朝日、毎日、産経新聞の「今年(2025年)の3冊(読売だけは『今年(2025年)の10冊』を紹介)」(2025年12月24日)(追記あり)

今週の本棚:2025年「この3冊」/上(その1) | 毎日新聞2025.12.13
 有料記事なので「3冊のセレクト理由」が全く読めませんが、荒川洋治*1宮本百合子『伸子*2』(2025年、ちくま文庫)を上げたのには「ええ?」と少々驚きました(ちなみにちくま文庫の解説は、紙屋と対談*3した斎藤美奈子*4)。確かに「ちくま文庫からの刊行」は今年ですが、『伸子』自体は以前から、岩波文庫新潮文庫宮本百合子全集(新日本出版社)で刊行されてる本ですし、勿論、宮本百合子も「1951年」に死去*5しています。
 勿論、宮本百合子は「宮本顕治氏(共産党委員長、議長を歴任)の妻」であり「日本共産党のレジェンド」の一人ですね。
 なお、ちくま文庫は他にも「宮本のようなかなり昔の作家の著書」として

石垣りん『ユーモアの鎖国(新版)』
 初版は1973年、北洋社。1981年、講談社より再刊。1987年、筑摩書房よりちくま文庫で刊行。石垣は2004年死去
太宰治人間失格
 太宰は1948年6月死去。『人間失格』の初版は太宰死後の1948年7月に筑摩書房より刊行
野上弥生子『真知子』
 初版は1931年、鉄塔書院。野上は1985年死去。

を今年刊行しています。
 なお、毎日の『伸子』書評についてはきょうの潮流 2025年12月29日(月) | しんぶん赤旗|日本共産党が言及してるので、拙記事今日のしんぶん赤旗ニュース(2025年12/23~12/29分) - bogus-simotukareのブログで紹介しました。


<令和7年 私の3冊>文芸評論家 伊藤氏貴 - 産経ニュース*62025.12.21

❶『戦下の読書』和田敦彦*7著(2025年、講談社選書メチエ、2090円)
 当時の読書傾向を詳しく調べ、時代の思想に迫る。
 昭和17年早稲田大学の学生の「感銘を受けた図書」の第4位にして、「座右の愛読書」の第2位が、ヒトラーの『我が闘争』だった。

【1】「1936年に日独防共協定、1940年に日独伊三国同盟」で「ナチドイツは当時の日本の同盟国」
【2】

ナチスを見習った大政翼賛会とは 発足の目的と流れ : 読売新聞
 ドイツ躍進の根源はナチス一党独裁体制にあると考え、日本もナチスのような一国一党体制を敷き、日本に国家総動員体制を確立する必要がある*8、と考えたのである。

でわかるようにドイツのナチス党を模範にして「大政翼賛会」を成立(1940年)
【3】

大島浩 - Wikipedia
 大島*9ヒトラーに心酔しており、言動はドイツ寄りであったため、外務省や海軍などでは彼を「駐独ドイツ大使」と揶揄した。木戸幸一*10は戦後、「あのくらい、ドイツ一辺倒の男はなかった」と大島を評している。

でわかるように当時の日本にはナチスドイツ贔屓が多かったとはいえ「本当かいな?。大学進学率は今と比べて全然低いし、当時の早大生ならエリートでしょ?(がっかり感が半端ない)」ですね。
 とはいえ、ここからは
拙記事
「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2021年6/3分:荒木和博の巻)(追記あり) - bogus-simotukareのブログ
三浦小太郎に突っ込む(2022年1月30日分)(副題:改めて半藤一利を小馬鹿にする) - bogus-simotukareのブログ
事大主義は国を滅ぼす(戦前日本のドイツ事大主義) - bogus-simotukareのブログ
で批判した半藤一利の「陸軍のドイツ贔屓はナチスのハニートラップ」云々が「デタラメ」であることが改めて明白ではあります。
 まさか半藤も今存命だとして「ドイツ贔屓の早大の学生達も、ドイツ政府の働きかけによってドイツ女を抱いていたのだ。ハニトラでドイツ贔屓になったのだ」とは言わないでしょう(半藤への当てこすり、嫌み、皮肉のつもり)。


