10/17発売号の漫画ゴラク(2025年10/17記載)

 読まないと理解できない感想が多いですがご容赦ください。

 酒のほそ道@ラズウェル細木

 「秋野菜の美味しい季節なので、あえて肉や魚を使わず、野菜づくし」ということで「焼きシイタケと菊の酢の物」「焼きナスの煮浸し」「里芋の揚げだし(揚げ出し豆腐のように里芋を揚げて、大根おろしとつゆをかける)」「百合根と蓮根と豆腐のあんかけ煮(片栗粉でとろみを付ける)」「きのこの和風スパゲティ(醤油で味付け)」が登場。

 やってはいけない@湖西晶

 今回は最近普及している「キズパワーパッドジョンソン・エンド・ジョンソン社)」などの「ハイドロコロイド絆創膏」が「万能の存在ではない」として、「ハイドロコロイド絆創膏を使うべきでない傷があること」を指摘しています。
 ネット上の記事紹介で代替。

キズパワーパッドを貼って良い傷と貼ってダメな傷を皮膚科専門医が解説 - 東京・大阪の美容皮膚科ならFLALU(フラルクリニック)
 ハイドロコロイドは傷口から出る体液を吸収してゲル状の層を作り、傷を保護しながら治癒を促進する素材です。傷を乾燥させず、適度な湿潤環境を保つことで、痛みを和らげながら早くキレイに治すことができます。
 しかし、実は使用する際にとても大事なポイントがあります。
 貼ると良い傷と、貼ると逆に傷が悪化してしまう傷があるのです。
 キズパワーパッドさえ貼れば大丈夫、「何でも治る」と思っている方は要注意です。注意書きを見ると、使用して良いケースと使用してはいけないケースが、明記されています。
 最初に、傷をキレイに治すための、ポイントをお伝えします。
 最近、傷の治療では「ウェットドレッシング」という方法が基本となってきています。
 かつては傷を乾燥させ、かさぶたを作ることで治癒を促すと考えられていましたが、そのような乾燥による治療法は、すでに20〜30年前の古い方法です。
 傷を乾かして治す方法は、確かに傷は治るのですが、キレイには治らないのです。傷跡が残る可能性が高い治療が乾かして治す治療方法です。
 乾燥させる治療方法だと、傷は1週間程度で治ります。それに対して、ウェットドレッシングという湿った状態で治す治療は、乾燥させて傷を治す方法よりも、傷が治るまで3〜4日から長いと1週間くらい余計にかかります。
 治るまでは少し時間がかかってしまいますが、傷跡が残りにくいという大きな利点があるため、湿った状態で治す方法は本当に優れた治療法です。
 キズパワーパッドを貼ってはいけない4つの傷のタイプをご説明していきます。
① 屋外で転んで出血している傷
 砂利やゴミなどの異物が皮膚に入り込んでいる可能性があります。
 さらに、どのような細菌が付着しているか分からないため、キズパワーパッドで密閉してしまうと感染を悪化させるリスクがあります。この場合は、まずは異物を取り除き、清潔な状態を保つことが重要です。
② 動物に噛まれた傷
 見た目以上に深く損傷していることが多いです。
 さらに口腔内の細菌が傷の奥まで入り込んでいる危険性があります。流水や石鹸で洗浄しても完全に除去できるわけではなく、キズパワーパッドで覆うと内部で細菌が繁殖し、感染を悪化させる恐れがあります。動物に噛まれた場合は、必ず医療機関を受診してください。
③ 受傷から時間が経過した傷
 傷ができてから数日が経過し、黄緑色の膿が出ている場合は、すでに感染が進行している可能性があります。こうした傷にキズパワーパッドを使用すると、膿や細菌が閉じ込められてしまい、皮膚が広範囲に破壊される危険があります。
 このような場合も、速やかに医師の診察を受けることが望ましいです。
④ 湯たんぽによるヤケド
 湯たんぽによるやけどは、深部にまでダメージが及んでいるケースが多いです。深いやけどをキズパワーパッドで覆うと、内部の状態が確認できなくなり、適切な治療が遅れる可能性があります。湯たんぽによるやけどは、まず深さや経過を慎重に確認することが重要なため、キズパワーパッドは使用しないでください。 深い傷や感染の疑いがある傷に、いきなりキズパワーパッドを使用することは非常に危険です。まずは医療機関で診察を受け、必要に応じて抗生物質などの治療を行ったうえで、状態が安定してからキズパワーパッドを使用するようにしてください。
 判断に迷う場合は、自己判断せず、必ず医療機関にご相談ください。

