無能な俺が「能力的に説明できる範囲」で簡単に紹介します。
◆随想「川口弘先生の思い出」(久保建夫)
(内容紹介)
1998年に亡くなられた川口弘氏(中央大学名誉教授*1)の回想ですが、俺の無能のため詳細な紹介は省略します。
なお、川口氏の功績として、久保氏は川口弘 - Wikipediaが言及している「いわゆる川口私案」について触れています。
また、久保氏によれば、川口氏はいわゆる秋丸機関 - Wikipediaに経済学者の一人として関わっており「国力の差を考えれば、日本が米国に勝てるか怪しい(勝利の可能性は極めて低い)」という報告書の内容も知っていたので「日米開戦」には複雑な思いがあったと生前、述懐していたとのこと。
【参考:川口弘氏】
川口弘先生の思い出(緒方俊雄)
私は、大学紛争の中で毅然とした態度で研究・教育・行政に専心している川口先生の言動に注目し、その都度発行された原稿を収集してきたので、日本経済評論社に相談した。そうしてまとめられたのが、川口弘著『大学の社会的使命』(1987年)である。本書の序文には、川口先生の力強い決意が表明されている。
「現実的であるということは、現実に安易に妥協することではない。現実と理想のギャップを冷静に認識したうえで、現実の諸条件のなかで半歩でも理想に近づく途を探り、着実に前進しようと努める姿勢をもつことである。
理想を掲げるということは、現実を逃避して夢想に酔うことではない。
大学は、利潤の最大化を自己目的とする企業=学校屋ではない。人類と社会の幸福と発展に役立つかぎりでの、教育と研究とを統一的に推進するための、優れて公共的な社会的機関であり、そのような社会的使命を最大限に達成することが大学の掲げるべき理想である。理想なき大学はもはや大学ではない」。
【参考:秋丸機関】
秋丸機関 - Wikipedia
正式名称は「陸軍省戦争経済研究班」だが、秋丸次朗陸軍主計中佐が率いたため秋丸機関とも呼ばれる。1942年12月に秋丸機関は解散し、その研究機能は総力戦研究所に移管された。
秋丸は回想で「対英米戦の場合、経済戦力の比は、二十対一程度と判断するが、開戦後二ヶ年間は貯備戦力によって抗戦可能*2、それ以降はわが経済戦力は下降を辿り、彼は上昇し始めるので、彼我戦力の格差が大となり、持久戦には堪え難い、といった結論であった。すでに開戦不可避と考えている軍部にとっては、都合の悪い結論であり、消極的和平論には耳を貸す様子もなく、大勢は無謀な戦争へと傾斜した」と述べている。
「アメリカとの戦争に勝ち目はない」秋丸機関の調査報告は無視され戦争の道へ…秋丸次朗氏の息子や研究者が後世に伝えるメッセージとは|FNNプライムオンライン2025.9.17
正式名称は「陸軍省戦争経済研究班」。
その中心人物が秋丸次朗さん。陸軍省戦争経済研究班の班長だったことから、「秋丸機関」と呼ばれるようになった。
報告書は東京大学経済学部資料室に保管されている。秋丸機関が約1年半かけてイギリスとアメリカの経済力を調査し、戦争の見通しをまとめた報告書だ。
日本の経済力と分析・比較し、「アメリカとの戦争に勝ち目はない」と導き出していた。にもかかわらず、日本はアメリカとの戦争に突入していった。
秋丸機関について、次朗さんは長い間、語ろうとしなかったが、終戦から34年がたった81歳の時に、その時の心情を明かしている。
「すでに開戦不可避と考えている軍部にとっては都合の悪い結論であり、消極的平和論には耳を貸す様子もなく」
「大勢は無謀な戦争へと傾斜したが、実情を知るものにとっては薄氷を踏む思いであった」
世界と日本
◆国際法無視のベネズエラ攻撃(西村央)
(内容紹介)
トランプ政権のベネズエラ攻撃が「国際法違反の侵略」として批判されています。
◆韓国のeコマース企業:早朝配送・夜間労働者の死亡事故(洪相鉉)
(内容紹介)
「韓国のアマゾン」と呼ばれる「eコマース企業」クーパンでの労災事故が批判的に取り上げられています。
クーパン (企業) - Wikipedia
注文の99.6%が24時間以内に配送される
という対応が問題(労働者の過重労働と、その結果による労災事故や過労死の発生を助長)であり、最近は
拡大中「お正月は休業します」百貨店やスーパー、飲食業界でも【Nスタ解説】 | TBS NEWS DIG (1ページ)2025.12.17
東武百貨店は1月1日に加え2日も休業するということです。年始に2日間休業するのは1977年以来49年ぶりです。
大手スーパーのサミットも正月3が日は休業するということです。(一部店舗を除く)
百貨店で元日休業が定着? 働き方改革進む 三が日を休むスーパーも:朝日新聞2025.12.25
百貨店の元日休業が定着しそうだ。元日からの営業を続けてきたそごう・西武は2026年は全店で休業することを決めており、大手は軒並み休むことになる。
そごう・西武では、2025年は改装中の店舗などを除く6店が元日から営業した。だが、2026年は元日に売り上げを伸ばすより、従業員を休ませる働き方改革を優先することを決めたという。元日休業は12年以来14年ぶりで、初売りは1月2日になる。
三越伊勢丹ホールディングスも元日休業で1月2日から初売りを始める。
東武百貨店は、2026年の初売りを1月3日にする。前年から休みを1日増やした。同じように、高島屋と大丸松坂屋百貨店、阪急阪神百貨店は2025年から、松屋は2024年から年明けは1月2日まで休んで、1月3日が初売りだ。
等、「日本のスーパーやデパートが『働き方改革』を掲げ、正月は休む」ように「労働者の健康に配慮し、無理な24時間以内配送をクーパンは辞めるべきだ」「韓国の消費者も24時間以内配送にこだわるべきではない」と主張されています。
なお、クーパンでは「個人情報流出問題」も発生していますが、洪論文は「労災問題」のみ取り上げています。
参考
「妹も夜勤中に亡くなった」…韓国・李在明大統領、クーパンの過労死と情報流出を痛烈批判 写真枚 国際ニュース:AFPBB News2025.12.25
韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領が12月11日、世宗市で開かれた政府各省庁による業務報告の席で、大手EC企業クーパンを名指しし、夜間労働による過労死問題と個人情報流出に対する厳しい経済制裁の必要性を訴えた。
韓国警察、クーパン労災隠蔽疑惑で内部告発資料の分析に着手 写真枚 国際ニュース:AFPBB News2026.1.4
EC企業クーパンによる産業災害(労災)隠蔽疑惑をめぐり、韓国警察が内部告発者から提出された関連資料の分析作業に着手した。
