無能な俺が「能力的に説明できる範囲」で簡単に紹介します。
◆随想『「宮澤・レーン事件」を忘れない』(伊藤陽一*1)
(内容紹介)
スパイ防止法(高市内閣が法案提出を画策)が云々される中「戦前のスパイ冤罪事件である『宮澤・レーン事件』(例えば宮澤弘幸・レーン夫妻軍機保護法違反冤罪事件 - Wikipedia参照)」が論じられていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
俺は未読ですが、この事件については上田誠吉*2『ある北大生の受難:国家秘密法の爪痕』(1987年、朝日新聞社)と言う著書があるとのこと。上田氏については例えば以下を参照。
上田誠吉さんの思い出 | 弁護士会の読書2010.10.6
私の生まれた1948年に東大法学部を出て、司法修習生(2期)になりました。上田弁護士は戦後の著名な刑事事件の多くに関わっています。メーデー事件、松川事件、三鷹事件、千代田丸事件、白鳥事件。
これらの事件は、戦後日本を揺るがす大事件であったと同時に、司法界においても大変重要な事件であり、貴重な判例を残しました。そして、上田弁護士は弁論要旨だけでなく、数々の著書をモノにし、世に問うています。私が大学一年生のときに読んで、身体中が雷に打たれた衝撃を覚えたことを鮮明に覚えているのが『誤った裁判*3』(1960年、岩波新書)です。
それまでは、警察や検察というところは人権と弱者を守るために存在するとばかり思い込んでいたのです。ひどく認識が甘いと思わされました。
その後、上田弁護士は、自由法曹団の幹事長に就任します。41歳のときです。
そして、私が弁護士になった年(1974年)10月、自由法曹団の団長に就任しました。まだ48歳の若さでした。
上田弁護士の旺盛な著述活動は、その後も続きました。『裁判と民主主義』(大月書店)、『ある内務官僚の軌跡』(大月書店)。後者は、上田弁護士の父親について書かれています。父親は、なんと特高課長をつとめたキャリア組の内務官僚だったのでした。中国・上海総領事館の警察部長もつとめています。ですから、上田弁護士も、上海に暮らしていたことがありました。戦後、上田弁護士は、父親から左翼にだけはなるなといって、顔を叩かれたこともあります。ところが、その父親も亡くなる前には松川事件の弁護団の一人になったのでした。
この本は、上田弁護士の没後1年たち、「しのぶ会」の開催に合わせて、弁護士やかつての裁判の元原告たちが思い出を寄せたものです。大変読みやすく、上田弁護士の飾らぬ人柄、そして、その能力と見識の高さがにじみ出る冊子となっています。
【参考:『宮澤・レーン事件』】
「スパイ防止法」制定に高市政権が前のめり…制定後の監視社会を暗示する、戦時中の「スパイ冤罪」事件とは:東京新聞デジタル2026.2.26
太平洋戦争開戦の日にでっちあげのスパイ容疑で逮捕され、非公開の裁判で懲役判決を受け、収監された大学生らがいた。軍国主義のもとで、当時の法律が乱用された「宮沢・レーン事件」。高市政権はスパイ防止法制定に向けた動きを加速させる。同法は思想・信条の自由を侵害するおそれがあり、事件は、法制定後の監視社会を暗示しているのではないか。(中根政人、佐藤裕介)
「私たちは『新しい戦前』にすっぽり入ってしまっている。現在は『戦争前夜』の段階にまで至っていると考えるべきではないか」
22日午後、東京都新宿区の常円寺で開かれた集会。この日は、「宮沢・レーン事件」で逮捕された宮沢弘幸さんが、27歳の若さで亡くなってから79年にあたる。戦前の治安体制の問題に詳しい荻野富士夫*4小樽商科大名誉教授(日本近現代史)は講演で、高市政権がスパイ防止法の制定に前のめりになっている状況に対して、強い懸念を示した。
「宮沢・レーン事件」とは何か。
真珠湾攻撃などで太平洋戦争が始まった1941年12月8日、当時、北海道帝国大生だった宮沢さんは、同大英語教師の米国人ハロルド・レーンさんと妻ポーリン・レーンさんに海軍飛行場などの軍事機密を漏らしたとして、3人とも逮捕された。容疑は軍機保護法違反だった。
非公開の裁判で、宮沢さんとハロルドさんが懲役15年、ポーリンさんが懲役12年の判決を受けた。網走刑務所に収監された宮沢さんは1945年10月に釈放されたが、過酷な刑務所生活によって衰弱し、1947年2月22日に亡くなった。
軍機保護法は本来、軍事上の秘密の探知や収集、漏えいが処罰対象だが、飛行場の存在自体は当時の新聞や雑誌で報道され、「秘密情報」ではなかった。当時、米国大使館側の見学も認められていたという。
荻野氏は事件について、思想や言論の弾圧などに絡む他の事案に比べて「刑が突出して重かった」と解説。米国との戦争開始に伴って警察・司法当局が緊張感に包まれる中、日米間のスパイ網に「鉄槌を下そう」という無謀な考えから、虚構の事件を構築したのではないかと指摘した。
集会を主催した「宮沢・レーン事件を忘れない!北大・戦後世代をつなぐOB/OG会」世話人の村瀬喜之さん(81)は「スパイ防止法の阻止に限らず、戦争を絶対に起こしてはならないというのが会全体の思いだ」と説く。
「北大生・宮沢弘幸『スパイ冤罪事件』の真相を広める会」で事務局を担う福島清さん(87)は、スパイ防止法を「弾圧立法」と断じた上で危機感を示す。
スパイ冤罪「宮沢・レーン事件」ゆかりの地歩く 北大で催し [北海道]:朝日新聞2026.5.21
太平洋戦争が開戦した1941年12月8日、北海道帝国大学(現北海道大学)の学生、宮沢弘幸さんと米国人の英語講師レーン氏夫妻が軍機法違反容疑で逮捕、投獄されたスパイ冤罪事件「宮沢・レーン事件」ゆかりの地を歩く「北大ピースツアー」が4月、札幌市の北大キャンパスで開かれた。
宮沢・レーン事件は、北大の外国人教師らと外国語で会話、交流するサークルに参加した宮沢さんがレーン夫妻に軍事機密を漏らし、その情報が米大使館に伝えられたという嫌疑がかけられた。内容は当時、一般にも知られていた根室第一飛行場の新設についてで、宮沢氏は否認したが、最高裁で懲役15年の有罪が確定。レーン夫妻は捕虜交換で帰国、宮沢さんは戦後釈放されたが、獄中でかかった結核が原因で1947年に死去した。
世界と日本
◆注目のスペインの中東外交(西海敏夫)
(内容紹介)
以前も新刊紹介:「経済」2026年1月号(追記あり) - bogus-simotukareのブログで紹介しましたが
「スペインは左から追い抜く」― 右傾化に対抗する左派政権 | 欧州最新政治情勢:欧州の行方を見定める注目論点 - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ2025.2.28
