早川タダノリ「神国日本のトンデモ決戦生活」(2010年、合同出版)(後で買う)(追記・訂正あり)

 虚構の皇国blog「『神国日本のトンデモ決戦生活』発売」
http://d.hatena.ne.jp/tadanorih/20100807/1281109523

戦前日本のトンデモぶりがユーモラスに描かれているのだろう。楽しみ、楽しみ。
小見出しもすごく期待できそう。

すごいぞ「君が代聯盟」!

君が代連盟」って、おい。

ナゾの「熱帯進出力」

何でも「力」ってつければいいわけじゃないだろ。

台所を要塞化せよ
決戦型ブラウス
必勝防空寝巻
恐怖の「躍進遊技」
ナゾの「決戦盆踊り」

戦前のネーミングセンスが本当笑えるな。

航空機を家庭で作れ!

手作り航空機ってかっこいいな(棒)

極楽浄土へ行く者は国賊だッ

極楽はキリスト教、浄土は仏教。いずれも外国思想。外国思想は排撃せよ!
わが国は神国だ!。とか言うことなんでしょうか。
それとも日本国民なら「極楽浄土」へ行かず、「七生報国」という意味?

アメリカ兵をぶち殺せ!
「野獣民族アメリカ」

今じゃ「野獣民族アメリカ」なんてどこの右翼も言いませんよ、奥さん。そもそも「アメリカ民族」って何やねん、ですが。

英語は日本語である

「名前=name」「響きが似ている!」「英語の起源は日本語だったんだよ!」みたいなことですか、わかりません。


【追記】
買ってきたので、上で突っ込んだものについてだけ一応の回答をかいておきましょう。

すごいぞ「君が代聯盟」!

 この早川本では「君が代聯盟」会長・青野尊晃のてんぱった天皇礼賛文(「天皇ご一家も日本民族も永遠だ」みたいな文)が紹介されているが期待した「君が代万歳」は紹介されていなかったのが残念。

ナゾの「熱帯進出力」

 中山英司「日本人の熱帯適応性」(昭和18年)に出てくる言葉。わかりやすく言うと日本が支配しようとする東南アジアという熱帯で生活出来る力と言うこと。暑さに強いとかマラリアに強いとかそう言うことだろう。

台所を要塞化せよ

 主婦雑誌不況(←勝手に命名。「主婦と生活」(主婦と生活社)、「婦人倶楽部」(講談社)が既に休刊)で今はない「主婦の友」(主婦の友社)の昭和19年8月号に出てくる言葉。
 空襲で家事にならないよう、ガスの元栓や天ぷら油に注意しましょうという内容らしい。
 アメリカは焼夷弾投下してるんだから関係ねえよ!。

決戦型ブラウス

 「婦人倶楽部」昭和19年6月号の記事「夏の決戦簡単服の作り方」に出てくる言葉。「古い着物をブラウスに仕立て直して、節約する」→「決戦型」と言うことらしい。

必勝防空寝巻

 「婦人倶楽部」昭和20年2月号に出てくる言葉。

恐怖の「躍進遊技」

 朝日新聞昭和18年8月17日に出てくる言葉。要するに「戦争ごっこ」のことである。

ナゾの「決戦盆踊り」

そういう歌謡曲が存在することは分かったがそれ以上は不明とのこと。JASRACに問い合わせたが登録はないとのことだそうだ。

航空機を家庭で作れ!

 「主婦の友」平成19年10月号に出てくる言葉。正確には航空品部品のうち、内職で作れるものは内職で作りましょうと言うことなのだが。

極楽浄土へ行く者は国賊だッ

影山正治(右翼活動家。大東塾塾長)の「忠霊神葬論」(昭和19年)に出てくる言葉。日本は神国だから仏式ではなく、神道式で葬式はやれと言うことらしい。裏返せば、昭和19年段階でも神道式の葬式は少数派と言うことだが。
もちろんネトウヨの皆さんは葬式は神道式ですよね(皮肉)

アメリカ兵をぶち殺せ!

