新刊紹介:「前衛」3月号

「前衛」3月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。興味のある内容だけ簡単に触れます。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
■「戦争法と日米軍事同盟(上)」(山根隆志*1
(内容紹介)
 戦争法制定前後の変化を論じている。今月号では「集団的自衛権行使を前提とした日米共同軍事演習」「軍事費の増大」が取り上げられている。
 次号では「ジブチ南スーダンでの自衛隊の活動」「IS問題での海外派兵の危険性」について論じる予定とのこと。

参考
赤旗
陸自 米で「敵基地征圧訓練」 米機から降下 海外で初、戦争法案を先取り
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-09-06/2015090601_02_1.html
■変ぼう自衛隊 沖縄に見る、米軍との法案先取り訓練日常化、特殊作戦ヘリ墜落があぶり出す
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-09-08/2015090815_01_1.html
■主張「南スーダンPKO、任務拡大で初の戦死者出すな」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-10/2015101001_05_1.html
■戦争法成立2カ月 進む具体化、危険な動き、南シナ海問題に軍事的関与も
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-11-19/2015111902_01_1.html
■日米共同訓練が最多 のべ1265日、14年度 軍事一体化へ3年連続増
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-28/2015122801_01_1.html
ジブチ基地 米軍支援の一大拠点に、笠井議員 戦争法廃止迫る 衆院予算委
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-13/2016011301_01_1.html
■論戦ハイライト、地球の裏側まで軍事支援 ジブチ自衛隊基地強化の実態、衆院予算委 笠井議員が追及
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-13/2016011303_01_1.html
■シリーズ 待ったなし!戦争法廃止、南シナ海で米軍の「副官」に、集団的自衛権行使につながる米艦防護
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-26/2016012601_02_1.html
南スーダンPKO対IS軍事作戦 戦争法 一刻も放置できない、衆院予算委 志位委員長が追及
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-05/2016020501_01_1.html
南スーダンPKO任務拡大、「殺し、殺される」危険 現実に、衆院予算委 志位委員長の質問
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-05/2016020503_01_0.html
朝日新聞
■駆けつけ警護、来春にも 南スーダンPKOに安保法適用
http://www.asahi.com/articles/ASH9R4CM7H9RUTFK002.html
東京新聞
ジブチ自衛隊拠点 首相「PKOに活用」 活動拡大を念頭
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201601/CK2016011302000118.html


■「自民党と深く結びつく、日本会議、保守右派勢力の動き」(山口智*2
(内容紹介)
 内容が多岐に亘っておりまとめづらいので、内容紹介に変えて以下の記事を紹介しておく。なお、山口氏が「東大名誉教授・上野某」などとは違って「朴裕河」を批判してること、そしてその山口氏の「朴擁護派批判」が「我らが前衛」に掲載されたことは実に喜ばしい。「朴批判をしない*3上野某のような人間がフェミニストとしてまかり通ってきたこと」が「慰安婦問題の解決を困難にしている」という山口氏の主張にはガッテンガッテンである。安倍がろくでもないことはきちんと踏まえた上で「朝日や河野洋平*4などリベラル扱いされてきたはずの面子が何故か朴本をろくに批判しない」という点はしっかり批判しておくべきだろう。ある意味「朝日や河野洋平氏、上野某*5」も「安倍の共犯」なのである。
 ちなみに山口氏は例の合意について「日本ウヨの最大の政治テーマは改憲(特に九条*6)」であり、また彼らウヨは異常なまでに安倍に甘いので「安倍本人が合意を破壊するような暴挙を実行しない限り」合意を黙認するのではないかと見ている。

【山口氏の主張について】
シノドス猪口邦子議員からいきなり本が送られてきた:「歴史戦」と自民党の「対外発信」』(山口智美)
http://synodos.jp/politics/15387
■人民日報『日本人専門家、南京大虐殺を否定する右翼系メディアを批判』
http://j.people.com.cn/n/2015/0306/c94475-8858821.html
朝鮮日報『日本右翼の慰安婦関連書籍送付、米専門家ら不快感』
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/12/24/2015122401373.html
【安倍と日本会議
赤旗安倍内閣日本会議」が占拠:改憲タカ派議連から15人』 
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-06/2014090601_01_1.html