ソウル警察庁のクーパン専従タスクフォース(TF)チームは3日、クーパンの元個人情報保護責任者(CPO)側から、労災隠蔽に関する内部告発資料を任意で受け取ったという。
ソウル警察庁は1日、クーパンを巡る一連の疑惑を包括的に捜査するため、86人規模のTFチームを発足。チームはチェ・ジョンサン捜査部長をリーダーとし、従来のサイバー捜査課に加え、捜査課、広域捜査隊、金融犯罪捜査隊、公的犯罪捜査隊、刑事機動隊が共同で担当する。
特集「平和と公正の税財政に」
◆高市内閣と大軍拡財政(梅原英治*3)
(内容紹介)
「高市軍拡に対する批判」がマスコミや「共産、社民を除く野党」でまるでされず、高市政権支持率も高いことにはげんなりしますが、諦めず批判していくしかないのでしょう。
勿論、高市軍拡は平和主義の観点でも問題ですが、福祉、医療、教育予算など、他予算を圧迫するという点でも問題です。
その結果、今月号のもう一つの特集である「貧困」を助長することにもなります。
◆インタビュー「貧困、格差を克服する税制へ、市民の共同で:富裕税の提案」(宇都宮健児*4)
◆富裕税を巡る国際的動向と「富の集中」:政策対応と新自由主義の克服(合田寛*5)
(内容紹介)
手法はともかく、富裕税のような、「富裕層に応分の負担を求める主張」が日本では共産、社民を除き、マスコミや野党でまるで主張されないことに、どれほど富裕層に甘いのかと、げんなりしますが、諦めず主張していくしかないのでしょう。
参考
富裕税を考える(1)/ビリオネア課税の青写真/政治経済研究所主任研究員 合田寛さん | しんぶん赤旗|日本共産党2025.11.19
富裕税を考える(2)/「国連枠組み条約」へ協議/政治経済研究所主任研究員 合田寛さん | しんぶん赤旗|日本共産党2025.11.20
富裕税を考える(3)/1兆ドルが租税回避地へ/政治経済研究所主任研究員 合田寛さん | しんぶん赤旗|日本共産党2025.11.22
富裕税を考える(4)/超富裕者の富が急膨張/政治経済研究所主任研究員 合田寛さん | しんぶん赤旗|日本共産党2025.11.26
富裕税を考える(5)/専制政治生む新自由主義/政治経済研究所主任研究員 合田寛さん | しんぶん赤旗|日本共産党2025.11.27
富裕税を考える(6)/歴史的転換の始まり/政治経済研究所主任研究員 合田寛さん | しんぶん赤旗|日本共産党2025.11.29
◆事業者に犠牲を広げるインボイス制度と消費税問題(菊池純*6)
(内容紹介)
ネット上の記事紹介で代替。
赤旗主張/インボイスの廃止/消費税5%への一律の減税で2025.6.28
インボイス「総選挙の争点に」 制度反対の団体が主張、根強い廃止論:朝日新聞2026.1.20
年間売上高が1千万円以下の「免税事業者」はインボイスを発行できない。このため免税事業者が取引から除外されたり、取引価格の値下げを強いられたりするというおそれがあった。
こうした懸念に対し、政府は緩和措置を設け、このほどその期間を延長する方針を決めた。ただ、今回のオンライン調査では約81%が政府方針を「評価できない」と回答しており、そもそもの制度の「廃止」を求める声が9割を超えた。
特集「現代の貧困:その実態と原因」
◆教育の貧困(檀原毅也)
(内容紹介)
筆者は全日本教職員組合(全教)委員長。
主として
1)残業代不払い制度(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法))が若干支給額を引き上げたものの、廃止されず、維持されたこと
→給特法を廃止しきちんと残業代を支払うことを主張
2)予算不足を理由に、少人数学級が実現されないこと
3)予算不足を理由に、非正規雇用の教員が増えていること
→きちんと正規雇用することを主張
が批判され「国、自治体がきちんと教育予算を確保すること」が主張されている。
◆子どもの貧困・虐待の社会的背景と階層性:児童養護施設の調査から(堀場純矢*7)
(内容紹介)
1)児童養護施設の調査から、虐待親について「低学歴(高校卒、専門学校卒など非大学卒)→不安定就労(非正規雇用)や無職→精神疾患の罹患→虐待」というケースが多く見られることが確認できた。
虐待親も「ある意味、社会の被害者」であり、彼らを社会として支援する必要があるという理解が大切である。
2)公立の児童養護施設は比較的に労働環境が恵まれているが、小規模な私立の施設では非正規雇用も多く、職員の労働環境は必ずしも良好ではない。施設入所児童の人権を守るためにも、職員の労働環境の向上が必要である。
◆「脱施設化」政策と障害者・家族の貧困(田中智子*8)
(内容紹介)
脱施設化(白濱論文の言葉だと地域移行)それ自体は「望ましい政策」としながらも、それを実現するには「障害者とその家族に対する地域社会の支援(それを維持するための国や自治体の財政支援)」が必要であり、そうした支援無しでの脱施設化は
1)脱施設(地域移行)を叫んでも、実際には地域の支援がないので脱施設できない状態
2)脱施設(地域移行)の美名によって、地域の支援無しで施設から追放し、放置する「ある種の棄民政策(あるべき脱施設化とは言えない)」→障害者やその家族ですら「そんな脱施設化(地域移行)なら施設の方がまし」として、むしろ施設に固執する状況を招くこと
の「いずれかになること」が確実であり、「あるべき脱施設化」を真に実現するための「地域社会の支援(それを維持するための国や自治体の財政支援)」の重要性が訴えられている。
◆地域移行と親亡き後のくらしを考える:障害者と家族の現実(白濱智美*9)
(内容紹介)
京都で発生した「母親による知的障害児殺害事件」を契機に結成された団体「京都・障害者の暮らしの場を考える会」の事務局長を勤める筆者が会の活動について報告していますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
【参考:親亡き後のくらし】
障害ある人の親の不安を調査 9割“自分が亡くなったあと心配” | NHKニュース2025.11.30
超高齢社会を迎える中、障害がある人と生活する親の不安について、障害者団体がアンケート調査を行ったところ、回答した家族の9割が、自分が亡くなったあとの子どもの生活に心配があると回答しました。団体は高齢の親が、障害がある子どもを介護する「老障介護」の世帯の負担が増加しているとして、国に社会資源の拡充などを要望しています。
調査は、知的障害がある人の親などで作る「全国障害児者の暮らしの場を考える会」が、専門家と共同で、ことし6月から9月にかけて行い24都府県に住む当事者の家族2151人から回答を得ました。
障害がある子どもの親が「親亡き後」の生活に不安を抱える背景の一つには、高齢の親が自宅などで介護を担う「老障介護」の状態にある世帯の増加が指摘されています。