朝日新聞書評委員の「今年の3点」① 青山七恵さん、石井美保さん、隠岐さや香さん、酒井啓子さん、酒井正さん|好書好日2025.12.27

隠岐さや香さん*11東京大学教授)
③大日本いじめ帝国(荻上チキ*12、栗原俊雄*13著、中央公論新社、1870円)
 ③は戦時中における日本の「いじめ」を調べた画期的な書物。

 「日本陸軍での上官による部下への理不尽ないじめ」「隣組でのつるし上げ」なんかは、

【陸軍】
野間宏の小説『真空地帯』(山本薩夫が映画化)
大西巨人の小説『神聖喜劇
・映画兵隊やくざ - Wikipedia
隣組
・マンガ「はだしのゲン」の鮫島伝次郎 (さめじまでんじろう)とは【ピクシブ百科事典】

等で割と有名かと思います。


本よみうり堂から読む2025年の10冊 : 読売新聞
 2025年の書評のウチ、10冊がセレクトされています。
 なお、

読売新聞文化部
◆12月28日の本よみうり堂は、読書委員が選ぶ「2025年の3冊」特集です。年末年始の読書の参考になる一冊が、きっとこの中から見つかります。

ということで別途「読書委員(書評担当者)が選ぶ今年の3冊」もあるようですが、12/28現在では記事が掲載されていません。ネット掲載は紙掲載より遅れるようです。せめて年内には「今年の3冊」をネットでも掲載してほしい(【追記】残念ながら2025年内にはネット記事が掲載されませんでした)。
 「読書委員(書評担当者)が選ぶ今年の3冊」がネット記事に掲載され、俺的に興味深い本があればコメント予定です(【追記】残念ながら「読書委員(書評担当者)が選ぶ今年の3冊」に興味深い本がなかったのでコメントしません)。

・冨原眞弓*14『トーヴェ・ヤンソン』(2025年、筑摩書房
 日本のトーヴェ・ヤンソン研究の第一人者で、2025年に亡くなられた著者による第一級の評伝です。

 ヤンソンムーミンの原作者ですね。今年でムーミン誕生80周年(1945年にムーミン発表:例えばムーミン80周年参照)なのでその記念出版でしょう。
 しかし「ヴェイユ研究(フランス語の原書が読める)→ムーミン研究(スウェーデン語の原書が読める)」つうのはスゴイですね。俺なんか日本語しか出来ませんし。

野添文彬*15大田昌秀*16 :沖縄の苦悶を体現した学者政治家』(2025年、中公新書
 1990年に沖縄県知事に当選した大田昌秀は、戦中に沖縄戦を経験しています。戦後は早稲田大での学生生活を経て米国留学を経験し、琉球大の教壇に立ちました。一生の中で、何度も生き直すことを強いられた人生の軌跡は、戦後80年の今こそ改めて振り返るときです。

 2025年で大田氏(1925年生まれ)が「誕生100年」だから記念出版でしょう。特にコメントはしませんが、一応メモしておきます。

吉川徹*17『ひのえうま:江戸から令和の迷信と日本社会』(2025年、光文社新書
 2026年は、 丙午の年です。かつてこの年に生まれた女性は、嫁ぎ先に災いをもたらすなどと言われ、1966年(昭和41年)は出生数の減少が起きました。令和の丙午はどうなるのか、自らも66年生まれの計量社会学などを専攻する著者が論じます。

 さすがにもう「丙午の迷信」はないし、「大きな出生率の落ち込みもない」でしょうが、とはいえ、2026年(丙午)の出生率が高くなるとも思えません。
 なお、

『ひのえうま 江戸から令和の迷信と日本社会』吉川徹著 : 読売新聞2025.3.17
 1966(昭和41)年の出生数は、前後の年に比べ、25~30%も落ち込んでいる。
 何より大きかったのは、近代的な人口管理だった。当時は、母子の健康や家計負担などの観点から、多子世帯の抑制が政策的に進められていた。助産婦による受胎調節指導を通じ、避妊も広まりつつあった。