■「宗教人と日本共産党との懇談会」(鈴木智*7、平沢功*8、杉浦紀明*9、小畑太作*10、田熊昭覚*11、伊賀奎子*12、下藤正弘*13笠井亮
(内容紹介)
 さいたま市(2015年11/16:鈴木氏、平沢氏、杉浦氏)、山口市(12/2:小畑氏、田熊氏、伊賀氏、下藤氏)に行われた共産党と宗教者の懇談会の紙上報告。こうした懇談会はいいことだと思いますが未だに「共産党無神論という認識を何とかしたい」というのは「日本って遅れてるんだな」と本当にがっくりきます。つうか今時、宗教否定の共産党なんかどこにもないでしょうよ。中国のチベット仏教イスラムに対する態度にしたって仮に問題があるとしても中国は少なくとも建前では「宗教否定」なんかしてないわけです。


■「議員定数削減に根拠なし、いまこそ国民の民意を正確に反映する選挙制度へ:州銀選挙制度調査会の答申を受けて」(山本陽子
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
赤旗
衆院選挙制度「第三者機関」、座長に小選挙区制推進人物*14、「改革」の名で民意削る定数削減
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-28/2014072802_01_1.html
衆院選挙制度「第三者機関」、小選挙区制旗振り役起用、穀田氏が批判 「国会と政党の責任放棄」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-30/2014073001_01_1.html
■“定数削減根拠なしは調査会の大方の意見”、選挙制度 報告会受け穀田氏
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-20/2016012002_04_1.html
■民意反映する選挙制度を、穀田氏が主張、BSフジ番組
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-20/2016012004_01_1.html


■「福島の復興と再生のために何が必要か:農と食をとり戻すとりくみを中心に」(小山良太*15
(内容紹介)
 箇条書きで小山氏の指摘を列挙してみる。
・復興庁が「復興のコントロールタワー」という建前だが、実際には「廃炉経産省」「除染は環境省」「農業問題は農水省」などといった縦割りの面が強いように思う。
・政府は避難解除して福島に戻れると言うが、長期の避難で、福島の生活基盤は崩壊している。戻れと言っても政府の支援なしではとても戻れない。
原子力災害対策特別措置法しか未だにないのはいかがなものなのか。「特別措置」のとれた「原子力災害対策法」をつくるべきではないのか。


■「原発事故五年:子どもたちと学校に何をもたらしたか」(境野健兒*16
(内容紹介)
 小山氏の指摘が「大人を対象にしてる」のに対し境野氏の指摘は「避難した子ども」を対象にしている。内容は小山氏とかぶるところも多い。
 たとえば
・政府は避難解除して福島に戻れると言うが、長期の避難で、福島の生活基盤は崩壊している。戻れと言っても政府の支援なしではとても戻れない。
というのは当然ながら子どもにも該当する話である。


■リポート「原発再稼働ストップ、廃炉求めて」
【鹿児島:問題だらけの再稼働強行 全国と連帯した連続的なたたかい】(井上勝博*17
(内容紹介)
 強行された川内原発再稼働への批判。

参考
赤旗
■主張『川内原発始動強行、世論無視、安倍政権の責任重大』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-11/2015081101_05_1.html
川内原発2号機 再稼働、抗議 鹿児島で全国で
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-16/2015101601_03_1.html
■主張『川内原発2号機、無用な再稼働ドミノをやめよ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-17/2015101701_05_1.html
■川内再稼働1カ月 やっと説明会、原発マネーを受領 県が招いた教授、安全を講釈? 住民が疑問
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-11-29/2015112901_04_1.html
川内原発の免震重要棟撤回、規制委 九電に慎重な検討要求
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-05/2016020514_01_1.html


【福井:県民に原発政策を語らず、政府、関電、県政が一体で原発推進】(佐藤正雄
(内容紹介)
 大飯原発、高浜原発の再稼働計画への批判。なお、先代、高浜の再稼働を強行したのは安倍政権だが、大飯再稼働の強行は民主党・野田内閣である。
 しかも当時の「再稼働決定の中心人物」野田*18首相、岡田*19副総理・行政刷新担当相、枝野*20経産相原子力損害賠償支援機構担当相兼務)、細野*21環境相原子力防災担当相兼務)は今も「野田民主党最高顧問」「岡田民主党代表」「枝野幹事長」「細野政調会長」と民主党幹部連である。民主党脱原発を期待できるかどうかははなはだ疑問である。