障害者家族の85%、「親なき後」の将来に不安 民間調査 - 日本経済新聞2026.2.11
18歳以上で障害がある人の家族のうち85.5%が、親の高齢化や死亡などで介助できなくなる「親なき後」の将来に不安を感じていると答えたことが11日までに、日本財団の調査で分かった。財団は家族が担っていた支援が継続できなくなるリスクがあるとして、地域での支援の必要性を指摘した。
調査のアドバイザーを務めた北星学園大短期大学部の藤原里佐*10教授は記者会見で「在宅の障害者らを中心に親の支援に依存している問題がある」と述べ、地域の受け皿整備が必要だとした。
「障害者に冷たい今の日本社会」では当然の回答でしょうが実にやりきれません。国や自治体の積極的な行政対応が必要でしょう。
こうした状況を放置したまま「脱施設化(白濱論文の言葉だと地域移行)」を進めても、それは田中論文が批判するように「ある種の棄民政策」にしかならないでしょう。そして場合によっては「私が亡くなった後、障害を持つ子どもが心配だ→私がこの子を殺すしかない」という「子殺しにまでなる」わけです。
【参考:京都で発生した「母親による知的障害児殺害事件」】
障害の長男殺害した母に執行猶予 京都地裁、心神耗弱認める - 産経ニュース2021.12.13
京都市左京区の自宅マンションで、重度の知的障害がある長男=当時(17)=の首を絞めて殺害したとして、殺人の罪に問われた母親の無職、尹常任被告(54)の裁判員裁判で、京都地裁(増田啓祐裁判長)は13日、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。
弁護側は、尹被告がうつ病などにより責任能力を欠く「心神喪失状態」だったとして無罪を主張していた。増田裁判長は判決理由で、尹被告がノートに犯行をためらう内容を記したことなどから「限定的とはいえ、犯行を思いとどまる能力は残っていた」と指摘。当時、心神喪失状態とは判断できず、限定的な責任能力を持つ「心神耗弱状態」にとどまるとした。
その上で、長男の進路が決まらず将来に絶望したことが背景にあったとして「同情の余地が大きく、強く非難することはできない」と述べ、執行猶予が相当とした。
「だめなお母さんでごめんなさい」福祉支援へのアクセス権がない人間の末路 - 成年者向けコラム | 障害者ドットコム2021.12.18
2020年7月、京都市左京区で重度知的障害を持つ長男(17)を絞殺したとして母親(54)が逮捕・起訴されました。母親と長男と祖母の3人暮らしで、祖母には認知症があり、母親は自身も精神疾患を抱える中でワンオペでの育児と介護を長期間続けていた実態も明らかとなっています。
母親のM被告は、2003年6月に長男のSくんを出産しました。Sくんは健常児として生まれますが、2歳半のころにウイルス性脳炎と誤診による治療の遅れから脳の7割を損傷し、重度の知的障害が残ってしまいます。M被告の夫婦関係は元々芳しくなく、Sくんに障害が遺った同年に離婚して生活保護も受給しています。
M被告自身も強迫性障害やうつ病を抱える中、Sくんが障害を負ってから15年間向き合い続けてきました。しかしM被告の症状が悪化するに留まらず、M被告の親も認知症が始まってしまい、負担は雪だるま式に膨れ上がっていきます。Sくんも成長して逞しくなり、パニックで暴れた影響は甚大になりました。
事件の約1年前にはM被告の症状が深刻化しており、食欲不振・不眠・過労・意欲低下と身体を起こすことさえままならない精神状態となっていました。
M被告が無理心中しようとした動機は、Sくんの進路や自身の体調への悲観でした。Sくんの卒業後を見据えて受け入れ施設を探しても「受け入れは困難」と直接言われたり送迎サービスが無かったりと、厳しい現実に「お祈り」されるばかりです。
M被告は「将来のことを考えてやっていく自信がない。だめなお母さんでごめんなさい」と遺書をしたためて無理心中を決行します。Sくんを睡眠薬で眠らせるとベルトで絞殺し、汚れた口周りを拭いて頬に口づけをした後、自分も死のうとします。が、翌朝まで死にきれないままマンションの屋上にいたところを通報され逮捕にいたりました。
「弱者(貧困者、障害者など)に冷酷な日本社会」の現実についてはいつもながらやりきれない思いがします。
他にも「障害児、殺害」などでググると以下のような「親による障害児殺害事件」は多数ヒットしますし。
障害ある息子を手にかけた父 44年の献身、見つからなかった居場所 [千葉県]:朝日新聞2025.3.12
「今ね、自分の子どもを殺しちゃったんですよ」
昨年7月4日夜、110番通報してきた男性がそう告げた。
妻の泣き叫ぶ声がした後、電話口からは「これで良かったんだよ。もうどうしようもない」と語りかける男性の声が聞こえた。
次男(当時44)には重度の知的障害があった。
被告は昨年7月4日午後8時20~35分ごろ、千葉県長生村の自宅で、次男の首をテレビアンテナのコードで絞めて殺したとして起訴された。
(以下は有料記事です)
障害のある次男の殺人罪に問われた父に温情判決 何が彼を追いつめたのか | 令和の幸福論 | 野澤和弘 | 毎日新聞「医療プレミア」*112025.3.22(朝日の報じる事件と同じ事件です)
障害のある次男に対する殺人罪に問われた父親(78)の判決公判が3月12日に千葉地裁であった。「十分な福祉的支援を受けられず、被告だけを責めるのは酷だ」と裁判長は述べ、懲役3年、執行猶予5年を言い渡した。殺人罪では極めて軽い判決だ。
判決によると、父親は2024年7月4日夜、千葉県長生村の自宅で重度の知的障害がある次男(当時44歳)の首をテレビのコードで絞めて殺した。次男の行動障害がひどくなり、事件当日もテレビを投げて暴れたことから「自分や妻が倒れれば面倒を見る人はいなくなる」と覚悟を固めたという。
(以下は有料記事です)
京都の事件と同じ懲役3年、執行猶予5年であることには複雑な思いを感じます。
医療的ケア児と無理心中図った母親、音楽療法に否定的な親族・夫は「寝れん」…「私と長女は要らない存在」 : 読売新聞2025.7.11
福岡市博多区の自宅で医療的ケア児の長女(当時7歳)の人工呼吸器を外して殺害したとして、殺人罪に問われた母親(45)の裁判員裁判の初公判が11日、福岡地裁(井野憲司裁判長)で始まった。
起訴状などによると、母親は1月5日午後、自宅マンションで、ベッドにいた長女の首に挿入された人工呼吸器を取り外して殺害した、とされる。
検察側の冒頭陳述によると、長女は生まれた時から全身の筋力が低下する国指定の難病「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を患っており、自力で動けず、自発呼吸もできない状態だった。
