今日の産経ニュース(2019年6月28日分)

「適正な競争を実現する社会に」 小林喜光氏が講演 千葉「正論」懇話会 - 産経ニュース

 三菱ケミカルホールディングス会長で経済同友会前代表幹事の小林喜光氏

 そんな大物財界人がウヨの産経と付き合ってるのかと思うと本当にげんなりします。もちろん一方で「全国革新懇代表世話人」を務めた品川正治*1(故人)のような財界人もいますが。


【沖縄取材の現場から】玉城デニー沖縄知事の無邪気な中国認識(1/4ページ) - 産経ニュース那覇支局長 杉本康士)
 「中国と敵対することは経済的利益にならない」「むしろ観光客などの形で中国から利益を得るべき」「少なくとも中国による日本侵略、沖縄侵略があるかという意味でならば、中国は脅威ではない(そして南シナ海のフィリピン、ベトナムと中国の領土紛争は直接には日本や沖縄には関係しない)」「沖縄の米軍基地は中国の脅威への対抗など目的としていない。そもそも中国が今のような軍事大国となる前から、沖縄には米軍があったではないか」などの玉木氏及び「玉木支持者の認識」は脳天気どころか正論です。
 小生の別記事今日の中国&朝鮮・韓国ニュース(2019年6月27日分) - bogus-simotukareのブログで「秋田市宮城県仙台市茨城県日立市兵庫県神戸市」で「パンダ誘致合戦が起こってる」という話を紹介しましたがパンダ誘致には当然「日中友好が前提」です。そしてこれらの誘致に関わってる首長には「自民党系首長」がいます。また「郡仙台市長(元民主党代議士、野田内閣で復興大臣政務官)」のように「首長が野党系」の場合も「議会の自民党系議員」はこうした誘致に反対などせずむしろ支持しています。
 自民党政治家ですら中国との敵対なんぞ多くは望んでいないわけです。

 玉城氏はこれまで、日中関係が改善基調にあることを繰り返し強調してきた。
 4月26日の記者会見では「中国と日本の関係は非常に好調な関係になっている」と述べている。昨年12月の県議会でも、安倍晋三首相が習近平国家主席と短期間に3回の首脳会談を行っていることに言及した上で「両国の平和的な外交により、地域の緊張緩和に向けた動きが加速されることを期待している」と答弁した。

 「玉木氏が強調」も何も安倍政権自体が「日中関係は改善している、大変いいことだ」と表明しているのですが。基地問題はともかく日中関係については少なくとも「建前」においては玉木氏と安倍政権には違いはありません。

 6月25日の県議会では、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に沖縄県を組み込むことに改めて意欲を表明した。玉城氏は4月に訪中した際にも、胡春華*2副首相との会談で「一帯一路に関する日本の出入り口としての沖縄の活用」を提案している。

 別の拙記事で紹介しましたが、以前、二階*3幹事長が訪中した際には、(二階氏と親しい?)山梨県知事、滋賀県知事、高知県知事が同行し、彼らは「わが県も一帯一路に協力して中国と共存共栄したい」「是非わが県産品(山梨のワインなど)を中国の方に購入してほしい」「中国人観光客ウエルカム」とアピールしていました。
 産経的には彼らはどう理解されるのか。玉木氏同様に「中国認識が甘い、脳天気」なのか。なおこれらの知事のウチ、「元民主党代議士(鳩山内閣国交大臣政務官菅内閣国交副大臣)の岐阜県知事」はともかく他の二知事は自民党系です(山梨県知事は元代議士(二階派)、高知県知事は安倍政権の審議会『教育再生実行会議』メンバーです)。

 スリランカは港湾整備の資金を中国に返済できず、「借金のカタ」として運営権を握られた*4

 スリランカと沖縄は単純比較できませんし、そもそもスリランカは「それでも一帯一路に参加した」訳で産経が言うほど不利益ばかりでもないでしょう。

4月の記者会見では、地元紙・琉球新報の記者も「一帯一路は巨額の融資で債務漬けにされるリスクも指摘されている」と懸念を示している。

 琉球新報のような基地反対派を軒並み「親中国」呼ばわりしてきた産経のデマが皮肉にも明らかになる一文です。


【主張】トランプ氏発言 日米安保再確認の契機に - 産経ニュース
 産経が日米安保支持(それもほぼ現状容認)の立場であることは知っていますが、「再確認」ではなくせめて「議論」「検討」などと書いたらどうなんですかね。

 この発言をもって、米国が安保条約を破棄する兆しと焦る必要はない。

 小生のような「安保廃止を支持する立場」なら焦るどころか「喜び」ですが、まあ、小生に限らず「トランプが廃止するのでは」という意味で喜んでる「安保廃止派」もほとんどいないでしょう(これを機会に安保条約の現状について議論が起こればいいという喜び方ならともかく)。公式発言ではなく「放言の可能性が強い」からです。