参考
赤旗
■主張『野田首相会見、再稼働強行へなりふり構わず』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-09/2012060902_01_1.html
■主張『高浜原発3、4号機、道理ない再稼働強行許されぬ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-28/2016012801_05_1.html
■高浜3号機 再稼働強行、住民の安全と不安置き去り 地元・各地で抗議
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-30/2016013001_01_1.html
■高浜再稼働に怒り、反原連の官邸前行動
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-30/2016013015_01_1.html


■「グローバル資本主義とはなにか:巨額のもうけを生み出す仕組み」(大槻久志*22
(内容紹介)
 小生の理解では「グローバル資本主義」とは必ずしもいわゆる「新自由主義」を意味しないが、筆者は「理念的な問題はともかく実際のグローバル資本主義新自由主義的なものである」としいわゆる新自由主義の「環境問題や労働問題(過労死など)への無関心さや敵対」を批判している。


■「年金格差はどのようにひろがったか:給付削減の欺瞞をあばく」(河村健吉*23
(内容紹介)
 マクロ経済スライドによる年金給付削減など、政府の年金給付削減策への批判。筆者は「年金財政が足りないから給付を削減するというのは話が逆。あるべき年金給付額は最低でもいくらなのかを算出した上でその予算を確保するというのが本道だ」としている。その場合「所得再分配の観点から」費用負担は応能負担(大企業や高額所得者に重い負担*24を求める)を原則とすべしとしている。

参考
赤旗
■年金削減 今月から、基礎年金で年間約2万円
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-10-01/2013100101_03_1.html
■「年金減額は違憲」、年金者組合 全国いっせい提訴
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-05-30/2015053001_03_1.html
厚労省 マクロ経済スライドを改悪、年金 未実施分まとめて削減
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-10/2015121002_02_1.html
■年金改悪案 消費税増税の物価上昇でも上げず、まるで「物価スライド停止法案」、政府説明を小池氏批判
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-23/2016012302_02_1.html
■年金を実質削減、「マクロ経済スライド」初発動
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-01-31/2015013101_02_1.html


■「共同体発足後のASEAN:地域平和の中心としての課題と展望」(井上歩)
(内容紹介)
 経済3月号(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20160215/5421309876)の■「AEC(アセアン経済共同体)の発足」(西口清勝*25)と一部内容は重複する。ただし西口論文がもっぱら経済的課題に触れて政治的課題に触れないのに対し、井上論文はかなりのページを南シナ海での領土紛争に割いている。

参考
赤旗
■『ASEAN首脳会議、共同体設立 役割、課題は』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-11-24/2015112407_01_1.html


日本共産党国会議員団TPP全国調査リポート
【愛媛:過去の牛肉・オレンジ自由化での大打撃、TPPでさらに危機感が】(園山あゆみ、島沢ゆう子)
【和歌山:みかん生産の荒廃に追い打ちをかけるTPP】(島沢ゆう子)
(内容紹介)
赤旗などの記事紹介で代替。

参考
赤旗
【愛媛】
■ミカンの産地を守れ、TPP調査で農家・JAと懇談、愛媛で畜産も
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-18/2015121814_02_1.html
春名なおあき*26サイト
■『紙、畠山、斎藤議員in愛媛〜党農水部会TPP調査』
http://haruna.jcpweb.jp/archives/1342
【和歌山】
赤旗
■TPP“かなりの影響”、和歌山ミカン産地 党国会議員団調査
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-22/2015122204_01_1.html
■「ミカンもっと落ち込む」、党国会議員団・県議団 農家・JA役員と懇談、和歌山 TPP影響調査2日目
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-23/2015122304_02_1.html


■シリーズ・いま「大学改革」を考える(13)「学費値上げ、「文系つぶし」の安倍政権の暴走を許すな:国公私立大学を超えた共同を」(土井誠)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■主張「「国立大学改革」、文系などの切り捨てを許すな」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-06-26/2015062601_05_1.html
■「文系廃止」通知 破綻に直面、問われる大学の「類型化」路線、産業界の要求“丸のみ”
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-12/2015101202_02_1.html
■国立大学文系の再編・縮小 安倍政権の不当な介入(上):「ミッション再定義」で押し付け
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-25/2015102502_05_0.html
■国立大学文系の再編・縮小 安倍政権の不当な介入(下):交付金テコに組織再編競争
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-26/2015102602_03_0.html
■安倍政権による学費の連続値上げは許さない:大学予算削減を学費値上げでまかなう方針を撤回させるために、力をあわせよう(2015年11月20日、日本共産党
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-11-21/2015112105_01_0.html
■国立大授業料40万円値上げに、文科省認める 畑野氏「撤回を」、衆院閉会中審査
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-02/2015120201_03_1.html
■国立大学費値上げ問題、経過と焦点 畑野衆院議員に聞く
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-04/2016020402_05_1.html


