メモ「小熊英二『1968』はトンデモ?」

 「一人でお茶を」なるブログに次のようなエントリが立っていたので紹介。いや、こういう良記事が時々あるから週刊金曜日は侮れない。金光翔*1が批判する佐藤優を活用する限り、週刊金曜日を買う気は全くないが。他人のトンデモ(この場合、小熊「1968」)を批判するのは結構なのだが、だったら自分の雑誌にトンデモ(佐藤優)を活用しないでほしい。
 金氏の主張を全て支持しているわけではないが、佐藤の件では週刊金曜日より金氏が正しいだろう(金氏のブログ内での主張で明らかにおかしいと私が思うのは、氏が共産党民主党現政権を同一視していることである。共産の政権批判が弱いと言うならまだしも「小沢疑惑追及」「普天間基地問題でのブレ批判」をしている以上、同一視するのはおかしい)。

週刊金曜日:「田中美津、『1968』を嗤う」(http://d.hatena.ne.jp/nessko/20091225/p1)から一部引用。

週刊金曜日』2009年12月25日号に、「田中美津、『1968』を嗤う」という記事が載っています。
http://www.kinyobi.co.jp/

 小熊英二『1968』に対してアマゾンのカスタマー・レビュー欄に田中美津本人が登場して第17章「リブと私」の内容のいい加減さを指摘した件は、はてな界隈でも注目を集めましたが、そこからもっと踏み込んで、田中美津による小熊英二『1968』批判、そして当時のウーマン・リブ運動の模様が語られています。貴重な記録です。
 田中美津「もっと早く書いておくべきでした。今回、挑発されたのがきっかけになりました」(巻末の「金曜日から」より)
 田中氏曰く、「誤読・誤用・捏造は45どころか53もあった」。

ちなみにアマゾンでの田中氏*2のレビューは以下の通り。

 私はこの本の第17章「リブと私」に出てくる田中美津本人です。
 エッ、私って「拒食症」だったの?、高校時代に家出を「2回」した?「安田講堂に立てこもった男と同棲」してたって?「ぐるーぷ・闘う女」を3人で立ち上げた?
 「田中は自己の『物語』の変更や矛盾に、否定的な意識をもたなかった」という自説を証明する資料として、「2004年の講演では『私、ずっと同じことやってるの、苦手なんです』と述べている」と小熊氏は記す。が、実はこれ、「ずっと同じ姿勢で話すのは苦手なんです」と言ってる箇所からの引用なのよ。
 こういうトホホな誤読・誤用そして捏造がなんと45箇所もある(私注:上を見れば分かるが、田中氏が再確認したところ53あったそうである)。これは710ページの「田中美津とその経歴」から数えてのことだから(私についての記述はそこから始まる)、なんと64ページ中、45箇所間違っているということだ。(精読したらもっと増えるかも)。
 私が「直感」の人なら、彼は「誤読・誤用・捏造」の人なんだね。
 それに何だかあざといなぁ。「田中は白いミニスカートでビラを撒いてた」という証言について、「事実かどうか不明だが、とりあえずこの証言を採用する」と注に書いておきながら、「白いミニスカート姿で」「年齢不相応な白いミニスカートで」とその後4回にわたって記している。だいたい何ゆえその証言を採用したかも明らかにしないで、これ、ホントに学者が書いた本なの。「美津さんが永田洋子だったら、私は殺される側だと思った」という、誹謗中傷をもたらす以外に何の意味もないコメントも堂々採用されていて、もうアレーって感じよ。小熊氏は読み手をよほど見くびってるね。
 事実の検証が杜撰で、その上ミソジニー女性嫌悪)を感じさせる記述の数々。
 まだ私は生きてるのだから、せめて1度くらい取材すればよかったのに。何の取材もせずに「田中はそう思った、こう思った」と書いちゃうところが、昔読んだ週刊新潮の「男と女の事件簿」にそっくり。もう失笑しながら読ませてもらった。
 東大教授の上野千鶴子さんには事前に原稿見せたんだから、私にも見せてくれればよかったのにね。結果17章は無残な労作になってしまって!

 なお、他にも「1968」を批判するアマゾン書評(朱徳栄「ノリとハサミで作った偽書」、府川充男偽史以下のバッタ本」)はあるが面倒なので紹介しない(なお、評価する書評もあるが、当事者が生きているのに取材しない本、その結果、当事者から酷評されるような本は私は眉唾せざるを得ないな)。
 どんな書評がアマゾンにあるのか、興味のある方は調べてみてください。
 今後の小熊英二の対応(週刊金曜日という雑誌媒体に載った以上、少なくとも田中氏の件だけはもはや無視は出来ないだろう)が注目される。まともな対応をしなければ過去の著作も含めて、小熊がトンデモ扱いされても文句は言えないだろう。

*1:氏の主張に付いては「私にも話させて」(http://watashinim.exblog.jp/)を参照してください。

*2:日本のウーマンリブを代表する人物の一人。私は詳しいわけではないので詳しく知りたい方はググるなり、図書館で調べるなりしてください。