だそうです。1966年の出生率において実は「迷信の影響」は「ゼロではない」にせよ、それほど大きくなさそうです。
 なお、最近の若者はそもそも「丙午」については知らないのでしょうね。
 ちなみに「1966年(丙午)生まれ(来年で60歳)って誰がいるんだろう」と思って
1966年 - Wikipediaを見て、以下の通り「1980年代のアイドル(今から40年前なので当然ではありますが)」ももうそんな年なんだ(俺は1970年代生まれなのでリアルタイムで見ている)としみじみ。

【経歴はウィキペディアの記述を参照】
小泉今日子(1966年2月4日生まれ)
 1982年3月21日に「私の16才」でアイドル歌手としてデビュー。1984年3月、「渚のはいから人魚」で初のオリコン週間チャート首位を獲得。年末にはNHK紅白歌合戦に初出場し、その後、紅白歌合戦に5年連続出場。
石川秀美(1966年7月13日生まれ)
 1982年4月21日に「妖精時代」でアイドル歌手としてデビュー。1990年6月4日、元シブがき隊でタレントの薬丸裕英との結婚を機に芸能界を引退。
早見優(1966年9月2日生まれ)
 1982年4月、「急いで!初恋」でアイドル歌手としてデビュー。同期(1982年)デビューには石川秀美松本伊代堀ちえみ小泉今日子三田寛子、シブがき隊、中森明菜らがおり、「花の82年組」と呼ばれた。1982年の日本レコード大賞で新人賞を獲得。1983年にはNHK紅白歌合戦に初出場。
斉藤由貴(1966年9月10日生まれ)
 1984年、『少年マガジン』(講談社)のミスコンテスト「ミスマガジン」でグランプリに選ばれ芸能界入り。1985年4月開始のフジテレビ『スケバン刑事』で主演し、この作品のヒットで瞬く間にトップアイドルとなる。1986年4月開始のNHK連続テレビ小説『はね駒』のヒロインを演じ、平均視聴率40%を記録し、多くの視聴者に親しまれた。

*1:著書『荒川洋治全詩集:1971-2000』(2001年、思潮社)、『日記をつける』(2002年、岩波アクティブ新書→2010年、岩波現代文庫)、『詩とことば』(2012年、岩波現代文庫)等

*2:伸子は「宮本百合子をモデルとした主人公」で他にも「伸子の夫の佃二郎(後に離婚するが『百合子の最初の夫』である荒木茂がモデル)」が出てくる(伸子 (小説) - Wikipedia参照)

*3:これについては例えば、紙屋記事紙屋高雪×斎藤美奈子トークイベントの内容の一部を「じんぶん堂」で公開 - 紙屋研究所、拙記事紙屋研究所&斎藤美奈子を批判する(2025年12/12日分) - bogus-simotukareのブログ参照

*4:神谷との対談で、斎藤が解説を書いた『伸子』(ちくま文庫)についての話が出たかは不明(紙屋記事紙屋高雪×斎藤美奈子トークイベントの内容の一部を「じんぶん堂」で公開 - 紙屋研究所では『伸子』についての言及はない)

*5:1951年の死去時点(享年51歳)では、彼女や夫「宮本氏」に否定的な徳田書記長が党トップであり、彼女の党内評価も大して高くないし、死去も「徳田らの批判による心労」も一因かもしれない。一方、宮本氏が党委員長、議長を歴任して以降は百合子の評価は高まり、逆に徳田の評価は「徳田球一らは、弾圧を逆に利用して、中央委員会を解体し、党組織の全国的分裂を強行するという一大暴挙を行いました(赤旗日本共産党101周年記念講演会/歴史に深く学び、つよく大きな党を/『日本共産党の百年』を語る/志位和夫委員長の講演(2023.9.17))」等で分かるように現在の日本共産党において「非常に低くなっています」。

*6:伊藤氏貴氏は明治大学教授。著書『告白の文学:森鷗外から三島由紀夫まで』(2002年、鳥影社)、『奇跡を起こすスローリーディング』(2011年、日文新書(日本文芸社))、『奇跡の教室:エチ先生と『銀の匙』の子どもたち:伝説の灘校国語教師・橋本武の流儀』(2012年、小学館文庫)、『漱石と猫の気ままな幸福論』(2016年、PHP文庫)、『同性愛文学の系譜』(2020年、勉誠出版)、『現場から考える:国語教育が危ない!:「実用重視」と「読解力」』 (共著、2024年、岩波ブックレット)、『読む技法』(2025年、中公新書)等(伊藤氏貴 - Wikipedia参照)