右傾化するEUの中でサンチェス政権は独自色を打ち出すようになっている。2024年5月には、イスラエルとハマスの衝突を受け、大多数のEU加盟国の意向に反して、パレスチナの国家承認を発表した。
スペイン、イスラエル向け武器輸送を禁止 パレスチナ支援も拡大2025-09-08
スペインのサンチェス首相は8日、イスラエルへの圧力を強めるため、武器を積んだイスラエル行きの船舶や航空機がスペインの港に寄港したり、領空に入ったりすることを禁止すると発表した。
また、パレスチナ自治政府と国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への援助を増額するほか、パレスチナ自治区内のイスラエル入植地で生産された製品に対して禁輸措置を課す方針も示した。
テレビ演説で、「(今回の措置が)ネタニヤフ首相とイスラエル政府に圧力をかけ、パレスチナ人が耐えている苦しみをいくらかでも軽減することにつながることを期待する」と述べた。
というスペインの中東政策(イスラエルにかなり批判的)が好意的に紹介されています。
◆食糧法改定案は中止を(湯川喜朗*5)
(内容紹介)
赤旗の記事紹介で代替。
主張/食糧法改定案/米の安定供給に政府は責任を | しんぶん赤旗|日本共産党2026.4.25
改定案は、法の目的を「主要食糧の需給と価格の安定」から「需給の安定を図り、及びこれを通じて価格の安定化を図る」に変えます。価格安定を、目的から実質的に外すものです。すでに政府は「米価の市場任せ」を基本にしてきました。実態にあわせて法律を変えるといいます。
問題は、現行法で「生産調整の推進」は政府の役割としていたのを、改定案は「需要に応じた生産」に生産者が「主体的に取り組む」と明記されたことです。
そのうえ、「水田における稲以外の生産振興」も政府の役割から削除しています。来年から実施するとしている水田転作への交付金廃止と一体です。政府による需給調整は放棄され、暴落が怖ければ主体的に減産せよと農業者に米価安定の全責任を押しつけるものです。需給の不安定化は必至です。
改定案は、政府の役割とされてきた米の備蓄制度も見直し、民間備蓄制度を創設します。政府備蓄の縮小と民間備蓄の導入は、政府の財政制度審議会が求めてきた備蓄経費の圧縮を優先したもので、主食の安定供給への政府の責任を大きく後退させるものです。
特集「極右・排外主義の危険」
【前振り】
・勿論、「日本で参政党や国民民主党の議席増」「米国でトランプ政権、イタリアでメローニ政権誕生」「英国でリフォームUK(先日の統一地方選では労働党、保守党を超える議席を獲得)、フランスで国民連合、ドイツで『ドイツのための選択肢』が躍進」といった「極右政党の世界的な躍進」という事実が今回の特集の前提にはあります。
共産に「問題が全くない」とはさすがに「共産支持者の俺」も言いません*6が、「世界的な排外主義の高まり」「社民、れいわは共産より厳しい状況」にあることを考えれば、富田論文(後で紹介します)も指摘するように「世界及び日本における排外主義右翼の脅威に左派はどう対抗するか?」と言う問題を立てるべきであって、「リベラル21の阿部治平や広原盛明」「反党分子の松竹や紙屋」などのような「反共分子」のように「共産に悪口して憂さ晴らし」など、全く馬鹿げています。
今は「共産は厳しい状態だが、土井社会党は議席を増やした1980年代」のような時代では残念ながらない。
◆高市政権の圧勝と「岩盤保守層」の跋扈(富田宏治*7)
(内容紹介)
「高市自民の勝利」「参政、国民民主党など右翼政党の議席増」「共産、社民など左派政党の議席減」の背景には「他にも理由は恐らくある」とはいえ「日本で急速に高まる排外主義」が大きく影響してる(排外主義に迎合すると票増加につながり、逆に批判すると票減少につながる)」と評価する富田氏です。
「排外主義批判派の一人」として「日本人の俺」も在日外国人に対する「屈辱や慚愧の念」を感じ、「日本人多数派はアホか?」と思いますが、恐らくそうなのでしょう。
そうした「嘆かわしい現状(排外主義の蔓延)を打開する方策」について、富田氏も妙案はないわけですが、「だからこそ排外主義反対の旗を左派、リベラル派(共産、社民など)は高く掲げる必要がある」とする富田氏の主張には全く同感です。
◆アメリカ資本主義とトランピズム(本田浩邦*8)
(内容紹介)
トランピズム(トランプ主義)について、「新自由主義(大企業の横暴を容認)」と「復古主義(白人優越主義やキリスト教原理主義:この観点から例えば有色人種やLGBTへの人権擁護が非難される)」の悪魔合体と見なす本田氏ですが、俺の無能のため詳細な紹介は省略します。
「トランピズムは滅びぬ、何度でも蘇る。なぜならトランピズムは米国ウヨの夢だからだ!(ムスカの『ラピュタは滅びぬ、何度でも蘇るさ!。ラピュタの力こそ人類の夢だからだ!』風に)」と評価する本田氏ですが、残念ながら恐らくそうなのでしょう。
例は何でもいいですが、「安倍死後に、右翼的な高市政権が誕生した」「ベルルスコーニ死後に、イタリアに右翼的なメローニ内閣が誕生した」ように「高齢のトランプが早晩死に、また民主党が仮に政権復帰した」としても、残念ながら「トランピズム」がすぐには滅びず、民主党など批判派が対応を誤れば、「第二のトランプが共和党に登場し、大統領になる危険性は否定できない」のでしょう。
◆欧州における極右勢力の伸張をどう見るか(宮前忠夫*9)
(内容紹介)
「イタリアでメローニ政権誕生」「英国でリフォームUK(先日の統一地方選では労働党、保守党を超える議席を獲得)、フランスで国民連合、ドイツで『ドイツのための選択肢』が躍進」といった「欧州極右勢力の伸張」に触れながらも「英国のコービン新党(労働党党首だったコービンが結成)」「不服従のフランス」「ドイツ左翼党」など欧州の左翼政党や労組、左派市民運動がそうした右翼政党に対抗する動きを強めていることが紹介されています。
但し、俺の無能のため詳細な紹介は省略します。
◆ハンガリーのポピュリスト政権とその行方(上)(田中宏*10)
(内容紹介)
「ハンガリーのポピュリスト政権」とは先日選挙で敗北し、下野したオルバン政権(2010~2026年まで約10年間在位)のことです。
今回の(上)では「何故にオルバン政権が長期政権を実現したのか?」を論じられています。
俺の無能のため(上)についての詳細な紹介は省略しますが
オルバーン・ヴィクトル - Wikipedia参照
2019年から「出産ローン」という制度が創設され、結婚し出産を控えた夫婦に対して無利子で1000万フォリント(日本円で約410万円)のローンを提供している。子どもを4人産むと母親の所得税(15%)が免除される制度も2020年1月から導入されている。所得に対する累進課税は2015年に廃止され、総所得に対する16%の定額税率に置き換えられ、25歳以下に対する所得税は2021年に完全に廃止された。
