保守政治家と女性問題

 五十嵐仁「戦後政治の実像」(小学館)からの紹介。
 笑ったら、フェミニストに怒られそうだが、余りにもバカバカしいので笑わざるをえない。昔の保守政治家(というより自民党?)は本当にひどいな。

p74
 昔の有力政治家にとって、女性を囲って面倒を見ることは「男の甲斐性」であって、悪いことだという意識はほとんどなかった。(中略)
 自民党結成の立て役者で四人の代表委員*1の一人になる三木武吉は、戦後第一回の選挙で香川一区から立候補した。このとき、「妾を囲っている」と攻撃された三木は、こう切り返したという。


「ただいまの○○候補の言葉の中には、重大な誤りがありますから、私の口から訂正しておきます。○○候補は、私が妾を四人持っていると言われましたが、これは正確ではない。正確な数は五人であります。かかる重大な問題について、あやふやな知識にもとづいて非難や中傷をされては、本人おおいに迷惑であります。(中略)この女たちはいずれも、身寄りのないものであります。私がこれを捨てれば、彼女等は路頭に迷うだけでしょう。用がなくなったからといって、これを捨て去るような不人情なことは、私にはできません」(杉森久英「小説三木武吉」124〜125頁)

p75
 三木と共に自民党結成の立て役者の一人であった大野伴睦にも、似たような話がある。このエピソードを語るのは、大野番の読売新聞記者で大野と深いつきあいのあった渡辺恒雄である。


渡辺:
 大野伴睦が岐阜の選挙区に戻って、県内でもっとも大きな旅館で芸者をあげて飲んでいたとき、韓国人の暴漢が「大野、殺してやる」とピストルを持って飛び込んでくるという事件が起こるんだ。幸い、若い芸者が立ちふさがって、「大野先生を殺すなら私を撃ってからにして」と言って、殴られるだけですんだんだけど。しかし、前歯二本折られたりして、相当やられる。
 ちなみに大野伴睦を守ったこの若い芸者が後に彼の二号さんになる。それで晩年、大野伴睦が「俺は終生一人の女を守ってきた」と言うから、「あんた二号さんがいるじゃないですか」と言ったら、「いや、だからたった一人。二号はたった一人守ってきた」と言う。
 あの世界は本妻は別なんですよ。「だって河野(一郎)君や三木(武吉)君は八人も二〇人もいるじゃないか。それがおれはたった一人だ」と言うんだから。とにかくこのときにほだされて二号にしたんですよ。これは実話です。(笑)(伊藤隆御厨貴飯尾潤渡辺恒雄回顧録」198頁)

*1:他の三人は鳩山一郎緒方竹虎大野伴睦