規模侵攻もないと俺は見ますが、「小規模侵攻が仮にあった」としても,それが大規模侵攻になる可能性は低いでしょう。例えば最近もインドとパキスタンで軍事衝突がありましたが、それは大規模戦争にまでは至ってない。どちらかに「大規模戦争にしてもいい」という認識がない限り「インドとパキスタン」にせよ「中国と台湾」にせよ「南北朝鮮」にせよどこにせよ「小規模な軍事衝突」は大規模戦争にはならないでしょう。俺は「大規模戦争にしてもいい」という認識が中国や台湾にあるとは思っていません。

*4:著書『貧者を喰らう国(増補新版)』(2014年、新潮選書)、『香港・あなたはどこへ向かうのか』(2020年、出版舎ジグ)等

*5:「平和主義的に」ではない。

*6:勿論【1】警察で鎮圧できると言う判断もあったでしょうが、【2】軍を投入したら欧米の批判がすさまじいという判断もあったでしょう。