という「アメ」と
◆与党に有利な選挙制度の改悪
◆マスコミへの圧力
→与党批判をできるだけさせない
という「鞭」の組み合わせが長期政権化を実現したという話です。
ということで、オルバン政権は移民受け入れに否定的な排外主義ですが、他論文に比べ、排外主義への言及はそれほど多くありません。
(下)では「何故にオルバン政権は今回下野したのか?」「新政権はどんな政策を行うとみられるか?(あるいは脱オルバンの為に何が求められるか?)」が論じられる予定とのこと。
なお、(上)でも「下野の理由」の一つとして
マジャル・ペーテル - Wikipedia参照
2024年2月、マジャル*11は前法務大臣で元妻のヴァルガ・ユディトに秘密裏で、録音したユディトの発言を公開。その中で、ノヴァーク・カタリン大統領が2023年4月、首都ブダペスト近郊の国営児童養護施設の副園長であったコーニャ・エンドレに対し、大統領恩赦を与えていたことが明らかになった。この副園長は、「園長のヴァーシャールヘイ・ヤーノシュによる子どもへの性的虐待」の隠蔽に加担したとして、懲役8年の実刑判決を受けた人物であった。このスキャンダルはノヴァークの大統領辞任を求める大規模な反政府デモに発展し、彼女は2024年2月10日に辞任した。同日、恩赦に副署したヴァルガ・ユディトも、国会議員辞職と、同年6月の欧州議会選挙におけるフィデス党名簿筆頭候補からの辞退(つまり政界引退)を表明した。
その後、マジャルはメディアのインタビューに応じ、「オルバン首相の側近」ロガーン・アンタル内閣官房長官を激しく批判し、マジャルが学生ローンセンターの代表を務めていた際、公共入札においてオルバン首相に近い人物を優遇するよう強要されたことを暴露した。
という「与党の醜聞の発覚」があげられています。
◆軍事大国スウェーデンと極右政党の興隆(姉歯暁*12)
(内容紹介)
「福祉国家」「移民に寛容」「中道左派」イメージのあるスウェーデンでも「極右政党の躍進(現在の連立政権与党の一つであるスウェーデン民主党は移民受け入れに否定的な右派)」を背景に「非同盟中立の放棄(NATOへの加盟)」「軍拡や武器輸出の拡大」「移民排斥」などの「右翼化」が進展していることが批判的に紹介されていますが、俺の無能のため詳細な紹介は省略します。
但し、スウェーデン民主党の支持は昨今低下しており、社民党、左翼党、緑の党と言った左派勢力への支持が高まり、2026年9月予定の総選挙が注目されるとのこと。
【参考:スウェーデンの右傾化】
スウェーデンの軍事装備品輸出、24年は過去最高-安全保障懸念強まり | TBS CROSS DIG with Bloomberg2025.3.11
スウェーデンの軍事装備品の輸出額は2024年、過去最高の290億スウェーデン・クローナ(約4200億円)に達した。スウェーデンの戦略製品検査局(ISP)のデータによると、防衛物資の輸出額は2023年から63%増加。スウェーデン最大の防衛企業サーブは、戦闘機「グリペン」や早期警戒管制機「グローバルアイ」、潜水艦などを製造しており、軍事装備に対する世界的な需要の高まりで、大きな恩恵を受けている。
「人道大国」スウェーデンの葛藤 移民政策を揺るがす極右起源の政党:朝日新聞2025.9.10
移民や難民に寛容な「人道大国」スウェーデンの外国人受け入れ政策が厳しくなっています。背景には、極右集団を起源にもつスウェーデン民主党の躍進があります。スウェーデン政治外交史が専門の鈴木悠史さんによる寄稿です。「移民はスウェーデンにとって有益でなければならない」
2024年夏、右派の穏健党のクリステション首相らが新聞に寄稿した記事のタイトルだ。中道右派連合による現政府が進める移民・難民政策に通底する考え方といえる。
2022年の政権交代で誕生した現政府は、移民政策のパラダイムシフトを掲げ、外国人の受け入れを制限する政策を次々と実施している。前政権で年間5千人だった第三国定住のしくみで受け入れる難民の人数枠は900人へと引き下げられた。他にも難民が家族を呼び寄せる際の扶養要件の免除を廃止し、呼び寄せのハードルを上げた。一連の政策効果は明白だ。厳格化したスウェーデンでの庇護申請が敬遠され、昨年の庇護申請者数は1万人を下回り、1996年以降で最少だった。
【参考:スウェーデンとナチスドイツとの関係】
第二次世界大戦中のスウェーデン - Wikipedia参照
第二次世界大戦中、スウェーデンがドイツに行った最も重要な譲歩は、ドイツの軍需産業に使うための鉄鉱石を年間1,000万トンも輸出した事である。イギリスの国会議員であったラルフ・グリン卿は、スウェーデンがドイツへの鉄鉱石の輸出を停止すれば、数ヶ月以内に戦争が終結すると主張していた。
イギリスがナチス・ドイツによるフランス侵攻(そしてパリ陥落によるナチスドイツのフランス全土支配)を防げなかった事を考えると、スウェーデン政府はイギリスが自分たちを守ってくれるとは考えられず、輸出の継続を選択した。
第二次世界大戦中のイギリス首相ウィンストン・チャーチルは、戦後、『戦争中、スウェーデンがナチス・ドイツに鉄鋼や機械部品を供給するなど、戦争の道義的側面を無視し、自己利益のために動いた』とスウェーデンを非難した。
スウェーデンはいかに危機に対処してきたか――すべては自国の安全保障のために/清水謙 - SYNODOS2014.9.4
第二次世界大戦においても、1940年にドイツの要求を受け、ドイツ占領下にあるノルウェーから非武装のドイツ兵のスウェーデン領内通過を認めた。また1941年に始まった独ソ戦に際しては、さらなるドイツ側の要求によって、約1万5000人の武装した第163歩兵師団(通称「エンゲルブレクト師団」)をノルウェー国境からフィンランドまでスウェーデン国鉄の列車で輸送することを余儀なくされた。「中立」を揺るがした1941年6月のこの外交案件は「夏至の危機」(Midsommarkrisen)と呼ばれている。1940年から1943年までの間でスウェーデン領内を通過したドイツ兵は延べ200万人に昇る。
姉歯論文も指摘してますが「ドイツの脅威に屈服したのはやむを得ない選択だった」として触れることが長くタブー視されてきた「スウェーデンとナチスドイツとの癒着関係(例えば、上記ウィキペディアの記述)」が現在はスウェーデンでも批判的に取り上げられているそうです。
また姉歯論文はこうした事実が近年、触れられるようになったことは
1)「ナチスドイツに屈服したこと(そしてそれを戦後、長くタブー視し、触れずに充分には反省してこなかったこと)は間違いだった」という批判意識を醸成する一方で