 今後、防衛費の増額や中東でのタンカー護衛への協力などの要請があるかもしれない。日本は応分の責任を果たすべきだ。

 産経のいう「応分の負担」とは何なのか。日本はいわゆる思いやり予算(是非はひとまずおきます)を支払っていますし、何も負担してないわけでは全くありません。

 日米同盟がなければ、米国は中国との「新冷戦」を有利に進めることもできない。中国の覇権を阻めなくなるだろう。

 ここで「反中国の右翼」産経は日米同盟が「日本防衛を目的としていないこと」を平然と認めています。産経読者にとっては「日米同盟による中国封じ込めは当然の正義」だからでしょうが、産経愛読者以外にとってはそれは「日本防衛」と違い「当然の正義」ではありません。
 ただお断りしておけば、米国も産経が言うような「中国との新冷戦」など考えてないでしょうし、米国が日本に求める軍事支援もおそらくは「もっぱら中東」でしょう。


【主張】芸人処分 反社会的勢力と断絶せよ - 産経ニュース

 吉本興業では平成23年、島田紳助氏が暴力団関係者との交際を認め、芸能界を引退した。これを機に反社との断絶に乗り出したはずだが、取り組みは甘かったと断ぜざるをえない。

 客観的にはそういうことになるんでしょうね。ただ「現首相・安倍」に「工藤会という暴力団(福岡県が本拠地)、反社会的勢力(以下、反社)に汚れ仕事を頼んでいた疑惑」があることを知ってると「安倍の暴力団疑惑は黙認するくせに産経も良く言うわ」ですが。
 あるいは産経は過去において反共を理由に「霊感商法統一教会」という反社と公然と付き合っていたわけでよくもこんな社説が書けたもんです。
 あるいは産経的に「自民党や日本の大企業が過去に児玉誉士夫という反社とつきあっていたこと(ロッキード事件により児玉の大物フィクサーぶりの一部が露呈)」「いわゆる日本皇民党事件(竹下登*5金丸信*6らが、東京佐川急便社長を通じて暴力団・稲川会に汚れ仕事を依頼)」「原辰徳が反社に金を払ったのに何の処分も受けず未だに巨人軍監督」などはどう理解されるのか。何もこうした問題は吉本だけではありません。
 「安倍の工藤会疑惑」については「安倍、工藤会」「下関市長選、工藤会」「安倍、火焔瓶」などでググるといろいろ記事がヒットするのでここでは紹介しません。しかし「ヤクザに汚れ仕事を頼んだことがばれても首相になれる」とは日本もろくでもない国に落ちぶれたもんです。