◆極楽シアター『おーい、応為』(北川れい子

 映画紹介コラムで、今回は、女性画家「葛飾応為葛飾北斎の娘。応為は長澤まさみ*1が、北斎永瀬正敏*2が演じた)」が主人公の映画『おーい、応為』の紹介。
 監督は主演・長澤(葛飾応為)が2020年の日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、ブルーリボン賞主演女優賞を受賞した映画『MOTHER マザー』で監督を務めた大森立嗣*3(長澤との再度のタッグ)。
 北斎、応為以外では同時代の画家として、魚屋北渓*4(演:大谷亮平)、渓斎英泉(演:髙橋海人*5)が映画には登場*6
 なお、今回の映画以前にも

葛飾応為 - Wikipedia参照
◆『北斎漫画』(1981年、新藤兼人監督、松竹)
 北斎を主人公とする矢代静一の小説『北齋漫畫』(1973年、河出書房新社)の映画化。緒形拳*7北斎を、田中裕子*8が応為を演じた。
◆『眩:北斎の娘』(2017年、NHK総合
 応為を主人公とした朝井まかて*9の小説『眩(くらら)』(2016年、新潮社→2018年、新潮文庫)のドラマ化。宮崎あおいが応為を、長塚京三*10北斎を演じた。
◆『広重ぶるう』(2024年、NHK BSプレミアム4K)
 『東海道五十三次』などで知られる歌川広重を主人公とした梶よう子*11の小説『広重ぶるう*12』(2022年、新潮社→2024年、新潮文庫)のドラマ化。
 広重を阿部サダヲが、広重と交流のある画家として、北斎*13長塚京三が、応為を中島ひろ子*14が演じた。

など応為を登場人物とした映画、ドラマがあるようです。
【参考:葛飾応為

葛飾応為 - Wikipedia参照
◆応為は画号で、名は栄(えい)と言う。「応為」の画号は、父・北斎が娘を「オーイ」と呼んだので、それをそのまま号としたとする説や、北斎の号の一つ「為一」にあやかり、「為一に応ずる」の意を込めて「応為」と号したとする説など諸説ある。
北斎の娘とされる画家「葛飾辰女」は、『落款の筆跡』や『画風』が応為と似ているため、応為の若い時の画号で、同一人物とする説が有力である。 
◆画家の南沢等明に嫁したが、針仕事をほとんどせず、父譲りの画才と、勝ち気な性格から等明の描いた絵を稚拙と笑ったため、離縁された。
美人画に優れ、北斎の肉筆美人画の代作をしたといわれている。また、北斎春画の彩色を担当したとされる。北斎は「美人画にかけては応為には敵わない。彼女は妙々と描き、よく画法に適っている」と語ったと伝えられている。

【参考:誰もボクを見ていない

誰もボクを見ていない|建石尚子2019.1.12

冒頭文より
 2014年3月29日、埼玉県川口市のアパートの一室で背中を刃物で刺された70代の老夫婦の遺体が発見された。1ヶ月後、警察は窃盗容疑で孫の少年(当時17歳)を逮捕(後に強盗殺人容疑などで再逮捕)した。殺害動機については「金目当てだった」との供述が報じられた。

 この本に出てくる少年は、過去に母親や義理の父親による虐待を受け、学校には通わせてもらえず、一家でホテル暮らしをする期間もあったそうです。転居先で母親は住民登録をせず、少年は『居所不明児童』となり、一家への支援は途絶えてしまったのです。そして、少年は祖父母を殺害しました。
 すべての人に保障されているはずの教育を受けられずに17歳で罪を犯した少年は、逮捕されて初めて学ぶ時間を得ることができたと書かれています。
 本を読むと、母親*15への怒りの感情が湧いてきますが、そうではなくて、やっぱりこれは社会問題なのだと思います。
 罪を犯すまで、たくさんの人が気にかけ、中には手を差し伸べようとした人がいたにも関わらず、その想いは少年には届かず、この社会は少年自身に『誰もボクを見ていない』と感じさせてしまったのです。
 最後に、この本の筆者の言葉を。

 どんなに同情したり心を痛めたりしても、行動を伴わない「善意」には現実を変える力はなかったのだ。

 この本を読んで、同情しました。心も痛めました。少しでもこの問題に関心を向ける人が増えてほしい、とも思いました。
 けれど、「思うだけ」では現実は変わらないのだと、筆者の言葉に気づかされました。