2)皮肉にも「第二次大戦当時のナチスドイツ(ポーランド、フランス等に侵攻)=今のプーチンロシア(ウクライナに侵攻)」というアナロジー(類推)から「ロシアの脅威に対抗するには中立路線は放棄し、NATOに加盟すべきだ。そうでなければナチスドイツに屈したようにロシアに屈するしかなくなる」という形で「スウェーデンのNATO加盟」を助長したと指摘しています。
◆外国籍者の陥る困窮と生活保護制度の課題:「3つの排除」による生存権の蹂躙(大澤優馬*13)
(内容紹介)
「3つの排除」とは
1)制度からの排除
→生活保護は政府解釈や判例では「国民の権利」にすぎず、外国人については準用されるに過ぎないので、現行制度が外国人にはそもそも使えないことがある。
2)行政の運用による排除
3)物理的な排除
入管法に基づく「本国への強制移送」のこと。
こうした「外国人に対する差別的な制度構築、制度運用」を是正して、「日本国民と同等の生活保護」を外国人へ付与することが主張されていますが、俺の無能のため詳細な紹介は省略します。
◆イタリア・ボローニャ:外国人労働者、移民への支援・連帯の形(角田真己)
(内容紹介)
CGIL(イタリア労働総同盟)ボローニャ支部等による「イタリア・ボローニャでの外国人労働者、移民への支援・連帯」が紹介されていますが、俺の無能のため詳細な紹介は省略します。
◆座談会「対イラン戦争:激動の中東情勢」(栗田禎子*14、黒木英充*15、山岸智子*16)
(内容紹介)
以下のような指摘がされています。
【1】イランも「制空権を事実上、米国やイスラエルに奪われ、最高指導者ハメネイが暗殺された」という追い詰められた状況で「切れるカード」があまりないので「追い詰められてホルムズ海峡封鎖に打って出た」面が大きいのではないか。
正直「日本等でのガソリン高騰、ナフサ不足」を覚悟してやったかどうか。
米国、イスラエルがいつまで経っても強硬な態度を改めないし、「簡単に海峡封鎖を解けない」と言う状況がイランの立場ではないか。
【2】イラン攻撃は「イラン打倒」というよりは「パレスチナ自治政府打倒」の意味合いが大きいのではないか?
中東で「パレスチナ支援に熱心なのはイランだけ」でイランさえ潰せば、他のアラブ諸国はいくらでも、イスラエルになびく、イスラエルがパレスチナ自治政府打倒に動いても黙認するとみているのではないか。
【3】イランが核保有にこだわるのは「北朝鮮の核保有」同様に「米国やイスラエルの軍事侵攻を恐れてるから(通常兵力はイランが劣る)」だろう。
また「親米国家」ということで核兵器保有を米国から容認されてるインドやパキスタン、核兵器保有の疑いがあるイスラエル(米国はイラン、北朝鮮のような経済制裁はしてない)を見て「親米(インド、パキスタン、イスラエル)なら核保有していいのか?」と言う不公平感を感じてることもあげられる。
【4】月刊「選択」4月号記事に寄れば、高市氏は「自衛隊をイランに派遣したい」といい「今井内閣官房参与」が反対したそうです。
高市氏が右翼的なことにも驚きましたが、「安倍内閣首相秘書官」を務め「アベノマスクの発案者」と噂される「安倍側近」今井氏が意外と常識人であることにも驚きました。まあ、今井氏が、高市氏のことを「安倍さんに重用されたから出世しただけで大した人間じゃない」と軽く考えてる可能性もありますが。
◆不透明感を拭えないロシア経済:イラン危機の延命効果*17は限定的か(服部倫卓*18)
(内容紹介)
イラン危機により石油価格は高騰しているが
1)ウクライナによるロシア石油施設への攻撃
2)ロシア以外からの石油調達
もあり、ロシアの経済はあまり好転していないという分析がされているが、俺の無能のため詳細な紹介は省略します。
◆家庭裁判所調査官の現場から(上):共同親権を考える(後藤秀典*19)
(内容紹介)
仮に共同親権を「是」とする立場に立っても「家裁調査官の負担軽減」がされなければ「不適切な共同親権がされる恐れがある」との危惧*20が表明され、「家裁調査官の人員増」等の体制強化が主張されていますが、俺の無能のため詳細な紹介は省略します。
◆オンラインスポーツ賭博の異常な危険性(鳥畑与一*21)
(内容紹介)
ネット上の記事紹介で代替。
日本がターゲットか『オンラインカジノ』海外なのに日本語ガイド 専門家が指摘するその危険性「違法で必ず客が負けて終わるような仕組み」 | TBS NEWS DIG (1ページ)2024.10.11
鳥畑与一静岡大学名誉教授:
「スマホだといつでもどこでも好きな時にギャンブルが出来る、自分の部屋で誰にも知られずにギャンブルが24時間できる。従来のギャンブルよりもギャンブル依存症を誘発する危険性が高いと言われている」
「2018年2月の月間100万回のアクセスに対して2021年9月には1億2000万回に増えている。SNSで様々な形で若い人にオンラインギャンブルに対する誘惑、勧誘活動が行われている」
鳥畑名誉教授は、ゲームアプリや課金制度が普及しスマホでお金を賭ける行為に対して敷居が低くなっていると指摘。ギャンブルの危険性を正しく伝えていくことが重要と話していました
赤旗主張/オンラインカジノ/見過ごせぬ国の賭博容認姿勢2025.3.23
オンラインカジノの違法性を周知するだけでなく、誘導広告や国内の決済代行業者などの取り締まりの強化が必要です。ギャンブル依存回復を支援する団体は、スイスのように、海外のカジノサイトをブロックすることなども求めています。国を挙げた実効性ある対策が急務です。
(社説)ネットカジノ 放置できぬ海外サイト:朝日新聞2025.4.11
静岡大学の鳥畑与一名誉教授によると、多くが「ライセンスを取っているから合法」などとうたい、利用責任をユーザーに委ねる規約に同意させて無料体験から引き込む。日本の有名人が広告塔となり、合法だと誤認する人も多い。
鳥畑さんは「パチンコや公営賭博がある日本はギャンブル大国といえ、外国業者の標的になっている」という。
直接の摘発が難しくても、実質的に日本相手にカジノを営む業者には対策が必要だ。
◆大月書店の広告
・中野円佳*22編『日本で女性研究者が増えない理由:アカデミアに残るジェンダー問題』(2026年5月刊行)
・打越文弥、本田由紀*23編『進学校の進路選択とジェンダー』(2025年9月刊行)
・川口かしみ*24『ジェンダーの視点で学ぶ憲法入門』(2025年2月刊行)
見事なまで(?)にジェンダーで固めてきた大月書店の広告。刊行年で分かるように必ずしも「新刊」ではありません。
大抵の広告って「新刊広告」ではあるんですが、「『経済』読者にはジェンダー問題が受ける」つう判断が大月書店にあるのか?
