安倍の演説に突っ込む

■『平成27年11月6日:読売国際経済懇話会(YIES) 講演会2015 安倍総理スピーチ』
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/1106yies.html
に突っ込んでみましょう。

 3年前、どなたかが私に質問されました。
 「安倍さんが総理大臣になったら、日中関係はもっと悪くなるんじゃないですか」
 相当ストレートな質問でありました。
 当時、野田*1政権の下で、尖閣国有化が行われ、日中関係は冷え込んでいました。そうした中で、私が総理になれば「日中関係はもっと悪化するのではないか」と考える方は、残念ながら当時、相当たくさんおられた*2のであります。
(中略)
 結果は、どうだったか。習近平*3国家主席とは、既に二度の首脳会談を行い、戦略的互恵関係の原則を確認いたしました。先週末も、ソウルで、李克強*4総理と会談し、関係改善の流れを一層強化することができました。
 日本と中国は、切っても切れない関係です。世界第3位*5と第2位*6の経済大国として、地域、更には世界の平和と繁栄に、大きな責任を共有しています。
 昨今、中国経済の減速懸念が高まっていますが、(中略)中国の平和的な発展*7は、日本にとって大きなチャンスであるだけでなく、世界経済の成長にも欠かせません。日本として、そのための協力は惜しみません。

 すごいですねえ。安倍の脳みそが「これが日本国首相とは信じられないレベル」で、狂ってることはよくわかってるつもりでしたが、「安倍政権誕生で日中関係が改善した」かのような物言いには心底呆れます。
 「この間、習主席や李首相と会談して友好関係を深めました」てその会談をやるまでにドンだけ時間がかかったんだ、て聞きたくなります。
 まあ、それはともかく、「少なくとも建前の世界では」安倍はこのように「日中友好」を主張するわけです。「中国で金儲けする」日本財界の要望を無視できないわけです。
 そしてこれが安倍以外なら「中国に媚びやがって!」と罵倒してるであろうウヨ連中も何も言わないのだからどんだけ安倍に甘いんだって話です。まあ、いつものことですが。

 私の故郷、山口県長門市歌人*8金子みすずの有名な歌に「鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがって、みんないい」というものがあります。
 世の中には、家庭に専念して子育てに頑張りたい人もいれば、子育てや介護と両立しながら仕事を続けたい人もいる。リタイア後の第2の人生は地域に貢献したいという高齢者の皆さんもいます。
 まさに、人生は、十人十色。
 若者もお年寄りも、女性も男性も、難病や障害のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが活躍できる社会を創る。そのために、一人ひとりの「希望」を阻む、あらゆる制約を取り除いていく。
 こうした思いから生まれたのが「一億総活躍」という言葉であります。

 原稿を書いてるのは安倍ではなくお抱えスピーチライターでしょうが、よくもまあ口から出任せがはけるもんだと感心します。金子みすゞに安倍が興味があるとはとても思えません。
 単に「山口県出身だから」持ち出してるだけでしょう。

 この言葉については「(ボーガス注:一億総特攻、一億総玉砕といった)戦前のスローガンのようだ」とか、「国家による押しつけだ」といった批判があります。これは私の不徳の致すところでありますが、私がしゃべるとどうしてもそういうレッテルを貼りたくてしょうがない方々が、いらっしゃるようですが、まったくの的外れであります。

 「不徳の致すところ」と言ったすぐ後に「私がしゃべるとどうしてもそういうレッテルを貼りたくてしょうがない方々が、いらっしゃる」と言い出すんだから呆れます。
 「不徳」というなら「レッテル貼り」云々などと言わなければいいのですが言わずにはいられないのが安倍のわけです。

先般の日中韓首脳会談での最も大きな成果の一つは、日中韓FTA交渉の加速化であります。

 産経など「反中国」ウヨにとっては安倍の口から「日中韓FTAをすすめ中韓との貿易を発展させたい」などとは聞きたくない言葉でしょう。
 安倍以外なら「何が中国とのFTA推進だ!」と言うであろうウヨ連中はもちろんこの安倍発言をスルーします。いつもの滑稽な風景です。

私が、出生率を目標にするなどと申し上げると、すぐに、「産めよ、増やせよ」じゃないかという批判が出てまいります。これは平和安全法制の時もそうだったのですが、分かっていながら、あえて根拠のない不安を煽ろうと、レッテル貼りをする人たちがいます。

 「一国の首相でありながら」、「レッテル貼り云々」と大人げないことを平然と言う安倍には心底呆れます。安倍にとっては「批判派は敵だからどんなに罵倒しても構わない」のでしょう。スピーチライターもこんな文章を「安倍の要望とは言え」よくもまあ平然と書けるもんです。

*1:鳩山内閣財務副大臣菅内閣財務相を経て首相

*2:当時ではなく今もそう言う人間は多いでしょう。そもそもどう見ても「もっと悪くなってる」のですから。

*3:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て現在、国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*4:中国共産主義青年団共青団)中央書記処第一書記、河南省党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相などを経て首相

*5:日本のこと

*6:中国のこと

*7:「平和的」云々とは「南シナ海問題についての安倍の中国への当てこすり」かもしれませんが、まあ全体的には普通の内容でしょう。

*8:そもそも金子みすゞは「歌人」ではないでしょう。「歌人」と言った場合の歌は普通「短歌」を意味します。「詩人」が表現として適切でしょう。「原稿のまんま読む安倍」もどうかと思いますが、随分とお粗末なスピーチライターです。