新刊紹介:「経済」2月号

「経済」2月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/


■巻頭言「女子ボクシング」
(内容要約)
ロンドン五輪では女子ボクシングが初めて実施されるので日本人女子選手にがんばってほしい。(経済と関係ない)
【追記】
どこまで本気か知らないが紹介しておく。
産経新聞
【ボクシング】1位自覚「もっと厳しく」 しずちゃん、練習で涙も
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/120215/mrt12021518110004-n1.htm


■随想「わかりにくさもスポーツの魅力」(山本教人)
(内容要約)
・取り上げられているのはツール・ド・フランスジロ・デ・イタリアといった自転車ロードレースである。ヨーロッパでは一定の人気があるが、日本ではまだまだだが、もっと人気が出てほしいという話。たしかにルールはわかりにくいかもしれないがそれもまた魅力の一つと考えてはどうかという話。(経済と関係ない)


■世界と日本
【拡大する欧州経済危機(宮前忠夫*1 )】
(内容要約)
欧州経済危機を各国政府は緊縮財政で乗り切ろうとしている。これに対し、労組は弱者切り捨てとして対決姿勢を強めている。


【スペイン総選挙(田中靖宏)】
(内容要約)
 スペイン総選挙では与党・社会労働党が敗北し、最大野党・国民党(保守)が政権を奪回した。しかしスペイン共産党を中核とする統一左翼も議席を伸ばしており、選挙結果を国民党の勝利と見なすことは適切ではない。社会労働党への批判票のうち、保守は国民党へ、左派は統一左翼へ流れたとみるべきである。


【中国が貧困対策を強化(平井潤一)】
(内容要約)
赤旗の紹介で代替する。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-11-18/2011111807_02_1.html
農村貧困人口が減少、中国 10年間で6700万人
 中国政府は16日、「農村貧困対策」白書を発表し、この10年間で農村の貧困人口を約6700万人減らしたことを明らかにしました。
 中国政府は、農村での貧困対策実施の基準となる年収額をこの間徐々に引き上げ、昨年は1人あたり年収1274元(約1万5300円、1日当たり約42円)以下としました。これをもとに算出すると、農村の貧困人口は、2000年末の9422万人から昨年末は2688万人に減少しました。農村人口全体に占める貧困人口の割合は、00年に10・2%だったのが昨年には2・8%に下がりました。
 ただ世界的には、国連では「1日1ドル(約77円)以下」、世界銀行では「1日1・25ドル以下」を算出基準としており、これをあてはめると貧困人口はもっと多くなります。
 白書によると、この10年間で中央と地方各級政府の貧困対策支出は年平均で約12%ずつ伸び、合計で2044億元(約2兆4500億円)になっています。
 白書は今後の課題として「貧困規模が大きく、貧困状態に戻る現象もみられる」ことなどをあげています。


ニカラグア大統領選挙(新藤通弘*2)】
(内容要約)
赤旗の紹介で代替する。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-11-09/2011110907_01_1.html
ニカラグア大統領選、オルテガ氏 大差で再選、国会議席 3分の2へ
 ニカラグアの中央選管は7日、6日投票の大統領選でオルテガ現大統領の当選が確定したと発表しました。
 左派政党・サンディニスタ民族解放戦線党(FSLN)を率いるオルテガ氏は開票率86%の段階で、得票率約63%を獲得し、次点の右派野党・独立自由党(PLI)のガデア候補の約31%に大きな差をつけています。オルテガ氏は第1回投票での勝利に必要な得票率40%を確保し、当選確定となりました。
 同時実施の国会議員選(92議席)でも、与党FSLNは20議席以上増やし、全議席の3分の2を制する勢いです。
 オルテガ氏はFSLNの指導者として、1979年、長期にわたるソモサ独裁打倒の革命を成功に導き、84年の大統領選で初当選。90年の選挙では野党連合候補に敗れましたが、06年選挙で返り咲きました。
 ニカラグア憲法では、現職大統領の再選は禁じられていますが、オルテガ大統領は、この規定は、国民の政治参加の権利を制限するものだとして反対を表明。憲法裁判所が、「憲法が保障する法の下の平等に反する」とこの再選禁止規定を違憲として認定したことから、オルテガ氏の立候補と再選が可能となりました。
 ガデア候補は、今回の選挙中に、与党支持者による暴力や与党が牛耳る選管のもとで、不正が行われたとして、敗北を認めていません。
 国際選挙監視団の中からも、投票所への入場が阻まれ、必要な活動が妨害されたなどの声が上がっています。これに対して、選管側は、選挙はおおむね平穏に実施されたと報告。監視団を派遣した米州機構(OAS)のインスルサ事務総長も7日、選挙結果について「ニカラグアは民主主義と平和を前進させた」とのべ、オルテガ大統領に祝意を伝えました。