俺的に「面白かった」ので触れておきます。
なお、「経済」今月号(7月号)のジェンダー関係記事としては以下があります。
書評:大槻奈巳*25編著『ジェンダー公正な人事制度とはなにか:雇用管理区分・転勤制度見直しの実態と課題*26』(澤木朋子*27)
大槻編著ですが、書評によれば
◆雇用管理区分
「総合職、一般職などのいわゆるコース別人事」あるいは「非正規、正規雇用の区分」のこと。
いわゆる間接差別に悪用されることがあるし、一般的には「一般職や非正規雇用」に女性が多い。
◆転勤制度
男性の単身赴任に比べ、女性の単身赴任は「妻が単身赴任するなんて夫が可哀想」「子どもが幼いウチは女性(母親)が育てるべき」等の価値観が強い日本人の認識においては一般的でなく、転勤には応じられないとして、転勤を拒否せざるを得ない女性は多い。転勤に応じられないとすると出世に響き、結果として女性が管理職になる可能性が減る。
あるいは逆に「転勤に応じて出世したい、管理職になりたい→転勤の妨げになる結婚や出産、育児を女性労働者が諦める」という形で転勤が「未婚、非婚化」「少子化」を助長している疑いがある。
等を論じていますが、俺の無能のため詳細な紹介は省略します。
【参考:中野円佳編『日本で女性研究者が増えない理由』】
なぜ日本で女性研究者が増えないのか 東大院生54人の語りと「男性優遇」の背景 寄稿・中野円佳:東京新聞デジタル2026.6.11
「私の苦いことが多かった経験を、このような形で研究に反映していただけたのはありがたいです。過去の自分まで成仏した気分になりました」
5月末、編著を担当した『日本で女性研究者が増えない理由 アカデミアに残るジェンダー問題』(大月書店)が刊行された。この本は、東京大学の8つの研究科の博士課程に在籍していた54名へのインタビュー調査をもとにしている。冒頭に引用したのは、この書籍の最終確認時に、調査対象者の女性から届いたメールに書かれていた言葉だ。
◆文系も女性が著しく少ない日本
この調査は、博士課程修了後に研究者にならない決断をした人も含めて男女ともに話を聞いているが、女性には「成仏」させないといけないような経験を胸の内に抱えている人が多い。
現在、日本の研究者の女性比率は2割に達していない。理工系の分野などで、とりわけ上位の職に就く女性が増えない状況は他国でもみられる。だが日本の大学ではそれだけでなく、人文社会系であっても女性が著しく少ない分野がある。
そのような環境で、女性は少数派としてさまざまな不利益を感じている。
(以下は有料記事です)
【参考:転勤制度とジェンダー(女性差別)】
職場から性差別やハラスメントをなくす実効ある法律の制定を/男女雇用機会均等法施行40年にあたっての提言/日本共産党 | しんぶん赤旗|日本共産党
本人が希望しない単身赴任や長時間通勤を伴う転勤は、原則禁止とします。
第2部[転勤](2)夫に辞令 続く別居 | ヨミドクター(読売新聞)2018.5.24
「共働きが多数派となった今、『夫が働き、妻は専業主婦』というモデルを前提とした従来の転勤制度は、運用が困難になっている」。
法政大教授(人的資源管理論)の武石恵美子さん*28は、そう指摘する。特に、夫も妻も転勤の可能性がある場合、互いが「いつ、どこに、何年行くか」分からないリスクを抱えることになり、将来の生活の見通しが立てられない。
配偶者の赴任先の地域に異動させたり、同行のため一定期間の休職を認めたりする制度を設ける企業もあるが、導入はまだ一部だ。赴任期間や次の異動先が明示されない状況では、制度を利用できる人も限られる。武石さんは「転勤の目的があいまいなまま、会社側の都合で社員を動かすのではなく、本人の希望や事情をより考慮した制度に変えていかなければならない」と話している。
Re:転勤:転勤は「男性同士の連帯システム」 日本的雇用が顧みなかった声 | 毎日新聞2026.3.27
転勤について高度経済成長期に構築された「男性同士の連帯システム」だとジェンダーの側面から論じ、転換を提言する研究者がいる。
転勤制度の何が問題で、転換にはどのような方策が必要か。自身も夫の転勤で一度はキャリアを諦めた経験のある京都産業大の藤野敦子*29教授(社会学・経済学)に聞いた。藤野教授によると、日本企業における転勤制度は高度経済成長期に日本的雇用システムとして定着した。全国各地に人員を配置して事業を拡大したい企業に対し、労働者側も雇用維持を優先して転勤を受け入れた。
その際、対象とされてきたのは男性。転勤は男性の役割としてジェンダー化されてきたというのが藤野教授の視点だ。
(以下は有料記事です)
なぜ転勤は当然視されたのか 社会学の視点から考える少子化への影響:朝日新聞2026.5.18
著書『転勤の社会学』を今春出版した社会学者で京都産業大教授の藤野敦子さんは、転勤を当然視することは男性中心の働き方を温存すると問題提起します。転勤のあるべき姿を、藤野さんとともに考えます。
藤野
日本の転勤は、欧米などと比べると特定の職種に限らない幅広さが特徴です。
一つの企業で長く働き、様々な職種を幅広く経験する「メンバーシップ型」の働き方の日本に対し、欧米は特定の職種でキャリアを積み複数の企業を渡り歩く「ジョブ型」の働き方ですから、労働者一人一人が企業側と結ぶ労働契約で具体的な勤務場所や異動の範囲が定められています。日本のように、会社の判断で全国各地に転勤させられることは一般的ではありません。少数の管理職や高度専門職などを除けば、働きたい場所を決めて働くのが普通だからです。
企業側は新たな職場で経験を積むことによる人材育成を期待し、労働者側もキャリア形成や雇用の安定につながる。日本的雇用システムにおける転勤は労使双方にとって合理的な選択でした。
