新刊紹介:「前衛」9月号(追記・訂正あり)

 「前衛」9月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.jcp.or.jp/publish/teiki-zassi/zenei/zenei.html
 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは9月号を読んでください)

参議院選挙の結果について
(内容要約)
 議席を減らしたことについてのお詫びの言葉と、今後本格的な総括を内外の意見をもとに行いたいという決意表明。
 現時点では比例得票数で民主に負けた自民も、議席を減らした民主も勝者ではなく、多くの批判票が出たが、それを取り込むことが出来なかった(批判票の多くはみんなの党に流れた)と言う認識のようだ。
 ジェラルド・カーチス教授の「自民やみんなの党が勝者とは思わない」「自民党は勝者と錯覚してはならない」という言葉が紹介されている。

■「二大政党制のゆきづまりと比例定数削減」(小堀眞裕)
(内容要約)
 イギリスでは、第三勢力・自民党議席を伸ばし、保守・自民連立内閣が誕生した。一方、日本でもみんなの党が一定の批判票を集めた。
 明らかに二大政党制システムは行き詰まっている。にもかかわらず比例定数削減を唱える菅とそれを応援するマスコミは許せない。
 比例定数削減は少数意見切り捨てである。また、お金の問題を言うなら、「政党助成金をなくした方が金の節約になる」「なぜ小選挙区は削減対象にならないのか」という問題がある。

■「大企業の産業競争力強化のための民主党政権「成長戦略」」(藤田実)
(内容要約)
 民主党政権「成長戦略」は同一価値同一賃金労働に言及するなど、自公政権との違いも見られるが、基本的には法人税減税など、構造改革路線の方向を踏襲したものであり、批判せざるを得ない。

■「地域経済の自立を基礎とした中小企業の成長戦略」(井内尚樹)
(内容要約)
 「地域経済の自立を基礎とした中小企業の成長戦略」に必要と筆者が考えるものについて言及。

■「民主党政権で拡大する新学習指導要領の矛盾・自前の教育課程づくりをどうすすめるか」(植田健男)
(内容要約)
 民主党がめざす教育がどういうものか、監視が必要。民主党内には、三浦朱門的な、新自由主義的なグループもあれば安倍さん的な国家主義的なグループもある。
 我々の側も現場と連携しながら、あるべき教育の姿を呈示していく必要がある。

■「「政権交代」が教育現場に残したもの・学習評価と教員政策をめぐる「期待外れ」と「矛盾」」(浪伊豆生)
(内容要約)
民主党政権の教育政策への各種コメント。基本的には「やるって言ったことやらないなあ」「結局やらないの?」と言った感じのコメントが多い。
(具体的には「教員免許更新制度の廃止」「教員養成制度の改革」(教員は現在では学部で取れるが院に行かなければ取れないとする。これについては教員志望学生の負担が大きい割に効果が不明という批判がある)など)
 まあ、学力テストの抽出調査化など評価できる点もあるが。

■特集「歴史の事実にどう向き合うのか」
【東アジアの近代と「韓国併合」(原田敬一)】
(内容要約)
韓国併合は不可避ではなく、日本の主体的な選択であるという批判。
・戦後日本は、戦前型軍国主義からはそれなりに脱却できたが、アメリカの軍事路線を支持するという形で、軍事優先主義からは脱却できなかったという批判。

【日中歴史共同研究と侵略の実相(笠原十九司)】
(内容要約)
・今年発表された「日中歴史共同研究報告書」へのコメント。まだ対話は始まったばかりだが、当然のこととは言え、産経的な路線(侵略戦争や戦争加害の全否定)が明確に否定されたことは良かったとしている。
・ちなみにこのプロジェクトの言い出しっぺは皮肉にも安倍晋三首相である(就任直後の訪中時に提案)。あの安倍氏ですら、首相に就任すると公然たる真正保守路線は取れなかったと言うことである。