無期懲役囚、美達大和のブックレビュー : 『誰もボクを見ていない』 山寺 香2018.9.20
 本書は、2014(平成26)年3月に埼玉県川口市で起きた殺人事件がテーマでした。
 17歳の孫の男子が金目あてに祖父母を包丁で刺殺したという事件です。これだけの情報だけなら、なんと自分勝手で心のない少年だろうと感じるのが普通でしょうが、この少年の事情は違いました。その生い立ちは悲惨の一語に尽きます。
 その原因は母親のだらしなさ、浪費癖、虚言癖によるものでした。母親はまともに働くこともせず、絶えず男を取り替え、その相手を金としか考えないようなクズだったのです。そのため、少年は小学校にも時々しか通えず、小5から中2の間は完全に不登校の状態でした。その間、少年は母親とその相手の男と3人でラブホテルで暮らしています。これがまたおかしな話で、毎日ホテル代を日払いの他に、まだ小さな少年が一緒にいるのを知ってて、ホテルの管理人は何もしないのです。要は料金さえ払ってくれたら、あとは干渉しないとしていました。
 また、少年は母親に強制されて、親類や祖父母から借金を重ねます。借金の理由は母親が考えますが、借りることが半ばノルマ制みたいもので何としても借りてこいというものでした。先方でも母親が借金を少年に強要しているとわかり、母親に話をするのですが、口がうまく、心臓に毛が生えているような女なので全く効果がありません。
 しかも、金の使い途は、この母親のパチンコ代・ラブホテル代・ホストクラブ代などです。ラブホテル生活の間に、妹が産まれますが、面倒をみるのは少年でした。それが過酷な環境の中で、献身的に面倒をみるのです。
 そうこうしている間に男にも逃げられ、少年が働くようになると、給料は数カ月先のぶんまで前借りさせられ、母親は相変わらずの生活を続けます。こうなるまでに途中で児童相談所の介入もあったのですが、当時は法律の壁があって強制的に保護できませんでした(現在は、できるようになりました)。小学校の先生は、「学校で何とかしようと思っても、家ですべてひっくり返されてしまうとどうにもならない」と語っていましたが、そういうものなのでしょうか。
 前借りもできなくなると少年と母親は金に困りますが、それでも母親は働こうとはしません。その挙句、「ばあちゃんたちを殺しでもすれば(金が)手に入るよね」と言い出します。少年が適当に「そうだね」と笑うと、母親は「本当にできるの?」と詰めていくのです。そうして少年は恩ある祖父母を殺しました。私が驚いたのは、殺害を知らせると母親が笑ったこと、そして死んでいる祖父母の家に入って金品を物色して盗み出したことです。その後、逮捕された母子は、少年が懲役15年、「私は殺せとは言ってません」と否認した母親は強盗だけの罪で4年6カ月の刑でした。
 なんと悲惨な人生なのだろうと同情を禁じ得ませんでした。
 本書では、著者が新聞記者ということもあって、このような子どもに対して、社会ができることとは何かと、問いを投げていました。少年は心理的・性的・経済的虐待とネグレクト(育児放棄)の被害者です。無慈悲に祖父母を殺したことは大罪でしたが、そこには酌むべき事情がありました。
 そして、この少年は自身で告白しているように、心は女性という「性同一性障害」の疑いがありました。男の子も15歳前後ともなれば、体力的に母親を凌ぐので、おかしなことに従うことはなくなるのですが、心情的に「女性」であれば逆らえなかったのかと想像しました。

【読書感想】誰もボクを見ていない: なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか ☆☆☆☆☆ - 琥珀色の戯言2020.4.27

内容(「BOOK」データベースより)
 2014年、埼玉県川口市で当時17歳の少年が祖父母を殺害し、金品を奪った凄惨な事件。少年はなぜ犯行に及んだのか?。誰にも止めることはできなかったのか?。事件を丹念に取材した記者がたどり着いた「真実」。少年犯罪の本質に深く切り込んだ渾身のノンフィクション。

 この事件、僕も記憶にあります。
 犯人の17歳の少年とその母親についてのさまざまな報道をみて、「なんなんだこの母親は……」と唖然としました。
 自分の実の父母を、(ボーガス注:金目当てに、孫である)実の息子に殺させるなんて……。