母親は、長女への音楽療法について親族から「意味があるのか」と言われたことや、事件2日前に夫に介護の手伝いを頼んだ際に「寝れん」と舌打ちをされたことなどをきっかけに「私と長女は要らない存在」と無理心中を考えるようになったと主張。
弁護側は冒頭陳述で、介護の手伝いを依頼した際、「寝れん」と言うなどした夫の言動に対して怒りが収まらない中で親族から長女に向けられた言葉「(音楽療法に)意味があるのか」や態度で深く傷ついた出来事を思い出し、自身と長女が「周囲に疎まれている」と強い孤独感と疎外感から心中を決意したと訴えた。
「事件は人ごととは思えない。体調が悪かったり、気持ちが落ち込んだりしている時、私も『終わらせたい』と思ったこともある」
妊娠中に低酸素脳症になり、脳性まひを持つ長女(4)を育てる福岡市の女性(40)は打ち明ける。長女は自発呼吸ができず、生まれた時から人工呼吸器をつけ、訪問看護を受けるなどしながら自宅でケアしている。
ちなみに障害児殺害と言えば、以下の「青い芝の会」が有名ですね。
全国青い芝の会 - Wikipedia参照
1967年8月7日、生まれてから27年間心身障害で寝たきりの息子を父親が絞殺し、無理心中を図った事件があった。一命を取り留めた父親は妻(被害者の母親)と共に自首した。マスメディアでは、障害者施設が無いゆえの悲劇として同情的に報じられ、身障児を持つ親の会、全国重症心身障害児を守る会などが減刑嘆願運動を行った。その結果、父親は心神喪失を理由に無罪となった。
しかし「全国青い芝の会」にとっては、まったく違う問題意識があった。介護疲れを理由に心神喪失が認められるのならば、障害者にとって生存権の危機であり、自分たちが介護者に殺されても当然だと受け止められかねないと危惧したのである。
1970年5月29日、横浜市金沢区で母親が介護を苦にして、重度心身障害児のわが子を絞殺した事件があった(この事件の被害者は知的障害と身体障害の重複障害児であり、脳性麻痺者ではなかった)。この事件でも母親に同情的な立場から減刑や無罪を嘆願する運動が起こった。そこで「全国青い芝の会」は、罪は罪として裁くよう厳正な裁判を要求した。この活動から「全国青い芝の会」が注目されるようになった。結果的に母親は有罪となったが、懲役2年の求刑に対し、執行猶予3年と、殺人事件としては非常に軽い量刑であった。
1975年に横塚の著書『母よ!殺すな』(すずさわ書店)、1979年1月に横田の著書『障害者殺しの思想』が出版された。ともに絶版となっていたが、立岩真也による解説付きの増補改訂版として再刊された(横塚本は2007年、生活書院、横田本は2015年、現代書館)。
時代の正体〈501〉横田弘さんと相模原事件【1】愛と正義を否定する | 社会,時代の正体 | カナロコ by 神奈川新聞2017.7.26
脳性まひ当事者の団体「青い芝の会神奈川県連合会」の会長だった故・横田弘さん*12。
横田さんたちの運動の発端となった殺人事件は1970年5月、横浜市金沢区で起きた。
重度の脳性まひがある2歳女児が母親に殺害された。3人いた子どものうち2人に障害があった。単身赴任の父親は週末に一時帰宅するのみで、母親が一手に介助していた。施設に預けることを希望したが、空きがないと断られた。自分と娘の将来を悲観した母親は娘を絞殺。同様の事件は70年代に相次いだ。
横田さんら「青い芝の会神奈川県連合会」のメンバーが問題にしたのは、事件後の地元町内会の対応だった。母親への同情から減刑を求める嘆願運動を展開していた。横田さんは事件の根底に地域社会の差別意識があると著書「障害者殺しの思想」の中で批判した。
〈事件が起きてから減刑運動を始める、そして、それがあたかも善いことであるかの如くふるまう。なぜその前に障害児とその家族が穏やかな生活を送れるような温かい態度がとれなかったのだろう。私たちが一番恐ろしいのは、そうした地域の人々のもつエゴイズムなのである〉
〈多くの健全者が加害者の気持が分かるとか、障害児が殺されるのはやむを得ないとか、考えるのはどうしたことなのだろう。やはり障害者(児)は悪なのだろうか。「本来、あってはならない存在」なのだろうか〉
刑法は殺人罪に3年以上の懲役を科すことができたが、検察側の求刑は2年だった。母親には情状酌量で懲役2年、執行猶予3年の判決が言い渡された。
障害者をないがしろにする社会の反応に危機感を抱いた横田さんは、「青い芝の会」の理念となる行動綱領「われらかく行動する」を起草した
〈第3項 われらは愛と正義を否定する〉
〈エゴを原点とした「親」によって私たち「障害者」はどれ程の抑圧、差別を受けているか。しかも、「愛」という名分の下にどれだけの「障害者」が抹殺されていることだろうか〉
〈「障害者(児)」殺しの親たちを減刑運動という形で社会に組みこむことも「正義」であり(中略)「正義」によって疎外され、抑圧される「障害者」である私たちが何故「正義」を肯定しなければならないのだろうか。私たちは「正義」が絶対多数者側の論理である以上、断固としてこれを否定しなければならないのである〉
横浜障害児殺害事件から50年 無自覚な差別許すな、訴え続け 脳性まひ当事者団体「青い芝の会」 - 産経ニュース2020.10.1
横浜市で50年前に起きた母親による障害児殺害事件では、介護に疲れた末の犯行として、刑の減軽を求める運動が起きた。こうした同情の声に異を唱えたのが、脳性まひ当事者の団体「青い芝の会」。
世の中の「善意」に隠れた無自覚な差別を、痛烈に批判し続けた。青い芝の会は昭和32年、東京都で結成。当時は就学就労の機会がなく、自宅以外に居場所のない人がほとんどで親睦を主な目的とした。次々と支部が設立され、その一つが横田弘さん(平成25年死去)らが率いる青い芝の会神奈川県連合会だった。
昭和45年に母親が脳性まひの娘を殺害した事件で、横田さんたちは「殺される側」の立場から世間に反発。介護の末にわが子を手に掛けた母親をふびんに思い、障害があるまま生き続けるより殺された方が幸せという考えを会の行動綱領で「愛と正義の持つエゴイズム」と表現し、否定。街頭でマイクを手に「私たちを殺すな」と訴えた。
脳性マヒの妹さん*13がいる本多勝一氏の著書(著書名は覚えてない)で「会のメンバー」である横塚晃一氏の著書『母よ!殺すな』(1975年、すずさわ書店→復刻版が2007年、生活書院)が紹介されてた記憶があります。
ググったら
青い芝の会 - 就労支援センターあんず2016.3.25
わたしが「青い芝の会」の存在を知ったのは、本多勝一の「貧困なる精神」という本からです。
先輩からすすめられたのが、本多勝一の著作でした。