【草の根右派の最近の動向(俵義文)】
(内容要約)
真正保守のエース安倍さんが「参院選惨敗→居座り→居座りきれずに無様な辞任」したこと、前回衆院選自民党が大敗したこと、今回参院選で、真正保守が期待をしていた保守ミニ政党(たちあがれ日本新党改革日本創新党)が惨敗したことで彼ら真正保守の政治力はダウンしている(どうでもいいけど、産経が「山田宏の敗戦の弁」と言うか言い訳を載せたのには呆れ、かつ大笑いしました。お前は創新党の機関紙かよ。中立性のかけらもないな)。
・しかし彼らを甘く見てはいけない。UIゼンセン(連合内の最大労組)の幹部が公然と右翼の外国人地方参政権付与反対集会に参加したように、民主党支持層にも真正保守系の人間は少なくない。
 なお、この集会には、多分政治力を行使できないたちあがれ日本自民党タカ派(早速、問責決議問題で出す出す言ってたくせに出せないという醜態をさらした)以外にも、亀井静香国民新党代表(再度、民国連立もあり得る)、民主党国会議員(松原仁など)、今回参院選議席をのばしたみんなの党(民・みん連立が危惧される)の渡辺喜美代表ら、今後一定の政治力を行使する恐れのある議員が参加していることに注意。
・田母神の作った「頑張れ日本!全国行動委員会」、桜井の在特会は今のところ、大した政治力を発揮していないが今後も監視が必要。まあ、田母神の組織はともかく、桜井の組織は明らかな犯罪集団なので警察がきちんと取り締まれば左翼の監視など必要ないのだが。

[8/10追記]
「桜井の組織は明らかな犯罪集団なので警察がきちんと取り締まれば左翼の監視など必要ない」と書いたがついに、京都府警が在特会メンバー4名を威力業務妨害で逮捕したと言う。遅すぎると思うが逮捕自体は良いこと。今後も、あの犯罪集団をびしびし取り締まってもらいたい。

■「[奄美からの報告]徳之島は米軍基地も訓練も拒否する」(恵義哉)
(内容要約)
 筆者は共産党奄美地区和内支部支部長。氏の立場から、徳之島の基地移転反対運動が語られる。
 筆者は徳之島と沖縄には共通点があるとし、そうしたことに鳩山政権・菅政権は無関心だったと批判する。
 その共通点とは「奄美(徳之島が入る)も一時、米軍の占領下に置かれ、沖縄並みの独裁的軍政がしかれた」「それに対して住民が祖国復帰運動を起こした」(なお奄美は沖縄より早く1953年に日本に復帰した)と言う事実である。
 なお、反対運動の集会では「祖国復帰運動の父」と呼ばれる泉芳朗氏(奄美大島日本復帰協議会議長、奄美社会民主党委員長、名瀬市*1を歴任。彼の故郷・伊仙町*2には彼の銅像が建てられている)の詩が朗読された。
 ちなみに小笠原諸島も一時米軍占領下だったんですよね。小笠原社会民主党とかあったのかな(苦笑)

【参考】

奄美共産党ウィキペディア
 奄美共産党は、アメリカの施政権下におかれた鹿児島県奄美群島で結成された政党である。設立1947年4月10日。
 琉球列島米国軍政府(後に琉球列島米国民政府)によって非合法とされたが、合法政党としての奄美社会民主党を結成し、奄美における日本復帰運動を事実上主導した。
 奄美地方の日本復帰後、奄美共産党日本共産党奄美地区委員会となる。

 米軍占領下の沖縄人民党日本共産党沖縄県委員会の前身)みたいなもの?