参考

児玉誉士夫(1911~1984年、ウィキペディア参照)
・児玉は児玉機関が管理してきた旧海軍の在留資産をもって上海から引き上げていた。児玉は、大物右翼・辻嘉六に勧められて、1946年初頭、GHQに戦犯容疑で逮捕される直前に、この「資金の一部」を自民党の前身にあたる日本民主党鳩山一郎が総裁)の「結党資金の一部」として提供した。1954年には、鳩山一郎*7を総理大臣にするために「鳩山の側近」三木武吉の画策に力を貸した。その後も自民党と緊密な関係を保ち、フィクサー(黒幕)として君臨した。
・岸*8首相の第1次FX問題をめぐる汚職社会党の今澄勇(後に民社党に参加)が追及していた時には等々力の児玉の私邸へ二度も呼び、児玉は追及をやめるように説得した。しかし、今澄が聞き入れないため、身上調書を渡した。それには今澄の政治資金の出所、その額、使っている料理屋、付き合っている女が全て書かれていた。児玉は東京スポーツ新聞を所有する他に、腹心をいくつもの雑誌社の役員に送り込んでいた。それらに書き立てられることは脅威となった。
 日米安保条約改定のため党内協力が必要となった岸首相は1959年1月16日、首相の座を党人派の大野伴睦に譲り渡す密約をした。その立会人が「大野に近い」児玉であり、河野一郎佐藤栄作*9も署名した誓約書が残されている(ただし密約は反故にされ後継首相は池田勇人*10となった。退任パーティーで岸は暴漢にナイフで刺され負傷しているが、これは岸の裏切りに対する児玉の報復だと言われている)。
 改定に反対する安保闘争を阻止するため、岸首相は自民党の木村篤太郎*11らにヤクザ・右翼を動員させたが、児玉はその世話役も務めた。
・児玉は1965年の日韓国交回復にも積極的な役割を果たした。国交回復が実現し、5億ドルの対日賠償資金が供与されると、韓国には日本企業が進出し、利権が渦巻いていた。児玉もこの頃からしばしば訪韓して朴政権要人と会い、日本企業やヤクザのフィクサーとして利益を得た。
・日本国内では企業間の紛争にしばしば介入した。1972年河本敏夫*12率いる三光汽船はジャパンライン*13の乗っ取りを計画して同社株の買占めを進めた。困惑したジャパンライン社長の土屋研一は児玉に事件の解決を依頼。しかし、児玉が圧力をかけても、河本はなかなかいうことを聞かなかった。そこで、児玉はそごう会長の水島廣雄に調停を依頼。水島の協力により、河本は買い占めた株の売却に同意する。児玉は水島に謝礼として1億円相当のダイヤモンドを贈った。
・また、1973年には粉飾決算に揺れる殖産住宅相互株式会社の株主総会乗り切りに絡んで、同社社長の東郷民安から児玉に金銭が渡っている。
ロッキード事件
・児玉はすでに1958年(昭和33年)からロッキード社の秘密代理人となり、日本政府に同社のF-104戦闘機を選定させる工作をしていた。児玉が働きかけた政府側の人間は自民党大野伴睦*14河野一郎*15岸信介らであった。
・しかし、児玉と親しい大野(1964年死去)や河野(1965年死去)が死亡すると、児玉は佐藤内閣にはあまり影響力をもっていなかった。そこで児玉は大物政治家「田中角栄*16」と友人である国際興業社主・小佐野賢治に頼るようになった。小佐野は日本航空全日本空輸の大株主でもあった。田中が1972年(昭和47年)に首相になると児玉の工作は功を奏し、その後、全日空ロッキード社から航空機を21機購入し、この結果ロッキード社の日本での売上は拡大した。さらに全日空は、ロッキードからキックバックで得た資金を自社の権益の拡大を図るべく航空族議員や運輸官僚への賄賂として使い、その後このことはロッキード事件に付随する全日空ルートとして追及されることとなった。
 ロッキード社社長のアーチボルド・コーチャンは「児玉の最終的な役割はロッキードのP3C導入を防衛庁に働きかけることだった。児玉は次の大臣に誰がなりそうか教えてくれた。日本では大臣はすぐに代わるから特定の大臣と仲良くなっても無駄である。彼は私の国務省だった。」と言う趣旨を調書で語っている。
 しかし1976年(昭和51年)、アメリカ上院で行われた公聴会で、「ロッキード社が児玉を秘密代理人として雇い、多額の現金を支払っている」事実が明らかにされ、日本は大騒ぎとなった。
・2016年に放送されたNHKスペシャル「未解決事件」のインタビューに応じた堀田力*17元検事は「ロッキード事件の核心はやはりP3C、防衛庁ルートではないか。P3Cで色々あるはずなんだけど。こっちで解明しなきゃいけないけど、そこができていない。それはもう深い闇がまだまだあって、日本の大きな政治経済の背後で動く闇の部分に一本光が入ったことは間違いないんだけど。悔しいというか申し訳ない」と言う趣旨を語っている。

*1:1924~2013年。日本火災海上保険(現・損保ジャパン日本興亜)会長、経済同友会終身幹事を歴任。著書『戦争のほんとうの恐さを知る財界人の直言』、『これからの日本の座標軸』(以上、2006年、新日本出版社)、『9条がつくる脱アメリカ型国家:財界リーダーの提言』(2006年、青灯社)、『戦後歴程:平和憲法を持つ国の経済人として』(2013年、岩波書店)など。

*2:中国共産主義青年団共青団)中央書記処第一書記、内モンゴル自治区党委員会書記、広東省党委員会書記などを経て副首相

*3:小渕、森内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相自民党総務会長(第二次安倍総裁時代)を経て幹事長

*4:租借地などとデタラメを書かない点は産経としてはまともです。

*5:佐藤、田中内閣官房長官、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)などを経て首相

*6:田中内閣建設相、三木内閣国土庁長官福田内閣防衛庁長官自民党国対委員長(大平総裁時代)、総務会長、幹事長(中曽根総裁時代)、副総裁(宮沢総裁時代)を歴任

*7:戦前、田中義一内閣書記官長、犬養、斎藤内閣文相を歴任。戦後、首相、自民党初代総裁を歴任。

*8:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*9:元運輸次官。吉田内閣郵政相、建設相、岸内閣蔵相、池田内閣通産相などを経て首相

*10:元大蔵次官。吉田内閣蔵相、通産相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相などを経て首相

*11:吉田内閣法相、防衛庁長官を歴任

*12:三光汽船社長。衆院議員。佐藤内閣郵政相、三木、福田内閣通産相自民党政調会長(福田、大平総裁時代)、鈴木、中曽根内閣経済企画庁長官など歴任。

*13:1989年に山下新日本汽船に吸収合併されナビックスラインになり、ナビックスラインも1999年には大阪商船三井船舶と合併して商船三井になった(ウィキペディア「ジャパンライン」参照)。

*14:吉田内閣北海道開発庁長官、衆院議長、自民党副総裁(岸、池田総裁時代)など歴任

*15:鳩山内閣農林相、岸内閣経済企画庁長官、自民党総務会長(岸総裁時代)、池田内閣農林相、建設相など歴任

*16:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣通産相などを経て首相

*17:著書『再びの生きがい:特捜検事からボランティアへ』(1995年、講談社文庫)、『壁を破って進め(上)(下):私記ロッキード事件』(2002年、講談社文庫)など