「母親に殺される側の論理」というその文章は、じぶんの母親が脳性まひのある妹と心中をしようとした回想からはじまり、世間で起きた母親の子殺しについて、殺される側の脳性まひ者自身があげたことばを取りあげています。
それは、重い障害をもつ子どもを殺した母親の減刑を願う世論にたいし、そういった重度の障害者は殺されても仕方がないという価値感が問題なのだという提起です。
脳性まひ者の団体の名前が「青い芝の会」といいました。「青い芝の会」は1957年に設立され、はじめのうちはおもに親睦を目的とした団体だったようですが、1970年前後から社会的な発言や行動が活発になっていきます。その一端が、さきほどの親の障害児殺しへの発言でした。
という文章もヒットしました。
文学にみる障害者像-横塚晃一著『母よ!殺すな』
『母よ!殺すな』(すずさわ書店、1975年)は、1978年に42歳で他界した障害者運動のリーダー、横塚晃一の発言集である。発言は口述筆記によって書き留められ、障害者団体の会報などに発表された。それらを本にまとめることを勧めたのは、自らも脳性マヒの妹をもつジャーナリストの本多勝一氏であったという。
当時、日本では親による障害児殺しが社会問題となり、事件のたびにマスコミは、「施設がない故の悲劇」「可哀そうな親を救え」という論調を繰り返していた。
1970年に横塚らが最初に取り組んだのは、重症児殺し告発運動である。この年、横浜市で母親による脳性マヒ児の絞殺事件が起き、子育てに疲れ絶望的になった母親への同情が、地元町内会などの減刑嘆願運動となって現れた。これに対して横塚らは、「重症児に生きる権利はないのか」「罪は罪として裁け」と訴えたのである。
横塚はこう主張した。
『なぜ彼女が殺意をもったのだろうか。この殺意こそがこの問題を論ずる場合の全ての起点とならなければならない。彼女も述べているとおり“この子はなおらない。こんな姿で生きているよりも死んだ方が幸せなのだ”と思ったという。なおるか、なおらないか、働けるか否かによって決めようとするこの人間に対する価値観が問題なのである。この働かざる者人に非ずという価値観によって障害者は本来あってはならない存在とされ、日夜抑圧され続けている。』
(「母親の殺意にこそ」より)
厳罰は可哀想な気がするし、横田氏、横塚氏ら青い芝の会の言うこともわかる気がするし何ともかんともです。
むしろ問題は横塚氏が活動した1970年代(横塚氏は1978年*14に胃がんで死去)から「40年以上経っても」障害児殺しが続く「日本社会の弱者への冷酷さ」でしょう。横田氏、横塚氏らが批判するように「社会の支援」があれば、障害児殺しはなかったでしょう。
文学にみる障害者像-横塚晃一著『母よ!殺すな』
さらに横塚は、施設さえあれば障害者問題は解決するといった当時の風潮にも異議を唱える。
『障害者の収容施設とは何であろうか。一口に言ってしまえばそれは生け贄であり、みせしめである。施設にいる障害者(特殊人間)はたいがい外出外泊の自由もなく、所持品や衣服に至るまで制限を受け、必要によっては肉体、生命までも医学の進歩とやらの人身御供に差し出さなければならない。現在はこれに花園のイメージのベールをかぶせてはいるが、権力者の目的は労働力の確保であり、予算の節約であり、それに伴う棄民施設なのであるから、どうとりつくろってみたところで所詮むりな話である。』
(「母親の殺意にこそ」より)
当時、日本各地で巨大施設の建設が進められる一方で、東京都の府中療育センターでは障害者の人権侵害が大きな問題となっていた。その実態を知る横塚は、巨大施設は障害者の人権を無視し、経済成長の邪魔になる障害者を社会から排除・隔離するものだとして、痛烈に批判したのである。
横塚は理想の社会について次のようにも述べている。
『我々脳性マヒ者、精薄者の生活形態は……やはり他の人……がそうであるように、それぞれの地域に住み、自分自身の生活を営むということが原則になるべきである……より基本的には障害者をとり囲む社会の一人一人が障害者の問題を我が事として考え、その地域にいる障害者を仲間として隣人として受け入れ、折々は言葉をかけ、暇があれば下着一枚でも洗ってやるような精神風土がなければならない。いや、そうではなく、そういった精神風土を我々の力で作っていかなくてはなるまい。』
(「施設のあり方について」より)
横塚が目指したのは、障害者と健常者が対等な立場でともに生きる真の共生社会であった。
横塚らの問題提起は21世紀の今日も色あせていないのではないだろうか。
横塚の死から約30年後の2007年、関係者待望の『母よ!殺すな』の再刊(生活書院)が実現した。再刊に尽力した立岩真也氏*15はこの本を「前の世紀に出た最も重要な本の一冊」と評している。
こうした『1970年代の横塚氏の主張』も「脱施設化(田中論文の言葉)や地域移行(白濱論文の言葉)のさきがけ」といえるでしょう。
なお、こうした考えは俺が今思いついたことであり、田中論文や白浜論文で「横塚氏や青い芝の会」の主張が「脱施設化(田中論文の言葉)や地域移行(白濱論文の言葉)のさきがけ」として紹介されてるわけではありません。
◆若者の住まいの貧困(佐藤和宏*16)
(内容紹介)
若者に限らず「住まいの貧困」は勿論ありますが、「若者」の場合、「親との同居」という選択を取らなければ、親からの経済支援がなければ、自分の収入だけでは、充実した住まいを確保することが難しく、中高年世代に比べ、いっそう「住まいの貧困」が深刻化するわけです(特に最近は若者の非正規労働者が増えていることが問題を一層深刻にする)。
酷い場合だと若者の住まいの貧困――定住と漂流/小田川華子 - SYNODOSが指摘するように「アパートが劣悪」どころか「ネットカフェや漫画喫茶、カプセルホテルで寝泊まりする」という「それは果たして住まいと言えるのか?」という事態になるわけです。
解決策としては若者の住まいの貧困――定住と漂流/小田川華子 - SYNODOS同様に「家賃補助」「低廉な公的住宅の提供」と言った住宅政策と共に、「非正規雇用の減少」等と言った「若者雇用の改善」が主張されます。
なお、筆者は若者層においての「参政党」「国民民主党」支持の高さについて、「そうした若者層の政治認識が正しいかどうか」はともかく「若者の住まいの貧困」などといった「若年層の生活問題」について、解決策を提示してるという「イメージ構築」に成功している可能性がある(実はそれほど右翼的側面は支持されてない可能性がある)としている。
筆者の若者の政治意識に対する指摘が仮に正しい(筆者は「若者の政治認識」は専門分野ではないとして、「一つの可能性」と述べるにとどめていますが)として、共産支持者として