 「主婦の友昭和19年12月号は総ページ52ページの内、21ページに渡って、「噂の真相」の一行情報みたいな形で「アメリカ兵(アメリカ人)をぶち殺せ」「アメリカ兵(アメリカ人)を生かしておくな」というスローガンを掲載したという。もう何というか、最近のネトウヨといい勝負だな。
 ちなみにこの「主婦の友昭和19年12月号の入手は現在では困難。「主婦の友」社がGHQの追及を恐れて、戦後、自主回収し廃棄処分した節があるという。卑怯極まりないな。

「野獣民族アメリカ」

 「主婦の友昭和19年12月号に出てくる言葉。
 「野獣民族アメリカが日本を占領したら、男は東南アジアに奴隷として送られ、女は全員妾にされるだろう」とか無茶苦茶なことが書いてあるらしい。昔も今もウヨの妄想力はすごいぜ!

英語は日本語である

 「学生」(旺文社)昭和18年1月号の佐藤正治「英語学習上の心得」に出てくる言葉。
「日本の領土で使われる言葉は日本語」→「英語が使われているシンガポールやフィリピンは日本の領土」→「したがって英語も日本語の一種。方言みたいなもの」→「英語排撃論者は間違ってる」と言う論理の流れ。
 ガチでそう思ってると言うより、そう言わないと英語排撃論者には勝てないと言う思いがトンデモに走らせたのだろう。
 しかしこの論理だと、中国語、朝鮮語、ロシア語(南樺太絡み)、ドイツ語(パラオ絡み)、オランダ語インドネシア絡み)、フランス語(ベトナムとか絡み)なども日本語になってしまうのではないか?


 せっかくだから前回突っ込まなかった他の面白いのにも突っ込んでみよう。

昭和7年、夏休みの高等小学校(今の中学校に当たる)の「修身」の宿題
「わが国は「万国無比の国体を有す」と言うが如何なる点が万国無比というか」
勅語*1に「皇祖皇宗国を肇ること宏遠に」と宣えるは如何なる義か」
「常時における忠君の道は如何にすれば全うしうるか」

 ぶっちゃけ、わからねえよ。当時の中学生には分かったのかよ。
 ネトウヨの皆さんはもちろん、おわかりになるんでしょうね(皮肉)

野依秀市著「米本土空襲」(昭和18年

 「米本土空襲」なんか、できるわけねえだろ。
 しかし早川本に寄れば、野依はそのために米本土爆撃する飛行機製造のための募金を求めたって言うんだけど、詐欺じゃねえの?

サイパン玉砕「それは愉快なことぢゃ」

 「公論」昭和19年10月号・「頭山満インタビュー」に出てくる頭山(右翼の大物。玄洋社黒龍会幹部)の言葉。
 サイパン玉砕は、日本人の武勇を敵国に見せつけたから愉快って事らしいが頭がいかれてるよ。お前が戦場で死んでこいよ。そうなりゃ愉快なんて言えないから。

戦時下「殺生戒」のゆくえ

 戦時下仏教が戦争を屁理屈で正当化していたという話。取り上げられているのは浄土真宗・佐々木憲徳の論文「仏教と戦争」。
 最近、関西テレビもドキュメンタリーでこの問題を取り上げたようですね。

宮城タマヨ「敵の本土上陸、(中略)我が方は決して不利ではありません」(昭和20年7月号「勝利の特攻生活」)

 アホか、宮城タマヨ。しかも戦後、女性参議院議員に成り上がってるんじゃねえよ。
 早川氏によると戦後、「動物虐待防止法案」づくり(成立はしなかったが)に尽力したそうだが人間虐待した分際でいい加減にしろよ。
 「主婦の友」もトンデモぶりが半端ないな。特攻してる段階で負けてるだろ。

文字の聖戦

 小学校の習字のお手本が超どん引き。
 だって「軍用犬」「少年兵」「米英撃滅」「靖国神社参拝」「皇国の興廃この一戦に在り」(日本海海戦の時の東郷平八郎の名文句)ですよ、奥さん。
 早川氏は以前「美しい国」「構造改革」と言う習字をみてどん引きしたことがあるそうですが。


【2014年2/11追記】
1)本書は2014年に「ちくま文庫」入りしている。よりお安く入手しやすくなった。
2)早川氏はその後、続編として
『「愛国」の技法: 神国日本の愛のかたち』(2014年、青弓社)、『原発ユートピア日本』(2014年、合同出版社)を出版している。いずれ購入したいと思う。

*1:教育勅語のこと