ラフカディオ・ハーンとセツのエピソードから。「このたくさんの本を私はなぜ書けたか、それはすべてあなたの話を聞いて書いたのである」|三浦小太郎
ある時、節子はハーンから、万葉集の歌についての意味を求められ、無学な自分にはわからない、申し訳ないと涙ぐんで詫びると、ハーンは自分の書架を見せてこう言いました。
「このたくさんの本を私はなぜ書けたか、それはすべてあなたの話を聞いて書いたのである」(「怪談・骨董」小泉八雲 河出文庫 平川祐󠄀弘解説より)
これはすごく奥深い会話だと思います。
夫婦なのだし、そのくらいの慰め(万葉集の意味が分からないことなど気にするな。あなた(セツ)が知ってると思うから聞いただけだ。知らないからと言って責めたりしない。むしろあなたの協力のおかげで私は今まで本が書けた)は夫として当然言うでしょう。
よほど酷い夫でもない限り「何故その程度のことをお前(セツ)は知らない。お前は無知だ」「お前には失望した」などと非難したりしない。
そんなことをしたら「夫婦関係が破壊されかねない」し、そもそも「暴言による精神的DV」「ハラスメント」ではないのか?
三浦にとって「何が奥深い」のかさっぱり分かりませんが、「奥深い話」でもないでしょう。
「何故美化したいのか」さっぱり分かりませんが、ハーン、セツ夫婦を何が何でも美化したいらしい三浦が「夫婦の間柄なら、ハーン、セツ夫婦でなくても当たり前の行為」を無理矢理美化してるとしか見えません。
ハーンの著作への日本人協力者は、妻セツだけではなく数人の日本人学者がいたことが現在ではわかっています。しかし、彼らはハーンの死後も一切そのことは語らず、すべてを妻の業績として沈黙を守り、ハーンの遺族との交流すら差し控えました。こういう姿勢こそが、ハーンが本当に愛した古き良き日本人たちの心だったのでしょう。
そこまでして「ハーン(小泉八雲)と妻セツは偉大」という虚構(神話、伝説)作りをする必要もないと思いますけどね。
三浦も書くように結局「協力の存在」は「その後のハーン研究」で明らかになったわけですし。
そんなことが古き良き日本人たちの心とは俺は全く思いません。
本当に協力したのなら、そのことを表に出すことが「不適切(売名行為?)」だとは俺は全く思いません。
また「遺族との交流」云々は、三浦が言うようなことではなく、単に「ハーンとは親しかったがその親族とはそれほど親しくなかった」だけの話ではないか。
朴慶植「朝鮮人強制連行の記録」(未来社)収録資料「朝鮮人徴用労働者の労務管理」(昭和16年度)を読む|三浦小太郎
朝鮮総連系であり北朝鮮を支持していた朴慶植*1
やれやれですね。「朴氏の政治的立場」と「著書の内容」は別問題でしょう。彼が「北朝鮮支持」だから、彼の「強制連行」主張は「事実でない」などというのは「三浦のような歴史修正主義ウヨ(三浦は歴史修正主義右翼団体「新しい歴史教科書をつくる会」理事)だけ」でしょう。
そもそも北朝鮮だけでなく、現在の韓国からも朝鮮人は強制連行されたし、韓国でも朝鮮人強制連行への批判はある。
また
朴慶植 - Wikipedia参照
朝鮮総連主流派は朴慶植らの朝鮮人強制連行(労務動員)の被害研究を抑圧した。外村大*2は、「「朝鮮人強制連行」の研究は、日本国家を糾弾し攻撃しようという北朝鮮の政治的思惑にそって朝鮮総連に属する研究者がはじめた」という主張に対しては、「朴慶植の『朝鮮人強制連行の記録』が北朝鮮や朝鮮総連の組織的方針に沿って書かれたものと見る点は無理な読込み」だと著書『朝鮮人強制連行』(2012年、岩波新書) で批判している。
だそうで、日朝友好関係を重視し、「日本人が嫌うような行為はすべきでない」との判断があったのか、朝鮮総連は彼の研究にはむしろ否定的だったそうです。
北朝鮮云々という非難は全く成り立たない。
そもそも、その三浦の屁理屈なら、たとえば「シベリア抑留研究は日露友好を破壊するための反ロシア行為」と言われても、文句は言えないでしょう。
まあ、そういう場合に、親ロシア云々と文句を言う「ご都合主義のクズ」が三浦らウヨですが。
そして、むしろ三浦ら「歴史修正主義ウヨ」の方こそ「政治的立場(戦前日本を美化したい)」から事実を歪めています。