◆ちょっと何言ってるか分からない(サンドウィッチマンの富澤)
◆お前(日本の若者層)は何を言ってるんだ?(ミルコ・クロコップ)
◆あんた(日本の若者層)、バカァ?(『新世紀エヴァンゲリオン』の惣流・アスカ・ラングレー)
◆お前(日本の若者層)はアホか?(横山ホットブラザーズ)
◆お前(日本の若者層)がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな(『少女ファイト』の式島滋)
◆それって、ただのあなた(日本の若者層)の感想ですよね(ひろゆき)
◆それはひょっとしてギャグで言ってるのか?(『魁!!クロマティ高校』の主人公・神山高志)
感がありますが。
参考
若者の住まいの貧困――定住と漂流/小田川華子 - SYNODOS2016.9.5
図3は35~44歳の未婚者のうち、親と同居しているものとその割合の推移を示したものである(山田昌弘*17(2015)「女性労働の家族依存モデルの限界」小杉礼子*18・宮本みち子*19編著『下層化する女性たち―労働と家庭からの排除と貧困』勁草書房、pp.23-44.)。1990年に急激に増え、その後、増加傾向がつづいている。2010年には300万人弱、16%となり、2012年には305万人にまで増加しているという。そして、彼らの失業率や非正規率は、自立している人々に比べて高いことが指摘されている。このことから、これらの人々は経済的理由で親元に同居していることが推測される。
2014年に年収200万円以下の20~40代男女を対象に、認定NPO法人ビッグイシュー基金「住宅政策提案・検討委員会」が行った調査(回答者数1,767人)からは、親と同居する若者の5割が自分で住居費を負担できないから親と同居していることが明らかになった。
低収入とはいえ、親と同居している若者は実家という比較的安定な住まいに「定住」することができている。しかしながら、見方を変えると、親の住まいのなかに若者の貧困が隠されてしまっているともいえる。実家から出て独立したいのにできないのであれば、「定住」は必ずしも肯定的な状態とは言えない。
若者自身が、生活基盤を固められないままに実家を出ることになれば、とりあえずの居場所を転々とするなどし、住居喪失、いわゆるホームレス状態に陥るリスクも高まるのである。それが次に述べる「漂流」する若者である。
困窮する単身の若者が自力でアパートを借りようとした場合にまずぶち当たるのが、初期費用*20が払えない、家賃が払えない、転居費用が払えない、保証人を立てることができない、といった借り手側の問題だ。そして、家賃滞納リスクが大きいとして貸し渋りをする家主側の問題もある。そこで、初期費用や賃料が安く、連帯保証人不要などで入居契約の敷居が低いシェアハウスの需要が大きくなっている。
ネット調査会社に登録する関東圏の20歳以上男女を対象とするインターネット調査によると、「狭小・窓無し」シェアハウス入居(経験)者146人の雇用形態は、4割が正社員である。一方で、派遣社員、契約社員、パートタイマー、アルバイト、日雇い労働者といった非正規雇用と自営業・自由業を合わせた収入が不安定な人が4割強である。
入居前と退去後の住居形態(図7)を見てみると、約半数は戸建て住宅または分譲住宅が直前の住居で、おそらく実家とみられる。大きな流れとして、実家から劣悪なシェアハウスにいったん出たものの、また実家に戻るというパターンがあると思われる。
その一方で、2割余りがシェアハウス・ゲストハウス、あるいは寮・社宅、ネットカフェ・漫画喫茶、カプセルホテルといったような非常に不安定なところから「狭小・窓無し」という劣悪なシェアハウスに移ってきている。そして、2割弱の人々がシェアハウス退去後もそういった不安定なところに転居していることが明らかとなった。<事例1>「シェアハウスを転々と」30代前半、女性、首都圏出身、大卒
大卒後、IT関連会社に正社員として就職し、アパートに住んだが、職場でのハラスメントに悩み、退職。業務委託の家庭教師と派遣の販売の仕事をすることにしたが、収入が減ったのでシェアハウス(ベッドスペースのみ)へ。しかし、家主とシェアハウス運営会社がもめ、水道が使えなくなったため、別のシェアハウス(ベッドスペースのみ)に転居。
仕事がだんだん減ってしまったので、派遣の事務職に転職。その間に同居人とのトラブルで、別のシェアハウス(個室)に転居。「そこに居られるだけ居たい」が、引っ越しでお金がかからないよう荷物はなるべく増やさないようにしている。手取り収入13万円、家賃4.2万円、残り8万円ほどで税金、保険料支払い含め、やりくりしており、生活は「ちょっと厳しい」。
<事例2>「寮付き正社員を転々と」40代後半、男性、東海出身、大卒
大卒後、IT関連会社に正社員として就職し、社宅住まいだったが、仕事がうまくいかず退職。その後、寮付きの正社員の仕事(飲食業・ホテル業など)を転々とした。寮がなく、シェアハウスに住んだ時もあった。これらの人々は仕事と住まいの両方が定まらないため、生活の基盤が非常に弱い。いったん「漂流」のサイクルに入ってしまうと、そこから抜け出すのは容易ではない。けがや病気、解雇などをきっかけとして住居喪失状態に陥ってしまうリスクも高い。
契約時に保証人不要など審査がゆるく、すぐ入居可の物件が多いので、転職などの急な転居に対応しやすい。このように、シェアハウスは生活が不安定、低所得な人々にとって、選択肢がないなかでの「選択」となっているのである。
仕事をしている低所得者が利用できる住宅支援策を適切に講じなければならない。
低所得の若者がおかれている状況は、根本的には、雇用政策と住宅保障政策で対処されるべき問題である。雇用政策としては、非正規雇用が増加し続ける構造にメスを入れて正規雇用を増やし、若者が安定した収入を得て目標や夢をもって生きることを支える施策が求められる。
住宅供給施策は、自治体が民間住宅を借り上げ、入居者は自治体と賃貸借契約を結ぶ仕組みをつくるものである。こういった借り上げ公営住宅は準公営住宅とみなすことができ、困窮リスクの高い若者の住宅確保、住環境の改善が期待できる。低所得の若者が入居でき、なおかつ住宅としての最低限の質を備えた賃貸住宅の供給を増やすことは非常に重要な政策課題である。しかし、量的、立地的ニーズに柔軟に対応することは困難である。
そこで、個人に対する経済的な支援策が重要になる。その一つは、低所得者に対する家賃補助制度である。
家賃補助が得られることにより、収入が逓減した際に家賃滞納をしなくてすむようになる。
準公営住宅や家賃補助など、若者向けの住宅支援策を整備、充実させることにより、漂流する若者、実家に定住せざるを得ない若者が、安定的な生活基盤を築くための住居という選択肢をもてるようになる。
