8/27エントリのトラバに応答

 8/27のエントリにトラバをいただきました。
http://d.hatena.ne.jp/bn2islander/20090828/1251462557

 私ごとき者にトラバをいただき、まずはお礼申し上げます。どうもありがとうございます。
 さて、愚論ではありますが、いただいたトラバに私見を書き連ねてみましょう。

軍事費や公共事業費を削って、医療や介護、福祉に回そうという考えは珍しいものではないし、世間一般の方にも受け入れられやすいとは言えよう。

 まあ、そうですね。必要分*1まで削っていいと言っている人はいないでしょうが、一般にいわゆる「左派」はかなり削れると考えているのではないかと思います。

これを見るだけでも、軍事費が医療費、教育費の妨げになっていない事がよく分かると思う。軍事費は教育費や医療費より、遙かに規模が小さいのだ。

 ふむふむ。とはいえ、現状の軍事費がもし「過大であるならば」多少足しにはなるでしょう。ムダはよくありませんし。*2

ただ、規模が小さいとは言っても、軍事費を削れば、なにがしかの足しにはなるかも知れない。

 そうですね。

文科省は今年7月に初めて策定した教育振興基本計画で、10年後に公財政支出GDP比5・0%まで引き上げる目標を明記しようとしたが、財政再建を目指す財務省の強い反発から、見送りとなった経緯がある。

 (本題から、はずれますが)財政再建がどうでもいいとは言いませんが、これは、文科省の方に道理があるんじゃないですかね。

文科省が目標とする公的教育費はGDP比5.0%。これを防衛費だけで賄おうとすると、予算を全てカットしても足りないのである。防衛費をちょっとやそっと削減したところで焼け石に水。つまり、防衛費を削減したところで教育費の足しにはならないのである。

 ふむふむ。防衛費を削減すれば「教育費、医療費*3の不足分がすべてまかなえる」といったら、嘘になりますね。ただ、繰り返しになりますが、足しにはなるのでは。
 もちろん防衛費削減効果を過大評価することは禁物ですが。

医療費、教育費に関しては軍事費削減だけでは財源たり得ない事が分かると思う。軍事費を削って医療費、教育費に回すと言う事は、説得力があるように思われるが、実はポーズに過ぎず、軍事費を削ったことで満足感に浸っているだけであり、問題は何ら解決しないという事なのである。

 ふむふむ。「だけ」ではだめなようですね。ただ、「それプラス何かする」(他のムダを削るなり増税するなり)と考えればいいのでは?*4

軍事費を削ると言う議論は構わないが、軍事費を全部削ったところで医療費や教育費の足しになるわけではない。医療や教育が崩壊の危機に関していることは確かだが、これに関しては軍事費以外の財源が必要であり、軍事費を削って医療や教育に回すという議論は、時間の無駄であると私は思う。

 ムダではないでしょう。「軍事を削って医療や教育に回せばすべてOK」「後、何もしなくて良い」という超単純な主張ならご批判も分かりますが。

最後に、社会保障の専門家である慶応大学商学部教授の権丈善一先生の言葉を紹介して、このエントリーを終わることにする。
『よく共産党系や社民党系の医療関係者は,軍事費を使えと言います。日本の軍事費はずっとGDPの1%なんです。今ですと5兆円です。これを全額使ってもドイツ並みになりません。それに,軍事費を全部使ってゼロにして,それを医療費に回した頃には,外交渉力が弱まって,今よりももっと米国からの『年次計画要望書』の言うことを聞かなければいけなくなっていますよ。世の中はそういうメカニズムで動いているんですけどね。
権丈教授に医療政策をきく(第2回)』

 うーん、PDFファイルか見にくい。しかも分量がすごいな。(笑い)これ全部見て、意見をつけるのは私にはとても無理なのでご紹介の部分についてのみ意見を書きます。
 それはともかく、権丈先生に限らず、学術論文ではないこの種のくだけた対談で、正確性を求めても限界があるのでしょうが、ところどころ、引っかかる部分があるなあ。

よく共産党系や社民党系の医療関係者は,軍事費を使えと言います。日本の軍事費はずっとGDPの1%なんです。今ですと5兆円です。これを全額使ってもドイツ並みになりません。


 繰り返しで恐縮ですが「軍事を削って医療や教育に回せばすべてOK」「後、何もしなくて良い」という超単純な主張なら権丈先生の批判でOKでしょう。しかし「それプラス何かする」なら、話は別でしょう。

軍事費を全部使ってゼロにして,それを医療費に回した頃には,外交渉力が弱まって,今よりももっと米国からの『年次計画要望書』の言うことを聞かなければいけなくなっていますよ。


 くだけた対談でうっかり口が滑ったのでしょうが、この部分は明らかに蛇足でしょう。
 何故蛇足だと思うかと言えば
・私の知る限り、(かなりの長期スパンならともかく短期スパンで)軍事費を全廃せよと言っている左派はほとんど存在しないから。
・外交渉力は軍事費の増減や軍事力の強弱で簡単に決まる物ではないから
・『年次計画要望書』を日本が押しつけられている物と見なすのは一面的すぎる(注.アレによって利益を得ている人間も中にいると思います)から
です。

 何か上手くまとまっていない気もしますが、ひとまず終わり。

*1:もちろん軍事費や公共事業費に限らず、何が必要かは個人の政治的判断による。例えば、医療を例に取れば「高血圧の人に血圧を上げる薬を渡す」「科学的根拠のないトンデモ医療」(「NATROMの日記」(http://d.hatena.ne.jp/NATROM/)で批判されているような医療)のような明らかな暴挙はムダと言えるだろう。しかし、「ガンに放射線治療」「ガンに抗ガン剤」「ガンに外科手術」の場合、どれが正しいか一概には言えないだろう。判断は難しい。

*2:何度も繰り返しますがもちろん、「必要かムダか」の判断は時に難しい事があります。

*3:医療費については後の部分で説明されています。

*4:しつこいですが、もちろんその場合の「プラス何か」の判断は必ずしも楽ではありません。