戦後80年の「石破見解」をめぐって⑤ - 高世仁のジャーナルな日々
我らが学生中研*1の先輩、笠原十九二さん
他にも
戦後80年の「石破見解」をめぐって③ - 高世仁のジャーナルな日々
笠原十九二「日中戦争全史*2」
と書いていますが、「十九二(とくじ?)」ではなく「十九司(とくし)」です。人の名前くらい間違えないで書いて欲しいですね。
高世だって「高瀬仁」等と堂々と間違えられたら不愉快でしょうに(追記:高世が気づいたのか、誰かが指摘したのか、その後「十九司」に訂正されています)。
なお、笠原氏*3が批判する南京事件否定論については、南京事件−日中戦争 小さな資料集の
◆二十万都市で三十万虐殺?
「三十万人」は、「民間人プラス軍人」の犠牲者の数字です。これと「民間人」のみの「人口」を比較することに、あまり意味はありません。
「二十万人」は、「虐殺」の範囲である、「南京市」、あるいは「南京行政区」の「人口」ではありません。その一区画である、「安全区」の推定人口です。
→高世が戦後80年の「石破見解」をめぐって⑤ - 高世仁のジャーナルな日々で批判してる参政党・参院議員「初鹿野*4」のデマに対する反論がこれです。
等を参照下さい。
詳しい紹介は省略しますが、南京事件−日中戦争 小さな資料集を見れば「主要な南京事件否定論」の「どこがデマか」がわかります(このサイトが触れてない「南京事件否定論」はほとんど無いかと思います)。
まあ、
1)東京裁判で松井石根(南京事件当時、中支那方面軍司令官(現地軍の最高司令官、陸軍大将))が、南京軍事裁判で谷寿夫(南京事件当時、第6師団長(当時は陸軍中将))が南京事件の責任者として処罰されてること(いずれも死刑判決。なお、松井は後に靖国に合祀)
→なお、松井や谷以外に責任者がいなかったわけではありません(南京事件当時の現地軍将校は勿論松井や谷以外にもいる。どんな人間がいたかは南京攻略戦の戦闘序列 - Wikipediaで分かります)。
武藤章(南京事件当時、中支那方面軍参謀副長(当時は陸軍大佐))は南京事件で松井、谷同様に起訴されていますが、南京事件については死刑判決が出た松井や谷と違い、無罪判決*5が下っています。
ただし武藤は太平洋戦争開戦当時の陸軍省軍務局長(当時、陸軍少将)であったことや、第14方面軍(フィリピン)参謀長(当時、陸軍中将)時代の「マニラ虐殺事件*6」の責任を問われて別途、死刑判決がでています(後に靖国に合祀)。
松井、谷、武藤以外で「訴追されなかった人間(現地軍将校)」のうち、以下の人間は「既に死亡していた(戦後の戦犯裁判当時に存命だったら訴追された可能性がある)」「皇族であるため、天皇の戦争責任問題につながる可能性があったため、あえて訴追しなかった(皇族でなければ訴追された可能性がある)」と見られますが、これに該当しない人間でも「訴追されてない人間(現地軍将校)」がおり、正直、訴追、不訴追の基準は今ひとつよく分かりません。
【既に死亡していた(戦後の戦犯裁判当時に存命だったら訴追された可能性がある)】
・塚田攻(つかだ・おさむ)*7(南京事件当時、中支那方面軍参謀長(当時は陸軍少将)。1942年死去)
・柳川平助*8(南京事件当時、第10軍司令官(当時は陸軍中将)。1945年1月死去)
・中島今朝吾(南京事件当時、第16師団長(当時は陸軍中将)。1945年10月死去)
・秋山義兌(あきやま・よしみつ)(南京事件当時、歩兵第6旅団長(当時は陸軍少将)。1945年8月死去)
・横尾闊(よこお・ひろし)(南京事件当時、山砲兵第19連隊長(当時は陸軍中佐)。1945年4月死去)
・飯塚国五郎(南京事件当時、歩兵第101連隊長(当時は陸軍大佐)。1938年死去)
・工藤義雄(南京事件当時、歩兵第102旅団長(当時は陸軍少将)。1940年死去)
・牛島満(南京事件当時、歩兵第36旅団長(当時は陸軍少将)。1945年死去)
・秋山充三郎(南京事件当時、歩兵第127旅団長(当時は陸軍少将)。1944年死去)
・小藤恵(こふじ・さとし)(南京事件当時、第18師団参謀長(当時は陸軍大佐)。1943年死去)
【皇族であるため、天皇の戦争責任問題につながる可能性があったため、あえて訴追しなかった(皇族でなければ訴追された可能性がある)】
・朝香宮鳩彦王(あさかのみや・やすひこおう)(南京事件当時、上海派遣軍司令官(当時は陸軍中将))
2)日本政府が南京事件の存在を認めてること
3)南京事件資料が国連「世界記憶遺産」登録されていること
を考えれば南京事件について詳しい知識が無くても「南京事件否定論」がいかに非常識か分かる話ですが。
日本政府や国連(世界記憶遺産認定)、東京裁判参加国が全て「ありもしなかった南京事件の捏造」に関わり、ありもしない事件で松井や谷に死刑判決が出た*9と考えるのは常識的ではない。
なお、今回ググって知りましたが笠原先生が『南京事件(新版)』(2025年、岩波新書)を今年、刊行されています。
*1:「学生中研て何?」ですね。笠原氏が南京事件研究者と言うことで「中研=中国研究会」かとは思いますが、高世が説明しないので分かりません。また学生というのは「大学生」なのか?。これまた高世が説明しないので分かりません。なお、笠原氏は1944年生まれで東京教育大(現座の筑波大の前身)卒。高世は1953年生まれで早稲田大卒です。先輩云々と言っても「8歳」の年齢差があるので恐らく学生中研での面識はないでしょう。
*2:2022年、高文研
*3:都留文科大学名誉教授。著書『アジアの中の日本軍』(1994年、大月書店)、『日中全面戦争と海軍:パナイ号事件の真相』(1997年、青木書店)、『南京事件と三光作戦』(1999年、大月書店)、『南京事件と日本人』(2002年、柏書房)、『南京難民区の百日:虐殺を見た外国人』(2005年、岩波現代文庫)、『南京事件論争史』(2007年、平凡社新書→増補版、2018年、平凡社ライブラリー)、『「百人斬り競争」と南京事件』(2008年、大月書店)、『日本軍の治安戦』(2010年、岩波書店→2023年、岩波現代文庫)、『第一次世界大戦期の中国民族運動』(2014年、汲古書院)、『海軍の日中戦争:アジア太平洋戦争への自滅のシナリオ』(2015年、平凡社)、『憲法九条と幣原喜重郎』(2020年、大月書店)、『日中戦争全史 (上)(下)』、『通州事件』(2022年、高文研)、『憲法九条論争:幣原喜重郎発案の証明』(2023年、平凡社新書)、『南京事件(新版)』(2025年、岩波新書)等
*4:赤旗参政党候補の中傷に抗議/共産党神奈川県委が書簡/虚偽情報発信で(2025.7.9)、虚偽投稿は公選法違反/党神奈川県委 参政候補を告訴(2025.7.17)という「デマ屋」初鹿野を当選させた選挙民のアホさには心底呆れます。
*5:南京事件では武藤に無罪判決が出たことの是非はひとまず置きます。
*6:この事件では第14方面軍(フィリピン)司令官(当時、陸軍大将)の山下奉文にも死刑判決
*9:彼らに死刑判決が出たことの是非はひとまず置きます。