若者向けの住宅支援策は、希望を抱く若者を増やし、社会に活力をもたらすことにもつながるはずである。
◆高齢者の貧困(鐘ヶ江正志)
(内容紹介)
ネット上の記事紹介で代替。
赤旗主張/孤立死・孤独死/悲劇生む困窮の構造にメスを2012.3.17
高齢者単身世帯の急増と貧困の拡大によって、高齢者を中心にした孤立死・孤独死は1990年代後半から大きな社会問題になってきました。団地の1人暮らしの高齢者が死後何年もたって発見されるなど、深刻な事態も問題になりました。大手生命保険系列のニッセイ基礎研究所の推計では、死後4日以上経過して遺体が見つかった65歳以上の高齢者は年間1万5600人にものぼります。
赤旗生活保護世帯 最多更新/高齢者の困窮化浮き彫りに2018.4.4
今回の厚労省の発表から、高齢者世帯では、病気などで出費がかさんだり、配偶者の死亡で年金収入が激減したりして預貯金も使い果たし生活保護を利用することになると、多くの場合、亡くなるまで生活保護を利用せざるを得ない現状が浮かび上がってきます。
赤旗高齢女性の貧困解決を/倉林議員と当事者団体が懇談2022.6.9
高齢女性の貧困が深刻化するなか、中高齢期のシングル女性でつくる「わくわくシニアシングルズ」らは8日、国会内で日本共産党ジェンダー平等委員会責任者の倉林明子参院議員と懇談しました。
一人暮らしの女性の貧困率は、勤労世代(20~64歳)は24%、高齢期(65歳以上)では46%と2人に1人が貧困に陥っています。
同団体の大矢さよ子代表は、高齢期に単身女性が貧困になる要因として、女性は公務・民間を通して非正規雇用が多く、低賃金、低貯蓄、低年金につながっていると発言。住まいの確保や生活保護へのアクセスも容易ではないなど女性たちが直面する困難について話しました。
赤旗主張/住まいの貧困/放置できぬ高齢者の入居困難2024.4.16
国交省の2021年度調査では、家主が「入居に拒否感がある」とする借り手の割合は高齢者世帯で66%、障害者のいる世帯で66%、子育て世帯で18%です。日本賃貸住宅管理協会の調査(15年)では、民間賃貸住宅の貸し手の8割が高齢者の入居を拒否または拒否感を持っています。単身高齢者が賃貸住宅に入居するのはとりわけ困難で、放置できません。
[社説]単身高齢者を支える社会の基盤づくりを - 日本経済新聞2024.4.18
注意したいのは、これから高齢者になる人たちは若い時期が就職氷河期に重なり、非正規などで十分な収入がなかった人が少なくないことだ。低収入・低年金による貧困を食い止めるには、まずは長く働ける施策が必要だ。賃金の男女格差の是正も欠かせない。
家族のサポートを前提にしたものは多岐にわたる。日々の見守りや生活支援、財産管理、死後の対応などだ。どのような支援が必要なのか。官・民・地域でそれぞれどう担うのか。政府が音頭を取って整理・推進するとともに、自治体は相談窓口を設けて実情に合わせて対応してほしい。もちろん、介護サービスの充実も図らなければならない。
住まい確保にも力を入れる必要がある。(ボーガス注:持ち家に住む単身高齢者は少ないが)高齢者は孤独死した場合の対応や家賃滞納などトラブルへの懸念から、賃貸住宅への入居を家主から拒まれるケースが多い。
政府は高齢者が入居できる賃貸住宅を増やすため、今の通常国会で法改正を目指している。高齢者が滞納した家賃を立て替える保証業者の認定制度をつくるほか、身寄りのない高齢者が死亡した後に残る遺留品を、本人から事前に委託を受けた支援法人が処分できるようにする。大家が安心して住宅を貸し出せるようにする狙いだ。
一定の前進ではあるが、これで住まいを十分に確保できるかどうかは不透明だ。全国で800万戸を超す空き家を改修して高齢者の見守り機能がある公営住宅に衣替えするなどの施策を求める識者もいる。世帯構成や住宅ニーズの変化を見据え、住宅政策のあり方を点検してほしい。
社説:身寄りない高齢者対策 安心して暮らせる基盤を | 毎日新聞
頼れる家族がいなければ、入院などの際の身元保証を得るのは難しい。認知機能が低下すれば金銭管理にも支障が出る。生活全般にわたる支援が欠かせない。
1人暮らしの高齢者は(ボーガス注:孤独死や家賃滞納のリスクが嫌われて)賃貸住宅への入居を断られることが多い。政府は、高齢者が安心して暮らせるように住まいを確保する制度を実施している。
市町村が身寄りのない高齢者を総合的に支える取り組みが今年度から試行的に始まった。
行政サービスの手続き代行や金銭管理などの日常生活面にとどまらず、居室の原状回復といった死後の対応までを対象に、公的支援を講じる。国は課題を洗い出し、全国的な展開が可能か検討する。
従来の高齢者政策は、家族が支えることを想定して制度設計されてきた。その前提が崩れている現実を直視し、制度のあり方を見直していかなければならない。
社説:単身高齢者の貧困 暮らし守る仕組み強化を | 毎日新聞2025.4.8
単身高齢者の貧困が深刻な社会問題となりつつある。セーフティーネットの強化が急がれる。
2024年の生活保護申請件数は速報値で25万5897件に上った。5年連続の増加で、今の調査方式になった13年以降では最多となった。
生活保護受給世帯の過半数を占めるのは単身の高齢者だ。
1人暮らしは、家族と同居している場合より、家賃や光熱費といった生活コストが割高になる。高齢になると収入は減り、病気やけがなどのリスクも高くなる。蓄えが少なければ経済的困窮に陥りやすい。
総世帯のうち単身者の割合は10年の32%から20年には38%に増えた。背景には未婚率の上昇などがあり、今後も1人暮らしの人は増加が見込まれる。
しかも、2030年代半ばには、不安定な雇用環境に置かれた就職氷河期世代が高齢期を迎え始める。現役時代に非正規雇用で収入が低かったために、十分な年金を受け取れない人が少なくないとみられている。
何らかの手を打たなければ、生活保護を利用せざるを得ない人がさらに増えかねない。
このため、政府は、低年金対策を柱とした年金制度改正案の国会提出を目指している。国民の負担増につながることから自民党には慎重論が根強いが、所得の低い高齢者を支えるには不可欠な見直しだ。先送りは許されない。
安心して入居できる住宅の確保も課題だ。
近年の物価高で食料品などの生活必需品に加えて家賃も上昇している。とりわけ影響を受けるのは低所得層だ。
国の調査では、氷河期世代の持ち家率は、上の世代より低い傾向にある。
今後、賃貸住宅に頼る高齢者が増えると見込まれる。だが、孤独死などを懸念する家主から入居を断られることが多い。
国は、見守りサービスの活用などによって入居しやすくする施策を実施している。官民で実効性を高める取り組みが欠かせない。