ただ、それは経済を動かす「生産領域」に限っての話。出産や育児などの「再生産領域」を視野に入れると(ボーガス注:転勤のために女性労働者が出産や育児を諦める恐れがある(その結果として少子化を助長する)など)不利益も大きい。
インタビュアー
自身も転勤に伴う引っ越しを何度も経験したそうですね。
藤野
転勤が多い夫に家族で同行するため、大学院を辞めて主婦の道を選びました。当時は夫の転勤が決まると1週間ほどで引っ越す必要があり、自分のキャリアやその土地ではぐくんだ人間関係などをあきらめ、新しい土地でゼロからやり直すことの繰り返しでした。のちに研究者の道を歩むことができたのは、様々な幸運に恵まれた結果です。
こうした体験は、夫が転勤を重ねながら第一線で働くかげで妻や子どもの負担が見過ごされているのではないか、夫と妻のキャリア形成に大きな格差が生じているのではないか、と考えるきっかけになりました。
ただ、近年は転勤の辞令を拒否して退職に踏み切る若い世代も目立ち始めています。大きな転機はリモートワークが一気に普及したコロナ禍です。仕事だけでなく、自分の人生設計や家族生活を重視する価値観も浸透しました。「失われた30年」を経ても変わらなかった企業側の意識も(ボーガス注:コロナ禍を契機とした)リモートワークの普及や人手不足*30により変わり、勤務地を限定する採用など、柔軟な働き方の選択肢も増えています。
2010年代に安倍晋三政権下で(ボーガス注:女性活躍推進法(2015年)が制定される(なお、安倍政権は2012年12月~2020年9月)など)「女性活躍」が推進されて以来、(ボーガス注:男性の)片働きから共働きへの流れが生じたのも一因です。
転勤を断る勇気をもつ若者や現役世代が増えているのは、長期に持続してきた日本的雇用システムを揺るがす変化だと考えます。
欧米では雇用時の労働契約に転勤の可能性が明記されていたとしても、転勤を言い渡されるとパートナーの仕事や子育て、介護などの家族の事情を理由に断る人も少なくありません。個々の労働契約よりも人間として生きる権利(人権)が優先される、という社会的合意があるからです。ただし、互いのキャリアを等しく尊重する共働きカップルが多い欧米社会では、転勤や海外勤務をいとわない管理職などのカップルは子どもが少ない傾向があります。欧米社会は、仕事による居住地変更と家族生活の両立、社会の持続可能性という課題に直面しており、近い将来の日本の状況を示していると言えます。
(以下は有料記事です)
変わる転勤と少子化の関係、探った社会学者の言葉 リロン編集部から:朝日新聞2026.6.6
この春、「転勤の社会学」を著した社会学者の藤野敦子さんは、配偶者の転勤で一時期、主婦の道を選んだ自らの体験が、このテーマを研究する動機の一つだったそうです。
夫の転勤に家族が同行すれば、妻のキャリアや家族の暮らしは変化を迫られます。子育て世帯で夫が単身赴任すれば、妻は「ワンオペ*31育児」に。負担の偏りが生じます。
藤野さんによると、転勤は高度経済成長期に広がり、日本型雇用システムの中で続いてきました。今回の著書で転勤が少子化の要因かを探ったところ、転勤族のために各地に社宅が整備されたことで、家族ごと赴任して女性が家事や育児を担うという性別役割分業が促され、(ボーガス注:女性の社会進出を阻害したものの)意外にも少子化を抑制してきた面もあったといいます。
ただ、近年は単身赴任や共働きが増え、転勤が少子化の要因に変化。コロナ禍(ボーガス注:によるリモートワーク)や人手不足を機に企業が柔軟な働き方を取り入れる動きも広がっています。藤野さんは、転勤制度は転勤をいとわない男性同士の評価システムとして機能し、性別役割意識を温存してきたと指摘。一定の転勤は今後も残ると見つつも「人手不足*32と少子化が同時に進む時代にふさわしい働き方を模索する必要がある」と言います。
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我孫子麟著作集1巻『日本地主制の構造と展開』、2巻『日本地主制と近代村落』(いずれも2024年)
我孫子氏については以下を紹介しておきます。
残照/元東北大教授 安孫子麟さん(92)=仙台市、9月4日死去
2021/10/09 河北新報朝刊
元東北大教授 安孫子麟(あびこ・りん)さん(92)=仙台市、9月4日死去=/旧満州帰国者支える
旧満州(中国東北部)に開拓団を送った国策や中国残留日本人孤児が生まれた経緯を調べ、帰国者を陰になり日なたになり支えた。
1930年、1歳半の時に一家で旧満州・奉天市(現・瀋陽市)に移る。父は日本人居留民会に勤務。1946年の引き揚げまで「十五年戦争」の中を満州で過ごした。
東北大で日本近代経済史を専攻。1970年代、調査対象だった宮城県南郷村(現・美里町)で、ソ連軍に追い詰められた開拓民ら約500人が集団自決した「麻山(まさん)事件」を生き延びた人に偶然出会う。満州開拓移民を研究し、2004年には旧開拓地で聞き取りをした。事件の現場となった黒竜江省の農地も捜し当てた。
2006年、残留孤児らが国に賠償を求めた東北訴訟で証言。国策としての開拓団送出、ソ連軍侵攻で置き去りにされた実態、肉親捜しの遅れを指摘し、国家の責任を追及した。
「温厚で君子然とした人。的確な助言をしてくれた」。
東北訴訟弁護団の一人で「中国残留孤児を支援する宮城の会」の共同代表を務めた仙台市の鹿又喜治さん(73)は話す。
宮城教育大や東北大で教壇に立った。定年後に客員教授となった中国の大学で2005年、学生に「日本はなぜ残留孤児に冷たいのか」と問われ、彼我の差を嘆いた。
「中国人は日本人帰国者に仲間意識を持ち、実情を知っている。国内の関心の低さが恥ずかしい」
理解を広げようと、経験や研究成果を伝え続けた。平和を重んじ、護憲活動にも長年取り組んだ。昨年11月に倒れるまで、請われればどこにでも足を運んだ。「まだやらねばならないことがあります」が口癖だった。