解説
社会政策重視に支持
 ニカラグア大統領選で、現職のオルテガ氏が大差で勝利したのは、この政権の進めてきた社会政策重視の政治が多くの国民から支持された結果です。
 オルテガ大統領が率いるサンディニスタ民族解放戦線党(FSLN)は1980年代に政権にあった時代にも、識字率の向上、教育や医療の充実などさまざまな成果を挙げていました。しかし、90年以降の親米右派政権の時代には、新自由主義政策によって、国民生活関連の予算は次々削減されていきました。
 サモラ・スペイン駐在ニカラグア大使は、オルテガ氏が再度政権についた07年当時の荒れ果てた公立病院の状況について、「患者は新聞紙を敷いた上で手術を受けていた」と述懐しています(スペイン紙パイス4日付)。
 オルテガ大統領は、ベネズエラなどの支援を受け、公立病院の再建や医療の無料化にとりくみ、この分野での政策を「180度転換」(サモラ氏)しました。
 こうした社会政策面での成果は、FSLN支持者の枠を超えて国民の多数を占める貧困層に広がりました。世論調査会社の幹部は、45%を占める無党派層の多くがFSLN支持に流れたと分析しています。
 一方、野党側の政権攻撃は、オルテガ氏の立候補資格の正当性に向けられました。同国の憲法は、現職大統領の再選を禁じています(147条)が、結局、憲法裁判所は、オルテガ氏に関してこの規定を適用しないとの異例の判断を下しました。野党側は、そもそも憲法裁判事がオルテガ大統領に指名された与党支持者で占められていることを挙げて、憲法裁判所の判断そのものを受け入れていません。
 また、今回の選挙の中では、野党支持者や政権に批判的な人物が投票に必要な選挙登録証の発行を拒否されたという事例も数多く報じられています。

選挙には一部問題があったが少なくともそれは与党支持という国民世論の大勢に影響ないということだろう。


■特集「2012年の日本経済をどう見るか」
【1:日本経済はなぜ停滞し続けているのか 内需の拡大循環構造を(工藤昌宏)】
(内容要約)
・タイトルが結論であり、要するに外需だけでは日本の景気回復は果たせないということである。


【2:大企業の収益動向と新たな戦略(小栗崇資)】
(内容要約)
・大企業の収益はリストラと海外進出が大きな要因だが、リストラは内需の縮小を、海外進出は産業空洞化をもたらしており、手放しでは喜べないという話。


【3:リストラ・デフレと円高・空洞化の悪循環 どう抜け出すか(友寄英隆*3)】
(内容要約)
小栗論文と内容はかなりかぶる。要するに
1「デフレ脱却のためのリストラと海外進出」→「賃金カットや失業者増加が原因で内需縮小が起こりデフレ深刻化。また海外進出による産業空洞化」
2「海外進出による国際競争力の強化→円高助長(欧米各国も日本との国際競争上、ユーロ安やドル安を黙認する)」ということである。
 そうした問題を解決するためにも、内需拡大を進める政策が必要だということになる。


【4:東日本大震災から本格的な復興に踏み出す年に(橋本正一)】
(内容要約)
震災復興のために必要なことの指摘。
具体的には二重ローン問題の解決、震災に便乗した不当解雇の防止、原発被害の十分な補償などである。