だれもが不安なく老後を過ごせるよう、生活面でのさまざまなリスクを想定してきめ細かな対策を講じなければならない。
◆大学入学金「二重払い」問題の課題と展望(渡部昭男*21)
(内容紹介)
なお、筆者に寄れば韓国では2023年に文在寅政権によって、大学入学金が廃止されたとのこと。筆者は「二重払い廃止」に留まらず「入学金の減額(将来的には廃止)」が展望できないかとしている。
参考
赤旗
入学金「二重払い」改善を/文科省が私大に通知2025.6.27
二重払い入学金返還/文科省通知受け 2私大が実施へ2025.8.29
入学金二重払い/25%の私大 軽減方針/文科省アンケート調査 | しんぶん赤旗|日本共産党2025.12.27
入学金二重払い解決へトーク 埼玉/“教育予算の抜本増額必要”/吉良氏が指摘 | しんぶん赤旗|日本共産党2026.1.11
*1:川口『ケインズ一般理論の基礎』(1971年、有斐閣)等の著者があるケインズ経済学者。但しマルクス経済学にも一定の理解があり、『経済』誌にも寄稿したことがある。また、1990年に川口弘『徹底分析・高齢化社会は本当に危機か』(川上則道都留文科大学教授との共著、1989年、あけび書房)で日本共産党から野呂栄太郎賞を受けている。
*2:この点が皮肉にも「2年間なら戦争可能(2年でけりを付ければいい)」と陸軍等の対米タカ派に理解され、かえって対米戦争を助長したとも言われる。
*3:大阪経済大学名誉教授。著書『関西、その活力の源をさぐる:産業集積と起業家精神』(編著、2000年、法律文化社)
*4:元日弁連会長。『公正な税制を求める市民連絡会』共同代表。著書『消費者金融・実態と救済』(2002年、岩波新書)、『弁護士、闘う:宇都宮健児の事件帖』(2009年、岩波書店)、『反貧困』(2009年、花伝社)、『大丈夫、人生はやり直せる:サラ金・ヤミ金・貧困との闘い』(2009年、新日本出版社)、『13歳から学ぶ日本の貧困』(2009年、青志社)、『わるいやつら』(2013年、集英社新書)、『「悪」と闘う』(2014年、朝日新書)、『希望社会の実現』(2014年、花伝社)、『自己責任論の嘘』(2014年、ベスト新書)、『天皇制ってなんだろう?:あなたと考えたい民主主義からみた天皇制』(2018年、平凡社)、『韓国市民運動に学ぶ』(2020年、花伝社)、『富裕税入門』(共著、2025年、明石書店)等
*5:著書『検証・日本の金融政策』(1995年、大月書店)、『大増税時代』(2004年、大月書店)、『格差社会と大増税』(2011年、学習の友社)、『タックスヘイブンに迫る』(2014年、新日本出版社)、『これでわかるタックスヘイブン』(2016年、合同出版)、『パナマ文書とオフショア・タックスヘイブン』(2016年、日本機関紙出版センター)、『パンデミックと財政の大転換』(2021年、新日本出版社)、『富裕税入門』(共著、2025年、明石書店)等
*7:日本福祉大学教授。著書『階層性からみた現代日本の児童養護問題』(2013年、明石書店)、『児童養護施設の労働問題』(2025年、ミネルヴァ書房)
*8:仏教大学教授。著書『知的障害者家族の貧困』(2020年、法律文化社)、『障害者家族の老いを生きる支える』(共著、2023年、クリエイツかもがわ)、『障害のある人の暮らす権利』(共著、2025年、クリエイツかもがわ)
*9:京都・障害者の暮らしの場を考える会事務局長
*10:著書『重度障害児家族の生活』(2006年、明石書店)、『障害者家族の老いを生きる支える』(共著、2023年、クリエイツかもがわ)等
*11:筆者の野澤和弘氏は毎日新聞論説委員等を経て現在は、植草学園大学教授、毎日新聞客員編集委員。著書『あの夜、君が泣いたわけ:自閉症の子とともに生きて』(2010年、中央法規出版)、『弱さを愛せる社会へ:分断の時代を超える「令和の幸福論」』(2023年、中央法規出版)等
*12:著書『否定されるいのちからの問い:脳性マヒ者として生きて(横田弘対談集)』(2004年、現代書館)、『【増補新装版】障害者殺しの思想』(2015年、現代書館)、『われらは愛と正義を否定する:脳性マヒ者・横田弘と「青い芝」』(共著、2016年、生活書院)
*13:『脳性マヒ、ただいま一人暮らし30年:女性障害者の生きる闘い』(2005年、明石書店)の著者である本多節子氏
*14:当時は福田赳夫内閣(1978年12月7日まで)、大平内閣(1978年12月7日以降)
*15:1960~2023年。立命館大学教授。著書『精神病院体制の終わり』(2015年、青土社)、『病者障害者の戦後』(2018年、青土社)、『介助の仕事』(2021年、ちくま新書)、『良い死/唯の生』(2022年、ちくま学芸文庫)等(立岩真也 - Wikipedia参照)
*16:高崎経済大学准教授。著書『戦後の住宅政策と民間貸家』(2026年、日本経済評論社)
*17:中央大学教授。著書『結婚の社会学』(1996年、丸善ライブラリー)、『パラサイト・シングルの時代』(1999年、ちくま新書)、『パラサイト社会のゆくえ』(2004年、ちくま新書)、『少子社会日本』(2007年、岩波新書)、『なぜ若者は保守化したのか』(2015年、朝日文庫)、『女性活躍後進国ニッポン』(2015年、岩波ブックレット)、『家族難民 中流と下流:二極化する日本人の老後』(2016年、朝日文庫)、『モテる構造:男と女の社会学』(2016年、ちくま新書)、『底辺への競争:格差放置社会ニッポンの末路』(2017年、朝日新書)、『結婚不要社会』(2019年、朝日新書)、『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』(2020年、光文社新書)、『新型格差社会』(2021年、朝日新書)、『パラサイト難婚社会』(2024年、朝日新書)、『単身リスク:「100年人生」をどう生きるか』(2025年、朝日新書)等
*18:独立行政法人労働政策研究・研修機構統括研究員。著書『フリーターという生き方』(2003年、勁草書房)、『若者と初期キャリア』(2010年、勁草書房)
*19:千葉大学名誉教授。著書『若者が社会的弱者に転落する』(2002年、洋泉社新書y)、『ポスト青年期と親子戦略』(2004年、勁草書房)、『若者が無縁化する』(2012年、ちくま新書)等
*21:鳥取大学名誉教授。著書『特殊教育行政の実証的研究』(1996年、法政出版)、『格差問題と「教育の機会均等」』(2006年、日本標準ブックレット)、『障がい青年の自分づくり』(2009年、日本標準)、『(改訂新版)障がいのある子の就学・進学ガイドブック』(2022年、日本標準)