Ka-Bataブログ: 安孫子麟著作集全2巻『日本地主制の構造と展開』『日本地主制と近代村落』(八朔社,2024年)を読んで*332025.4.11
第1巻『日本地主制の構造と展開』に収録されている論文が示すように,安孫子説は,実態分析により地主制を人格的支配関係を含むとする点で講座派の流れを汲む。山田盛太郎『日本資本主義分析*34』に対しても肯定的言及の方が多い。しかし,安孫子説は固定的な半封建制論や絶対主義論を採らず,地主制を日本資本主義のウクラードとして位置付ける。資本主義発展に規定され,また農民運動との対抗の中で地主制が成立・展開・解体の変遷を遂げるという点では,栗原百寿の流れを汲む修正講座派である。
第2巻『日本地主制と近代村落』に収録されている論文が示すように,安孫子説は小経営的生産様式論と中村吉治の共同体論に依拠した村落社会論という側面を持つ。小経営はそれだけで完結することができす,何らかの共同組織,共同関係を必要とする。その最たるものは土地管理機能の必要性である。しかし,この共同組織は,よく言われるような,人類史の起源から続く共同体と等しいのではない。共同体は血縁規範に支えられた人格的結合であって,生産力の発展とどもに次第に機能別に広域に拡散していき,近代社会では基本的に解体される。近代の村落は共同体的関係を部分的に残しているが共同体そのものではなく,血縁規範以外のまとまりによっても支えられる独自の秩序である。安孫子氏はそれは明治期にあっては「部落」であったとする。ところが部落の土地管理機能は次第に地主による土地管理にとってかわられ,さらにファシズム的な国家管理によって再編される。そして戦後の農地改革を経て新たな村落にとってかわられるのである。ここでは資本主義や商品経済や私的所有権に解消されない,村落における独自の社会関係が強調されているのである。
安孫子説は,経済史研究や農業・農村の研究にとってのみ有意義なのではない。この説によって,戦前日本が敗戦まで半封建制や絶対主義のままであったかのような講座派の硬直的なバージョンが退けられると同時に,日本は資本主義であることを強調するあまり独自の社会関係を見落とす労農派的見地の硬直的バージョンも退けられる。それだけではない。読者の側が安孫子説を敷衍するならば,小経営の独自の運動を見落とす近代経済学の単純化されたバージョンや,小経営に個人の完全な自立を見出す空想的市民社会論も退けられる。と同時に,村落の共同関係に共同体を見出し,近代的個人を否定した人格的結合への回帰を夢見る時代錯誤も退けられるのである。安孫子説はこのような広大な射程を持つというのが,私の解釈である。
なお、八朔社は
◆中川弘*35『「資本論」研究序説』(2020年)
◆橋本直樹*36『「共産党宣言」普及史序説』(2016年)、『1850年のマルクスによる経済学研究の再出発』(2018年)
◆谷野勝明*37『再生産・蓄積論草稿の研究』(2015年)、『蓄積論大系と恐慌論』(2023年)
等、今でもマルクス主義研究著書を刊行してる点に大きな特色があります(もちろん、マルクス研究以外の著書も刊行していますが)。
*1:法政大学名誉教授。著書『労働統計の国際比較』(編著、1994年、梓出版社)、『女性と統計:ジェンダー統計論序説』(編著、1997年、梓出版社)
*2:1926~2009年。弁護士。著書『裁判と民主主義』(1979年、大月書店)、『ある内務官僚の軌跡』(1980年、大月書店)、『治安立法と裁判』(1990年、新日本新書)、『司法官の戦争責任:満洲体験と戦後司法』(1997年、花伝社)等(上田誠吉 - Wikipedia参照)
*3:後藤昌次郎弁護士(1924~2011年)との共著
*4:著書『特高警察体制史(増補版)』(1988年、せきた書房)、『北の特高警察』(1991年、新日本出版社)、『昭和天皇と治安体制』(1993年、新日本出版社)、『初期社会主義思想論』(1993年、不二出版)、『戦後治安体制の確立』(1999年、岩波書店)、『思想検事』(2000年、岩波新書)、『外務省警察史』(2005年、校倉書房)、『横浜事件と治安維持法』(2006年、星雲社)、『戦前文部省の治安機能』(2007年、校倉書房)、『多喜二の時代から見えてくるもの:治安体制に抗して』(2009年、新日本出版社)、『母の語る小林多喜二』(2011年、新日本出版社)、『特高警察』(2012年、岩波新書)、『「戦意」の推移:国民の戦争支持・協力』(2014年、校倉書房)、『闇があるから光がある:新時代を拓く小林多喜二』(2014年、学習の友社)、『北洋漁業と海軍』(2016年、校倉書房)、『よみがえる戦時体制:治安体制の歴史と現在』(2018年、集英社新書)、『日本憲兵史』(2018年、日本経済評論社)、『証言・治安維持法』(2019年、NHK出版新書)、『治安体制の現代史と小林多喜二』(2019年、本の泉社)、『治安維持法の歴史Ⅰ:治安維持法の「現場」』(2021年、六花出版)、『治安維持法の歴史Ⅱ:治安維持法・その成立と「改正」史』(2022年、六花出版)、『治安維持法の歴史Ⅲ:朝鮮の治安維持法の「現場」』(2022年、六花出版)、『治安維持法の歴史IV:朝鮮の治安維持法・運用の歴史』(2022年、六花出版)、『治安維持法の歴史Ⅴ:台湾の治安維持法』(2022年、六花出版)、『治安維持法の歴史Ⅵ:「満州国」の治安維持法』(2022年、六花出版)、『検証・治安維持法』(2024年、平凡社新書)、『治安維持法と「国体」』(2025年、大月書店)、『「国体」とは何か:教育勅語から八紘一宇まで』(2026、地平社)等
*5:農民連ふるさとネットワーク事務局長
*6:というか、志位議長、田村委員長など党執行部ですらそんなことは言ってないですが