【5:原発ゼロへエネルギー転換  福島原発事故は終わっていない(佐藤洋)】
(内容要約)
原発事故後も、民主党政権は「原発輸出を続行する」など脱原発の姿勢があいまいである。脱原発のための運動を強める必要がある。


【6:TPPは、日本と世界の直面する課題を解決できるのか(金子豊弘)】
(内容要約)
赤旗の記事で代替する。

「TPP加盟で自給率下がる、紙議員追及に 戦略相、否定できず、参院予算委」
http://jcp.or.jp/akahata/aik10/2011-03-09/2011030901_06_1.html

「主張:TPP交渉参加、なにがなんでも突き進むのか」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-10-12/2011101201_05_1.html

日本共産党「TPPへの暴走を許さない国民的な共同をよびかけます――暮らし・食料・農業・地域経済を守るために力をあわせましょう」
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2011/20111014_tpp_appeal.html


【7:社会保障大改悪と消費税増税の「一体改革」ストップ(三成一郎*4)】
【8:消費税増税の論点とたたかいの焦点(村高芳樹)】
(内容要約)
赤旗の記事で代替する。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-07/2012010701_05_1.html
主張
「一体改革素案」決定、前途閉ざす大負担増許さない
 民主党政権が消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる「社会保障・税一体改革素案」を決定しました。
 社会保障は今年10月から3年連続の年金カットを皮切りに、あらゆる分野の改悪計画を盛り込みました。増税は「社会保障のため」という口実は完全に破たんし、社会保障も税も一体の「改悪」であることがはっきりしています。
財界の要求に“忠実”に
 民主党政権は消費税率を10%にとどめるつもりはありません。「素案」は5年をめどに次の増税に向け「法制上の措置を講じる」と明記しています。政権中枢からは税率15%論も出ています。
 もともと「一体改革」は十数年来の財界の要求です。財界は「税・財政、社会保障制度を一体的に改革することこそが、構造改革の真の本丸」(04年、経団連提言)だとして、社会保障抑制と消費税増税法人税減税を主張してきました。経団連は消費税について、昨年の税制提言でも15年度までに10%、20年代半ばまでに10%台後半にと求めています。民主党政権は財界の要求を極めて“忠実”に実行しようとしています。
 大企業の税と社会保障負担を減らすために国民に社会保障削減と消費税増税を押し付ける―。「一体改革」は財界の身勝手な要求の具体化にほかなりません。
 野田佳彦首相は「財政規律の維持」(年頭所感)を強調して消費税増税が避けられないかのようにのべています。しかし、財政危機をつくった根源は1990年代に続けられた大型開発と軍事費の膨張、大企業・大金持ち減税による税収落ち込みです。財政規律というなら財政危機の大もとを是正すべきであり、消費税増税ですべてのツケを国民に回すやり方は財政規律の破壊行為です。
 見過ごせないのは「無駄を削れば財源はできる」と公約した民主党政権自らが浪費を拡大していることです。大企業と大金持ちに年間1・7兆円もの新たな減税をばらまき、大型開発を復活させ、1機100億円もの戦闘機を42機も買い込もうとしています。来年度予算案は当初予算としては史上最大の借金予算となり、そのツケも消費税で国民に回そうというのです。財政規律を壊しているのは民主党政権自身です。
 「素案」は増税前の景気が悪ければ引き上げ停止を含む措置を講じるとしています。こんな条項を盛り込まざるを得ないこと自体、消費税増税が経済に大打撃を与えることを否定できない証しです。仮に景気が上向いていても、消費税増税そのものが深刻な不況を引き起こす元凶であることは97年度の消費税増税で思い知らされたはずです。こんな条項は何の歯止めにもなりません。
法案を出す資格はない
 97年度の消費税増税以来、国内総生産は42兆円減り、雇用者所得は34兆円のマイナス、一般会計の税収も10兆円以上落ち込んでいます。「一体改革」の強行は日本経済の前途を閉ざす暴挙です。
 消費税を増税しないと公約した民主党政権には消費税増税法案を提出する資格はありません。
 大型開発や軍事費の無駄遣いを徹底的に是正し、大企業・大資産家への適正な課税を復活させ、応能負担の原則に立って財源を段階的に生み出しながら社会保障の拡充を図る道へ踏み出すべきです。