三浦ら「歴史修正主義ウヨ」連中が歪めてるのは「朝鮮人強制連行には問題ない」だけでなく「関東大震災での朝鮮人虐殺はなかった」「南京事件(南京大虐殺)はなかった」「慰安婦に問題はない」「大東亜戦争(太平洋戦争)はアジア解放の戦争」だの他にも色々ありますが。
本書の嘘や誇張についてはすでに多くの指摘がなされている。
そこまで言うなら「具体的に何が嘘や誇張なのか書いてみろ」という話です。書かない(書けない?)のだから三浦には呆れます。
なお、「研究の不十分さ」から結果として「間違った記述」をすることは「嘘や誇張」ではないし、いずれにせよ「朝鮮人強制連行に違法性はなかった」といえるような「間違った記述」はどこにもないでしょう(俺も朝鮮人強制連行については無知、不勉強ですが)。
また、もはや朴氏(1998年死去)の著書は「過去の研究」であり当然、歴史的限界がありますし、勿論、研究者は朴氏だけではない。
三浦も「朝鮮人強制連行」について「問題なかった」「韓国等の非難は言いがかりだ」(デマも甚だしいですが)というなら、
【「朝鮮人強制連行」で俺がググって、ヒットした本(いずれも俺は未読ですが)】
・野添憲治*3編『秋田県における朝鮮人強制連行』(2005年、社会評論社)
・山田昭次*4、古庄正、樋口雄一*5『朝鮮人戦時労働動員*6』(2005年、岩波書店)
・外村大『朝鮮人強制連行』(2012年、岩波新書)
・古庄正『足尾銅山・朝鮮人強制連行と戦後処理』(2013年、創史社)
・飛田雄一*7『再論・朝鮮人強制連行』(2018年、三一書房)
など近年の著書(1998年の朴氏死後の著書)を論じたらどうなのか。まあこれらについても全て「デマ呼ばわり」が「歴史修正主義のデマ右翼」三浦でしょうが。
なお、ご存じの方も居るでしょうが、戦時中、強制連行されたのは朝鮮人だけでなく、中国人も連行されており、花岡事件 - Wikipediaが有名です。恐らく三浦らウヨは中国人強制連行についても「問題なかった」と強弁するのでしょうが。
*1:著書『朝鮮人強制連行の記録』(1965年、未来社)、『日本帝国主義の朝鮮支配(上)(下)』(1967年、青木書店)、『朝鮮三・一独立運動』(1976年、平凡社)、『在日朝鮮人運動史』(1979年、三一書房)、『解放後在日朝鮮人運動史』(1989年、三一書房)、『在日朝鮮人・強制連行・民族問題』(1992年、三一書房)
*2:東大教授。著書『在日朝鮮人社会の歴史学的研究』(2004年、緑蔭書房)等
*3:1935~2018年。秋田県朝鮮人強制連行真相調査団事務局長。著書『出稼ぎ:少年伐採夫の記録』(1968年、三省堂新書)、『開拓農民の記録』(1976年、NHKブックス)、『証言・花岡事件』(1986年、無明舎出版)、『マタギを生業にした人たち』(1989年、同友館)、『聞き書き資料・秋田杉を運んだ人たち』(1991年、御茶の水書房)、『花岡事件を見た二〇人の証言』(1993年、御茶の水書房)、『劉連仁・穴の中の戦後:中国人と強制連行』(1995年、三一書房)、『花岡事件を追う』(1996年、御茶の水書房)、『花岡事件と中国人:大隊長耿諄の蜂起』(1997年、三一書房)、『企業の戦争責任:中国人強制連行の現場から』(2009年、社会評論社)、『遺骨は叫ぶ:朝鮮人強制労働の現場を歩く』(2010年、社会評論社)、『マタギのむら:民俗の宝庫・阿仁を歩く』(2011年、社会評論社)、『樺太〈サハリン〉が宝の島と呼ばれていたころ:海を渡った出稼ぎ日本人』(2015年、社会評論社)等(野添憲治 - Wikipedia参照)
*4:1930~2025年。立教大学名誉教授。著書『金子文子』(1996年、影書房)、『関東大震災時の朝鮮人虐殺』(2003年、創史社)、『関東大震災時の朝鮮人虐殺とその後』(2011年、創史社)、『関東大震災時の朝鮮人迫害』(2014年、創史社)等
*5:著書『戦時下朝鮮の農民生活誌: 1939~1945』(1998年、社会評論社)、『戦時下朝鮮の民衆と徴兵』(2001年、総和社)、『日本の朝鮮・韓国人』(2002年、同成社)、『金天海』(2014年、社会評論社)、『植民地支配下の朝鮮農民』(2020年、社会評論社)、『日本の植民地支配と朝鮮農民』(2020年、同成社)等
*6:戦時労働動員とはいわゆる「強制連行」のこと
*7:著書『日帝下の朝鮮農民運動』(1991年、未来社)