*7:関西学院大学教授。著書『丸山眞男:「近代主義」の射程』(2001年、関西学院大学出版会)、『丸山眞男:「古層論」の射程』(2015年、関西学院大学出版会)、『核兵器禁止条約の意義と課題』(2017年、かもがわ出版)、『人間の尊厳を築く反核運動』(2019年、学習の友社)、『「核抑止」論を乗り超えるために』(2022年、日本機関誌出版センター)、『増補版・維新政治の本質』(2023年、あけび書房)、『被爆80年:核抑止との決別』(2025年、かもがわ出版)等
*8:獨協大学教授。著書『アメリカの資本蓄積と社会保障』(2016年、日本評論社)、『長期停滞の資本主義』(2019年、大月書店)、『アメリカ・危機の省察』(2025年、大月書店)
*9:著書『週労働35時間への挑戦:戦後ドイツ労働時間短縮のたたかい』(1992年、学習の友社)、『あなたは何時間働きますか?:ドイツの働き方改革と選択労働時間』(2018年、本の泉社)等
*10:立命館大学社会システム研究所上席研究員
*11:与党フィデス=ハンガリー市民同盟(フィデス)の元党員(後に離党しティサに参加)。最大野党ティサ党首を経て現在はハンガリー首相
*12:駒澤大学教授。著書『豊かさという幻想:「消費社会」批判』(2013年、櫻井書店)、『コルチェスター日記:イギリスの人、くらし、福祉』(2019年、野島出版)、『農家女性の戦後史(新版):日本農業新聞「女の階段」の五十年』(2024年、現代思潮新社)等
*13:つくろい東京ファンド事務局長。北関東医療相談会事務局長。著書『生活保護と外国人』(2023年、明石書店)
*14:千葉大学教授。著書『近代スーダンにおける体制変動と民族形成』(2001年、大月書店)、『中東革命のゆくえ』(2014年、大月書店)等
*15:東京外国語大学教授。著書『シリア・レバノンを知るための64章』(編著、2013年、明石書店)
*16:明治大学教授。著書『現代イランの社会と政治』(編著、2018年、明石書店)
*17:イラン戦争によって石油が高騰し、ロシア産石油が高値で取引されてること
*18:北海道大学教授。著書『不思議の国ベラルーシ』(2004年、岩波書店)、『歴史の狭間のベラルーシ』(2004年、東洋書店ユーラシア・ブックレット)、『ウクライナ・ベラルーシ・モルドバ経済図説』(2011年、東洋書店ユーラシア・ブックレット)
*19:著書『東京電力の変節:最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』(2023年、旬報社)、『ルポ・司法崩壊』(2025年、地平社)。現在、月刊「地平」にルポ「電力総連の研究」を連載中。
*20:民法改正時に、共同親権反対派から既に表明されていた危惧ですが。
*21:静岡大学名誉教授。著書『略奪的金融の暴走』(2009年、学習の友社)、『カジノ幻想』(2015年、ベスト新書) 等
*22:東京大学准教授。東京大学多様性包摂共創センター・DEI共創推進戦略室副室長。著書『「育休世代」のジレンマ:女性活用はなぜ失敗するのか?』(2014年、光文社新書)、『上司の「いじり」が許せない』(2018年、講談社現代新書)、『なぜ共働きも専業もしんどいのか』(2019年、PHP新書)、『教育大国シンガポール』(2023年、光文社新書)、『教育にひそむジェンダー』(2024年、ちくま新書)等
*23:東京大学教授。著書『若者と仕事』(2005年、東京大学出版会→増補新装版、2025年、東京大学出版会)、『多元化する「能力」と日本社会』(2005年、NTT出版)、『「家庭教育」の隘路』(2008年、勁草書房)、『軋む社会:教育・仕事・若者の現在』(2008年、双風舎→2011年、河出文庫)、『教育の職業的意義』(2009年、ちくま新書)、『学校の「空気」』(2011年、岩波書店)、『社会を結びなおす:教育・仕事・家族の連携へ』(2014年、岩波ブックレット)、『もじれる社会:戦後日本型循環モデルを超えて』(2014年、ちくま新書)、『教育は何を評価してきたのか』(2020年、岩波新書)、『「日本」ってどんな国?国際比較データで社会が見えてくる』(2021年、ちくまプリマー新書)、『「東大卒」の研究:データからみる学歴エリート』(編著、2025年、ちくま新書) 等
*24:宮城学院女子大学准教授
*25:聖心女子大学名誉教授。独立行政法人男女共同参画機構理事長。著書『職務格差:女性の活躍推進を阻む要因はなにか』(2015年、勁草書房)、『派遣労働は自由な働き方なのか』(編著、2023年、青弓社)
*26:2026年、勁草書房
*27:法政大学講師。専修大学社会学研究所研究員
*28:著書『男性の育児休業』(共著、2004年、中公新書)、『雇用システムと女性のキャリア』(2006年、勁草書房)、『女性自衛官:キャリア、自分らしさと任務遂行』(共著、2022年、光文社新書)、『「キャリアデザイン」って、どういうこと?』(2024年、岩波ブックレット)等
*29:著書『転勤の社会学:ジェンダー・家族から問う日本的雇用システム』(2026年、勁草書房)
*30:以前から別記事で書いていますが「待遇(低賃金、長時間労働など)が悪いことで応募がないだけ」なので「人手不足(少子化が理由と言いたい?)」と言う物言いには違和感を感じます。
*31:ワンオペレーションの略(ワンオペ - Wikipedia参照)
*32:以前から別記事で書いていますが「待遇(低賃金、長時間労働など)が悪いことで応募がないだけ」なので「人手不足(少子化が理由と言いたい?)」と言う物言いには違和感を感じます。
*33:ブログ筆者の川端望氏は東北大学教授。著書に『東アジア鉄鋼業の構造とダイナミズム』(2005年、ミネルヴァ書房)等
*34:岩波文庫
*35:福島大学名誉教授
*36:鹿児島大学名誉教授
*37:関東学院大学名誉教授