【9:勤労国民の雇用と生活  人間らしい労働と生活を求めて(牧野富夫*5)】
(内容要約)
・人間らしい雇用を作るためにまず民主党には「派遣規制」という公約を守らせる必要がある。また現状でも、サービス残業の根絶に力を入れるなど、法改正せずともできることはあるはずである。


【11年版『労働経済白書』が示す雇用破壊と経済・社会の歪み(山下唯志)】
(内容要約)
労働経済白書』から次のようなことを読み取ることができる。
・非正規雇用の増加と正規雇用の減少
ジニ係数の拡大(ジニ係数が大きいほど不平等度が高いとされる)
正規雇用と非正規雇用の賃金格差の拡大


■「2012年のアメリカ経済:新自由主義景気循環の呪縛とオバマ政権」(萩原伸次郎*6
(内容要約)
TPP批判が論文のメインであり、当然、内容は今月号の金子論文とかぶる。また、萩原氏は今月号の前衛でもTPP批判論文を書いているのでそれもお読みになるとよいだろう。


■「歴史的円高の構造的要因を探る」(松本朗*7
(内容要約)
 円高の助長原因となっているのは日本経済が過度に外需に依存した構造になっていることである。過度の外需依存の原因は、政府が社会保障を削減したり、企業がリストラを推進したりしていることが原因である。
 社会保障を充実させるといった内需拡大のための政策は、それ自体が国民生活を豊かにするが、「円高の助長要因をなくす」「円高による打撃を減らす」という意味でも重要なことである。


■「転換期のG20スティグリッツの戦略:資本主義の新たな枠組みへの模索」(森史郎)
(内容要約)
 2009年の国連スティグリッツ報告と、2011年の第6回G20金融サミット(カンヌサミット)提言(とりまとめ役はスティグリッツ)が取り上げられている。
 スティグリッツはいわゆる新自由主義には批判的な人物であり、国連報告やサミット提言もそうした立場から書かれている。過大評価はできないが、国際社会においても新自由主義への批判が強まっているということである。


■シリーズ「2012 ワールド・ウォッチング」<1>
【大統領選挙を前にしたロシア事情(堀江則雄*8)】
(内容要約)
 ロシア総選挙では与党が大幅に議席を減らした。これは「プーチン→メドベージェフ→プーチン(大統領)」というプーチンによる権力私物化への反発によるとみられる。ただしそれでも与党は過半数議席を確保しているし、大統領選でのプーチン優位は動かないとみられている。


■研究余話4「ドイツでの原発廃止」(林昭)
(内容要約)
ドイツで脱原発が進んでいるのに日本で進まないのは環境運動の弱さだろうと言う話。

*1:著書『人間らしく働くルール―ヨーロッパの挑戦』(2001年、学習の友社)

*2:著書『現代キューバ経済史』(2000年、大村書店)、『革命のベネズエラ紀行』(2006年、新日本出版社

*3:著書『「新自由主義」とは何か』(2006年、新日本出版社)、『変革の時代、その経済的基礎』(2010年、光陽出版社)『「国際競争力」とは何か』(2011年、かもがわ出版)、『大震災後の日本経済、何をなすべきか』(2011年、学習の友社)

*4:著書『日本の社会保障をどう再建するか』(2001年、新日本出版社

*5:著書『構造改革は国民をどこへ導くか』(2003年、新日本出版社)、『“小さな政府”論とはなにか』(2007年、公人の友社)

*6:著書『世界経済と企業行動―現代アメリカ経済分析序説』(2005年、大月書店)、『米国はいかにして世界経済を支配したか』(2008年、青灯社)

*7:著書『円高・円安とバブル経済の研究』(2003年、駿河台出版社

*8:著書『ユーラシア胎動――ロシア・中国・中央アジア』(2010年、岩波新書