■「人としての尊厳を胸に、ロックアウト解雇に立ち向かう日本IBM労働者(1):賃金減額裁判全面勝利、判決を恐れ、逃げた会社」(田島一)
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。
赤旗
■2015 職場のたたかい、本紙報道で振り返るこの1年
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-31/2015123105_01_0.html
■2015年 職場のたたかい、雇い止め・退職強要 是正
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-31/2015123101_01_1.html


■論点
【海自大型輸送艦おおすみ」不起訴で問われる司法】(山本眞直)
(内容紹介)
赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■『海自艦長ら不起訴、釣り船衝突 検審申し立てへ、広島地検
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-27/2015122715_01_1.html


■暮らしの焦点
【公共交通を破壊するライドシェア】(菊池和彦)
(内容紹介)
 どう見ても「ライドシェア*27=いわゆる白タク行為の合法化」にしか見えないのだが。当然ながら批判内容は「白タクの禁止理由」と同じになる。つまり「タクシー事業者のような厳しい規制」なしで「白タク合法化」なんかしたら何が起こるか分からない、大体それじゃ「二種免許*28の意味ないだろ(ライドシェアは一種免許で運転できるので)」という話である。

参考
■産経『タクシー業界への挑戦 米国で「ウーバー論争」 IT活用の業界革新者か それとも労働者搾取の温床か』
http://www.sankei.com/world/news/150727/wor1507270032-n1.html
日経ビジネスオンライン『民泊以上にハードル高いライドシェア』
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/111100103/


■文化の話題
【美術:「戦争画ブーム」と小沢剛の「帰って来たぺインターF」】(武居利史)
(内容紹介)
小沢剛の「帰って来たぺインターF」の紹介。

参考

http://mainichi.jp/articles/20151125/dde/018/040/032000c
毎日新聞小沢剛展「帰ってきたペインターF」:「もしも」に託す希望」(評・永田晶子)
 日仏で活躍した画家の藤田嗣治(1886〜1968年)を見つめ直す展覧会*29や映画*30、本の出版が相次ぐ。彼をスターダムに押し上げた乳白色の肌の裸婦像や戦時中に日本軍に協力し描いた戦争画など画業のみならず、時代に翻弄された生涯が注目されている。
 本展の“主人公”も藤田がモデル。ただし、ひねりとユーモアがきいている。作家の小沢剛(1965年生まれ)は身近な素材を使い、歴史や社会問題に切り込む作品を発表してきた現代美術家。ここでは他人の意見を制作に取り込む独自手法を用い、架空の画家Fの人生を物語に仕立てた。
 連作油彩画8点と映像で構成する。冒頭の絵画4点は過去の出来事と暗示するセピア調。華麗なパリ画壇や戦争画制作など、藤田をほうふつとさせる場面が続く。後半は一転、「もしも」と仮定した空想の世界に。史実のパリならぬインドネシア・バリに渡った後半生をカラフルに描き、ラストは謎めく。
 物語自体が示唆に富むが作品の成立過程を知ると、感興は一層深まる。会場の掲示文によると、作家は日本に占領された歴史を持つインドネシアに赴き、現地の美術史家やアーティストと協働して作品をつくりあげた。荒唐無稽に思える展開は、彼らの意見や希望が反映されているわけだ。
 「戦争は支配、被支配の両面がある。戦争画に向き合うなら相手国の視点があるべきだ」と作家。複雑なテーマを想像力によって軟着陸させ、見る者を思索に誘う。作家の問題意識が光る好企画だ。


【写真:「日本の海岸線をゆく:日本人と海の文化」】(関次男*31
(内容紹介)
日本写真家協会創立65周年記念写真展『日本の海岸線をゆく−日本人と海の文化』の紹介。