 筆者は事件発覚直後の2014年4月に毎日新聞さいたま支局に赴任し、少年が逮捕された時には行政取材を担当していた。そのため、発生直後に事件を取材してはいなかった。警察担当の同僚が取材していた事件に関する記事を読み、痛ましい事件が少年犯罪だったことに驚きはあった。しかし、孫が祖父母を殺害するという事件は、特別珍しいという印象はなかった。素行の悪い不良少年が遊ぶ金ほしさに祖父母を殺してしまったのか。正直に言えば、その程度のステレオタイプ的な印象しか持っていなかった。
 しかし、この事件はその後、発生時以上の注目を集めることになった。筆者はその年の秋に行政担当から警察・裁判担当に配置換えになり、同年12月にあった少年の裁判員裁判をすべて傍聴した。法廷で明らかになった少年の生い立ちは常軌を逸した過酷なものであり、中でも驚愕した事実は少年が小学5年から義務教育を受けていなかったにもかかわらず、行政機関も周囲の大人も少年を救い出すことがないまま事件に追い込まれていったことだった。さらに少年は住民票を残したまま転居を繰り返し、行政が居場所を把握できない「居所不明児童」だったのだ。
 少年は小学5年から中学2年まで、母親と義父に連れられ学校にも通わせてもらえないまま、ラブホテルを転々としたり野宿をしたりして生活していた。さらに、少年は両親から度重なる虐待を受け、「生活費が足りないのはお前のせいだ」と責め立てられて親戚への金の無心を繰り返しさせられていたという。事件当日も、母親から必ず金を得てくるようにきつく命じられ、祖父母宅に一人で向かわされ、借金を断られて事件を起こした。

 この本で、事件の背景や、それまでの17歳の少年の母親、妹、そして母親の夫との生活を読み、僕はひたすら怒っていたのです。なんなんだこれは。この少年も、殺すなら、この母親のほうだろ(不躾な発言だということは重々承知していますが、読んでみていただければ、そう思う人間がいることも理解していただけるはずです)
 この母親(幸子)のあまりのクズっぷりに、「なんて親だ!」と憤っていたのです。 
 ドラマや小説では、「人の温かさに触れ、人生をやり直す」登場人物が多いのだけれど、少なくとも、幸子はそうではなかった。
 自分たちに優しくしてくれる人たちからは、その「善意」を利用してとことん金を搾り取り、刹那的な快楽にそれを使い続けたのです。
福祉の手が差し伸べられても、パチンコやゲームセンターで浪費していることをたしなめられると、「自由がない」と逆切れして失踪……
 自分では働かずに子どもを金の無心に行かせ、すでに生活は破綻しているにもかかわらず、「子どもが欲しい」と優希(祖父母を殺害した少年)の妹を出産したものの、世話は優希に丸投げしています。
 「どんな酷い人間にでも、生存権があるし、行政は最低限のサポートをすべきだ」と僕は思っているのですが、幸子に関しては、ここまで自分のことしか考えられない人間をサポートしようとするのは、ザルに水を汲もうとするようなものではないのか、と考えずにはいられませんでした。
 ちなみに、祖父母殺害について、幸子は「自分は優希にそんなことは指示していない」と主張しています(なお、判決では「『殺してでも借りてこい』と普段から母親は言っており、この事件前にもそう言っていたことは否定できない」とされています)。これまで、優希の心を支配し、言いなりになるようにしておきながら、自分に罪が及ぼうとすると、「自分の責任ではない」という態度を貫いているのです。
 この裁判で、祖父母の家で、殺害をためらったという優希の証言に対して、「ためらう気持ちがあったのだから、完全にマインドコントロールされていたとは言い難く、責任能力があった」という判断がなされていることにも、僕は絶望せずにはいられませんでした。
 ここまで「善性」が失われてしまった人間でも、優希にとっては「母親」であり、「自分がなんとかしないと」と、虐待されたり、いいように使われたりしながらも、責任を感じていたのです。
 幸子のあまりにも不合理な行動の数々は、僕には「異常」であり、「この人も病んでいる」のではないか、と感じました。
 とはいえ、こういう人を「治療」して、真面目に生きられるようにすることが可能なのか、可能だとしても、それを本人が望まない場合、強制的に「治療」を受けさせることができるのか。
 「この17歳の少年がかわいそう」というよりも、「この母親のような人を、どうすれば良いのだろうか?」などと考えてしまう本でした。自分は、あまりにも無力だ。
 ただ、こういう現実があることは知っておいたほうが良い気がするのです。
 今は「どうすればいいかわからない」としても。