■「世界的経済・金融危機の新局面・投機マネー復活と基軸通貨制度のゆくえ」(今宮謙二)
(内容要約)
 リーマンショックで打撃を受けた投機マネーが現在復活しつつある。何らかの規制が必要である。
 現在、基軸通貨はドルであるが、ドルは危機的状況にある(すぐ崩壊することはないだろうが)。
 ドルに変わる基軸通貨構築の取り組みをする必要がある。(その場合、ユーロ、円、人民元、SDR、全く新しい基軸通貨を作るなど、様々な方策が考えられ難しいのだが)

■「青年と語る、核兵器も戦争もない世界をめざして、時代をどう生きるか」(川田忠明)
(内容要約)
・筆者は党平和・運動局長。
・筆者は現在、核廃絶運動には追い風が吹いていると認識を示している。
 その例として
「パン・ギムン国連事務局長が反核集会で連帯のスピーチをしたこと」
「広島への原爆投下を取り上げた映画「マッシュルーム・クラブ」が2005年のアカデミー短編ドキュメンタリー映画部門にノミネートされたこと」を上げている。
・筆者は核廃絶は現時点ではなしえていないが、核が戦争に使われなかったことは大きな成果だったとしている(朝鮮戦争ベトナム戦争で戦局打開のため核を使用する案があったが反核世論を恐れ使用しなかったことが現在分かっている)。
南アフリカは過去に核を保有していたが、現在では放棄している。核の廃棄は難しいが不可能なことではないと思われる。
・戦争は闘争本能ではなく、政治的理由によって行われる。
 戦争を可能にするために、国家は戦争を可能とするシステムを構築する。
 したがって戦争を許さない社会システム作りが戦争廃絶には必要である。

■論点
【「矢臼別演習場、海兵隊射撃訓練で何が起こったか」(中村忠士)】
(内容要約)
 筆者は党別海町議。
 沖縄の負担軽減論により、北海道矢臼別演習場(別海町厚岸町浜中町にある)に海兵隊訓練が移転された。
 演習場で起こったことは次の通り。
【その1】野火の発生

【その2】残虐兵器である白燐弾を使用
 JSF(←言うまでもなく大嫌い。いやあ、私って正直だな。しかし自称党員のくせに何故、id:gokino2JSF支持するかな?。この件もそうだし、他にも沖縄基地県外移転は不可能とか党の見解とまるで違うじゃん)みたいな軍オタが「残虐兵器じゃないモン」とかうるさいんだろうな。
 私は詳しくないんで、この件では連中の相手は出来ない(詳しくても連中の相手はしたくないが)。
 参考となると思う、以下のエントリを紹介するにとどめる。

誰かの妄想・はてな
白燐弾関連のやりとり・完結編」
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20090910/1252589897

模型とかキャラ弁とか歴史とか
白燐弾はどういう兵器でどのように使われてきたか」
http://d.hatena.ne.jp/D_Amon/20090114/p1
「WHITE PHOSPHORUS(WEAPON)=白燐弾(直訳)=黄燐焼夷弾(意訳)」
http://d.hatena.ne.jp/D_Amon/20100823/p1

モジモジ君の日記。みたいな。
「「白燐弾」に関するメモ」
http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20090115/p1

【その3】沖縄と同レベルの訓練にとどめるという約束を公然と破る
 例えば沖縄では夜間訓練は実施されていなかったのに、矢臼別では公然と夜間訓練が実施されているという。

 以下は本論文からの一部引用。

 鈴木宗男氏が性懲りもなく、「沖縄普天間基地のヘリ部隊訓練を矢臼別に持ってきてもいいのではないか」などと言っています。無責任発言に怒りがわきます。

[8/24追記]
この部分についたid:hatredlef氏のブクマに反論。

hatredlef:id:gokino2に党員の癖にうんちゃらとか言うならあなたも小沢マンセーの弁護をやめたらよろしい。どう考えても自民党以上に代々木は追い込んでたじゃん。さもなきゃ査問されちゃうぞ

私は「小沢マンセー」(id:pompom20氏のことでしょうね)は叩かれすぎじゃね?、他にももっと酷い奴(小沢擁護者とかエセ科学支持者とか)はいるのにといった覚えはありますが、小沢擁護自体は支持していません。
それに党員でない奴(私)を査問できるんですか、へえ?