参考
日本写真家協会サイト
http://www.jps.gr.jp/jps65_site/


【映画:「ふたりの死刑囚」が伝えるもの】(伴毅)
(内容要約)
 名張毒ぶどう酒事件袴田事件を取り上げたドキュメンタリー映画「ふたりの死刑囚」の紹介。

参考
■「ふたりの死刑囚」公式サイト
http://www.futarinoshikeisyu.jp/


■メディア時評
【テレビ:沖縄の基地問題を引き受ける】(沢木啓三)
(内容紹介)
 沖縄基地問題に冷淡な本土メディアへの批判。赤旗記事の紹介で代替。

http://www.jcp.or.jp/akahata/web_daily/cat211/#okinawa
■シンポジウム「沖縄と戦後70年」/沖縄の将来考える番組を/ジャーナリスト・弁護士ら発言
 沖縄県名護市・辺野古に米軍新基地建設をごり押しする安倍政権に対し、多くの県民と翁長雄志知事が建設反対を訴えて立ち向かっています。その姿をメディアはどう伝えているのか。このほど都内で開かれたシンポジウム「沖縄と戦後70年」で、「沖縄を伝える」というテーマでジャーナリストや弁護士が話し合いました。主催は立教大学・砂川ゼミとメディア総合研究所。
 放送の分野からは、琉球朝日放送の島袋夏子さんが発言しました。島袋さんは地元沖縄で沖縄戦基地問題を追い続けてきました。基地建設を進める政府によって、沖縄の人々同士までが対立させられている現実を報じた「裂かれる海〜辺野古 動き出した基地建設」(14年12月)では、ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞しました。
 「裁判で国が勝ったら、やっぱり国が正しかったと、考えを修正する人たちがでてきてしまうかもしれません。勝った負けたではなく、どうしたほうが沖縄の将来にいいのかということをみんなで考えられるような番組にしたいです」
 1974年に嘉手納基地のそばで生まれた島袋さん。90歳になる父親の戦争体験を戦後70年に初めて取材し、放送しました。「父は17歳の時、南部戦線を逃げ惑う少年兵でした。大けがをして捕虜になろうと懇願した友人に、父は手榴弾を渡して自決を促しました。それがずっと心の傷になっています」
 米軍基地とどう向きあうのかを考える中で、「事実を単に伝えることと、ジャーナリストとして本質を伝えることは違う」と気づき、「基地反対を口にできず苦しむ人たちに、私たちはどんなメッセージを発信できるのか」と自問します。
 「今、ベトナム戦争の枯れ葉剤被害を取材していますが、まだ戦争は終わっていないと実感します。何も解決されていないうちに、新しい戦争に向かうようなことを私たちが選択するべきではない。戦後71年目から、声高に訴えていきたい」
 弁護士の猿田佐世*32さんは、翁長知事が2015年5月末に訪米した際に、議員や経済人、市民団体の代表者らによる沖縄訪米団を企画・同行しました。
 「翁長*33知事は上下院議員らに辺野古新基地ノーが沖縄県民の強い意志だと伝えました。ところが、日本の本土メディアは『知事は冷遇された』『失敗した』などと報道した」と指摘。
 「その後アメリカの国防権限法から『辺野古が唯一の策』という記述を削除させることができましたが、知事の訪米の成果はほとんど報じられませんでした」。
 琉球新報の松元剛*34さん(編集局次長兼報道本部長)は、「安倍政権は新基地ノーという沖縄の声を一顧だにせず、裁判を起こして知事の権限まで奪っています。そのことに全国の報道機関が危機感を持たないといけない。憲法で定めた地方自治を土足で踏みにじる政権のモラルハザードを、現場の記者たちが足で稼いで取材して浮き彫りにすることがメディアに求められています」と語りました。
 「沖縄 うりずんの雨」などを制作したドキュメンタリー映画監督のジャン・ユンカーマンさんは、ニューヨーク・タイムズ紙が辺野古の問題を解決するよう求めた社説を掲載したり、『フォーブス』誌が「翁長知事が日本の中で一番勇気のある男だ」と書いたことなどを紹介。「少しずつではありますがアメリカの中で沖縄の問題、辺野古の問題に注目が集まってきています。粘り強く反対運動が続けば、メディアが追いかけて報道することにつながるのではないか」と述べました。

*1:著書『イラク戦争の出撃拠点:在日米軍と「思いやり予算」の検証』(共著、2003年、新日本出版社

*2:著書『社会運動の戸惑い:フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』(共著、2012年、勁草書房