【読書感想】誰もボクを見ていない ~なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか~ - 定年まであと何年?2023.5.4
 取材の過程で明らかになった事は、少年の育った環境があまりにも過酷で常軌を逸したものだったということ。実母と養父から身体的・性的虐待を受け、小学5年生からは学校に通う事すら出来ず居所を転々とし、自堕落な母親と行動を共にし、野宿で生活していたことすらあった…。
 少年の母親は全く働く気がなく、基本的に男任せの生活を続け、男が稼いでくる金で生活(パチンコ屋やゲームセンターに入り浸り、ホテルを転々とする)した。いよいよ依存する男がいなくなると、少年を稼ぎ手として使った。
 そしてとうとう身体行き詰まった母親は、少年に対し、『祖父母の所で金を借りて来い。借りれなかったら、殺してもいいから奪って来い』と指示する。この時の母親の発言を、公判では母親は否定する。結局、証拠が無いため母親は強盗罪として懲役4年6ヶ月の判決を受けた。
 もう、滅茶苦茶苦しい。母親がクソ過ぎて、この少年が本当に可哀想でした。母親って、絶対的な母性本能ってのを持ってるみたいな神話、嘘だよね…って思った一冊です。

 ということで、この事件に限れば「判決では母親に殺人の共犯は認定されなかった(但し、少年の祖父母殺害を知りながら、金銭を奪ったことで強盗については母親に共犯が認定された)」とはいえ、「母親による殺人指示」の疑いが濃厚であり、通常の少年犯罪とは相当に性格が違います。
 なお、

MOTHER マザー - Wikipedia参照
 三隅周平(演:奥平大兼*16)は小さな工場に勤め、母・秋子(演:長澤まさみ)や妹・冬華(演:浅田芭路)と共に寮に住み込んだ。だが、秋子は働かず、パチンコ等で散財するばかり。挙句に周平に工場の金を盗ませ、一家で失踪した。
 金を使い果たし、切羽詰った秋子は息子・周平に、祖父母(秋子の両親)を殺して金を奪えと指示した。周平はすぐに逮捕されたが、秋子は殺人を指示していないと言い張り、周平に罪をなすり付けた。
 秋子の関与が判明すれば、周平の罪は軽くなる。しかし、周平も自分の単独犯だと主張したため、秋子は執行猶予付きの刑*17となり、周平には懲役12年の判決が言い渡された。

ということで、映画では、実際の事件同様に「母親の殺人指示」は認定されなかった物の、長澤演じる母親が「強盗殺人を息子に指示した設定」になっています。
 それにしても、デビュー当時はアイドルだった長澤も今や「そのような悪役も演じる演技派俳優」に成長したわけです。