*7:早稲田大学教授。著書『メディアの中の読者:読書論の現在』(2002年、ひつじ書房)、『書物の日米関係』(2007年、新曜社)、『越境する書物』(2011年、新曜社)、『読書の歴史を問う:書物と読者の近代』(2014年、笠間書院→増訂版、2020年、文学通信)、『「大東亜」の読書編成:思想戦と日本語書物の流通』(2022年、ひつじ書房)、『読書調査の歴史と資料』(2025年、樹村房)等

*8:とはいえ大政翼賛会ヒトラーをトップとするナチスのような一枚岩の組織になれず「政友会」「民政党」など「解散前の政党の寄り合い所帯」「同床異夢」という代物でしたが。

*9:駐ドイツ大使。戦後、終身刑判決を受けるが後に仮釈放

*10:第一次近衛内閣文相、厚生相、平沼内閣内務相、内大臣を歴任。戦後、終身刑判決を受けるが後に仮釈放

*11:著書『科学アカデミーと「有用な科学」』(2011年、名古屋大学出版会)、『文系と理系はなぜ分かれたのか』(2018年、星海社新書)、『日本学術会議の使命』(共著、2021年、岩波ブックレット)等

*12:TBSラジオ荻上チキ・Session』MC。「ストップいじめ!ナビ」代表理事、「社会調査支援機構チキラボ」代表理事等を歴任。著書『ネットいじめ』(2008年、PHP新書)、『検証東日本大震災の流言・デマ』(2011年、光文社新書)、『いじめを生む教室』(2018年、PHP新書)、『宗教2世』(編著、2022年、太田出版)等

*13:毎日新聞記者。著書『シベリア抑留』(2009年、岩波新書)、『シベリア抑留は「過去」なのか』(2011年、岩波ブックレット)、『遺骨:戦没者三一〇万人の戦後史』(2015年、岩波新書)、『特攻:戦争と日本人』(2015年、中公新書)、『「昭和天皇実録」と戦争』(2015年、山川出版社)、『戦後補償裁判』(2016年、NHK出版新書)、『シベリア抑留・最後の帰還者:家族をつないだ52通のハガキ』(2018年、角川新書)、『東京大空襲の戦後史』(2022年、岩波新書)、『硫黄島に眠る戦没者:見捨てられた兵士たちの戦後史』(2023年、岩波書店)、『戦争と報道:「八月ジャーナリズム」は終わらない』(2025年、岩波ブックレット) 等

*14:1954~2025年。聖心女子大学教授。著書『ムーミン谷へようこそ』(1995年、ベストセラーズ→『ムーミン谷のひみつ』と改題し、2008年、ちくま文庫)、『シモーヌ・ヴェイユ』(2002年、岩波書店→2024年、岩波現代文庫)、『ムーミンを読む』(2004年、講談社→2014年、ちくま文庫)、『ムーミンのふたつの顔』(2005年、筑摩書房 →2011年、ちくま文庫)等

*15:沖縄国際大学教授。著書『沖縄返還後の日米安保』(2016年、吉川弘文館)、『沖縄米軍基地全史』(2020年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『沖縄県知事』(2022年、新潮選書)

*16:琉球大学名誉教授。沖縄県知事(1990~1998年まで2期8年)、参院議員(2001~2007年まで1期6年)を歴任。著書『沖縄・平和の礎』(1996年、岩波新書)、『沖縄は主張する』(1996年、岩波ブックレット)、『新版・醜い日本人:日本の沖縄意識』(2000年、岩波現代文庫)、『沖縄、基地なき島への道標』(2000年、集英社新書)等

*17:大阪大学教授。著書『階層・教育と社会意識の形成』(1998年、ミネルヴァ書房)、『学歴社会のローカル・トラック:地方からの大学進学』(2001年、世界思想社)、『学歴と格差・不平等:成熟する日本型学歴社会』(2006年、東京大学出版会)、『学歴分断社会』(2009年、ちくま新書)、『現代日本の「社会の心」:計量社会意識論』(2014年、有斐閣)、『日本の分断:切り離される非大卒若者たち』(2018年、光文社新書