*3:朴批判をしない人間には「著作を美化する者(おそらく朴を擁護する多くの日本人が残念ながらこちら)」と「著作について自分の意見を述べない者」がいるが後者にしても「前者を批判しない以上」客観的に果たしてる役割は前者と変わらないであろう。

*4:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長を歴任

*5:著書『ドイツの見えない壁:女が問い直す統一』(1993年、岩波新書)、『サヨナラ、学校化社会』(2008年、ちくま文庫)、『老いる準備:介護することされること』(2008年、朝日文庫)、『家父長制と資本制:マルクス主義フェミニズムの地平』(2009年、岩波現代文庫)、『セクシィ・ギャルの大研究:女の読み方・読まれ方・読ませ方』(2009年、岩波現代文庫)、『不惑フェミニズム』(2011年、岩波現代文庫)、『おひとりさまの老後』(2011年、文春文庫)、『男おひとりさま道』(2012年、文春文庫)、『女たちのサバイバル作戦』(2013年、文春新書)など

*6:まあ緊急事態条項とか政教分離緩和とか天皇元首化とか他にもありますが。山口氏も「最初に安倍が仕掛けてくるのは東日本大震災などを口実にした緊急事態条項じゃないか」と見ているようです。

*7:高野山系の住職

*8:日本キリスト教団の牧師

*9:日本ホーリネス教団(キリスト教系)の牧師

*10:日本キリスト教団の牧師

*11:浄土真宗本願寺派の僧侶

*12:臨済宗建仁寺派。著書『山寺の妻の記』(2003年、文芸社)、『あんたはあんたのままでいい:寺庭奮闘記』(2007年、禅文化研究所)

*13:天理教

*14:佐々木毅のこと

*15:著書『東日本大震災・復興に果たすJAの役割』(共著、2012年、家の光協会)、『放射能汚染から食と農の再生を』(編著、2012年、家の光協会)、『農の再生と食の安全:原発事故と福島の2年』(編著、2013年、新日本出版社

*16:著書『小さな自治体の大きな挑戦:飯舘村における地域づくり』(共著、2011年、八朔社)

*17:共産党薩摩川内市

*18:鳩山内閣財務副大臣菅内閣財務相を経て首相

*19:民主党幹事長(鳩山代表時代)、鳩山、菅内閣外相、野田内閣副総理・行政刷新担当相、民主党代表代行(海江田代表時代)などを経て民主党代表

*20:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相を経て民主党幹事長

*21:野田内閣環境相民主党幹事長(海江田代表時代)を経て民主党政調会長

*22:著書『「金融恐慌」とビッグバン』(1998年、新日本出版社)、『やさしい日本経済の話』(2003年、新日本出版社)、『金融化の災い』(2008年、新日本出版社

*23:著書『企業年金危機:信頼回復と再生に向けて』(1999年、中公新書)、『娘に語る年金の話』(2001年、中公新書)、『企業年金の教室・実践編』(2003年、中央公論新社)、『年金格差とアベノミクスマクロ経済スライドの問題と対策』(2015年、かもがわ出版)など

*24:筆者は現在の大企業や高額所得者の負担は、低額所得者や中小企業に比べて不当に軽いと評価している。

*25:著書『東アジア共同体の構築』(編著、2006年、ミネルヴァ書房)、『メコン地域開発とASEAN共同体:域内格差の是正を目指して』(2014年、晃洋書房)など

*26:衆院議員、2016年参院選候補者

*27:米国のライドシェア大手・ウーバー社がライドシェア実施を日本政府に働きかけており実施される可能性は否定できない。

*28:二種免許を廃止する気かもしれないが

*29:例えば、東京国立近代美術館藤田嗣治、全所蔵作品展示』(http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20150919/

*30:FOUJITA(フジタ)」http://foujita.info/のこと

*31:著書『夕張・写真報告:1982〜1992』(1992年、ジャパンプレスフォト)

*32:著書『虚像の抑止力:沖縄・東京・ワシントン発、安全保障政策の新機軸』(共著、2014年、旬報社

*33:那覇市議、沖縄県議、那覇市長を経て現在、沖縄県知事

*34:著書『ルポ軍事基地と闘う住民たち』(共著、2003年、NHK出版)、『観光コースでない沖縄:戦跡・基地・産業・自然・先島(第四版)』(共著、2008年、高文研)