【映画:MOTHER マザー

映画.comの「MOTHER マザー」批評
【1】
 (ボーガス注:毒親を演じた)長澤まさみさんが嫌いになるくらい素晴らしい演技だったと思います。
【2】
 秋子(長澤まさみ)と(ボーガス注:秋子の愛人)リョウ(阿部サダヲ)のクズっぷりが凄まじい。一切更生する気のない2人を見てずっとイライラ。
 長澤と阿部の毒親演技は見事。クズ女なのにどこか色気のある秋子は、長澤の演技力のせいなのか。色目使われて抱きたくなっちゃう、男たちの気持ちわかる。阿部の演技もリアルで良かった。ただリョウがホストってのがちょっと気になった。どう見ても見た目がホストじゃないでしょ(笑)。
【3】
 今まで見たことのない(ボーガス注:クズとしか言いようがない)長澤まさみでびっくりした。(ボーガス注:長澤が)これで賞*18を取ったのも頷ける。
 働かないし、子どもを道具としか思っていないし、ダメ男ばかり寄ってきて救いようがない。祖父母を殺してお金を奪うという発想がそもそも陳腐で、それを鵜呑みにしてしまう育ち方しかしていない息子がこれまた可哀そうである。
 実話をもとにしているらしいが、子ども2人をすぐ保護していればそんなことにはならなかったのでは。刑務所の中の方が生活しやすいというのはホント残念。
【4】
 いわゆる毒親と、親子の共依存を延々と描写する作品。貧困家族を描く話として(実に荒い括りだとは思うが)引き合いに出されがちな是枝裕和監督の「万引き家族」とは本質的に異なると感じた。「万引き家族」の登場人物には、あのような生活に陥らざるを得なかった悲哀を感じたが、本作の秋子はただの自己中心的な人間で、もっぱら本人の刹那的な行動により貧困が引き寄せられている。
 強いて物語のテーマを探すとすれば、実際の事件の裁判で裁判官が母親の姉に問うた「周りにこれだけ大人がいながら何故助けられなかったのか?」だろうか。
【5】
 2020年当時はクズ親としか見れなかったのですが、鈴木大介*19『貧困と脳~働かないのではなく働けない』(2024年、幻冬舎新書)を読んだ後に見たら、クズ親かもしれないけれど、「貧困脳」(と本の中で書かれた)の人なのかなと思えました。
【6】
 結論から申し上げて、私はこの映画を観て後悔しています。人間の心理描写や演出、細かな部分まで計算された脚本、役者陣の演技などは本当にレベルが高くて見応えがありましたが、ストーリーがとにかく胸糞悪いのです。最初から最後までずっとイライラするような描写が続くんです。個人的に「面白いけど胸糞な映画」といえば(ボーガス注:猟奇殺人鬼の連続殺人を描いた)デビット・フィンチャー監督の「セブン」を想起するんですが、個人的にこの作品は(ボーガス注:完全な虚構である「セブン」と違い実話が元であるという意味で)セブン以上の胸糞でした。鑑賞注意です。
 主人公の少年・周平が自堕落な母親からどのように育てられ、どのような環境に身を置き、そしてどのような経緯で祖父母の殺害に至ったかを描いた映画になります。
 「少年が祖父母を殺害した事件についての映画」というのは、予告編やコマーシャルでもはっきりと明示されているため、ネタバレにはならないと思います。
 最初から最後まで、人間のクズみたいな母親から周平が酷い仕打ちを受ける描写が続きます。これが私には本当にきつかった。息子を道具のように扱い、片や自分は男と遊び歩く生活を送る。
 周平を救ってくれそうな人が何人か現れますが、秋子に阻まれてそれも叶わず。途中で周平が秋子に反抗するような場面もありましたが、結局は秋子に押し通され、自分の望む選択ができませんでした。
 あと、秋子が映画のラストで罰を受ける形になるのですが、それまでの様々な悪逆非道な行いに対して、「これだけ?」と思うくらいのちっぽけな罰しか受けないため、それもイマイチ納得いきませんでした。
 以上のような理由で、正直観ていて辛くなってくるし観たことを後悔するほどの映画だったのですが、それは決してつまらなかった訳ではなく、ここまで心揺さぶられるほどに映画としての完成度は高くて面白かったと思います。単純に好みの問題です。
 万人にオススメできる作品ではありません。私のように、イライラが止まらなくなる人もいると思います。しかし、胸糞に耐性のある方は是非鑑賞してみてください。細かな心理描写や役者陣の熱演は一見の価値ありです。オススメです。

児童精神科医高岡健の映画評論『マザー』2020.10.5
 2014年に惹起された川口市祖父母殺害事件の地裁判決前日、毎日新聞は「居所不明児、無縁の年月」と題する記事を朝刊に掲載した。祖父母を殺害した少年は居所不明児(居所不明児童)として学ぶ機会を奪われ、暴力やネグレクトなどの虐待を受けていたこと。離婚した母親はホストクラブに通い続け、元ホストと再婚したこと。元ホストの義父に収入があるときは母親と3人でラブホテルに宿泊し、ないときは野宿をしていたこと。そして、事件後、精神科医は「虐待する母親の言うとおりにするしかない『学習性無力感』の状態」にあったと鑑定したこと等を、この記事は報じていた。
▼記事を書いた毎日新聞の山寺香記者は、後に『誰もボクを見ていない』(2017年、ポプラ社)を上梓し、事件の細部を明らかにした。この本を原案としてつくられた映画が、「マザー」(大森立嗣監督)だ。原案とまったく同じというわけではないが、ある程度までは原案に沿った脚本だと思う。
 山寺の本によると、二審では専門家証人が少年と母親との関係を「共依存」として説明しているが、映画でも同じく「共依存」という言葉が強調されている。もっとも、映画だけでみられる、「僕はお母さんが好きなんですよ」という少年(奥平大兼)のセリフは、やや説明過多のような気がするが。
 秋子については、まったくの悪人ではないけれども、善人でもないという、難しい性格設定がなされているようだ。その微妙な境界を長澤が、感心するほど上手く演じている。ここからは蛇足だが、かなり以前に日本子どもソーシャルワーク協会の男性スタッフと、実写版映画「タッチ」(2005年)で長澤の演じていた朝倉南の話をしていたとき、傍にいた女性から「男の人は、何かといえば南ちゃんの話ね」と、皮肉まじりに呆れられたことがある。その頃から15年くらいか、長澤まさみはコミカルな人物からシリアスな人物まで、ずいぶん幅広い役がこなせるようになったものだと思う。