【「泉南アスベスト被害の早期全面解決を」(村松昭夫)】
(内容要約)
泉南アスベスト訴訟で国が控訴したことは許せない。
(なおこの時、控訴を強く主張したのが当時の仙谷国家戦略担当相(現・官房長官)だったと言う。彼のどこが左翼なのだろうか?)
・当初、長妻厚労相、小沢環境相は控訴断念を主張していたが、仙谷氏に押し切られたという。今からでも遅くないので控訴を取り下げ、原告との話し合いの席に着くべきである。

■暮らしの焦点
【「診療報酬改定はどういう影響を国民にもたらすか」(今田隆一)】
(内容要約)
民主党の医療報酬改定は事実上のゼロ回答であった。これでは医療崩壊は止まらないだろう。

■メディア時評
【新聞:「選挙後も消費税増税推進する全国紙」(金光奎)】
(内容要約)
 参院選で消費税増税を掲げた民主党が敗れたにも変わらず消費税増税を迫る全国紙への批判。そして消費税増税へ批判的な地方紙へのエール。

【テレビ:「大相撲賭博問題とNHK」(沢木啓三)】
(内容要約)
NHK大相撲中継を中止したことを評価。
 しかし、筆者は以下の問題があるとしている。
1)「今回、相撲協会にはいくら契約料を払うのか。不祥事を起こしたのだからペナルティとして減額すべきではないか。しかし、今の所そうしたことについてNHKは語ろうとせず問題である」
2)「過去にも週刊ポスト八百長疑惑報道など相撲界のスキャンダルは指摘されていた。本当にNHKは何も知らなかったのか。うすうす知りながらスルーしていたのではないのか」
「百歩譲って知らないとしても、時津風リンチ事件の時に今回の決断を下すべきではなかったか」
・感想:「正論と思うが、2)の指摘は厳しすぎないか?」「他の同業マスコミだってスルーしてたからなあ」

■文化の話題
【映画:『ミツバチの羽音と地球の回転』(伴毅)】
(内容要約)
「ヒバクシャ」「六ヶ所村ラプソディー」の鎌仲ひとみ監督の『ミツバチの羽音と地球の回転』の紹介。
 山口県の上島原発反対運動、スウェーデンのエコなエネルギー政策が取り上げられている。

(参考)
ミツバチの羽音と地球の回転』オフィシャルサイト
http://888earth.net/index.html

【演劇:三好十郎未発表の「峯の雪」を民芸が初演(関きよし)】
(内容要約)
民芸が初演した三好十郎未発表作品「峯の雪」の紹介。

(参考)
劇団民芸公式サイト
http://www.gekidanmingei.co.jp/2010minenoyuki.html

【美術:池田龍雄にみる戦後日本のアヴァンギャルド(武居利史)】
(内容要約)
 山梨県立美術館で行われた「池田龍雄アヴァンギャルドの軌跡」の紹介。

(参考)
山梨県立美術館
http://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/contents/index.php?option=com_content&task=view&id=449&Itemid=56

 オープニング記念パフォーマンスが前衛舞踏家の田中泯氏。ああ、「たそがれ清兵衛」で清兵衛と死闘を演じる余吾善右衛門やった人ね。今、ググったら「竜馬伝」で吉田東洋ですか。見てないけど。

■スポーツ最前線
【「W杯出場決定、進化する日本女子サッカー」(呉紗穂)】
(内容要約)
 今年5月のアジアカップで3位入賞*3し、来年6月にドイツで行われるW杯出場が決定した日本女子サッカーFIFAランキング5位)の紹介。「なでしこジャパン」って言うんでしたっけ?。

*1:名瀬市奄美大島にある奄美群島最大の都市。現在の奄美市

*2:徳之島にある

*3:優勝・オーストラリア、準優勝・北朝鮮。なお、FIFAランキング北朝鮮7位、オーストラリア14位