マザーの感想 | 指定難病を持って生まれてきた娘2020.7.9
 マザー(映画)観てきました。
 2014年に、17歳の少年が祖父母を殺害した事件があったのですが、この実話を元に作られた映画なんですが、実話とは多少異なっていましたが。
 働かないシングルマザーの元で育てられる幼い息子。
 学校にも行かせて貰えず、親戚からお金を借りまくっての生活。
 母親は毎晩ホストに通い、何日も家に帰らない日々
 ガス、電気を停められているアパートでただひたすら母親の帰りを待つ息子。
 男を取っかえ引っ変えしながら遊んで暮らす母親。
 夜逃げを繰り返し、借金は膨らみ、息子に『ばあちゃんを殺して金奪って来い』と指示をする。
 母親の愛情が欲しい息子。
 逆らえない息子は、祖父母を殺害してしまう。
という話なのですが、いやー、終始胸糞悪い映画でした!!
 これ、実話だと知らずに観ていて(むしろこんなに辛い内容だとも思っていなかった)、最後は母親が後悔して、母親が更生されて行くのかなと期待していたのですが、更生されるどころか、「(ボーガス注:殺人は)息子が勝手にやった、私が指示した証拠はあるのか!」と言って無実を主張。
 で、映画はおしまい。
 はあっ?。終わり?。えー?。
 ありえない。息子が可哀想すぎる。

*1:1987年生まれ。2000年、東宝「シンデレラ」オーディションに応募し、当時、史上最年少の12歳(小学6年生)でグランプリに選ばれ、芸能界入り(なお、現在の東宝「シンデレラ」グランプリ史上最年少は2022年受賞の白山乃愛(2012年生まれで受賞当時10歳))。2003年、高専ロボコン(ロボットコンクール)大会を描いた映画『ロボコン』で、日本アカデミー賞新人俳優賞を、2004年、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(片山恭一の同名小説の映画化)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞ブルーリボン賞助演女優賞報知映画賞助演女優賞を、2011年、映画『モテキ』(久保ミツロウの同名マンガの映画化)でブルーリボン賞助演女優賞を、2015年、『海街diary』(吉田秋生の同名マンガの映画化)で毎日映画コンクール助演女優賞を、2017年、映画『散歩する侵略者』(前川知大の同名小説の映画化)で毎日映画コンクール主演女優賞を、2019年、映画『コンフィデンスマンJP・ロマンス編』(フジテレビドラマ『コンフィデンスマンJP』の映画版。コンフィデンスマンとは詐欺師のこと)でブルーリボン賞主演女優賞、報知映画賞主演女優賞を、映画『キングダム』(原泰久の同名マンガの映画化)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を、2020年、『MOTHER マザー』(実際に起きた「少年による祖父母に対する強盗殺害事件」(2014年)のルポ『誰もボクを見ていない:なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』(山寺香(毎日新聞記者)、2017年、ポプラ社)に着想を得たフィクション作品)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、ブルーリボン賞主演女優賞を受賞(長澤まさみ - Wikipedia参照)。ということで無知なので今回初めて知りましたが「日本アカデミー賞」「ブルーリボン賞」「報知映画賞」「毎日映画コンクール」といった日本を代表する映画賞を多数受賞し、今や「演技派俳優」としての地位を確立した「元アイドル」長澤です。

*2:1966年生まれ。映画『息子』(1991年公開)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、新人俳優賞、ブルーリボン賞助演男優賞キネマ旬報助演男優賞を受賞(永瀬正敏 - Wikipedia参照)

*3:1970年生まれ。2013年、映画『さよなら渓谷』(吉田修一の同名小説の映画化)、『ぼっちゃん』(秋葉原通り魔事件を題材にしたフィクション作品)でブルーリボン賞監督賞を、2018年、映画『日日是好日』(森下典子の同名エッセイの映画化)で報知映画賞監督賞を、2020年、『MOTHER マザー』で毎日映画コンクール日本映画大賞を受賞。父親の麿赤兒(1943年生まれ、本名:大森宏)、弟の大森南朋(1972年生まれ)は俳優という芸能一家(大森立嗣 - Wikipedia参照)

*4:北斎の弟子の一人。もともと魚屋を経営していたため「魚屋(ととや)」を号したが、その後画業一筋の生活に入っている(魚屋北渓 - Wikipedia参照)

*5:男性アイドルグループKing & Princeのメンバー(髙橋海人 - Wikipedia参照)

*6:なお、葛飾応為の生没年は不明ですが、魚屋北渓(1780~1851年)、渓斎英泉(1791~1848年)と近い世代とみられています。映画でも演じた長澤(1987年生まれ)、大谷(1980年生まれ)の実年齢は近い年齢です(但し英泉を演じた高橋は1999年生まれで長澤、大谷とはかなり離れている)。

*7:1937~2008年。1984年、映画『楢山節考』(深沢七郎の同名小説の映画化)で、1987年、映画『火宅の人』(檀一雄の同名小説の映画化)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。長男の緒形幹太(1966年生まれ)、次男の緒形直人(1967年)、孫の緒形敦(1996年生まれ。緒形直人の息子)も俳優と言う芸能一家(緒形拳 - Wikipedia参照)

*8:1955年生まれ。1981年、映画『ええじゃないか』、『北斎漫画』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞を、2005年、映画『火火』(那須田稔、岸川悦子共著のノンフィクション『母さん子守歌うたって:寸越窯・いのちの記録』(2002年、ひくまの出版)を原作に、女性陶芸家の草分けで骨髄バンク立ち上げに尽力し、NHK朝ドラ『スカーレット』(2019年上期放送)の主人公(女性陶芸家・川原喜美子(演:戸田恵梨香))のモデルとされる神山清子(こうやま・きよこ、1936~2023年)の半生を描いた)、『いつか読書する日』でキネマ旬報主演女優賞を、2013年、映画『共喰い』(田中慎弥の同名小説(芥川賞受賞作)の映画化)、『はじまりのみち』(映画監督・木下惠介(1912~1998年)の生誕100年記念映画で木下の伝記映画。アニメ映画監督・原恵一の初の実写映画監督作品。加瀬亮木下恵介を、田中が木下の母を演じた)でキネマ旬報助演女優賞を受賞(田中裕子 - Wikipedia参照)

*9:1959年生まれ。歌人・中島歌子を描いた『恋歌』で2013年下半期の直木賞を受賞(朝井まかて - Wikipedia参照)

*10:1945年生まれ。1993年、映画『ザ・中学教師』で毎日映画コンクール主演男優賞を受賞(長塚京三 - Wikipedia参照)

*11:2008年、『槿花、一朝の夢』が松本清張賞を受賞(応募時の名義は蘇芳よう子)。『一朝の夢』と改題され刊行、小説家デビュー(梶よう子 - Wikipedia参照)

*12:広重の作品は、欧米では、藍色の美しさで評価が高い。この鮮やかな青は日本古来の藍(インディゴ)の色と間違えられることがあるが、当時ヨーロッパから輸入された新しい顔料である紺青である。木版画の性質から油彩よりも鮮やかな色を示すため、欧米では「ジャパンブルー」、あるいはフェルメール・ブルー(ラピスラズリ)になぞらえて「ヒロシゲブルー」と呼ばれる(歌川広重 - Wikipedia参照)

*13:なお、北斎(1760~1849年)と広重(1797~1858年)は37歳の年齢差がありますが、演じた長塚(1945年生まれ)と阿部(1970年生まれ)の実年齢はは25歳差になります。

*14:1971年生まれ。1990年、映画『櫻の園』(吉田秋生の同名マンガの映画化)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞(中島ひろ子 - Wikipedia参照)

*15:映画『MOTHER マザー』(2020年公開)で長澤まさみが演じた母親のモデル

*16:2003年生まれ。映画『MOTHER マザー』(2020年公開)で日本アカデミー賞新人俳優賞、キネマ旬報新人男優賞、ブルーリボン賞新人賞を受賞(奥平大兼 - Wikipedia参照)

*17:但し、実際の事件では強盗殺人の共犯は認定されず、強盗殺人が認定された息子(懲役15年)より軽い刑罰だった物の「懲役4年6ヶ月の実刑判決(執行猶予なし)」

*18:日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、ブルーリボン賞主演女優賞のこと

*19:著書『最貧困女子』(2014年、幻冬舎新書)、『最貧困シングルマザー』(2015年、朝日文庫)、『老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体』(2015年、ちくま新書)、『脳が壊れた』(2016年、新潮新書)、『脳は回復する:高次脳機能障害からの脱出』(2018年、新潮新書)、『貧困を救えない国・日本』(共著、2018年、PHP新書)、『壊れた脳と生きる:高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援』(共著、2021年、ちくまプリマー新書)、『ネット右翼になった父』(2023年、講談社現代新書)等